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■春白(25)

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(C) Eriko Kawaguchi 2021-02-23
 
日倉孝史はその日、熱心なファンだという女性から「少しお話ししたい」と言われた。最初どこかのスナックででもと言っていたものの、どこも時短営業していて話せるような店が無い。
 
「なんなら私の住んでいる所に来ます?」
などと言われたが、彼女が30歳くらいのようなので、生娘(きむすめ)ではないだろうし、“大人の関係”ということでいいよね?と思い、彼女に付いていった。彼女が運転する黒いインプレッサに乗って姫路市郊外かな?と思う所まで行く。広いLDKで、カティサークの水割りで乾杯しておしゃべりしていたら、凄く楽しかった。
 
国内リーグもNBAの試合もよく見ているようで、孝史が話す試合のことを彼女も見ていたことが多く、
「あれはうまいよね」
「しびれたね」
などといった話になる。孝史はこんなに話の合う女性と話をするのは初めてだった。
 
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彼女自身もアマチュアのクラブチームに入っているが、コロナの影響で今年はまともに練習できてないという話であった。
 
「少し汗流します?」
などと言われるのでドキッとする。
 
まあ、してもいいよね?ファンサービスで(意味が違う気がする)、などと考え彼女に付いていく。奥の部屋に入る。ドキドキする。しまった。避妊具持ってない、と思うが、1回くらいは大丈夫かな?などと考える。
 

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彼女が部屋の中のふすまを開ける。寝具を出すのかと思ったら、なんとそこにエレベータがある。
 
「凄い所に凄いものがあるね」
「この家は、掛け軸の裏に抜け穴があったり、1階と2階を縄梯子で移動したりとか、色々仕掛けがあるのよ」
 
と彼女は言っている。
 
一緒にエレベータに乗る。
 
“下”に移動する。
 
「地下室があるの?」
「うん。地下に行くのよ」
 
それでエレベータを降りると、広いコートがある。
 
「凄い」
「ハーフコートしかないけどね」
「でも個人の家の地下にこんなものがあるなんて」
 
「ここは以前、元日本代表のバスケ選手が住んでいたのよね」
「へー!」
 
「手合わせしてくれません?」
 
汗流すって、こういうこと!?
 
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健康的じゃん!
 
孝史は楽しい気分になった。
 
「いいよ」
と答える。ファンサービスだし!?
 
それで、孝史は彼女と1時間くらい、本当に汗を流したのである。女子にしてはわりと強く、この子、Wリーグの下位ならロースターになれるのでは?と思った。社会人チームならきっとエースだ。
 
1on1をしても、結構本気にならないと抜かれてしまう。
 
それで孝史も充分楽しむことができた。
 

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貴司は11月4日の夜は千里と喧嘩になってしまった(貴司としてはなぜ千里が怒るのか理解不能)ものの、その後は毎日電話で1〜2時間話していたし、食べ物は朝晩届けてくれるので、“雪解け”はそう遠くないかなと思っていた。
 
千里が板橋区の練習場の鍵を渡してくれたので、11月中は会社が終わってから、そこに行って練習したし、退職後の12月にはなってからは、日中就職活動をし、夜中に一晩中板橋で練習していた。日中は青葉の友人の女子大生が使うと聞いていたものの、この11-12月の間は1度も遭遇しなかった。
 
T事務機のチーム解散後は練習してなかったし、そもそも今年は春からあまりまともな練習ができていなかったので最初はなまっていたものの、少しずつ勘を取り戻していくことができた。相手選手に見立てた“自動人形”が置かれていて(顔が元日本代表エースの龍良さんで、顔だけで結構ビビる)、これが意外に“強く”最初の内は人形にボールを取られたり弾かれたりしたものの、勘を取り戻してくると、簡単には取られなくなる。
 
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就職先について、千里の助言で関東周辺のBリーグのチームで、SF(スモールフォワード)あるいはGF(ガードフォワード)が弱点のチーム、あるいは現在のレギュラーが引退間近と思われるチームを巡り売り込んでいた所、国分寺市に本拠地を持つB2(2部)のメトロ・エクシードが興味を持ってくれたのである。
 
履歴書を持って行った時は、貴司の年齢(31歳)に難色を示した。しかしここのチームのアシスタントコーチが、かつて日本代表で一緒にやっていた前山君だった。
 
「細川君、久しぶりだね」
「どうもその節はお世話になりました」
「僕と君の間で、そんな堅苦しい挨拶は無しで。ヘッドコーチ、仮は巧い選手だし、チャンスメーカーなんですよ。ちよっとプレイを見てあげてください」
と言った。
 
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それで貴司はチームの中堅選手と1on1をした。10回やって8回貴司が勝つ。
 
「すげー。さすが元日本代表」
と向こうも完敗の弁である。
 
「前山君が“巧い”と言った意味が分かった。細川君って、省エネプレイヤーなんだ!」
とヘッドコーチ。
 
「そうなんですよ。彼は体格こそ187-8cmで、それほど大型という訳でもないんだけど、200cm越す外人選手が、翻弄されてしまうんですよ」
と前山コーチが言ってる。
 
「じゃ君採用」
「ありがとうございます!」
「でもシーズン途中だから、正式採用は4月でいい?」
「はい。それは構いません」
「それまで無給でもいい?」
「チームに入れて頂けるのでしたら、給料無しでもいいです」
「君コーチ資格は持ってる?」
「B級コーチライセンスがあります」
 
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「それは凄い!じゃ取り敢えず君、コーチ資格で登録して登録証を発行させるから」
「分かりました。よろしくお願いします」
 
それで貴司は取り敢えず給料ゼロでメトロ・エクシードに入ることができたのである。
 
前山からは“彼女”のことを訊かれた。
 
「もう村山さんとは結婚したよね?子供とかできた?」
「実は1度別れた後、また元鞘で婚約して近い内に結婚する予定です」
「元鞘か!」
「子供は2人かな」
「しっかり子供を作っている所は偉い。でも奥さんはまだ現役の日本代表だしね」
「いや、僕は彼女に勝てないんです」
「まあそのくらいでないとWNBAとかLFBの選手とタメ張れないかもね」
と前山は言っていた。
 

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美映と地下コートで汗を流した日倉孝史だが
 
「ちょっと休憩しましょうよ」
と言われてドキッとする。
 
エレベータで1階に戻る。
 
「先にシャワー浴びていい?」
と彼女が言うので
「うん。お先に」
と言ってドキドキしている。“する”のはもう3年ぶりくらいだ。ちゃんとできるかなと少し不安になる。
 
やがて彼女がバスタオルを身体に巻いただけの状態で出てくる。
 
誘うような視線で孝史を見てから、廊下の向かい側の部屋に入る。
「バスルームどうぞ」
「うん」
 
それでバスルームに行って、汗をシャワーで流したが、着替えがないことに気付く。まあいいや、何とかなるだろう。
 

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それで多数置いてあるバスタオルで身体を拭いてから、結局裸のまま、彼女が入っていった部屋に入る。
 
美映は布団を敷いて寝ている。
 
「君、初めてとかじゃないよね?」
と念のため訊いておく。
 
「セックスはしたことないよ」
「そうなの?」
「でも私、子供も産んでるから気にしないで」
「面白いこと言う人だ。じゃ君はバージンマザーなの?」
「そうかも」
 
それで彼女の布団に潜り込み、念のため再度
「いいよね?」
というと彼女は頷き、避妊具を渡してくれた。
 
持ってたのか。
 
ちょっとホッとし、装着した。
 
彼女にキスし、愛撫して盛り上がってきた所で突入した。
 
久しぶりだったので、少し時間がかかったものの逝くことができた。
 
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「気持ち良かった」
「私も気持ち良かった」
 
結構気分が良かったので、後撫する。アレはいったん外した方がいいなと思ったのでティッシュが枕元にあるのを取るとそれに包んで捨てようとした。その時気付いた。
 
血が付いてる!?
 
「君本当に初めてだったということは?」
「私、前の夫とセックスしないまま遊んでたら妊娠しちゃったのよ。お医者さんが言うには、射精する前でも漏れ出してる尿道球腺液内に精子が含まれていることがあるから、それが膣前庭から膣内に侵入して子宮を通って卵管まで到達して妊娠に至ったのではないかと。たまにあることらしいのよ」
 
「確かにそれは聞いたことある」
 
「そういう訳で私は妊娠出産したのに処女だったのよね。ついさっきまで」
 
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そんなことを言われると、孝史は急にこの女に対する責任を感じてしまった。
 
「でもその後、彼とセックスは?」
「彼はそもそもインポだから、セックス不能だったのよ」
「へー」
「だから孝史さんが私の初めての人」
などと言われてドキッとする。
 
「心配しないで。それで結婚してなんて言わないから」
と彼女は笑顔で言っている。
 
それで孝史も余裕が出た。
 
「でもそういうことなら、君は今まで本当に処女だったのかもね」
「女は三途の川を渡る時は、最初の男に背負ってもらうんだって。それだけお願いすればいいかな」
 
「それ女が先に死んだ場合はどうするの?」
「男はその作業の時だけ地獄に一時移籍かな」
「あはは。だったら背負ってあげてもいいよ」
「じゃ、よろしくー」
 
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美映は、孝史が着替えを持っていないことを言うと
「あ、ごめん。買ってきてあげるね。サイズはL?LL?」
「3Lかも」
「分かった。じゃ、私が戻ってくるまで裸じゃ風邪引くから。私の服でも着ててよ」
「君の服って・・・」
「ジャージとか」
「安心した。スカート穿いてとか言われたらどうしようかと」
「何だ。スカート穿きたいなら穿きたいと言えばいいのに」
「いやだから穿きたくないって」
「ここはやはり穿いてもらおう」
「え〜〜〜!?」
 
それで美映は孝史に、伸縮性のあるジャージの上着と、ゴムウェストのスカートを着せてしまったのである。
 
「スカートなんて穿いたら変な気分だ」
「女装に目覚めたりしてね」
 
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などと言って美映は車で出かけ、孝史の着替えの服や下着を買ってきてくれた。
 
でもこういう用事を恥ずかしがったりせずにやってくれるのは、“大人の女”のいい所だなと孝史は思った。10代の娘とかだと、そのあたりが面倒くさそうでもある。結婚願望も強いし。この女は難しいこと考えずに気軽に付き合えそう・・・と思ってから、俺、この女と付き合うことになるのかな、などと考えた。
 
まあいいかな、それでも。
 
相性は良さそうだし。
 

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結局孝史はこの家に(翌日は試合の次の日なので休み)翌々日の朝まで丸一日半滞在して、その間に彼女と合計5時間くらいバスケの手合わせをし、セックスも10回くらいやって最後は立たなくなった。
 
「あ〜ん、このちんちん硬くならない」
「ごめーん。さすがに限界」
「“役に勃たない”ちんちんは食べちゃうぞ」
 
などと言われて“食べられ”たら、それも凄く気持ち良かった。“食べられ”るのがこんなに気持ちいいとは知らなかった。以前の彼女はこんなことしてくれなかったのである。
 
孝史は自分がこの女に完全にハマってしまったのを感じた。
 

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