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■春白(28)

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アラームで目が覚める。2時半である。
 
「帰らなくちゃ」
「年末は出てくるんだっけ?」
「RC大賞の授賞式に出て、1日は小浜でローズ+リリーのライブに出てから帰る」
「忙しいね!」
「水泳の練習もしないといけないし」
「郷愁プールとか深川アリーナでも泳げるんだろうけど、こちらに住んでたら金沢までの通勤が大変だもんね」
 
「そうなんだよねー。でも浦和の今度引っ越すおうちに25mでもいいからプールがあると便利なんだけど」
「ああ、アメリカのお金持ちの家だとプール完備かも知れないけどね」
 
そんなことを言いながらホテルをチェックアウトする。朋子からもらったチキンは食べてしまったが、おにぎりが残っていたのでそれを持って出た。駐車場に駐めてあるオーリスに乗った。
 
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「俺が運転するよ。青葉は6時から仕事なんだし、寝てなよ」
「そうする。じゃ運転しながら、おにぎり食べて」
「うん」
 
それでおにぎりを助手席のシートの上に置き、青葉は後部座席で毛布をかぶって横になった。普通恋人同士なら助手席で寝る所だろうけど、疲れを完全に取っておかないと仕事に響く。遠慮する仲でもないので、熟睡させてもらった。それで彪志が金沢まで運転してくれた。
 
有磯海SAで彪志がトイレ休憩した所で青葉も目が覚めてトイレに行った。
 
まだ1個残っていた(残しておいてくれた)おにぎりをもらって食べる。その後は助手席に乗って、おしゃべりしながら走った。車内で化粧水で顔を拭き、メイクまでする。金沢東ICで降りて、〒〒テレビには5時すぎに到着した。キスして、ついでに彪志のちんちんを揉んで、生殺し状態で放置し、車を降りる。
 
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青葉が車から降りた所に寄ってくる女性がある。
 
「福井新一さん!」
と青葉も笑顔になる。輪島市在住の作曲家・福井新一さんである。ちなみに新一という名前は、男社会の作曲界で軽く見られないように敢えて男名前を名乗っているだけでFTMとかではない。
 
「大宮万葉さん、おはようございます」
「おはようございます」
 
「これお弁当とお茶です。局内で食べて下さい」
「わざわざ済みません!もしかしてここで待っていて下さったんですか?」
「作曲作業しながらですよ。こういう場所って発想が浮かびやすいんです」
「ですよね!」
 
「車は私が能登空港まで回送しますね」
「済みません。個人的な用事なのに」
「お互い様ですよ」
 
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福井さんは降りてきた彪志にもお弁当とお茶を渡した。
 
「能登空港まで車を運転します。鈴江さんは、どうぞ後部座席でお休みになっていて下さい」
 
「ありがとうございます。休ませてもらいます」
 
それで彪志は後部座席に乗った。福井さんが車を出す。彪志は遠慮無く後部座席でお弁当とお茶を頂いた。そしてその後さっきまで青葉が使っていた毛布をかぶって仮眠させてもらった。
 
能登空港に到着する。
 
Gulfstream G450 が駐まっているのでこれに乗る。先日はこれに乗る青葉を見送ったが今回は自分が乗る。ビジネスジェットなんて初めてだ。福井さんも東京に行く用事があったということで一緒に乗る。飛行機で送ってあげるよと言われた時は、たかがデートのために飛行機を運航するなんてと思ったものの、同行者がいるのならとホッとした。
 
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G450は8時に能登空港を飛び立つと30分ほどの飛行で郷愁飛行場に到着した。ここに千里さんが迎えに来てくれていたので、彼女の運転するアテンザで彪志は浦和の自宅まで送ってもらった。一休みしてから会社に出ることにする。千里さんはその後、福井さんを送って東京に向かった。
 

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貴司は8年ぶりに千里と合法的に?“できる”状態になっていたのだが、11月4日に「年内はセックス拒否」と言われて、男性器も取り上げられてしまったので、クリスクスイブはとうなるだろう?と思っていた。
 
「なんか、ちんちん無いのにもすっかり慣れちゃったなあ」
などと、貴司は朝トイレに座っておしっこをしながら思った。美映と結婚していた間は“付けおちんちん”で偽装していたが、離婚した後は偽装する必要も無いので、何も無い股間のままにしている。
 
貴司は千里との婚約を破棄した2012年7月から約1年間男性器を取り上げられた後、美映と結婚した直後の2018年3月以降も男性器を取り上げられている。美映と結婚している間貴司が浮気をしなかったのは、男性器が無いと浮気のしようも無かったし、そもそも性欲が弱かったという問題もある。
 
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“付けおちんちん”は、**ルドーにFUD(Femnale Urination Device 俗称 STP = stand to pee)を組み合わせたもので、身体にきれいにフィットするように自分で加工している。実質FTMの人が男性と同様の形態を偽装するテクニックを使っている。
 
装着すれば男子トイレで立っておしっこができるし、横から覗かれても平気である。しかしあれは清潔に保つために結構な努力と注意が必要なので、偽装の必要が無ければ付けていないほうが気楽なのである。立っておしっこはできないけど。
 

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貴司がトイレに入っている間に朝食がテーブルの上に置かれている。
 
千里は市川ラボでデートしていた時期もそうだったが、こういう時、絶対に姿を見せないのである。でもきっとどこかで見てる。
 
「千里ありがとう。頂きます」
と言って食べ始めたが、メモに気付いた。
 
《今日は練習が終わったら浦和の新しいお家の方に来てね。カーナビには入れておいた》と書かれている。
 
貴司は楽しい気分になって朝食を終えると、着替えてからランドクルーザー・プラドに乗り、国分寺市の練習場に向かった。
 
この日は凄く気合が入って
「今日の細川さんは凄い」
とメンバーにも言われた。
 
夕方練習が終わってからプラドに乗り、カーナビに従って運転する。
 
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見た記憶のある家だ。
 
敷地内に車を進入させると庭灯が点く。
 
庭に数本柱が立っているのは何だろう?と思った。衝突防止のためか蛍光ペイントされている。しかしそこが駐車スペースのようだ。千里の Kawasaki ZZR-1400 が駐まっている。貴司はその隣にある駐車枠にプラドを駐めた。
 
車を降りて ZZR-1400を見る。バスケットの影絵のシールが貼られているのを見て涙が出た。これは9年前に自分が貼ってあげたシールだ。自分と千里、それに2人の子供が描かれている。あの時は何も考えていなかったけど、京平と緩菜だよなと今は分かる。
 
玄関でピンポンを鳴らそうとした所でドアが開き、千里が抱きついてくる。貴司も抱き返したが、何か高校生の頃に戻ったような気がした。あの頃が一番充実していたような気もした。
 
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「お腹空いたでしょ。すぐ御飯にする?それともシャワー浴びてからにする?」
「シャワー浴びたい」
「OKOK」
 
引越は26日にする予定なのだが、改装工事はほとんど終わっているという話だった。
 
バスルームでシャワーを浴びる。新しい着替えが出してあったので、それを身につけて、LDKに行く。
 
「シャンパンを開けよう」
と言って千里が出してくるのは、懐かしいモエ・エ・シャンドンのシャンパンである。千里と貴司は、2013-2016年頃、毎月のようにデートしては、このシャンパンで乾杯してランチを食べていたのである。
 
貴司が栓を開ける。
 
ポン!と音がする。
 
グラス2つに注ぐ。
 
「メリークリスマス!」
と言って乾杯した。
 
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お料理も、フライドチキン、ローストビーフ、などが作られていたので、一緒に食べた。千里と話していると、やっばり自分には千里が一番だという気持ちになる。どうして自分はちゃんとこの子をストレートに愛してあげられなかったのだろうと自分を責める気持ちになった。
 
満腹した所で会話が途切れた。
 
「寝室に行く?」
「うん」
 
「今夜は初夜だよ」
「もう何回目の初夜だろう」
「貴司が浮気をしなければこれが最後ね」
「ごめーん」
 
それで貴司は千里を抱いてLDKに隣接する和室に入った。2階の部屋はもう少し手を入れる必要があるので、今日はこの部屋を使うと千里が説明した。
 
和室だがベッドが置かれているので、そこに千里を置いた。
 
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「お疲れ様、マイハニー」
「愛してるよ、マイダーリン」
 
「あ、でも僕、ちんちんが・・・」
「あると思うけど」
 
それで貴司は自分の股間を触ってみる。
 
「良かった。ちんちん付いてる」
「よかったね。そのちんちんは私専用だからね。私だけを愛してね」
「もちろん」
 
貴司は再度千里にキスしてから、ベッドに潜り込んだ。
 

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その日、浦和のマンションでは、千里が京平に手伝わせてクリスマスの料理を作っていた。京平は幼稚園生だが、少なくとも桃香よりは役に立つ。
 
18時過ぎに彪志から「青葉に会いに行くので今夜は戻らない」という連絡が桃香に入った。
 
「今から高岡に行くのかね?頑張るなあ」
などと言いながら、こちらも始めることにする。4人の子供を座らせる。京平 5歳6ヶ月、早月3歳7ヶ月、緩菜2歳4ヶ月、由美1歳11ヶ月である。
 
桃香が日中買ってきていたクリスマスケーキを千里が6分割した。
 
シャンメリーを桃香が開けて、グラスに注ぎ乾杯する。それを飲み、ケーキを食べてから、お料理を食べた。こちらは子供たちが食べやすいようにフライドチキンではなく唐揚げにしている。タコさんウィンナー、一口サンドイッチ、ハンバーグ、などもある。子供たちは各々食べられる範囲でたくさん食べていた。
 
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20時で子供を寝せてから、
「いいよね?」
と桃香が言うので
「もちろん」
と言って、部屋に入った。この日の部屋割はこうなっている。
 
Room.1 千里・桃香
Room.2 京平
Room.3 早月・由美・緩菜
 
「千里と一緒に暮らしているのに、なかなかできない気がする」
「桃香が他の子と浮気しているからでは」
「それはたまにだよー」
 
などと言いながら、2人は快楽に身を委ねた。
 

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12月初め頃に“千里たち”はクリスマスの計画を練った。
 
「貴司と過ごすのは2番で、桃香と過ごすのは1番ということでいいよね」
「3番はどうするの?アクアにセックスの指導をする?」
「アクアと寝たりしたらファンから殺されるよ」
「じゃ彩佳は既に死んでいるな」
 
などと言いながら練った計画に沿い、3人はこのように行動したのである。
 
(事前準備)
糸魚川のホテル1115号室を予約しておく。
津幡のプライベートプールにメンテの予定を入れさせる。
いんちゃんがオーリスを前日に“能登空港”に回送する。いんちゃんは現地で25日まで待機。
浦和の一軒家には、寝具、調理器具・食材を持ち込んでおく。
 
12/24
10時頃、3人に分離する。
1番:浦和のマンションで料理を作り始める。
2番:ヴィッツを運転して郷愁飛行場に行き、G450で小浜に運んでもらう。ミューズセンターで夢紗蒼依、ローズ+リリー正月ライプの打合せをする。
3番:ZZR-1400で浦和の一軒家に移動し、料理を作り始める。
 
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実際には1番と3番は手分けして料理を作っている。ハンバーグや唐揚げは3番が作ったが、フライドチキンやローストビーフは1番が作り、交換・シェアしている。1番の方が料理は上手いので揚げ方が難しいフライドチキンは1番が作った。
 
15時頃
2番:打ち合わせを終えてG450で能登空港に飛ぶ。そこに駐めてあるオーリスで高岡に向かう。
 
つまり千里は小浜から高岡までの230kmを運転したのではなく、能登空港からの90kmを運転したのである。
 
18時頃
1番:桃香および4人の子供と一緒にイブの夕食。
2番;高岡に到着するが、3番と交替して浦和の一軒家で貴司を迎える。
3番:料理が一段落した所で2番と交替して青葉の家に入る。青葉を連れ出す。
矢鳴さんに扮した《きーちゃん》がアテンザで彪志を拾い、糸魚川に向かう。
 
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つまり、オーリスを高岡まで運転したのは2番で、高岡から糸魚川まで運転したのは3番であった。連続運転にならないようにここで交替したのである。
 
21時頃
オーリスを運転してきた千里3が糸魚川のホテルで青葉を降ろす。
アテンザを運転してきた(矢鳴に扮した)きーちゃんが彪志を降ろす。
千里3はオーリスをロックして車を降り、アテンザに移って熊谷に移動する(濃霧で神経を使う妙高までをオーリス内で30分休んでいた千里3が運転し、その後はきーちゃんが運転した)。
 
本当に矢鳴さんを使わずにきーちゃんを使ったのは、赤羽から糸魚川までの移動に人間の運転では5時間掛かる可能性があったので“短縮”(ワープ)して、青葉のデート時間を長くしてあげるためである。
 
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12/25
3時頃
千里3ときーちゃんが熊谷の郷愁飛行場に到着。千里3は仮眠する。きーちゃんは昨日千里2が運転してきたヴィッツに移ってそちらで仮眠。
 
6時少し前
旅館・昭和から“予約していた”お弁当を4つデリバリーしてもらう。2個を千里3ときーちゃんが食べる。きーちゃんは服を着替えて、福井さんに扮して金沢にテレポートする。〒〒テレビの駐車場で青葉たちを待つ。
 
6時
青葉と彪志が〒〒テレビに到着。きーちゃんは2人にお弁当を渡し、オーリスを運転して彪志と一緒に能登空港へ。G450で彪志と一緒に郷愁飛行場へ。
 
8時半
きーちゃんと彪志が郷愁飛行場に到着。アテンザで待機していた千里3が迎え、彪志を浦和に運ぶ。
 
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(後片付け)
いんちゃんが能登空港に駐めたオーリスを浦和に回送する。つまり彼女は往復空(から)のオーリスを運転したが、そもそも彼女は“人を乗せて”車を運転するのは怖い!と言う人である。桃香よりは随分うまいと思うが。
郷愁飛行場に駐めたヴィッツは取り敢えず放置!
 
 
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