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■春四(8)
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トマトまでは、あけぼのテレビ五反野サテライトに急行して
クリスマス特集番組に出演した。
お昼の時点でまだ来てない子が1人いる。海浜ひまわりは非常に不愉快な気分になった。予定していた番組に遅刻して出られないというのは、あってはならない事態である。
来ていないのは埼玉県伊奈町の大館蒔乃である。近くなのに!彼女はクリスマスの番組が終わり、多くの子たちが戻って来た後、15時すぎになってやっと到着した。
保護者が借りたレンタカーのワゴン車に荷物を積んで運んできたらしい。伊奈町から五反野までは通常1時間かからない。多少渋滞していても、かなり遅れて家を出たことになる。
「遅くなって申し訳ありません」
と本人は言ったが
「あんたいいからもう帰りなさい」
とひまわりは言った。
「そんなこと言わずに何とか加入させてください」
と謝っている。
「遅刻するにも限度があるよ。11時までには来てと言ってたのに」
「本当に申し訳ありません」
この押し問答を10分くらいやっていたが、最後は両親と姉まで土下座して謝るので
「2度と遅刻しないように。やむを得ず遅れる場合は連絡すること」
というのを強く言い、始末書の提出で勘弁してやった。
どうも朝一番に出るつもりがお父さんが突然会社から呼び出され、運転免許を持っているのがお父さんだけなので帰宅を待っていたらしい。
「そんな時は荷物は後からにして本人だけでも来なきゃ」
「それが交通手段が無くて」
「そういう時にSCCの車を呼ぶんだよ」
「あ、そういうので使ってもいいんですか」
「おやつ買いに行くのでも彼氏とのデートに行くのにでも使っていい」
「伊奈町みたいな田舎までも来てくれます?」
「遠い所は協力会社の車やヘリコプターをやる場合もあるけどね」
「へりですか!」
「どんなことをしても本番に間に合わないというのは絶対に許されないから」
「はい」
しかし後で彼女が小さい頃からの遅刻の常習犯だったことが判明し、コスモスは彼女に“氷川チャイム”という芸名を付けてしまう。
「始業のチャイムではなく、優勝を告げるチャイムにしよう」
とコスモスから言われていた。
さて遅刻の件を何とか許してもらった後、彼女はとんでもないことを言い出す、
「じゃ君のお部屋はA304にするね」
と言って用意していたidカードに部屋番号を設定しようとした時のことである。
「もしかしてここ女子寮ですか」
「そうだけど何か」
「ぼく男の子なんですけど女子寮でいいんですか?」
「何〜〜!?」
だってこの子、スカート穿いててバストは(見た目)膨らんでるし、髪は長く、前髪をパッチン留めで留めているし。女の子にしか見えないじゃん。声だって女の子の声に聞こえる。
これが花ちゃんが受け付けたのであれば用賀の男子寮に行ってくれと言う所だ。もっとも、花ちゃんだったら遅刻を絶対許さなかったろうなと思った。花ちゃんは仕事に対して厳しい。ひまわりは適当な性格である!そして受け付けたのが稲田姉妹とかだったりしたら?などと考える、(あの人?たちに受付させることはあり得ないけど)
ひまわりは確認した。
「あんた女の子になりたい男の子?」
「なりたいですー」
こういう子はいったん男子寮に入れても自分で身体を改造して女の子になってしまい、1〜2年後には女子寮に移ってくる。そして女子寮に移動した元男の娘たちって、なぜかそれを契機に売れなくなっている。
直江姉妹にしても、長浜夢夜にしても理由が分からないが仕事が激減した。
だったらこんな子は最初から女子寮に入れちゃえばいいんじゃない?この子が他の女の子を襲ったりすることはまず考えられない。どうせ1〜2年後に女子寮に来るのなら引越の手間を省こう。それに男子寮は満杯に近いし。
「だったら面倒くさいから今すぐ女の子になる手術受けてよ。そしたら普通に女子寮に入れてあげるから。そして1月からはセーラー服着てこちらの中学に通学すればいい」
「今すぐ女の子になる手術受けるんですか〜?」
「お股に付いているの邪魔でしょ」
「邪魔です」
「無くなればいいのにと思ってたでしょ?」
「物心付いたころから無くしたかったです」
「じゃ取ってあげるから今日はこのまま女子寮に入りなさい」
「いいんですか〜?」
「御両親やお姉さんも、この子女の子に変えちゃっていいですかね」
「この子ずっと女の子になりたがってたから全然構いません」
「こいつを男らしくしようと努力した時期もありましたが諦めました」
「この子のことは妹と思ってますから」
ということで大館蒔乃(氷川チャイム)は即性転換するということで女子寮に入れることにしたのである!
「これ新しい中学の制服ね」
と言って女子制服を渡すと蒔乃は嬉しそうな顔をしていた。
「ちょっとその制服に着替えて一緒に来て」
「はい」
彼女はブラウスを持っていないと言ったので、備品から出してあげた。スカーフが結べなかったが、お姉さんがしてあげた。
それでひまわりはたまたま在室していた石川ポルカを呼び出すと“寮長代理”の札を渡し、荷物の運び込みは両親とお姉さんに任せ、蒔乃本人を連れて外に出る。花ちゃんのバイクに乗り、信濃町の事務所まで行く(ひまわり自身のバイクや車にタレントさんなどを乗せることは禁じられている!)。
そしてうまい具合に居たコスモス社長に遅刻の件で直接謝罪させた。
「最初の仕事でいきなり遅刻とか私なら首にするけどなあ」
とゆりこ副社長が言っているが、コスモス社長は
「ひまわりちゃんからかなり厳しく搾られたみたいだし、今度だけは許してあげるけど、2度とこのようなことが無いように」
と言われ
「本当に申し訳ありませんでした」
と謝った。ケイ会長まで
「お仕事って厳しいから、しっかり自覚してね」
と声を掛けてきて
「申し訳ありませんでした」
と再度謝った。
両親とお姉さんはカデットに泊めた。そして本人には
「手術するからお風呂に入った後、その付近の毛を全部剃っておいて」
と言って、新しいハサミと電動シェーバーを渡しておいた。
23時頃彼女の部屋に行くと、ドキドキしているようだ。
「じゃ女の子になる手術しちゃおうね」
「あのぉひまわりさんが手術するんですか」
「ドクター八重といえば、その世界では知る人ぞ知る性転換医だよ。これまでに可愛い女の子に変えてあげた男の娘の数は4000人近い」(*9)
「そうだったんですか!?」
「では手術を始めよう」
と言って、ひまわりは使い捨てのビニール手袋を着け、まず陰茎を握ると後ろのほうへ引っ張って紙テープで仮留めする。ひまわりに触られてもピクリとも反応しないので、ああ女性ホルモンやってるなと思う。
陰嚢の皮を左右からひっぱり中央で合わせては瞬間接着剤で接着していく。接着したら1分くらい押さえておき乾いたところでその先を作業する。これで陰茎が完全に陰嚢皮膚で覆われる所まで進めた。結果的には縦にきれいな接着跡が残る。
(実弟の秋人(現・秋代)を使ってかなり練習した時期があるので、これができる。接着跡をまっすぐ作るのに結構な練習が必要)
「きれーい」
「見た目は女の子だよね。君のペニスはもう使用できない」
「でもおしっこする時はどうするんですか」
「このままできる。トイレに行ってみてごらん」
「はい」
それでトイレに行って来たが、
「ちゃんと出来た!」
と言って感動していた。
「君はもうペニスがないし割れ目ちゃんによく似た綴じ目ちゃんがあるからもう女の子だよ」
「はい!」
「じゃねー」
(*9) “ひまわり女子高”の生徒手帳に応募してきた人は1万人を越えていたが、抽選で3900人にだけ“生徒手帳”を発行した。
3学年×26クラス×出席番号50
ほぼ全員が男性(女性は44人で全員1年A組にした)だったので、プロのメイクアップアーティストの手で女性的な顔に装い、女子制服(ほぼ全員がお買い上げ)を着て生徒手帳の撮影をしている。
撮影会は、札幌・仙台・東京・名古屋・金沢・大阪・岡山・福岡・那覇の全国9箇所20回に分けて行われた。
ちなみに女子制服は上は“男性サイズ”のS・M・L・XLを用意したが特注サイズも受け付けた。スカートはW60-90を用意したが、W60やW63のスカートを穿いた人が結構居たので感心した。
さて蒔乃は、タックされた股間に感動し、ヌードになって自分の身体を鏡に映してたくさん記念写真を撮った。
お股にぶらぶらするものが無いって素晴らしいなあと思った。
それでその日は寝ようと思い、再度トイレで女の子っぽい位置からおしっこをしてお布団に入る。どきどきしながらあの付近に触る。邪魔なおちんちんは無い。ほんとに女の子になったみたいなスッキリした股間がある。
それに感動して眠りに落ちて行こうとしていた時、12時の時報が鳴る。
と同時に部屋の中に小学生くらいの女の子が出現した。
「わっ君誰?どこから入ってきたの?」
「こんばんわ、まきのちゃん、ぼくは男の娘の味方“魔女っ子千里ちゃん”だよ」
「なんで私の名前知ってるの?」
「ぼくは男の娘が困ってたりしたら呼ばれて出てくるよ」
「特には困ってなかったんだけど」
「あれ〜?だったら何かの間違いかな」
うん。君は間違いが多い。
「そうだ。君女の子にしてあげようか」
「何を唐突に」
「ぼくを呼び出す子はたいてい女の子になりたがってるんだよ」
「でもぼくお股をきれいに整えてもらったんだよ。まるで女の子みたいに」
「どれどれ見せてご覧」
「うん、まあいいけど」
蒔乃は相手が小学生くらいの女の子ということで気を許した。この子がまさかもう20年以上小学生をしているとは思いも寄らない。
「ああ、これはきれいにタックされてるね」
「これタックっていうの?」
「そうだよ。スカートのウェストのところを折りたたんで詰めるでしょ?」
「なるほどー。これも折りたたんで詰めてる」
「でもタックだと毎日メンテする必要があるよ。メンテなんてしなくていい本物の女性器に変えてあげようか?どっちみち、ちんちんは要らないんでしょ?」
「確かにちんちん要らないけど」
蒔乃は一瞬考えた。自分は今日のお昼。性転換手術を受ける覚悟をした。どちらかというと、今はその覚悟が宙ぶらりんになっている。この子が本物の女性器に変えてあげると言っている。この子はどんなことをするんだろう。
それで興味半分で
「だったら女の子に変えてもらおうかな」
と言ってしまった。
「OKOK、じゃ眠っててね。その間に女の子に変えるから。それと役場にも届け出さないといけないから、これに記入してお父さんかお母さんのサインももらって明日の夜、ぼくに渡して」
そう言って“魔女っ子千里ちゃん”は『性別訂正届』という紙を渡してくれた。それで蒔乃は眠りに落ちて行った。
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