広告:ボクたちオトコの娘-IDコミックス-ZERO-SUMコミックス-ねりすけ
[携帯Top] [文字サイズ]

■春白(14)

[*前p 0目次 #次p]
1  2  3  4  5  6  7  8  9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24 25 26 27 28 29 30 31 32 
前頁 次頁目次

↓ ↑ Bottom Top

西湖は2020年1月5日に突然2人に分裂した後、時々1人に戻ることがあったが、大抵は数時間でまた2人になっていた。1人が男の子で1人が女の子だったので女の子(F)が学校に行き、男の子(M)が女装して仕事に行くという分担をすることで、死にそうなくらい忙しい生活から何とか脱出できて、アクアが3月に高校を卒業したことによる仕事の増加にも対応することができた。
 
同じように分裂状態にある龍虎(アクア)の場合は、アクアMとアクアFの各々の自己認識が明確なのだが、西湖の場合はそれが混濁している感じで、時々1人になった場合、自分がどちらなのかよく分からず、ちんちんが付いているかどうか確認して「あ、今回はFが残った」とか「ちんちん付いてるから僕はMか」などと考えている状況である。
 
↓ ↑ Bottom Top

(2020年)11月3日の夕方。西湖はまた1人になったのだが、今回は1人の状態が長かった。1日以上経った11月4日の夜にやっと2人に戻る。1人しかいないので4日は学校を休んでいたので、明日はまた分担して学校と仕事に行けるね、などと言っていたら、5日朝にまた1人になってしまった。
 
困っていたら“いつも”部屋に置いている鏡の中から出てきているおキツネさんたちが京平さんという、偉いおキツネさん?を呼んできてくれて、彼からもらったペリドットの指輪をつけて2人になれるようお願いすると2人になることができた。ただし指輪を使えるのは日に1度だけで分裂してから9時間経つと合体してしまうようだった。
 
それで西湖は毎朝8時に指輪で分裂し、女の子の側が学校に行き、男の子の側は午前中休んでいて、午後から仕事に行くという生活をするようになった。Fは午前中で学校を早退して(仕事に行く振りをして)自宅に戻り、仕事に行っているMと分担して自宅で台本を読んだり歌やピアノの練習をしたりしている。
 
↓ ↑ Bottom Top

そして17時頃になると自宅にいる側が消えて仕事に行っている側に統合される。この時、統合されて男の子になっているか女の子になっているかは不定なのでトイレなどで確認している。突然自宅から消えるので、Fは火を掛けたまま自分が消えたりしないよう、調理したりする場合は必ずタイマーを掛けるようにした。(その後、和城理紗に相談したら、理紗のお友達が、強制的にタイマーが掛かるように改造してくれた)
 
11月22日の夕方、いつものようにFは用賀の自宅に居て、Mは郷愁村で『とりかへばや物語』の撮影をしていた。そろそろ17時だよなあと思ってアクアさんがトイレで中座した(アクアさんは何故か必ず17時頃に中座する気がしている)のを機に、自分も「ちょっとコーヒー飲んできます」と言って中座し、実際には控室棟の個室更衣室(*8)に入った。
 
↓ ↑ Bottom Top

(*8)感染拡大防止の観点から、控室棟は、多数の個室更衣室(約3畳+洗面台付き)から構成されており、大部屋の楽屋は作られていない。清掃消毒部隊が巡回していて、使用済みの更衣室は清掃・消毒して「消毒済」と書かれたテープを貼る。新たに更衣する人は、必ずこのテープを破って入室する決まりである。部屋の共用も、ラピスラズリの2人、上田兄弟(姉妹?)、緒方姉妹のみに許可されている。
 
荷物は別途ロッカー(出演者全員分用意されている:スマホによる電子ロック方式)に預けることになっている。但しトリプル主演のアクア・ありさ・ひろかの3人だけは各々の専用控室を持っている。
 

↓ ↑ Bottom Top

17時になると、自宅に居たFが消えてこちらに統合される。それで撮影現場に戻ろうとしたら、控室を出た所で突然また2人に分離するので慌てて控室の中に引き返す。
 
「どうなってんの?」
「分からない。取り敢えず衣装つけてるボク、撮影現場に行って」
「OK」
 
と言って、狩衣を着けている西湖が現場に向かった。
 
「理紗さん」
と言って、和城理紗(ワシリーサ)を呼ぶ。理紗は撮影現場に居たのだが、すぐ飛んできてくれた。
 
「どうしたの?早く戻らないと、撮影再開されるよって、なんで普段着なのよ?」
と理紗が言う。
 
「違うよ。いったん1人に戻ったのにまたすぐ分裂したんだよ。だから狩衣衣装着けたボクは現場に行ったよ」
 
↓ ↑ Bottom Top

「そうなんだ!どうしたんだろう?」
「分からない」
「じゃ、君は五衣唐衣裳(いつつぎぬ・からぎぬ・も (*9))を着けた方がいい」
「うん。手伝って」
「OK」
 
(*9)いわゆる“十二単”(じゅうにひとえ)。
 
それで残った方の西湖は和城理紗に手伝ってもらい、五衣唐衣裳を着けた。
 
急いで着けたので、結局西湖はどちらがFでどちらがMか分からなかった(五衣唐衣裳を着けているとお股に触るのは不可能なので確認できない)が、後で服を脱いでみたら、狩衣を着けていたのがFで、後で五衣唐衣裳を着けたのがMだった。つまり、いったん合体したことでMの着ていた衣装がFに移動したようだった。
 

↓ ↑ Bottom Top

この後、数日間、西湖は17時になるといったん合体するのだが、1分以内に再度分離するという新しいパターンになった。なお17時に分離した後は、夜中までそのままで、寝ている間に合体しているので、毎朝また指輪で分離することになる。
 
ところが数日経ったある日からは、この17時の“いったん合体”が起きなくなる。そして朝分離したままずっと夜中まで2人のままとなる。でも寝ている間に1人になっているので、朝やはり指輪で分離する。
 
「なんでこんなに長時間別れて居られるんだろう?」
「よく分からないけど、助かるね」
とFとMは言い合い、11/3以前のように、Fが学校に行き、Mが(女装で)仕事に行く生活に戻ることができた。夕方からはFも撮影に参加する。
 
↓ ↑ Bottom Top

ちなみに朝起きた時にMが残っているかFが残っているか(ちんちんがあるか無いか)は不定で、触ってみないと分からない状況だった。
 
「なんか、ちんちんとかあっても無くても、どっちでもいい気がしてきた」
などと西湖は呟いていた。
 
ただし西湖は11月1日に去勢してしまったので、男の子の状態でもタマタマは無かった。でもタマタマは恐らく数年前にほぼ機能停止していた気がするので、タマタマが無いことについては特に何とも思わなかった。ほとんど機能停止していた睾丸が今更声変わりを起こしたのが驚異的である。
 
ただ、去勢したせいなのか、年末頃までには、西湖Mの方も乳首が大きくなり、少し胸が膨らみ掛けているような気がした。
 
↓ ↑ Bottom Top

和城理紗さんによれば、2人は体液を共有しているので、これまでFの卵巣から出る女性ホルモンとMの睾丸から出る男性ホルモンがバランスしていたのが、睾丸が無くなったことで女性ホルモンだけになった。そのせいで、Mの身体の女性化は避けられないだろうという話だった。
 
「ちんちんも縮んでいくと思うよ。恐らく2〜3年後には皮膚に埋もれて、無いように見える状態になると思う。その頃には胸も膨らんでいるだろうからタック無し・ブレストフォーム無しで女湯パスしちゃう。デビュー頃のアクアちゃんの状態」
 
と彼女は言った。
 
でもそれも特に問題無い気はした。
 
「ボク、やはり女の子になってもいい気持ちになっちゃったかも。でも和紗さん(桜木ワルツ)と結婚する約束しちゃったしなあ・・・」
 
↓ ↑ Bottom Top


その日、門脇瀬那は、クラスメイトの緋代ちゃんに誘われて、ソフトボール部の試合に出た。メンバーが本当に9人ギリギリしか居ない。瀬那がソフトボールはルールとかもあまりよく分からないと言い、試しに“遠投”しても実際には20mくらいしか届かなかったので、外野は無理だねと言われてセカンドをすることになった。グラブは緋代ちゃんの予備のを借りた。ユニフォームとかもなくて、体育の時のジャージ(一応校名が入っている)でプレイする。
 
「うちは貧乏部だから」
などと言っていたが、お金をあまり掛けずにするのはいいことじゃないかなと瀬那は思った。
 
内野に居るので結構ボールが飛んでくる。ボールの所まで辿り着けずに後に逸らしてしまったのは幾度もあったが、ゴロはしっかりグラブを地面に着けてキャッチしたので、トンネルはせずに済んだ、1度ダブルプレイに絡んだ。ゴロを捕ってショートの子にトスしてフォースアウト。ショートからファーストに送られてバッターランナーもアウトで、これは気持ち良かった。
 
↓ ↑ Bottom Top

打つ方では「三振でいいよ」と言われて、本当に1回目も2回目も三振したが、3度目にいわゆるテキサスヒットを打つことができて、1塁に出た。次の子が三振スリーアウトだったので二塁には行けなかったが、塁に出たのも気分良かった。
 
試合は12対0で負けた。
 
「いつもこんなものだから」
などとみんな言っていたが、たくさん汗を流してわりと気持ち良かった。
 
「また3月に大会あるからよろしく」
と言われる。
「この程度でも良ければ」
と瀬那も答え、また声が掛かったら出ることになるかも知れない。
 

↓ ↑ Bottom Top

行き帰りは、チームメイトの咲美ちゃん・菜香ちゃんと一緒に緋代ちゃんのお母さんの車に乗せてもらったのだが、車の中では、身体の大きな菜香ちゃんが助手席に乗り、咲美ちゃん・緋代ちゃんと瀬那が後部座席に乗る。するとお互いに身体が接触するのだが、この程度は瀬那も徳島の中学の時に“鍛え”られていたので平気である。
 
しかし緋代ちゃんはスポーツ少女っぽく、わりと筋肉質だが、咲美ちゃんは脂肪が多くて、凄く女らしい身体付きだなあと思った。それでつい正直に
 
「咲美ちゃんって、凄く女らしい身体付きだね」
と言っちゃったら、
「瀬那ちゃんも女らしさ向上中だと思うよ」
と緋代ちゃんから言われた。
 
「うん。発育途中という感じ」
と助手席に乗っている菜香ちゃんも言っている。
 
↓ ↑ Bottom Top

「私なんか、男子は女子チームに入れないよと言われたこと何度もある」
などと菜香ちゃんは言っている。
 
「中1だとまだ“女になりかけ”の子も多いよね」
と咲美。
 
「瀬那ちゃんもかなり脂肪付いてきてるもん」
と咲美ちゃんから肩とか胸!とか触られる。、
 
「きっと来年の夏頃までにはかなり女らしい身体に進化していると思うよ」
と彼女は言った、
 

↓ ↑ Bottom Top

確かに瀬那自身も、最近かなり女性的な身体になってきつつある気もした。やはり“手術”したおかげかなと思う。
 
あの日、お姉ちゃん(元お兄ちゃん)に連れられて、新宿の病院に行った。
 
そしてうまく唆されて“手術”を受けて、自分は男の子を辞めた。でもこうして女の子をしていられるのも、こちらの中学に転入する前に、自分を男にしてしまいかねない危険な物体を除去したお陰だよね、と瀬那は思った。
 
取っちゃったこと、両親には言ってないけど、お母ちゃんは察している気もする。
 
手術した直後は、本当に手術して良かったのかなあとやや後悔したけど、スポーツの大会に女子として出場するのに、あんなの付いてたら違反っぽいもんなあと思う。女子の試合にキンは持ち込みキンシだよね?アレが無いから、自分としても女子の試合に出ることにあまり罪悪感は感じなくても済む、などと瀬那は思った。
 
↓ ↑ Bottom Top

できたら“タマ”だけじゃなくて“タケ”も取りたいけど、まだそれには心の整理が必要かも知れない気がしている。一応お姉ちゃんは、18歳になったらお嫁さんになれるようになる手術も受けさせてやるよと言ってくれている。それまでに気持ちの整理はつくかな?でもお嫁さんになるために必要な器官が自分の身体にあるのって、どんな感じなんだろう?瀬那は男の子に抱かれる自分を想像してドキドキしていた。
 
でも今まだ自分に付いているはずの器官、最近かなり縮んで来ている。実際問題として、現状は小さすぎて“タック”ができない。毛の中に埋もれているし、掴むどころか日によっては摘まむこともできなくなっていたりする。その時は、自分で触ってみてもどこにあるかよく分からず、結果的におしっこがどこから出てくるか分からない。その付近一帯からにじみ出てくる感じになり、拭くのが大変!「瀬那、既に女湯パスする」なんて、お姉ちゃんからは言われたし。
 
↓ ↑ Bottom Top

このままどんどん小さくなって消滅してくれたりはしないものだろうか??(既にほとんど消滅していたりして)
 

↓ ↑ Bottom Top

(2020年)11月19日(木)、恵真は早朝の仕事が入っていて、朝5時にマネージャーさんが迎えにくることになっていた。それで4時に起きるつもりだったのだが、連日たくさん仕事をしているのでスマホのアラームにも気付かす眠っていた。
 
すると恵真はトントンと肩を叩かれた。
 
「エマちゃん、時間だよ、起きなきゃ」
 
と声を掛けてくれたのは、5-6歳くらいの和服の女の子であった。
 
「君誰?」
「私はサユだよ。そうそう。今日ナンバーズ買うなら8052を買ってね」
 
というと、その女の子は“鏡の中”へ戻って行った。
 
これが恵真と“おキツネさん”たちとのファースト・コンタクトだった。
 

↓ ↑ Bottom Top

この日恵真はパスポートを受け取る日だったので、昼間1時間ほど空いたのを利用し、仕事に付きそってくれていたマネージャーの村田さんに車で送ってもらい、新宿のパスポートセンターに行った。
 
申請した時の控えを出し、手数料を払って、パスポートを受け取った。
 
村田さんが待っている駐車場に向かおうとしていたら、宝くじ売場があった。今朝“サユ”さんに言われたことを思いだし、恵真はナンバーズの8052を買った。
 

↓ ↑ Bottom Top

19日にサユさんが出て来て以来、“鏡の中”から色々な子が出てくるようになる。
 
「エマちゃん、疲れてるでしょ?御飯買うの行って来てあげるよ」
「そう?じゃ頼もうかな」
と言ってお金を渡してからふと思う。
 
「そうそう。私のお弁当と朝御飯のほかに、君たち用に、お稲荷さんを20-30個買っておいでよ」
「いいの?」
 
などと言うと、お稲荷さんをどうもお店にあった分全部買ってきたようで、何だか大勢出て来て、みんなで美味しそうに食べていた。
 
これ以来、このマンション近くにあるコンビニでは、毎晩、深夜にお稲荷さんが売れるので、たくさん仕入れてくれるようになった!
 
また、恵真がこの部屋でフルートを吹いていると、いつも数人のおキツネさんが出て来ては恵真の演奏に聴き惚れているようだった。恵真はその小さなお客さんたちを前に本当にフルート奏者になった気分でフルートを吹いていた。
 
↓ ↑ Bottom Top


↓ ↑ Bottom Top

前頁 次頁目次

[*前p 0目次 #次p]
1  2  3  4  5  6  7  8  9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24 25 26 27 28 29 30 31 32 
春白(14)

広告:トランススイッチ-2013-winter-TSコミックス