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■春白(26)
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あけぼのテレビでは12月24日クリスマス・イブには、イプ・スペシャルのライブ番組を放送したのだが、12月25日には、バラエティ番組を放送した。出演者はこういうメンツである。
司会者:花咲ロンド・石川ポルカ・原町カペラ
ナレーター:悠木恵美(信濃町ミューズ)
出演者:桜木ワルツ、桜野レイア、七尾ロマン、恋珠ルビー
リセエンヌ・ドオ(佐藤ゆか・南田容子・高島瑞絵・山口暢香)
信濃町ミューズ選抜(木下宏紀・三田雪代・太田芳絵・篠原倉光)
信濃町ガールズ新人組(山鹿クロム、三陸セレン、豊科リエナ、箱崎マイコ、甲斐波津子・甲斐絵代子、常滑舞音、水谷雪花)
最初に“信濃町バンド”(*12)が演奏する『信濃町行進曲』の演奏に乗せて、出演者が第10スタジオに作られた特設セットの中央階段から手を振りながら降りてくる。出演者名はテロップでも流すし、ナレーターの悠木恵美(信濃町ミューズ)が名前を読み上げていった。
ここで山鹿クロムと三陸セレンが逆にテロップが入ってしまい
「済みません。山鹿クロムと紹介されましたが、ボクは三陸セレンです」
「済みません。三陸セレンと紹介されましたが、ボクは山鹿クロムです」
と本人たちが訂正した。
「男の子その2人だけだったので間違いました」
とテロップ係の斎藤恵梨香が言ったのだが
「あのぉ僕も男なんですけど」
と篠原倉光。
「あ、ごめーん。男の子3人でしたね」
と斎藤恵梨香が言う。すると
「ボクも男の子なんだけど」
と木下宏紀が言ったのだが、斎藤恵梨香は
「いや、それは怪しい」
と言った。
「だいたい宏紀ちゃん、スカート穿いてるじゃん」
「これショートパンツだよ」
と木下宏紀は言うが、裾がふわっと広がっており、全然ショートパンツに見えない。
「それ欺されたんだよ。僕もその衣装ショートパンツだといって渡されたけど、ショートパンツに見えないから、(桜野)レイアさんに言ったら『それはキュロットじゃん』と言われて、本物のショートパンツの衣装もらったから」
と篠原君は言っている。
「え〜?じゃこれキュロットなの?」
「見れば分かると思いまーす」
と山鹿クロム・三陸セレンが言っている。2人はちゃんとショートパンツを穿いている。
「ちょっと着替えて、ちゃんとパンツ穿いてくる」
と言って、木下君が引っ込むが、
「絶対キュロットと分かって穿いてるよね」
「“ちゃんとスカート穿いて”出て来たりして」
と多くの視聴者の意見であった。
以上のやりとりのどこまでがシナリオだったのかは定かではない。
なおこの4人以外は全員スカートを穿いていた。
(*12)信濃町バンド(SSB)は、§§ミュージックの多くの歌手の音源制作に関わっているスタジオミュージシャンを集めて編成したポップスバンド。人数およびメンバーは変動要素が多いが、この日は以下のような30人構成であった。
リズムセクション Gt2/B/Dr/Perc/Pf/KB2
ウィンドセクション Fl/Cla/ASax,TSax/Tp4/Tb2
ストリングセクション Vn4+4/Vla2/VC2
事実上のグランドオーケストラである。実は自然発生的にこのバンドの原形ができていたものだが“信濃町バンド”の命名者は桜野レイアである。この成立には以前ローズクォーツ・グランドオーケストラを編成したケイ、およびそのオーケストラの実質的後身である渡部賢一グランドオーケストラ(WGO)も関わっている。実はWGOとの兼任メンバーもいる(手が足りないから手伝って、などと言われて結局メンバーになってしまった)。
多くのメンバーがここ数年スタジオミュージシャンをしていたのだが、コロナの影響で生楽器を使用した制作は激減しており、仕事が減っていた人たちをうまく吸収した形になった。但しかなり厳しい健康管理をしている(家族も含めて毎朝の検温はもちろん外食禁止・電車やバスの使用禁止・土日や夕方の買物禁止など:高校生の子供などは家族で送迎する−ガソリン代は出る)。
§§ミュージックの歌手の伴奏や、あけぼのテレビの劇伴の仕事が大半であるが、§§ミュージックの歌手が20組ほどいるので、ほぼ毎日仕事がある。空いている日も劇伴用の演奏収録をしている。生劇伴する場合もある。若い頃に生劇伴をしていた渡部賢一さんが様子を見に来て「50年前に戻ったみたいだ」などと感激していた。
多くのメンバー(全員ではない)が§§ミュージックとB契約に準じた契約をしており、原則として月火が休みである。勤務時間は学生歌手の伴奏が多いことから、原則として 13:00-16:00, 17:00-21:00 に設定されている。通常のB契約との違いは専属条項が無いことであるが、(契約までしている人は)忙しいので他の仕事との兼任は困難。
SSBのプリンシパル・コンダクターはWGOの元メンバーである清水春浩さん(Vn 55歳)である。彼はWGOの最年長メンバーだったが、数年前に退団し勤めていた会社も辞め、群馬県で農業(主力はコンニャク)を営んでいた。今回の話を聞いて、そちらは放置!して、東京に出て来てくれた。彼をスカウトしたのはケイである。農作業のほうは、農協の仲介で、資金は無いが農業を志望する30代の夫婦に頼んだ:畑は彼が無償で貸す形。
彼が居るのでWGOとSSBの兼任もうまく行く。
“信濃町バンド”の命名者・桜野レイアも川崎ゆりこにより“エグゼクティブ・コンダクター”の肩書きを与えられた(偉いのか偉くないのか分からん肩書きだと本人は言っていた)。
レイアは様々な楽器ができる人で、ローズ+リリーの『愛のデュエット』(2018.12.31)では、ピアノ・リコーダー・フルート・ウィンドシンセ・アルトサックス・ヴァイオリン・チェロ・ギター・ドラムスと9つの楽器をひとりで演奏してみせた。この信濃町バンドでも、構成している全ての楽器に通じているので、実際彼女がいてくれることで、きちんとしたサウンドになっているのである。彼女の指示に清水さんも感心していた。
ナレーターの悠木恵美が言う。
「現在、視聴者から“水谷康恵”ちゃんは、新人ではないのでは?という問合せが多数寄せられています。水谷ちゃん、ちょっとおいで」
と言って、悠木恵美は“水谷ちゃん”をナレーター席の傍に呼ぶ。
「この子はよく似ていますが、水谷康恵ではなく、妹の水谷雪花ちゃんです」
「水谷雪花と申します、姉ともどもよろしくお願いします」
と本人。
「雪花ちゃんは、この秋に、お姉さんを訪ねてきたところを、花ちゃんがスカウトして、信濃町ガールズに入りました。ですから今年の新人です」
と悠木恵美は説明した。美鶴(甲斐絵代子)と同じパターンである。
「ついでに言うと、甲斐絵代子ちゃんも、お姉さんの甲斐波津子ちゃんを尋ねてきた所を川崎ゆりこ副社長がスカウトして信濃町ガールズに入りました」
と恵美は説明した。
「お姉さんのところを尋ねて行くのはいいことだね」
と桜野レイアが言っている。彼女も桜野みちるの妹である。もっとも彼女の場合は、デビュー直前まで、みちるの妹であることをむしろ隠していた。歌手・タレント志向のみちると、ミュージシャン志向のレイアでは傾向も性格も全く違うので、あまり姉妹と思われたくなかったのもあるだろう。
「だいたいコスモス社長だって、お姉さんの秋風メロディーさんを訪ねてきたところをスカウトされた人だし」
「やはり妹はお姉さんのところを訪ねよう」
「妹だったらいいですが、弟だったらどうしましょう?」
「それは性転換して妹にしちゃえば問題ないです」
「ああ、それはいいですね」
「ちょっと手術受けるだけだよね」
などと簡単に言っている。
「高崎ひろかさんの弟君が凄い美形という噂があるんですが」
「弟なんですか?妹じゃなくて」
「ちょっと手術を受けて妹にならない?と言ったんですが嫌だと言ったそうです」
「それはもったいない」
「女の子になったらスカート穿いて通学できるのにと言ったら別にスカートとか穿きたくないと」
「それはいけません。美少年にはスカートを穿かせましょう」
と悠木恵美と桜野レイアは無茶なことを言っている。
なおひろかの弟は、松梨詩恩の方とよく似ているし背丈も近いので、実は過去に何度か女装させられて詩恩のボディダブルをさせられたことがある。ロングヘアのウィッグとかつけると、本当に詩恩そっくりなのである。但し残念なことに!?既に声変わりは終わっている。
このようなやりとりもあってから、やっと司会者の3人(花咲ロンド・石川ポルカ・原町カペラ)が中央前面に出てくる。
「こんばんは。これから2時間ほど、私たち3人“売れてないシスターズ”の司会でお楽しみ下さい」
と最年長でもあり一番先輩でもある花咲ロンドがいうと
「その名前、ひどーい」
と石川ポルカ・原町カペラから抗議がある。
「では説明しよう」
と花咲ロンドは言う。
「うちで社長・副社長を除いて一番古株なのは誰でしょう?」
「花ちゃんでは?」
「“居る”というのでは一番長いけどデビューしてない」
「いや、2014年9月に花ちゃんは竹本和恵の名前でブルボンのチョコレートのCMに出演して、CMソングも歌っている。CDも実は3万枚売れている。これ持っている人はお宝だよ。品川ありささんがデビューした2014年11月より早い」
と石川ボルカ。
「そんな誰も知らないような話、どっから聞いたの?」
「出戻りしてきた愛心さんが言ってた」
「確かに愛心さんは古い話たくさん知ってそうだなあ」
「アクアの色々やばい話もたくさん知っているようだ」
「まあ花ちゃんは置いといて、それ以外でいちばん古いのは?」
「品川ありささん、続いて高崎ひろかさん」
「そのふたりが2014年なんだよね。この2人は売れてる」
「うんうん」
「その次、2015年にデビューしたのというと?」
「それはアクアだね」
「ありささん、ひろかさん、と言うのに、アクアはなぜかアクアだな」
「ついでに苗字が無い」
「苗字が無いのはうちの事務所では2007年にデビューしたスーザンさん以来」
「まあそれでアクアは無茶苦茶売れてる」
「うん」
「2016年組が西宮ネオン君、姫路スピカちゃん、そして私だ」
と花咲ロンド。
「ネオン君もスピカちゃんも売れてるけど、ロンドさんは売れてない」
「人から言われるとムカつくな」
「でしょ?でしょ?」
「2017年デビューが白鳥リズムちゃん。とっても売れてる」
「売れてる売れてる」
「2018年は桜木ワルツさんと石川ポルカちゃん」
「びみょーだ」
「あ、ムカつく」
「だよねー」
向こうで桜木ワルツが笑っている。
「2019年は山下ルンバ、桜野レイア、原町カペラ」
「うーん・・・」
「何?その沈黙は?」
向こうでレイアが笑っている。
「そして2020年はラピスラズリだ」
「爆発的に売れてる」
「という訳で、私たちは谷間の世代なんだな」
「谷間の中でもリズムちゃんは売れてる」
「あの子は本当は私より前にデビューするはすだったんだけど、まだ小学生だったから、デビューを延期していたんだよ。だから2017-2018のロックギャルコンテストが不作だったんだな。私はリズムちゃんが優勝した時の2位だし」
と花咲ロンドは説明する。
「ということで私たちが売れないシスターズなのが分かったかな?」
「分かりません!」
「では何か別の名前の案とかある?」
「“うらない”シスターズにして、占い師三姉妹になりましょう」
「占いとかできるの?」
「覚えましょう」
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