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■春白(18)

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ここは変装を解こうとする所まで甲斐絵代子が演じ、実際にフェイスマスクを剥ぐのは、同じメイド衣装を着けたアクアが演じるのである。
 
結果的にメイド衣装を着けたアクアが画面に映ることになる。
 
視聴率の稼ぎ所である!!
 
「凄い!君、女の子じゃなかったのか!全然気付かなかったよ」
と洋介氏は言っている。
 
「でも明智先生ありがとうございます。ロマノフの小枝を守ってくださったんですね。でも、どうせなら二十面相も捕まえてくださったら、良かったのですが」
と洋介。
 
「僕はさっき言いましたよ。ロマノフの小枝を確保しているし、賊も確保していると」
 
「え?それでは二十面相を捕まえてくださったんですか?」
「もちろんです」
「それはどこに?もう警察に突き出したのですか?」
 
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すると明智はおもむろに洋造氏を指さした。
 
「いい加減、観念したらどうだい?二十面相君」
と明智は言った。
 
「明智先生、何を突然おっしゃるんです。これは私の弟の洋造です」
と洋介氏は言ったが、そこに入ってくる人物がある。
 
「兄貴すまん。不覚にも賊に捕まってて。さっき、明智先生の助手の方に解放してもらって、こちらに駆け付けてきたんだよ」
と言って入ってきたのは当の洋造氏である。
 

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「え?これはどうなっているんだ?」
と洋介氏が声を挙げる。
 
入口から入ってきた洋造と、目の前に座っている洋造がいる。入ってきた洋造も自分と同じ顔の人物が部屋の中に居るので呆気にとられている。
 
(この場面は、洋造を演じる木下春治(70)と彼のボディダブル役の俳優さん−実際には同じ事務所の後輩・中村四郎(60)−とで2回同じ場面を撮影して後で編集している)
 
しかし同じ顔の人物がお見合いしてしまうと、やはり偽物は分が悪い。それで今まで居間にいた方の洋造は窓から飛び出して逃げて行く。
 
「あ、先生!逃げましたよ」
「庭には警備員さんがいるのでは?」
「あ、そうですよね」
 

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ところが警備員は居なかったのである。
 
明智と洋介氏・(本物の)洋造氏が表に出てみると、警備員が通りに整列している。そういう指令があったというのだが、明智に言われてリーダー格の人が会社に確認すると、そんな指令を出した覚えはないという話である。
 
二十面相は万一の場合に備えて、警備会社の上司を装って、警備員を全員屋敷の前に集めさせていた。それで二十面相は庭に飛び出すとまんまと裏門から逃走してしまったようだ。明智たちは裏門が開いているのを発見する。
 
「うーん。ここまで準備していたとは」
とさすがの明智も悔しそうである。
 
しかし洋介氏は、ロマノフの小枝を守ってくれただけでもと明智に感謝していた。
 
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ところが・・・
 

明智・洋介・洋造が庭の方に行った後、居間には本物のロマノフの小枝を持った聖知が1人残っていた。聖知は自分を落ち着かせるようにフルートを吹く。“ハイドンのセレナーデ”である。
 
ミファ・ソミドー、ソミ・ラファドー、ファラ・ラソファミ・ミレドシ・シドソー
 
ところがその背後から迫る影があった。
 
何か布のようなものをいきなり鼻と口に当てられ、気を失う聖知。
 

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明智や洋介たちは、庭にいたら聖知のフルートの音が変な所で突然途切れるのを聞く。
「どうしたんだろう?」
と言って、居間に戻ると聖知が倒れていて、若い男が
「お嬢様、しっかり」
と声を掛けて身体を揺すっている。
 
「どうした?」
「お嬢様が突然倒れられて。もしかしたら二十面相が現れて、その恐怖で極度の緊張状態になられたからかも」
 
「それは無理も無いな」
「すぐ病院に運びます」
と介抱していた男は言う。
 
それで男は聖知の身体(セシルの体重は40kg)を抱くと、そのまま表へ運ぶ。
「御主人、クラウンを貸して下さい」
「うん」
と言って洋介がクラウンのキーを取り出し、鍵を開ける。男が聖知を後部座席に寝せる。洋介がキーを男に渡すので、男は運転席に座ると車を発車させた。
 
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「あ、どこの表院に連れて行くとか聞かなかった。明智先生、あの助手の方はどこの病院に行かれたんでしょう?」
と洋介氏が明智に訊く。
 
「待って下さい。今の男性は、こちらの使用人さんではないのですか?」
と明智。
 
「え?あんな使用人は居ませんよ。私は明智先生の助手さんとばかり」
と洋介氏。
 
「しまった!」
と明智が声をあげる。
 
「まさか」
 
明智はまだ玄関付近にいた警備会社の人に、尋ねてみたが。派遣されてきた警備員はそこに全員居ることが分かる。洋造氏を解放してここに連れて来た明智の本物の助手もここに居る。
 
つまり・・・何者かが、聖知を拉致していったことは確かだった。
 
そしてロマノフの小枝も一緒に無くなっていた。
 
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明智は悔しそうな顔をして細野洋介氏に言った。
 
「細野さん、私は必ず6時間以内に、お嬢さんを救出し、ロマノフの小枝も取り戻します」
 
「お願いします。最悪、ロマノフの小枝は諦めても、孫娘だけは何とか」
「大丈夫ですよ」
という力強い明智の言葉に、洋介氏はこの人なら何とかするかもと思ったのであった。
 
(読者はここに小林が居ないことに注意した方がよい)
 

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某所。
 
車を駐めた二十面相(大林亮平)が聖知を抱いて、その民家の中に入る。そして彼女をベッドに寝かせ、ドアをロックして部屋を出た後、美術品倉庫のような部屋に入る。多数の美術品が並んでいる。二十面相は鞄の中から、ロマノフの小枝を取り出す。
 
「なんて美しいフルートなんだ。しかし小林の野郎、メイドなんかに化けてまんまと俺をハメやがって。ただじゃ済まないぞ。こうなれば、細野が所有しているもうひとつのお宝“火の鳥”も頂かないと気が済まない。娘はそれと交換で返してやることにしようか」
 
などと独り言のように語る。
 
結局、二十面相はあの時、庭から逃走したと見せて裏門だけ開けて実は庭の中に潜んでおり、今度は書生に化けて、聖知ごとロマノフの小枝を奪ったのである。
 
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彼はロマノフの小枝を満足そうにあちこち眺めると、やがてそれを棚に納めた。
 

「しかし疲れた。少し寝よう」
と言って二十面相は寝室に行くと眠ってしまった。
 

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庭に駐められた黒いクラウンのトランクが静かに開く。そこからメイド服を着た少女が静かに出て来た。建物に入ろうとした時、バイク(Ninja 250 KRT Edition- KRT=Kawasaki Racing Team) に乗った少女が来たのでギクッとする。が、相手が誰か分かると「しーっ」と言って指を口の前に立てる。
 
2人はクラウンの影でひそひそ話をする。
 
「すっごい可愛い服着てる。本来の自分に戻ることにしたの?」
「それよりなんでここに来たの?(質問に答えてない)」
 
「こないだ聖知ちゃんと偶然会って、怖がっていたから、彼女にGPS発信器を持たせたのよ。彼女が拉致されたと、彼女のメイドさんから連絡あったから、信号を頼りにやってきた。そちらは?」
 
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「犯人は走って逃げたりしない気がしてさ。車を使うかも知れないと思って、トランクの中に潜んでいたんだよ」
 

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一方、聖知が入れられた部屋。
 
聖知がふと目を覚ます。
 
「ここはどこ?」
と不安そうに声を挙げる、
 
さの時、部屋の鍵が開く音がする。口に手を当てて怖がる聖知。
 
ところが入ってきたのは、なんとメイド服を着たままの小林少年(アクア)とバイクスーツを身につけた北里ナナ(アクア)である。
 
「ナナちゃん!」
「聖知ちゃん、無事?」
 
聖知は自分の身体をあちこち触ってみるが、やがて
「無事みたい」
と言った。
 
「おうちに帰ろう。ナナちゃん、バイクで彼女を連れて帰って」
と小林。
 
「分かった。小林さんは?」
「二十面相に一泡ふかせてやるよ」
と小林は言った。
 
(この場面は、アクアと葉月でメイド服の小林とバイクスーツのナナを交替で2度演じ、それを編集でつなぎあわせている)
 
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やがて二十面相は目を覚ます。
 
私室を出て、美術品室に来る。あらためて“ロマノフの小枝”を手に取る。
 
「本当に美しいフルートだなあ」
と呟く。
 
「さて、そろそろ娘も目を覚ます頃かな。飯でも食わせなきゃ」
と言って、二十面相は、調理人にトースト、ハムエッグ、サラダにコンソメスープといった料理を作らせるとそのトレイを持ち、聖知を閉じ込めた部屋に行った。
 
トントンとノックをし
 
「入るよ」
と声を掛けてから鍵を開けて中に入る。
 
「おお、起きてたかい」
と二十面相は聖知に声を掛けた。
 
「君の御飯だよ」
と言って聖知の前にトレイを置くが、小紋の和服を着た聖知は怖がって手を付けない。
 
「私をどうするの?」
と聖知は不安そうな顔で訊く。
 
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「別に取って食ったりはしないよ。君は大事なお客様だからね。君のお祖父さんが所有している“火の鳥”と交換に返してやるから」
 
「“火の鳥”は個人が持つべきものではない。人類の財産よ。あれは今、音楽研究所で誰か優秀な人に使ってもらえるよう、選考を進めている所なんだから」
 
「あれはこの“ロマノフの小枝”と並んで鑑賞すべきお宝だよ。ロマノフの小枝が今こうやって僕のものになった以上、“火の鳥”も一緒にしてあげなきゃね」
 
と言って、二十面相はロマノフの小枝を取り出して聖知に見せた。
 

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「虫が良すぎる話だね。悪いけど、そんな白昼夢は刑務所の中ででも見てもらおうかな」
と聖知は言った。
 
二十面相はギクッとした。
「どういう意味だ?」
 
「そもそもそのフルートをよく見てご覧よ」
「何!?」
 
二十面相は手に持つ“ロマノフの小枝”をじっと見た。
 
「しまった。これは俺が作ったイミテーションの方だ」
 
「二十面相君って美術品の鑑定眼がありそうなのに、わりとコロっと偽物に欺されるよね。やはり欲に目がくらむと、鑑定眼がちゃんと働かないのかな」
と聖知。
 
「誰だきさま?」
と二十面相は低い声で聖知を脅すように言った。
 
「二十面相君は、変装の名人のくせに、他人の変装は見破れないんだね」
「きさま、まさか小林か?」
 
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「やっと分かったのかい?」
と言って、小林はフェイスマスクを剥ぎ取った。
 
可愛い花柄の小紋を着た小林(アクア)がこちらを睨んでいる。
 
(この場面は例によって、フェイスマスクを剥ぎ取ろうとする所までをセシルが演じ、実際に剥ぎ取る所以降はアクアが演じている:なお物語としては、小林が聖知に化けるためと、和服ではバイクに乗りにくいことから、小林と聖知は服を交換したのである。メイド服はフレアースカートなので何とかバイクの座席に座ることができる)
 
「小林、君はほんとに大した奴だよ」
と二十面相は脱力したように言った。
 
「じゃ観念して縛に就くかい?あと10分もすれば中村警部たちが来るよ」
 
「そうかい、そうかい。だけどね。俺もさすがに子供に腕力では負けないつもりだよ」
と二十面相は小林に言った。
 
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二十面相と小林が睨み合う。
 
「だけど、そんな可愛い服を着てると、変な気分になりそうだよ。さっきの可愛いメイド服も良かったけど」
「ちょっとぉ!?」
 
二十面相が小林少年に1歩、歩み寄る。小林は“身の危険”を感じた。
 
「いい加減おとなしくしたまえ」
という声がある。そして何か硬いものが二十面相の身体に突きつけられる。
 
「貴様、明智!?」
 
「僕が可愛い弟子をたったひとりで危険な場所に行かせる訳がないだろ?観念したまえ」
と明智はピストル(Colt Detective Special)を二十面相に突き付けながら言った。
 
「くっそーっ」
と二十面相は悔しそうに言った、
 
パトカーのサイレンが聞こえる。
 
そして多数のパトカーが走ってきて一軒の家の前で駐まり、多数の警官が降りてくるところが映る、
 
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そして最後はどこかのホールのステージで、伴奏者(常滑舞音:とこなめ・まね)のピアノ伴奏に合わせながら、モーツァルト『アイネ・クライネ・ナハト・ムジーク』の第4楽章“ロンド”を“ロマノフの小枝”で演奏する聖知が映る。
 
ソドミ・ソソソソ・シード、ド・ファファミミ・レー、
ソドミ・ソソソソ・シード、ド・レレソーラシ・ド
 
この場面で、聖知の演奏している顔のズーム、そして画面隅の丸いコーナーワイプに笑顔の小林とナナの笑顔が映って終了となる。
 

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恒例となっている年末年始の§§ミュージックの「今年もお世話になりました/今年もよろしくお願いします」のテレビCM用のビデオ撮影は、“三密”回避のため、全員個別にブルーバックの前で撮影して、合成する方式で行われた。
 
そもそも人数が多くなりすぎて、全員の予定を同じ日に確保すること自体がかなり困難になっていた。なお2021年年始のビデオで、コスモスが持つ指揮棒の色は白、ゆりこが弾くピアノはKawai CR-40Aであった。真っ白な半透明のグランドピアノである。
 
過去の指揮棒とピアノは↓である。
 
2015年 青KawaiGX-7
2016年 黒YamahaC7X
2017年 赤KawaiSk7
2018年 銀YamahaS6B
2019年 桜SteinwayA-188
2020年 緑/Bösendorfer 170VC
 
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今回出演したのは、年末版では、ピアノのゆりこ・指揮のコスモスを入れて22名。年始版は、そこから桜木ワルツが抜け、七尾ロマン・恋珠ルビーが加わって、合計23名となった↓
 
アクア、品川ありさ、高崎ひろか、西宮ネオン、姫路スピカ、花咲ロンド、石川ポルカ、白鳥リズム、原町カペラ、山下ルンバ、桜野レイア、ラピスラズリ、今井葉月、大崎志乃舞、リセエンヌドオ、七尾ロマン、恋珠ルビー、川崎ゆりこ(Pf)、秋風コスモス(Cond)
 
衣装は例によって西宮ネオン以外は振袖である。むろんアクアも葉月も振袖である。
 
「提案。来年はコロナが収まっていたら9月か10月の内に撮ろう」
「やはり、年末に撮影するのは難しいよね。みんな忙しいもん」
「だいたい毎年深夜に撮影してたよ」
「あれ、本当は中高生をそんな時間に使ってはいけなかったんだけどね」
 
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