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■春四(19)

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「高岡って富山市より古い町なんでしょ」
「古い越中国府(えっちゅう・こくふ)の置かれた町で大伴家持(おおとものやかもち)の時代から栄えていた古都ですけどね。明治以降は富山市のほうが発展してますね」
 
「水川さんの住居については、南砺市内のそう不便ではないところに水川さん一家が住める程度の住宅を富山本社のスタッフで確保し、そこに入ってもらうということを考えているんだけど」
 
「それは助かります。自分で探すのは大変そうと思いました」
 
水川さんは、2人の子供およびお母さんと一緒に暮らしている。子供の幼稚園通園の世話でお母さんに住んでもらったのがきっかけで同居し、その同居がそのままになっているらしい。水川さん自身は帰宅が遅くなることが多いので、子供に夕飯を食べさせるのなどもお母さんにしてもらっている。
 
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「私は育児放棄ママだから」
などと言っているが、彼女が物凄い料理音痴なこともあるのかも知れない。砂糖と塩の入れ間違いとかも常習犯だったらしい。赤ちゃんのミルクは夫かお姉さん、あるいはお母さんが作り、絶対本人には作らせなかったらしい。料理もお母さんが同居する前は夫が全部作っていたらしい。
 
彼女の夫の現在についてはよく分からない。女子社員たちの間でも謎とされていて (1)離婚した (2)死んだ (3)通い婚? (4)単身赴任中 (5)性転換した! (6)未婚で精子だけ友人からもらった? (7)単為生殖!? など諸説ある。少なくとも現在同居しているおとなの男性はいない様子である。
 
(お母さんと称しているのが実は性転換した元夫ではという凄い説まである)(*26)
 
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ただ彪志は入社間もない頃、彼女が遅くなった時に夫に迎えに来てもらっているのを見たことがあるので正式婚か事実婚かは分からないが夫は存在したはずと思う。
 

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(*26) “お母さん”ではない身内女性ということで、性転換して女性になったお父さんのことを“おばあさん”と子供が呼んでいる家庭は実際に存在する。
 
筆者は英語の moddy(mommy と daddy のカバン語)になぞらえて“おたあさん”を推奨しておく。
 

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「南砺市の中心を高速が通っているよね」
「はい。東海北陸道の、南砺インター、福光インター、城端インター、五箇山インターとあります。まあ下道(したみち)が凄く不便なので、日常の足として高速道路が使われているんですよ」
 
「それ長野県とかとも事情が似てるね」
「ええ。長野も下道は凄いところがあります。高速代ケチると酷い目に遭います」
「鈴江さんの通勤については高速代・ガソリン代が交通費として出ると思う」
「助かります。それなら多分30分でアクセスできます」
「高速なら半分の時間で済むというのはいいね」
 
「打ち上げの宴会とかする時は鈴江さんの家で」
「え〜〜!?」
「凄く広い家らしいし」
「毎週1回、シルバー人材センターに依頼してトイレとお風呂を掃除してもらっているのですが、半日掛かりみたいです(*27)」
「凄い」
 
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(*27) この直後の改造でトイレとお風呂の数はこうなる
 
地下プール・体育館:トイレ付きバスルームが合計10個、
スタジオ:バス1WC2洗面1、
本館1階:バス2WC5洗面5、
2階:バス3WC5洗面4。
 
合計してユニットバス10、バス6、WC12、洗面10。小さな旅館並み。
 
バスに15分、トイレに10分,ユニットバスに25分、洗面台に5分掛かったとしてこれだけで510分(8:30)。実際にはシルバー人材センターは4人派遣して休憩時間も入れて3時間程度で作業を終えている。どこまでやったか分からなくなるので終わった所には「清掃済み」の札を立てていく。
 
報酬にプラスして朋子からお弁当(ほっともっと)やおやつが出るのでわりと好評である。おばちゃんたちは同年代の朋子とおしゃべりしながら作業している。
 
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なおこれは隠し部屋の分を含まないが、むろん隠し部屋は他人には見せない。隠し部屋のバストイレの清掃は小杉や小道たち、おキツネさんがしてくれている。
 
プールの清掃は女性たちの手には負えないので播磨工務店に依頼して月に1回程度掃除している。夏は小学生たちが使うが、冬季でも千里、真珠たち、時々春貴が来て泳いでいる。春貴は現在バスケ部で元水泳部の山口一恵を連れてくることもある。
 

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水川は課長に確認した。
 
「名称はユー・ディー・ディー事業化準備室ですね」
「それでいいと思うけど、UDDをアクロニムして読むと“ウッド”だから略してウッド準備室でもいいかなと社長が言ってた」
 
「木のほうのウッドだったりして」
と水川。
 
「当地は古くからの木材産地です。木曽の檜や杉を庄川に流して運び出していた」
と月子(彪志)。
 
「全員木こりになったりして」
 
「小牧ダム(*28) を作る時に、そんなもの作られたら木を川に流せなくなるじゃないかといって、木こりとダム工夫(こうふ)との大乱闘があって、止めに入った巡査隊を含めて大量の怪我人が出たことがあったらしいです」(*30)
 
「わっ」
 
「結局ダムを迂回して木を運ぶ鉄道(*29)を電力会社が作ったんですよ」
「すごいね」
「今は林業が衰退して鉄道も廃止されましたが」
「ああ」
 
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「木をドローンで運んだりして」
「それジョークじゃなくてほんとにやれる可能性あると思う」
「木を運べるといったらかなり巨大なドローンだろうね」
 
播磨工務店さんのドローンの倍くらいのサイズがあれば運べるんじゃないかなと月子(彪志)は思った。
 
(既に使ってたりして)
 

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(*28) このダムを計画し作り始めたのは先述の“九転十起”浅野総一郎だが(だからダム傍の公園に彼の像が立っている)、林業側との交渉に多大な資金を注ぎ込んで挫折。しかし戦争で電力開発は国家的急務だったので日本電力が工事を引き継いだ。
 
このダム建設の結果。大牧温泉がダム湖の向こう岸に取り残された(*31). アクセスが絶対的に不利になったが、同温泉はその状況を逆用して“船でしか行けない温泉”としてアピールすることにより生き残った。
 
(*29) 庄川水力電気専用鉄道。林業側はわざと例年の倍の木を流して電力会社側を混乱させ「木の数が合わない」とイチャモンを付けた。
 
(*30) 1933年(昭和8年)1月29日の事件。林業側400人とダム建設側200人の乱闘となり、巡査隊を含めて20人以上の怪我人が出た。ダム施設多数と機関車などが破壊された。
 
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(*31) 本当はダム湖に沈んだのだが、温泉宿は敢えて向こう岸に再建された。こちら岸に再建していたら、もう潰れていたと思う。“船でしか行けない”という絶対的に不利な条件が逆に魅力になった。経営者は凄い慧眼だと思う。観光旅館は便利な所にあればいいというものではない。
 
忘帰洞で有名な南紀・那智勝浦のホテル浦島なども船で行くが、あちらは曜日によってはバスで陸路で連れて行く日もある。船に乗りたい場合は事前確認が必要。
 

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「それでドローンはこの城端(じょうはな)の本部から飛ばして、山間部に展開する移動店舗で受け取る」
と課長は説明する。
 
「移動店舗!」
「2t車の荷台が店舗になっているものを作らせている。実は11月くらいの段階ではトレーラーハウスを考えていて2人には牽引免許を取ってもらうつもりだったのだけど、トレーラーを走らせるのは困難な道だということで4tトラックに変更になった。それで鈴江さんに急遽大型免許を取ってもらった。でもその後で現地で事前調査していた部隊から4t車でもかなりきついということになって、結局2t車に変更になった(*33)」
 
「凄い道なんだ!」
 
「そういう道なら2t車走らせるのにもかなり注意が必要ですね」
「安全運転で」
 
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ドローンの事故より車の事故のほうが怖いなと月子(彪志)は思った(*32).
 

(*32) あの道をプロのドライバーなら4t車でも充分通れると思うが、素人は結構怖いかも(同乗者はもっと怖い)。特に積雪している時は神経使うと思う。
 

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(*33) 2023年現在の免許制度では2t車の運転には“準中型”以上の免許が必要である。彪志はそれで大型を取らせたのかなと思った。但し彪志は2012年に普通免許を取っており、2017年3月11日に“準中型免許5t限定”に移行していたので、どっちみち2t車は運転できた(3t車は不可)。しかし運転経験が無く、自信は無かった!
 
2023年現在の免許制度(再掲)
 
大型免許→どれでもOK。
中型免許→6t車はOK。8t車NG。バスは定員29人まで。
中型8t→4t車までOK。バスNG。ワゴンは定員10人まで。
準中型免許→3t車までOK。4t車NG。
準中型5t→2t車までOK。
普通免許→1t車までOK。
 
中型免許の創設 2007.06.02
準中型免許の創設 2017.03.12
 
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なお水川は2005年に普通免許を取っているのでその免許で4t車まで運転可能であった。それで運送屋さんのバイトを始めた時はその免許で4t車を走らせていたが、途中で大型免許と牽引免許を取った。
 

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「遠距離の移動なので引越作業も大変だろうし、赤羽での最終勤務は1週間前の2月3日・金曜日の節分とし、そのあと1週間以内に引越をお願いする」
 
「分かりました」
 
「2月13日から3月5日までの間は事務所開設の準備を」
「それかなり忙しそう」
「必要なら富山本社や高岡支店から人を呼んでいいから」
「多分3〜4人のヘルプが必要です」
「分かった。伝えておく」
 
喫茶室での課長との打合せは9:00頃から12:00近くまでに及んだ。
 
「じゃお昼で人も混み出すからこのあたりで。不明な点とかあったらいつでも訊いて」
「はい」
 
そして最後に課長は言った。
「鈴江さんは午後からもその格好でいいから」
 
メールに「私自身で確認したい」とあったのは、自分が女性の服を着ている状態が変に見えないか(変態に見えないか)?のチェックだったのかも〜〜?
 
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「いえ男物に着替えます」
「着替える必要無いのに!」
と水川が言った。
 

「南砺市に転勤になるの!?」
と青葉は驚いてそして嬉しそうに言った。
 
彪志は課長との打合せが終わった後、いったん自分の車に戻りその中から青葉に電話していた。
 
「まだ実家には連絡してない」
「ああ、お母さんが不快に思いそう」
「それが気が重いけど、ぼくは嬉しい。城端(じょうはな)なら伏木から充分通えるよね」
「うん。車で1時間ちょっとだと思う。急ぐ時は能越道・東海北陸自動車道を通って40分くらいかな」
「高速代は通勤費として出すと言われた」
「だったらその方がいいよ。下道(したみち)はあまり道路の幅が広くないし歩行者がふいに出て来て怖いし」
 
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「だよね。生活道路を通(とお)っていく感じで。バイクで通(かよ)おうかと思ってる」
「夏はそれで行けるね」
「冬は厳しいか!」
「五箇山(ごかやま)インターより以北は通れると思うよ。ただIC降りた後が場所によっては厳しいと思う」
「なるほどー」
 
そのあたりは実際に走ってみないと分からないかもと彪志は思った。
 

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しかし正月の伏木訪問では何とか誤魔化したが、自分が向こうに住めば早晩ペニスが消失して女の身体になっていることはバレるだろうなと思った。しかし悩んでも仕方無いので、バレたらバレた時と思うことにした。
 
(もはや開き直り)
 
女の身体になっていることがバレたら、きっとずっと女の服で過ごせと言われて「月子ちゃん」と呼ばれてお化粧もさせられて・・・
 
あれ?
 
今と変わんないじゃん!
 
(だからバレても大丈夫だと思うよ)
 

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彪志は続いて父のスマホにも連絡した。父は
 
「だったら青葉ちゃんの家に近いじゃん。よかったな」
と言ってくれた。
 
もっとも父から話を聞いた母はかなり不愉快だったようである。でも仕事での転勤なら仕方ないかと受け入れてくれたらしい。
 
「そもそも富山が本社だし」
「それが不安だったのよね。でも八幡平にも大きな拠点があるのに」
「まあ転勤はサラリーマンの宿命だよ」
「あなたもあちこち転勤したね!」
 

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彪志は車の中で男性用スーツに着替えてから午後事務所に出たが,水川から小声で言われた。
「明らかに午前中着てた服より安物」
「あはは」
「やはりレディスがメインでメンズは適当なのね」
 
あれ〜〜?そういうことになるのかな?でも自分で15万円の男物スーツとか買えないよぉ。
 

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夕方、浦和の家に帰ってから千里さんに言うと、
「青葉の所に移動できるんだ?良かったね」
と言ってくれた上で
 
「仕事が忙しそうだから荷物の運搬は私に任せて」
と千里さんは言った。どっちみちひとりでは手が回らないと思っていたから、お任せすることにした。
 
「じゃ節分の2月3日まで赤羽で勤務して、2/4-12の間に引っ越して、2月13日から城端で勤務か」
 
「そうなりますね」
「早く青葉の所に行きたいだろうし、2月4日立春に本人は移動しちゃいなよ。荷物はあとで持って行かせるから」
 
「すみません」
 

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浦和の家ではおとなたちは喜んでくれたが、京平が
「え〜?お兄ちゃん伏木に行っちゃうの?」
と寂しそうだった。
「いつでも会えるよ。何なら春休みの間向こうに行ってもいいし」
「それはあるね。桃香が付いていけばいいし」
「あちらに行くと私自身がなかなかこちらに帰してもらえないのだが」
「桃香さんは参勤交代している」
「桃香、いっそトレーラーハウスに住む?」
 
現在浦和の家に住んでいる子供たちはこの5人である。
 
篠田京平 2015.06.28 小1
高園早月 2017.05.10 年中
細川緩菜 2018.08.23 (年少)
川島由美 2019.01.04 (年少)
細川夕月 2022.09.27 0歳
 
早月は現在幼稚園に行っている。緩菜と由美は4月から幼稚園に行く。なお毎週土日に千葉の季里子の家に行くのは早月と由美である。この2人は来紗(小3)・伊鈴(小2)の妹であるという意識がある。今年のお正月は、夕月以外の4人で季里子の家に行ってきた。
 
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ところで月子(彪志)と一緒に東京に出て来た初海であるが、面接は五反野の女子寮の面談室で行なわれた。
 
コスモス社長直々に合ってくれたが、コスモスからは
 
「あなた女の友だち少ないでしょう」
といきなり見透かされた。わあ、不採用かなぁと思い
 
「はい。でも一所懸命やりますから」
と答える。
 
「いやタレントをしている子、目指している子はみんな同性の友だちが少ない子がわりと多いよ」
とコスモスは言った。
 
「あっ、そうかも」
「他の子と群れたがるタイプはあまりタレントに向かない。集団アイドルではわりと行けるけどね」
「なるほどー」
 
「だからそういう子たちの相談相手には凄くいいと思うよ」
「はい。ぜひやらせてください」
ということで採用が決まった。
 
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また美津穂と同様、大学院に2年間かよって臨床心理士の資格の取得を目指す。学費も奨学金として貸与してもらえることになった。先輩カウンセラーの上野美津穂・城ルシアとも顔合わせした。
 
「青葉の助手してるの?変人の青葉の助手が務まるなんて君もきっと変人に違いない」
「あはは、変人です」
「いや、そもそも心理学を志す人って自分自身の心の中に何か問題を抱えている」
「それ大学の先生も言ってましたぁ」
 
「お部屋は、美津穂ちゃんにC109に移ってもらって、C108に初海ちゃんで」
「引っ越すんですか!?に、荷物が・・・」
 
取り敢えずこの日は初海には庭の臨時アパートに入ってもらった(男子寮の住人は退去済み)。
 
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春四(19)

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