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■春白(30)

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2020/2021年の年末年始のカレンダーはこのようであった。
 
2020/12
SU MO TU WE TH FR SA
20 21 22 23 24 25 26
27 28 29 30 31
 
2021./01 __ __ __ __ __ 1_2 _3 4_5 6_7 8_9 10 11 12 13 14 15 16 SU MO TU WE TH FR SA
 
青葉は普段月火が休みなのだが、これを代わってもらった。そして12/28-29も出勤して、12/30も午前中勤務した上で12/31-1/01の2日間を休みにしてもらったのである。
 
12/30のお昼であがると、普段は津幡のプライベートプールに行って泳ぐのだが、この日は自分の車マーチニスモで、のと里山海道を北上。能登空港に行って、駐車場の数日間駐めてもよいエリアに駐車する(冬季は除雪の都合で長時間駐められると困るエリアがある)。
 
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ここにホンダジェットで迎えに来てもらっているので、郷愁飛行場へ飛ぶ。機内で用意していたお弁当を食べた。
 
郷愁飛行場には車で迎えに来てもらっているので、その車に乗り東京に向かう。青葉は車内ではひたすら眠っていた。信濃町の§§ミュージックの事務所に入り、コスモス社長と打ち合わせをした。この日行われるRC大賞の授賞式に、アクアの制作者として出席する。
 
今年は人数制限が掛かっており、各歌手ごと2名まてということだったので、どこもレコード会社の担当が遠慮して、作曲家(または作詩家)と事務所の担当という組合せになるらしい。それでアクアに青葉とコスモスが付き、ラピスラズリには桃川春美と川崎ゆりこ副社長が付くということだった。
 
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夕方、例年通り、新国立劇場に入る。アクアは忙しいので別行動で、現地合流になった。今年は会場は無観客だし、メイン以外の賞はビデオ出演になる。千里姉(津島瑤子の作曲者として来ている)、ケイ&マリ(本人たちが受賞)、ゴールデンシックスの2人(同左)などと手を振り合って、スマホのSMSを使って話していた。今年は出席者同士の会話も極力控えてと言われていた。
 
確かにこんな所でクラスターでも発生したらたまらない。
 
授賞式が終わった後は、矢鳴さんがアテンザで千里姉を浦和に送っていくので、それに同乗して青葉も浦和に行く。運が良ければ30分で行けるのだが、12月30日なので道は混んでいる。1時間ほどの行程になった。
 
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千里姉たちは12/26に浦和市内のマンションから同市内の一戸建てに引っ越したが、青葉が行くのは初めてである。マンションは浦和駅から歩いて5分という場所だったのだが、今度の家は産業道路に近い。しかし車での移動を考えると、こちらの方が便利だろう。
 
「貴司さんは通勤はどうするの?」
「コロナが収まったら南浦和駅から武蔵野線で西国分寺に行けばいいんだけどね。当面は車で通勤かな。走ってみたけど、夜中なら1時間10分で行く」
 
「50kmくらい?」
「30kmくらいかな」
 
ちー姉にしては上品な速度じゃんという気がした。
 
「バイク使う?」
「貴司はバイクの免許持ってないのよねー」
「ありゃ」
「だからウォーミングアップ兼ねて走って行きなよと言っている所」
「30kmも走ったら、それだけで疲れ果てて練習出来ない気がする」
「軟弱な」
 
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「そうだ。ちー姉、浦和市内でどこか適当なスタジオ借りられないかな。1日のライブに出る前に、一通り練習しておかなくちゃと思って」
 
「だったら、うちの地下を使えばいいよ」
「地下室があるの?」
「桃香や貴司には内緒ね。彪志君にも」
「うん。いいけど」
「地下秘密基地に男の娘製造工場があるんだよ」
「雨宮先生みたいなこと言ってる」
 
矢鳴さんには聞こえているが、彼女は他人に秘密を言ったりはしない人である。しかし男の娘製造工場なんて言ったのでマジかジョークか分からなくなった。青葉も分からなくなった!
 
「そうだ。青葉が言ってたうちにプールを作るって話」
「あ、そんなことも言ったかな」
 
「私きれいに忘れててさ。26日に彪志君から聞いて思い出した」
 
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そういえばクリスマスの時に彪志とそんな話をした気がした。千里姉とそんな話をしたのは・・・11月9-13日にラピスラズリと作曲家さんのインタビューをした時だ! ほとんどジョークで言ったのに、ちー姉ったら覚えててくれたんだ!
 
「それで即発注したから、今回は間に合わないけど、青葉がジャパンオープンで東京に来る時には多分できてると思う」
 
「本当に作るの!?」
 

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それで浦和市内の新しい家に到着したのだが・・・・・
 
「何だろう?あの車」
「お客さん?」
「お客さんなら、中まで入ればいいんだけど」
 
取り敢えず、庭への進入口の所に車が1台駐まっていて邪魔なのである。
 
降りて見てみると停まっているのはトヨタ・アクアのようである。
 
「これ“アクアのアクア”じゃん」
「アクアちゃんか誰か来てるのかな?」
と青葉が言っていたら、千里姉が溜息をついている。
 
「どうしたの?」
「これ」
と千里姉が指さすのを見ると
 
「やる」
と書かれた紙がマスキングテープで貼り付けてある。
 
「何これ?」
「雨宮先生の字だよ」
「どういうこと?」
「飽きたからここに捨ててったんだと思う」
「不法投棄〜?」
 
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「まあよくあることだけどね」
「はあ・・・」
「取り敢えず中に入れよう」
 
と言って千里姉は“アクアのアクア”の運転席に座ると(キーはささったままだった。よく盗まれなかったものだ)、車を発進させ屋敷内に入れる。鉄柱が何本か立っている所の少し手前に駐めた。その後こちらに戻って来て、アテンザをその鉄柱が立っている所の前まで進める。
 
スマホを取り出して操作している。
 
機械が動いているような音がして、前面の地面が上昇する。
 
「昇降式駐車場?」
「そそ。8台駐められるものを作ってもらうつもりだったんだけど、私の言い方が悪くて6台しか駐められない。この後どうするか悩んでいる」
 
「8台駐められるように改造するのに1票」
「やはりそれかなあ」
「いっそ垂直循環式の駐車場でも建てる?」
「この地域、高さ制限があるから、そんな高いもの建てられないのよね」
「ああ。住宅街だもんね」
 
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それで千里姉は昇降式駐車場の下の段を上げ、そこにアテンザを駐めて、またスマホで段を下げた。
 

もう遅いので、子供たち4人は寝ているが、桃香・彪志・貴司が起きていた。彪志はついさっき帰ったばかりらしい。桃香が「許す。キスしなさい」と言うので、青葉は彪志にキスをした。
 
「そのままここでセックスしてもいいぞ」
「後でするからいい」
と青葉は答えておく。
 
「彪志、休みは?」
「事実上存在しない」
「大変だね!」
「青葉もね」
 
この日の部屋割はこのようになっている。
 
101 彪志・青葉
201 貴司
202 早月・由美・緩菜
203 桃香
2SR 京平
 
「1階の和室が彪志君の部屋だから、青葉はそこで寝て」
「了解〜」
 
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貴司さんが「晩御飯」と言って、ケンタッキーの袋を持って来た。子供たちは寝る前に1人1個ずつ食べたらしい(京平と早月はオリジナルチキン、由美と緩菜は骨なしチキン)。しかし大人用はオリジナルチキンが大量にある。それをチンする。そして適当に頂く。
 
桃香姉はビール、貴司さんは缶チューハイを飲んでいるが、彪志はお茶だけのようである。青葉もチキンやビスケットを食べながらお茶を飲んだだけでアルコールは口にしなかった。
 
この日は「疲れたろうから早く寝た方がいいよ」と言われ、ケンタッキーを食べながら30分ほどおしゃべりしただけで、彪志と一緒に1階の和室に下がった。LDKとの間は襖ではなく開き戸で隙間テープまで貼ってあるので、音は響かないようになっている。更にドアの前には衝立も立っていて、遮音性に配慮されている。
 
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それで青葉はこの夜は“安心して寝る”ことができた。少々汗も流したが!特に彪志が!!
 

翌朝、5時に千里姉が、和室に朝食を持って来てくれた。炊きたて御飯、キャベツと若布の味噌汁、焼きたての鮭である。
 
「ありがとう!」
「彪志君は今日は早番と言っていたしと思って」
 
それで和室の布団を畳んで、テーブルを置き、そこで彪志と一緒に朝御飯を食べた。
 

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