広告:放浪息子(4)-BEAM-COMIX-志村貴子
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■春白(24)

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ところで、昨年まではクリスマスやバレンタインのプレゼント仕分けは大田区のサテライトの大部屋などを使用していたのだが、そこであけぼのテレビを始めてしまったので、部屋が塞がっている。
 
そこで、ケイとコスモスは話し合い、郊外でもいいので広い部屋が取れる物件が無いか探してみた。ところがその話を耳にした若葉が言った。
 
「土地はいっぱい余っているから、郷愁村使ってよ」
「郷愁マンションとかを2フロアくらい借りられる?」
「ビル“1個”建てちゃえばいいよ」
「はあ」
 
それで郷愁村にビルを“1個”建てちゃったのである。面積を広く取りたいので50m×50mで5フロアの仕様とした。建築は播磨工務店に頼んだが、わずか1ヶ月で建ててくれた。
 
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「あのぉ、建築費は?」
と(播磨工務店のオーナーである)千里に訊くと
 
「ああ。1億円でいいよ」
なとと言う。
 
「ほんとにそんな安くていいの〜〜?」
 
ということで、土地代タダ(若葉が借賃不要と言った)、建築費わずか1億円(恐らく建材費のみ)で、プレゼント仕分け場ができてしまったのである。実際にはこれにベルトコンベヤ等の施設を組み込むのに1億円掛かっている。
 

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1階は駐車場で、仕分け作業をする人を運んで来る車、福祉施設などに寄付する分、また残念ながら廃棄しなければならない分を輸送するトラックなどが駐められる。受け取ったプレゼントは取り敢えず3階に運び、仕分けされたものが2階に降ろされる。実際には2階と3階は、フロアがぶち抜かれていてベルトコンベヤで物が運ばれる箇所が多数ある。4階は予備で5階が仮眠や事務のためのスペース、お礼状の発送システムも設置されている。
 
時節柄、どこの部屋も換気をたっぷり利かせる造りだし、仕分けの作業場所は多数の小部屋にパーティションで分割されている。太陽光パネルを多数屋根に並べており、ここで使用する電気は全てこのパネルでまかなえる。
 
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この仕分け場が熊谷市の郷愁村に出来たのが11月(建物自体は“平安村”のオープンセット完成後建築が始まり10月に完成。その後検査や仕分け用の機械を設置するのに1ヶ月)だったのである。
 
そして12月のクリスマスのプレゼント仕分け作業で威力を発揮した。
 
密を発生させないため費用度外視で省力化を図っている。
 

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包装を解いて箱の表面をアルコール消毒するまでは自動で行われる。差出人の住所名前は自動的に読み取り、データベースに登録される。
 
伝票が個人発送になっているものは問答無用で廃棄である。これはそもそもルール違反なのである。個人発送のものは受け付けないと何年も前から掲示している。また発送者をブラックリストと照合して過去に危険なものを送ってきている人のものは全て廃棄する。
 
ここ数年の研究から、表面に光を反射させてその散乱状態から微細な穴を発見するシステムが開発されており、これは注射針を通した跡とみなされるので廃棄する。剃刀や針などの入っているもの、髪の毛の入っているものなどは日常茶飯事なので、X線透過映像で発見するとどんどん自動で廃棄に回される。この手のものが混入していた発送元は管理の甘い店と考えられるので、ブラックリストに登録される。
 
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これらのシステムを自動で動かすことで、普段の年の半分の人数で処理することができた。
 
換気をしていて寒いので、スタッフは全員しっかり防寒服を着てもらってウォーム手袋もしている。システムのチェックに通ったものを、この道3年以上のベテランのスタッフによる目視で更にチェックして安全性の確認が取れたものだけを福祉施設などへのプレゼントに回す。プレゼント先には「万一少しでもおかしい気がしたら通報してくれ」と言っている。それを承知してくれた所だけがプレゼント対象である。
 
お洋服の中で、高級ブランド品は、プレゼント先で誰がもらうかという揉め事のタネになりやすいので、プレゼントには回さず、§§ミュージック、§§プロ、♪♪ハウスなどのタレント、研修生、(管理しやすい東京・大阪在住の)練習生の子などで分けたり、衣装として使用したりする。
 
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今年はオートメーション化により、かえって従来より高速に処理できたので、賞味期限切れがあまり発生せず、福祉施設に多数の洋菓子を届けることができた。
 
今回はかなりの洋菓子・お洋服などを“千里が借りて来た”(どこから?)エアバスA318で郷愁飛行場から小浜のミューズ飛行場、九州の佐賀空港に運び、関西・九州の福祉施設にも届けることができた(コロナのせいで機体が余っているんだと千里は言っていた)。A318の操縦資格はA320ファミリー共通で、これを飛ばしてくれたパイロットはANKでA320-200を運行していた人らしい。
 
A318は離陸距離が1780mなので滑走路2200mの郷愁飛行場・ミューズ飛行場で離着陸ができる。この飛行機は、小さい飛行場でも離着陸できることから“BabyBus”と呼ばれる。ちなみにどちらの飛行場も計器離着陸(ILS) OKである。佐賀空港も2000mあり、ILS可である。
 
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ちなみにG450は全長27m×翼幅24mに対してA318は全長31m×翼幅34mだから一回り大きいくらいの感じなのに(実際A318 Eliteといって座席をわずか18席にしたプライベートジェット仕様の機体もある)、G450のペイロード0.9tに対してA318は15tと輸送能力がハンパじゃない(燃料も食うが)。
 

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もっともファンクラブの人たちには“菓子”そのものではなく“クーポン”の類いで送って欲しいとしつこく広報している。今年は、頂いたクーポンを菓子メーカー・衣料品メーカーなどに持ち込み、大阪周辺・福岡佐賀周辺以外の全国の多くの福祉施設にもケーキやお洋服などを宅配便で届けることができた。
 
実はクーポンで頂いたものが全体の6割を占めている。頂いたクリスマス・プレゼントはクーポンと実物と合わせると約40万個で、これが全て実物ならトラック100台分相当である。今年はこの中で廃棄したのは約5%であった。
 
プレゼントの宛名はアクア宛が圧倒的に多く、ラピスラズリ、白鳥リズムがそれに続いていた。信濃町ガールズ・ミューズの子にも多少来ており、数の少ない子の場合は本人に全部渡している。まだほとんど名前が知られていない筈の、山鹿クロム・三陸セレン・甲斐絵代子・常滑舞音などにも10個以上来ていて本人たちが驚いていた。この子たちには直筆のお礼状を書かせた。
 
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しかしまあ、クリスマスとかバレンタインというのは、事務所に多大な費用と手間を課すイベントである!今年のクリスマス対応は、整理場の建設に掛かった2億を除いても更に1億円ほど掛かっている(内3000万円ほどがお礼状の発送費用)。この手のプレゼントは全て廃棄するという対応を取っている事務所が多いのも無理はないとケイもコスモスも思う。
 

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「あのぉ、これ何ですか?」
と目の前に積み上げられた20個くらいの箱を前にして羽鳥セシル(浜梨恵真)は雨宮先生に言った。
 
「君宛にファンの子から送られてきたクリスマス・プレゼント」
 
「だってまだデビューしてないのに」
「正式にはデビューしてないけど、明治ミトラチョコのCMは既にフライングで19日から流れているから。それを見てファンになった人たちがいたみたいね」
「名前も表示されてないのに!」
「いや、メーカーのサイトにはちゃんと「出演:羽鳥セシル」と表示されている」
 
「じゃメーカーさんに送られて来たんですか?」
「♪♪ハウス宛に来た」
「なぜ事務所が分かるんです?」
「きっとメーカーの広報担当とかに聞いたんじゃない?」
「熱心ですね!」
「この22人にはお礼状書いて」
「はい!」
 
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それでその日セシルは3時間近くかけて22人にお礼状の葉書を書いた。これはセシルのスナップショットが印刷されていて、下の方に4-5行以内のメッセージが書けるようになっているものである。そこに簡単な文章を書きサインをしたが、22枚に書くのはなかなか大変だった。
 
「まあ直筆のお礼状は今回が最後だろうな。正式デビューした後は、直筆は不可能になる」
「アクアちゃんとか直筆するにはアクアちゃんが1万人必要ですよ」
 
「1万人は居ないにしても10人くらいは居たりしてね」
「凄い忙しさですもんね」
 
「でもアクアを引き合いに出すのは筋がいいと思うよ」
と雨宮先生は言った。
 
「そうですか?」
 

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クリスマスイブも夜遅くまで仕事をして0時過ぎてからの帰宅になったアクアは葉月を誘って、一緒に代々木のマンションに入った。
 
それでアクア、葉月、アクアの友人3人の5人でシャンメリーで乾杯するが、アクアがポン!と音を立てて開栓してから“注がずに”空のグラスで乾杯する。その後で彩佳たちが分けていてくれたお料理を入れた紙のボックスを配り「お疲れ様でしたー」と言って別れた。
 
それでアクアと葉月は18階の部屋に移動する。下の部屋で乾杯に参加したのはアクアMと葉月Mだが、上の部屋ではアクアFと葉月Fが待っていたので、4人でダイニングのテーブルを囲んであらためて
「メリークリスマス」
と言って、一緒にクリスマスのごちそうを食べた。
 
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コスモスは契約タレント全員に『家族以外で5人以上の会食禁止』という通達を出しているのでそれに従ったものである。彩佳たち3人とアクア・葉月で5人になってしまうので、乾杯だけで別れた。開栓したシャンメリーは彩佳たちの所に置いてきたので彼女たちだけで飲むだろう。
 
「西湖ちゃんはワルツちゃんと一緒にクリスマス過ごしたかったかも知れないけど」
「どっちみち卒業するまではセックス禁止と和紗さん社長から言われているみたいです」
「西湖ちゃん、オナニー頑張って練習しなよ。やってたらきっと立つよ」
と言っているのは龍虎Fである。
 
「だいぶ頑張ったんですけど、全くダメなんですよねー」
「触ると気持ちいい?」
「触っても別に何にも感じないです。イボでも触っている感覚なんですよね」
「重症だなあ」
「和紗さんは立たなくてもいいから気持ち良くしてあげる、とか言ってましたけど」
「まあ、おきばりやす」
 
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今夜は眠くなったら適当に寝るというルールである。明日の午前中は空けてもらっているので、少し遅くまで寝ていられる。その後は正月3日くらいまで全く休みなしになる。
 
なお、今日はFの部屋で龍虎Fと聖子F、Mの部屋で龍虎Mと西湖Mが寝て“夜這い禁止!”ということにしている。どちらもキングサイズのダブルベッド(200cm×200cm)なので、2人ゆうゆうと寝ることができる。
 
お料理は「沢山食べるから」と言って龍虎のボックスにも西湖のボックスにも2人前の料理を入れてもらっていたので充分ある。むしろ全部食べる前に眠くなってくる。最初に1時頃西湖Mが離脱。その後、龍虎Mも離脱したが、残った龍虎Fと聖子Fは“女の子のナイショの話”で盛り上がり、下着姿になって、龍虎Fが聖子Fに“指導”していたら、トイレに起きてきた龍虎Mが見て「お前ら何やってんの?」と呆れていた。
 
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「俺が許すから、2人でセックスしたかったらNの部屋のベッドを使ってもいいぞ」
「Mも一緒にやらない?」
「パス」
と言って、Mはトイレに行くとすぐ眠ってしまった。
 
 
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