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■春白(5)

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(C) Eriko Kawaguchi 2021-02-06
 
2020年10月17日の短水路選手権の後、筒石とジャネは半年ほど住んだ火牛ホテルから、津幡町内の2DKのマンションに引っ越したのだが、10月21日、南野里美が部屋までデリバリーしてもらった朝ごはんを食べてから、練習に行こうと部屋を出たら、近くの部屋からジャネが出て来た。
 
「あれ?引っ越したんじゃないの?」
「筒石はね」
「ジャネさんは付いてかなかったの?」
「別に。私は水泳一筋だし」
「へー!」
「取り敢えずパリ(オリンピック2024)が終わるまでは結婚なんて考えられないし」
「そんなに待たせるんだ!?」
 
そんなことを言いながら、2人は一緒にプライベートプールに向かった。
 
むろん筒石と一緒にマンションで暮らしているのはマラであり、マソの方は引き続き火牛ホテルに住み込み、練習漬けの日々を送る予定である!
 
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ちなみに筒石が半年間滞在した部屋は臭いが酷くて、部屋のクリーニングが大変だった。筒石がカップ麺やお弁当のからを放置していたせいである。結局カビの生えた壁シートを交換したり、傷んだ床板も交換するなどの結構な“工事”が必要になった。無論こういう費用もムーランから日本代表選手へのサービスなのだが、さすがの若葉がぶつぶつ言っていた。
 

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ところで、これまで運転免許を持っていなかったジャネが11月から自動車学校に通い始めた。ジャネは右足の足首から先が無いので、警察に相談したところ、障碍者ではあっても身体能力の高い日本代表選手ということで警察は好意的だった。
 
アクセルやブレーキを左足で操作することで運転できそうであれば、AT車でパーキングブレーキは手で操作するタイプの車という条件付きで免許を発行できると言われた。そういう車はわりと普通にあるので、自動車学校にも照会し、そういう車で全ての教習をしてもらえることになった。クラッチ操作ができないので当然AT限定になる。
 
それで“水泳の練習の気分転換”と称して、比較的空いている日中に毎日3時間くらい教習を受けてくることにしたのである。
 
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もっとも実際にこの教習を受けに行くのはマラである!
 
マソはそんな教習に行く時間があったら泳いでいたい人である。
 
そしてマラは元々運転が上手いので、教習はどんどん進んでいた。教官からは「あんた運転してたでしょ?」などと言われたが!
 

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自動車学校といえば、バイクの免許の教習を受けといてといわれていた浜梨恵真であるが、10月までの内に教習自体はかなりの所まで進んでいた。11月に入ってから突然忙しくなってしまい、とても自動車学校に行ける状態ではなかったのだが、ずっと行っていないと感覚を忘れるということで、週に1回は行かせてもらえることになっていた。
 
実際恵真も、感覚を思い出すことを主たる目的として教習を受けていた。またこの教習でバイクに乗る時間が、多忙な恵真にとって、良い息抜きになっていた。
 
教習に行く日は17時くらいで仕事を終え、ドライバーさんに自動車学校まで送迎してもらう方式である。あくまで公共交通機関の使用は禁止である。
 
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ところでこの§§ミュージック・グループ(♪♪ハウス、§§プロ、また事務取扱になっているマリナ・ケイナなども利用する)の輸送部隊として活動している“§§コールセンター”だが、それはこのような経緯で発足した。
 
2020年春にコロナ感染予防の観点から、コスモス・ケイ・紅川の3人は話し合い、契約しているタレントに、信濃町ガールズの子たちまで含めて、原則として公共交通機関の利用を禁止した。
 
その代わり、運送部隊を編成しようと思ったのだが、簡単には優秀なドライバーは見つからないし、車も調達する必要がある。無線装備なども必要だしというので悩んでいた時、女子寮の子たちのために、五反野駅と女子寮との間を運ぶ仕事を委託しているタクシー会社・GN交通からコスモスに照会があったのである。
 
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コスモスは、女子寮の子たちの感染防止のため、このGN交通に、女子寮の子たちを運ぶドライバーを限定し、その運転手さんたちは、他の客は運ばないようにできないか、その分、本来得られるはずの収入は保証するから、という相談をしたのである。
 
その時、向こうの社長さんから、ドライバー限定の件はOKであるとした上でその話を聞いたのであった。
 

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GN交通の社長さんの古い友人で、都内でTDタクシーというタクシー会社をしている人がいるが、3月以降、売上が激減しており、このままでは経営が行き詰まると言って悩んでいる。いっそ、そのタクシー会社を丸ごと買い取ってもらえたりしないか?というのである。
 
車両数は50台という中堅の会社(GN交通より大きい)でこれまでの年商は3億円、月あたり2500万円くらいだったのが3月が1000万円、緊急事態宣言が出た4月は500万円という深刻な売上減になっていたらしい。
 
タクシー会社を丸ごと買うと、車に無線設備があるし、本部から各々の車に呼びかけることもできる。これは大きいとケイもコスモスも思った。またドライバーは全員二種免許持ちなので、技術的にも安心感がある。
 
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まだ紅川さんが東京に滞在していた時期だったので、紅川さんにそちらの社長と会ってもらった。その結果、§§ホールディングがその会社の全株式を取得して子会社化し、債務も全て精算するという話がまとまったのである。それで社名も“§§ミュージック・コールセンター”と改称した。買収額は借金精算分まで含めて2億円である(経常利益が年間2000万円なので普通に計算すると企業価値は1億円)。
 
社長は経営責任を取って退任する(相談役の肩書きを付ける)ものの、社長の息子さんに§§ミュージック・コールセンター配車部長という名目で残ってもらうことにした。
 

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紅川は全運転手さんに感染の有無の検査を受けてもらった上で、ひとりひとりの運転手さんと面談し、下記の誓約をしてくれる人だけ残留してもらい、誓えないあるいは自信が無いという人には充分な退職金を払って辞めてもらうことにした(“鬼の紅川”なので解雇通告は割と得意だし、納得して辞めてもらうのも上手い)。
 
・絶対安全運転。
・交通法規絶対厳守。
・客の秘密は確実に守る。
・毎日検温報告をすること。
・手洗い・うがい励行。
・外飲みしないこと。
・外食もできるだけ避けること。
・風俗などに行かないこと。
・できるだけ人混みを避けること。
・家庭内でも消毒徹底など感染防止に努めること。
 
日用品の買物は会社で代行して、運転手さんが混雑するスーパーなどに行かなくても済むようにする。独身の運転手さんには会社側で食事やお酒の提供をするので外飲み・外食は控えて欲しいとお願いした。また独身男性には希望すればテンガを無償で提供すると言ったのだが、既婚男性!でも希望した人がいたので渡すことにした。また既婚男性でも食事やお酒の提供を希望する人には支給することにした。
 
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テンガの件は置いといても、食事のみならずお酒も提供するという話は好評だった。
 
実際には50人の運転手さんの内、5人だけ辞めてもらうことになり、残りの人たちは誓約書を提出して残留した。外飲みに関しては、実は怖い気がしていたと言っていた人たちも結構いた。また“美少女アイドル”アクアちゃんの事務所というので憧れるという人もわりと居た!
 
車両は全て“ハイヤー仕様”に変更した。行灯を取り外し、料金メーターも外した。その上で、前席と後席との間に透明アクリル板を設置した。車は全て明るいライト・イエローの塗装に変更した。
 
タクシー会社買収以前から独自に雇っていたドライバー15人もこの部門に合流させ、コールセンターはドライバー60人の陣容になった(二種免許を持っていない人には指導した上で1年以内の取得を目指す:客から料金を徴収しないので二種免許無しでも従事可能)が、基本的に各々のドライバーの担当タレントを決めて、接触人数が増えないようにする。むろん給料は固定なので、運ぶ量が少なくても手取りは変わらない。
 
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こうして5月中旬から§§ミュージック・コールセンターが稼働開始して、研修生たちまで確実に感染リスクの低い交通手段で運んであげられるようになったのであった。
 
この“コールセンター”を使わずにマネージャーや専任の付き人が送迎するのは、アクア、ラピスラズリ、高崎ひろか、品川ありさ、姫路スピカ、白鳥リズム、それに§§ミュージック社長の秋風コスモス、あけぼのテレビ社長の春風アルトの8組である(他にケイも★★情報サービスの佐良しのぶが運ぶ)。
 

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ところであけぼのテレビ社長の春風アルトであるが、1年間に及ぶ夫の上島雷太の謹慎と破産の後、2019年度1年は水戸市内の2DKのアパートで上島雷太と一緒に暮らしていたのだが、何と言っても2DKは狭い。生まれたばかりの美音良が泣いたりしていると、上島は作曲作業になかなか集中できないようである。
 
それでせめて3DKに引っ越そうと言って、物件を探していた。そこに唐突にアルトは“あけぼのテレビ”の社長になって欲しいという話が飛び込んで来たのである。おりしもコロナ流行の中、電車通勤はしたくないし、美音良の世話もある。
 
結局通勤は、コスモスが個人的にルーミーを買ってくれて、それをアルトに無償貸与してくれることになった。§§ミュージックで専任のドライバーも付けることにする。しかしそうなると上島雷太が使用しているアクアと2台駐める場所が必要になる。
 
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そこで、雨宮が2台駐められる庭のある戸建てを購入し、その家を上島夫妻に貸すという話がまとまったのである。
 
雨宮は千里を呼び出して、一緒に不動産屋さんに行った。
 
「今日にも入居できる物件で、一戸建てで、小型乗用車を2台、庭に駐められる物件無い?私とこの子が住むのよ」
 
不動産屋さんは、雨宮と千里の関係を判断しかねた。
 
つまり母娘なのか、友人あるいはレスビアンの夫婦なのか判断が付かなかったのである(どれも不正解)。
 
「えっと、お嬢さんですか?」
「あら、息子よ。娘に見える?」
「失礼しました。ご子息様でしたか。まあ自由な時代ですし」
などと不動産屋さんは困ったように言っている。
 
「お父さんの車が可愛いアクアのアクアで、私の車がルーミーなのよね」
「えっと、こちらはお母様ではなくお父さまですか?」
「あら?男性に見えない?」
「失礼しました。自由な時代ですし」
 
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というジャブの応酬をした上で本題に入る。
 
「それでご予算は?」
「500万円くらいで無い?」
「500万ですか!?」
と不動産屋さんは思わず聞き返した。
 
しかし、担当者は「あ」と声を挙げる。何か思い至ったようである。
 
「不便な所でもいいですか?」
「大歓迎。隠れ家みたいなものだし」
 
それで不動産屋さんは、実際にはふたりは恋人、ひょっとして不倫関係ではと想像した感じもした。しかし、一軒の平屋建ての住宅を紹介してくれた。
 
図面を見ると確かに庭に何とか車が2台駐められそうだ。
 

 
「小さなおうちね」
「1K4Sなんです」
「こんなにたくさん部屋があるのに1K?」
「事実上の3Kです。でも部屋が現在の基準の“居室”の条件を満たしてないんですよ」
「なるほどそういうことか」
 
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それで地図なども見た上で不動産屋さんの車で現地に行ってみる。
 

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