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■春四(15)
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1月8日(日).
千里がMazda CX-5で青葉邸にやってきた(つまりこの千里は姫路に住んでいる4番ロビンである)。
千里が見るとちょうど月子(彪志)がサンルームで小型のドローンを飛ばしていた。
「へー。月子ちゃん、ドローンに関心あるの?」
えーっと。
「会社に言われてドローンのライセンスを取ったのですが、実際に使うまでに忘れてしまいそうと言ったら“千里さんが”貸してくれたので練習してるんですが」
「へー。あっよく見たらこれ播磨林業で作ったヘクサコプターの練習用ミニ機体じゃん。きっとヴィクトリアあたりが私を装って徳部か清川を動かしたな」
「徳部さんが持って来てくれたよ。3mくらいある巨大な機体と一緒に」
と青葉が言う。
「実機まで持って来たんだ!」
と千里。
「借りてまずかったですか?」
と月子(彪志)が訊く。
「いや、月子ちゃんなら全然問題無い。使っていいよ。しかし何もこんな難しい機体でなくても。これ制御しにくいでしょ?」
「スティックをちょっと動かしただけで大きく動くんですよ。それでシミュレーターでやったらいきなり墜落させました」
「うん。普通そうなる。この子けっこう癖があるから、これを飛ばせたら国産のドローンならたいてい飛ばせるよ」
「そうなんですか!やはりこれ難しいんだ」
「良かったじゃん。これで練習してたらきっと仕事で使う機体も簡単に飛ばせる」
と青葉は言った。
「でも国産と外国産で何か違うの?」
と青葉が訊く。
「左スティックと右スティックが逆」
と月子(彪志)・千里が言った。
「なんでそんなのが逆なの〜?」
「理由は知らないけど外国式に設定できる国産ドローンもある」
「このプロポもどちらにも設定できますが、今後は多分海外で多いモード2が主流になるのではと思ってモード2に設定しています」
「うん。それでいいと思う」
「そうだ。月子ちゃんさあ。こないだイオンで買った安物のスーツ着てたでしょ」
「あ、はい」
「あれあんまり酷いから、もう少しいいの買ってあげるよ」
「えーっとそれで叱られたとか言って“千里さんが”青山のレディススーツを買って下さいましたが」
「青山〜?会社に入りたての新入社員ならそれでもいいけど、キャリアウーマンの女性係長さんが青山なんて着てたらダメだよ。青葉、真珠ちゃんか明恵ちゃんを呼んで。彼女たちに見立ててもらおう」
「分かった」
それで青葉が連絡すると、明恵と真珠が一緒に真珠のスペーシアでやってきた。
「マコちゃん、アキちゃん、月子ちゃんに係長さんらしい、ちゃんとしたレディススーツを見立ててやってもらえない?」
「いいですよ。予算はどのくらいの?」
「上場企業の係長さんだからねぇ」
「あのぉ、私まだ主任なんですけど」
「すぐ係長になるよ」
「へー!」
「女性係長としてテレビにも映るから、青山・AOKIは無いよね」
「ああ、それはあり得ません」
(済みません。筆者は、しまむらのレディススーツです)
「ぼく、テレビにレディススーツで映るの〜〜?」
そんなことしたら母が何と言うか。
「予算は20万くらいかな。それ色違いで2着。取り敢えず50万渡しておくね」
と言って千里さんはバッグの中からさっと札束をわしづかみにして(*20)真珠に渡した。
「ひぇー!?」
自分の男性用スーツだって西武で7万で買ったのに。
それで月子は明恵と真珠に連行されて行った。
(*20) 千里は札束をこういう取り方すると正確である。1枚ずつ数えると間違う。
青葉は(答えないだろうけど念のため)訊いてみた。
「ちー姉、月子ちゃんの転勤先知ってるの?」
「知ってる千里も居るみたいけど、私は知らない。でも転勤して係長待遇に昇進するはず」
「へー」
“係長待遇”ということは名称は違うのだろう。何かのプロジェクト的なものみたいだから、何とか研究室とか何とかデベロプメント・チームとか。Development Department for Drug Delivery by Drone "DDDDD", or "5D" とか?
「あと、この際転勤に乗じて性転換手術を受けて女性になれば女性係長になれる」
「私はそれでも全然構わない」
それ、ちー姉が月子(彪志)を性転換しちゃうんじゃないよね?
「だったらいいね。2人目の子供は彼女に産んでもらうといいよ」
「楽でいいね」
1月8日(日) 夕方、
「うっそー!?なんで私に生理が来るの〜?」
真っ赤に染まったナプキンを見て思わず氷川チャイムは叫びたくなった。
(初潮おめでとう!)
でも生理ってどこから出て来てるんだっけ??おしっこの出てくる所??
(もう少しちゃんと女の子の仕組みを勉強しようか?)
1月8-9日(日・祝).
10日から新学期が始まるところが多いので、冬休みの間東京に出て来てくれていたトラフィックのメンバーを1月8日夕方から9日に掛けて地元に送り返した。
1/8 夕方
Black 郷愁→能登 古屋きんつば・あんころ、入瀬コルネ、紺青セイラの弟2人
その後は真珠が氷見市のコルネを、明恵が中能登町のきんつば・あんころを、吉田邦生が射水市のセイラの弟2人を自宅まで送って行った。
射水市に行く途中で氷見市に寄ることは可能だが、というか完全に通り道だが、車を分けたのは、女性(入瀬コルネ)の家を男性(セイラの弟たち)に見せないためである。
1/9 午前中
gold 郷愁→神戸 竹中花絵・清水せぴあ
竹中花絵が神戸空港に自分の車を駐めていたのでそれで清水せぴあを自宅まで送って行ってあげてから帰宅した。せぴあはこの半月ほどずっと女の子の服で過ごして、テレビ局にも女の子の服で出掛けて、完全に女装生活に填まってしまったようである。(もう性転換確定?)
1/9 午前中
blue:郷愁→藺牟田 広瀬のぞみ・月城としみ
藺牟田飛行場から先は、としみの母が2人を乗せたまま都城に行って広瀬のぞみを降ろし、のぞみの母にも挨拶して、それから、としみと一緒に薩摩川内市の実家に運転して戻った。
1/9午後
水巻アバサは1月9日の午後、SCCの車で水戸の実家に帰宅した。
なお、女子寮に一時的に入っていてもらった男子寮の住人や外部に住んでいる人も1/8-9の間に退去した。
1月8-9日(日・祝).
第70回富山県高等学校新人バケットボール選手権大会の1〜3回戦が行われた。女子の参加校は29校で、8日(日)に1回戦1試合と2回戦12試合が行われ、9日(祝)に3回戦8試合が行われた。H南高校はシードされているので3回戦からである。
3年生の抜けた1〜2年生だけのチームだが、3回戦は軽く勝って準々決勝に進出した。(メンバー表は後述)。この日は藤永弘絵も20分近く出してもらえた。日和は冬休み中の(自主)練習は欠席していたが昨日家に戻ったので今日は試合に出て来て、マネージャー登録してもらい、雑用係で走り回っていた。
1月11日(水)、金沢市内に住む古庄優子は女の赤ちゃんを出産した。歌声と名付けた。この子は、父親の夏樹にとって、自分の遺伝子を継ぐ子供の中で唯一、社会的に自分の子供となる子である。
(↑の図は子供から見て左がが父親で右側が母親)
来紗と伊鈴は単に精子を貸しただけであり、2人の社会的父親は桃香である。また美奈は自分が卵子と子宮を貸しただけで代理母として産んだ子である。
奏音は社会的には夏樹の子供だが、遺伝子的には信次の子供である。今回、夏樹が保存していた最後の精子を使って優子が妊娠した時、夏樹は「自分は決して奏音とこの子供を差別しない。等しく愛する」と宣言している。
夏樹が男性能力を放棄する前に保存していた精子はもう使い切ったので夏樹と優子の間にこれ以上子供ができることはない。
「私優子ちゃんの精子を保存してるけど。これをモニカちゃん(夏樹のこと)に人工受精すればまだ2人の子供が作れる」
と千里。
「そういう面倒なことはやめてくれ」
と桃香。
「桃香の精子も持ってるけど。だからそれを季里子ちゃんに人工授精して、桃香と季里子ちゃんの子供を作れるよ」
「・・・・・ねぇ、それもうしばらく持っててくれる?」
「いいよー。毎月送金する養育費がまた増えるけどね」
「そちらはすまん」
さて、月子(彪志)のほうだが、真珠たちはポールスチュアートのジャケットと膝丈スカート(セットアップ)、ネイビーとベージュを選んであげた。価格は2着で税込32万円ほどだった。
「オーダースーツは如何ですかとも言われたけど今すぐ欲しいからということでこれ買ってきました」
「ああ、オーダーは青葉に任せた」
「じゃ落ち着いてからオーダーしよう」
「あはは」
お正月休みの期間、彪志はかなりドローンの練習をした。シミュレーターで2日(6-7)くらいやった後、小型のドローンで家の中を飛ばすのを5日(8-12)やった。13日になってから、実機を海岸に持ち出して飛ばした。羽根を広げると3mほどある巨大なドローンが離陸するとかなりの迫力である。
山奥から竹を持ち出すのに使っているという話だったが、そんな重たそうな物を乗せても充分飛ぶだろうと思った。この日は万一墜落しても人に被害が出ないよう、ほとんど海の上で飛ばしたが、近くに居た人たちから歓声があがっていた。ただ海上で飛ばすのは気流が難しくかなり気を使った。
これを14日もやったが2日間もこういう巨大ドローンを飛ばすと、かなりの自信が付いた。
千里さんに電話して(どの千里さんか分からないけど話は通じた)、小型のドローンのほうとプロポ(操作卓)、FPVゴーグルをしばらく借りて、浦和の家でも練習させてもらうことにした。
1月14-15日(土日).
大学入学共通テストが行われ、こりを初海の妹の双葉、S市の遙佳、氷見市の舞花と愛佳などが受験した。4人ともすぐに自己採点し、最終的に受験する大学を決める。
竹本双葉は、バンザイシステムに自分の成績を入れてみると国公立は鳥取環境大学のみがB判定(ボーダーライン)、富山県立大がC判定(努力が必要)。他はD以下である。この段階に来てCというのは奇蹟が起きない限り無理。一方、姉が通ったG大学はA判定。ということで素直にここに願書を出すことにした。G大の場合共通テストの成績のみで判定されるので個別試験を受ける必要は無い。(共通テストが酷すぎたり風邪などで受けられなかった人は個別入試で再挑戦可能)
谷口愛佳は、国公立は全滅だが、金沢市の私立でG大学・H大学・S大学、また富山市のi大学などがAだった。
「模試より上がってる。あんた頑張ったね」
と母に褒められた。それでこの中で学費の安いG大学を受けることにした。ここなら、学費減免を申請して奨学金を受けると何とかなりそうなのである。(4年間良い成績を維持する必要がある)
そしてこの大学には女子バスケットボール部があるので、ここで4年間バスケットをしたいと思っている。
川口遙佳は、第1志望の金沢美大がC判定、第2志望の富大芸文がA判定、金沢のG大学もA判定である。
「国立の富山大学がAならもう金沢の私立は受ける必要無いのでは?」
と母が言う。
「私もそんな気がする。ここに賭ける」
ということで、遙佳は国立の富山大学・芸術文化学部のみを受けることにして毎日デッサンの練習をしていくことにした。このあと毎日母の車に乗ってS市近辺の色々な風景を写生する。
高田舞花は第1志望の富大芸文がB判定、第2志望の富山県立大学がA判定、第3志望の金沢のG大学がA判定である。
「あんたかなり頑張ったね」
と、こちらも母から褒められた。
「富大芸文は受けようと思う。でも実技で凄い子が来てた場合は落とされる可能性あるしなあ」
などと悩んでいる。
「だったら滑り止めに県立大を受けなさいよ」
と母が言っていたのだが、ここでとんでもない問題が発覚する。
妹(弟?)の晃が言った。
「姉ちゃん、県立大と芸文の入試日が同じ日じゃん」
「え〜〜〜!?」
ということで富山大芸術文化学部と富山県立大学はどちらか片方しか受けられないことが判明した。(もっと早く気付くべき)
「だったら芸文と念のため滑り止めにG大学かなあ」
「それ学費の払い込み締め切りは?」
「G大学の手続き締切は2/19。富大の合格発表は3/8」
「何とかならないの〜?」
「すぐに願書出さずに2期でG大学に願書出せば手続き締切りは3/13」
「あ、それがいいわ。あんた少し遅れて願書出しなさい」
「でも1期より2期は合格水準があがるんだよー」
「だから芸文の入試(実技)頑張りなさい」
「ううう。凄い人がいたら・・・」
「凄い人は美大を受けてるって」
ということで舞花は結局富大芸文のみに願書を出すことになった。これで舞花が大学でもバスケットを続けられる可能性はほぼ無くなった。
「どっちみち大学でのクラブ活動なんて無茶苦茶お金が掛かるし、芸術コースはかなり忙しいだろうから、きっとバスケットとかする暇無い」
「うーん・・・・・」
(愛佳もお金無いのでは?)
舞花の場合も試験まで毎日母の車であちこちに出掛け、様々な風景の写生をすることになった。
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春四(15)