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■春白(17)

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(C) Eriko Kawaguchi 2021-02-13
 
『少年探偵団』の撮影が開始される。
 
お金持ちの邸宅のような感じの和室のセットで、羽織袴姿の洋介(東堂千一夜)と小紋の和服を着ている孫娘の聖知(羽鳥セシル)が座っている所に、中年のお手伝いさん(湯沢駒子)に案内されて、明智文代(山村星歌)・小林少年(アクア)が入ってくる。
 
「明智が海外出張中なもので」
と謝った上で、二十面相の予告状などを見せてもらう。
 
「それはどんなフルートなのですか」
と訊かれるので、
「これです」
と言って、その部屋の本棚の中に入っている黒いフルートケースを指さす。
 
「そんな所に無造作に入っているんですか!」
と文代が驚く。
 

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聖知は数字回転式の鍵を開け、本棚からフルートケースを取り出す。中を開ける。文代と小林が
「美しいフルートですね!」
と声を挙げる。
 
洋介氏が説明する。
「これはロマノフ王朝のアナスタシア王女と思われる人物から私の父が譲られたもので、専門家に見てもらった所、管体はプラチナ、キイはレッドコールド、填め込まれている宝石は、カシミール産のブルーサファイア、赤い宝石は、ミャンマー産のルビーだということです」
 
(実際には撮影に使用しているものは合成ルビー・合成サファイア!)
 
「かなりのカラット数ですよね」
「多分美術品としての価値は3000万円くらいだろうということです。しかし本当にロマノフ王朝由来のものであれば3億円はするだろうという鑑定家のお話でした」
 
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聖知はその高価なフルートを無造作に持つと、“バッハのメヌエット”を演奏した。
 
ソー・ドレミファ・ソ↓ドッドッ、ラー・ファソラシ・ド↓ドッドッ
 
その美しい演奏に思わず拍手が起きる。聖知がお辞儀をする。
 

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警察にも相談しているが、警察はまだ起きてない事件にはあまり人数をさけないということで、警備会社のガードマンに多数警戒してもらっている。また文代の助言により、本棚の棚の鍵は、指紋認証式で、洋介氏と聖知しか開けられない鍵に交換された。
 
しかし二十面相の予告が続く。7月8日に「10」と書かれた葉書が届く。9日には洋介氏のツイッターのアカウントに「9」というコメントが付けられる。警察を通してツイッター社に照会してもらったが、書き込んだ人の素性などは分からないということだった。アゼルバイジャンのIPアドレスから書き込まれているが、恐らくは“踏み台”を使ったもので、海外のアドレスだと、その先の追跡はかなり困難だろうということだった。当該ツイッター・アカウントは使用停止になった。
 
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7月10日は宅急便が届き開けると「8」と書かれた紙が1枚入っていた。警察に調べてもらったが、愛知県内のコンビニから発送されたものと分かっただけで発送者は不明である。7月11日は、電話が掛かってきて、最近雇い入れたメイド紗耶(甲斐絵代子)が電話を取ると「7」とだけ言って切れた。
 
7月12日(日)は、聖知が入っている室内楽の演奏会があり、聖知はこのフルートを持って出掛けるが、屈強なガードマン2人が付き添った。
 
オーケストラ(△△△大学のオーケストラ)をバックに聖知がモーツァルトのフルート協奏曲第2番(D-Major)を演奏するシーンが映る。これは実際には翌週撮影したものである。全曲吹くと20分掛かるが、実際の収録では第1楽章のみで勘弁してもらった。でもオーケストラと演奏するのは凄い快感だった!水色のコンサート用ドレスを着たが、胸の形がきれいに出るドレスが恥ずかしかった。ボク本当はバストなんか無いのに、などと思っている。
 
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(恵真は自分のバストが“本物”になっていることに、未だに気付いていない)
 
12/06の撮影では、オーケストラシーンを飛ばして、聖知が無事に演奏を終えて楽屋に戻って来た所から撮影する。聖知がホッとするかのように椅子に座り、何気なく今日のプログラムを開く。すると、そのプログラムに「6」という数字がマジックで書かれており、聖知は悲鳴をあげる。
 

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悲鳴を聞いて飛び込んで来た少女がいる。
 
「どうしたの?」
と聖知に声を掛ける。
 
「これが」
とプログラムを指さす。
 
「それ何なの?」
と訊いたのは、歌手の北里ナナ(アクア)であった。
 
(なんでここに北里ナナがいるんですか?とアクアが質問したが、監督は『だってナナちゃん出さないと視聴者がうるさいし』と答えた)
 

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13日は玄関に「5」という数字がチョークで書かれていて、メイドの紗耶が見て恐怖におののく。
 
洋介の弟・洋造(木下春治)が
「イミテーションで二十面相を欺そう」
と言い出した。
 
「でもそんなの作るには時間が掛かるのでは?」
と洋介。
 
「そんな高価なフルートを無造作に本棚に置いておくなんて不用心だから盗難防止用の模造品を作っておこうよと前から言ってたじゃん。それができたんだよ」
と言って、持参の青いフルートケースを開ける。
 
「結構似てるね」
 
「重さでバレないようにタングステンで作らせている。それにプラチナメッキしたもの。表面はプラチナだから光沢とかは全く同じ。キイも本物と同じピンクゴールド。タングステンは比重が重い(*11)から、まずバレ無い。宝石も合成ルビーと合成サファイヤだよ」
 
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(*11)プラチナの比重は21.45 タングステンは19.25 でかなり近い。管体の板の厚さを厚くすれば、容易に同じ重さのものが作れるだろう。ちなみに鉄の比重は7.87であり、プラチナ族の重さが凄いのが分かる。金(きん)は19.32 でタングステンとほぼ同じである。ちなみに単価は、プラチナなら4000円/g タングステンは2円/g程度。
 
なおタングステンのフルートというものは実在する。
 
ただし撮影に使用したのは、洋銀のプラチナメッキというシロモノである。
 
洋銀にしたのは、タングステンはとても硬いので加工が大変なため。制作費の節約である。むろん本物に比べてとても軽いので、出演者はまるで重いかのように演技する。このイミテーションに填めてある宝石は実際にはクリスタルガラスの表面に合成ルビー・合成サファイアの薄板を貼り付けた“ダブレット”である。それでもこの“イミテーション”だって制作費は30万円かかっている。本当にこのドラマは予算が潤沢である。(もしタングステンで作ったら多分倍していた)
 
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そこで、洋介が指紋認証で本棚を開け、そこに入っている“ロマノフの小枝”の黒いケースを取り出す。中に入っているフルートを取りだし、洋造が用意した偽物を黒いケースに入れて本棚に戻す。本物は洋造が偽物を入れて来た青いフルートケースに入れ、居間の金庫の中に収めた。
 
この金庫は部屋にボルトで固定されているし重さが200kgもあり、人間がまるごと持ち出すことは不可能である。ダイヤル錠は、右に4回、左に3回、右に2回、左に1回と回さないと開けられない。4つの数字を知らないと開けられないし、解錠に時間がかかるので、解錠している間に他人に見られる可能性がある。数字を1つでも間違うと警報が鳴る。金庫を留めているボルトを外そうとしても警報が鳴る。つまり防犯性が極めて高い金庫である。
 
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「ついでに解錠する番号も用心のために変更しよう」
と言って洋介氏は操作している。
 
「20 5 2 25 にした。2005年2月25日という聖知の誕生日だ。これなら忘れることもないし」
 
「これで万一の場合も、盗賊は偽物を盗んでいくよ」
「だったら安心だね」
 

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洋介と洋造がフルートの入れ替えをしていた時、それを密かに盗み見している者がいた。
 
数日前に雇い入れたメイド・紗耶(甲斐絵代子)であった。
 

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二十面相の予告は続く。
 
7月14日には、玄関の所にある“おじいさんの時計”が4時で止まっていた。またもや紗耶が見て悲鳴をあげる。15日には、フルートを置いている居間の入口の所にフルートのクリーニング用の棒が3本テープで貼り付けてあった。16日にはとうとう居間の中に入り、居間の暖炉の上に見慣れないビスクドールが2体載っていた。そして17日・予告前日にはフルートを入れている本棚の扉に黒いテープが縦に貼られていた。むろん「1」という意味だろう。
 
そして7月18日(土).
 
“ロマノフの小枝”をしまった本棚の前で洋介と洋造が卓の前に座り、囲碁を打ちながら番をしている。“ロマノフの小枝”は本棚の中に収まったままである。
 
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そこに突然明智小五郎(本騨真樹)が訪問する。
 
「明智先生!」
「先ほど、帰国しまして。すぐこちらに飛んできました」
 

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「そうですか。でも明智先生が来て下さったら安心です。ご覧の通り、“ロマノフの小枝”は無事ですよ」
と洋介氏は本棚の中の黒いフルートケースを指さす。
 
「本当に無事でしょうか?」
「え!?」
 
「だって、私たちがこうしてここて゜見張っているのですから、賊も盗み出しようがないですよ」
 
「本当にロマリフの小枝を見ていましたか?」
 
洋介と洋造が顔を見合わせる。
 
「実を言うと、最後の砦として、賊がこれを盗んでいっても大丈夫なように、誰にも言っていないですが、本物は別の所に移して、この本棚には精巧なイミテーションを入れていたんです」
 
「だったら、その移動した場所を確認すべきだと思いますね」
 
「まさか」
 
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それで洋介氏は部屋の金庫を開けた。解錠するのに30秒ほど掛かる。その中に青いフルートケースがある。
 
「ほら無事ですよ」
 
「中まで見ましょう」
と明智。
 
それで洋介氏がフルートケースを取り出す。開ける。
 
「あっ!」
と声を挙げる。中はフルートではなく、重さでバレないようにするためか、金属の棒が入っていた。
 

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「どうしましょう?明智先生、ロマノフの小枝は盗まれてしまいましたよ」
 
「どうもそのようですね」
と明智は笑っている。
 
「先生、どうしてそんなに落ちついておられるんです?ロマノフの小枝を取り返して下さいよ。そして二十面相を捕まえて下さいよ」
と洋介氏が訴える。
 
「僕はロマノフの小枝を確保していますし、賊も確保していますよ」
と明智は言った。
 
「え?本当ですか?じゃロマノフの小枝はどこにあるんです?」
「そこの本棚に入っているではありませんか」
と明智。
 
「いや、だからさっき説明したようにここに入っているのは偽物なんですよ」
「本当に偽物でしょうかね。出して確認しませんか」
 
洋介氏は聖知を呼んだ。花柄の小紋を着た聖知が来る。自分の指紋認証で本棚を開け、黒いフルートケースを取り出す。開ける。中にはフルートが入っている。
 
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フルートを手に取る。
 
吹いてみる!
 
「これは本物」
と聖知は言った。
 

「そんな馬鹿な!」
 
「こちらにうちの事務所の口利きで半月ほど前に雇い入れたメイドさんがいましたね。彼女を呼んでもらえますか?」
と明智は言う。
 
「いや、あの子はよく気が利くし働き者だし、いい子を紹介してもらったと思っていたのですが、あの子が何か?」
と言いつつ、洋介氏は紗耶を呼んだ。
 
メイド服を着てホワイトブリムも付けた紗耶(甲斐絵代子)がやってくる。
 
明智は説明した。
 
「実はあなたたちが偽物を用意して本物と入れ替えたことを知りまして、僕が指示してこの子に再度密かに入れ替えさせたんですよ。だから、その時点で本物が本棚、偽物が金庫に収まったんです。そうとも知らずに二十面相はまんまと金庫の中に入っている偽物の方を盗んでいったんです」
 
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「でも金庫も本棚も普通開けられないと思うのに」
 
「金庫の番号は細野さんが開けておられる所を盗み見して知りました。本棚については、申し訳ありません、実はこの鍵の指紋認証は文代がこの鍵を持参した時に、私の指紋も登録してあったんです」
と紗耶は説明した。
 
「凄い!でも女の子の君に、よくそんな大胆な作業ができたね」
 
「この子は女の子ではありません。小林君、変装を解きたまえ」
 
と明智が言うと、紗耶は恥ずかしそうに
「はい」
と答え、“変装用のフェイスマスク”を外す。
 
するとそこに居たのは小林少年(アクア)である。
 

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