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■春転(24)

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「実際、いったん1人になったんだよねー」
とMが言う。
 
「Nが消えた時点で、次に消えるのはボクだと思った。だから消える前に自分が生きた記念にと思ってヌード写真を撮ったんだよ」
とF。
 
「そうだったのか」
 
「そして完全に1人になるのは恐らく10月と言われた。それで2人のアクアがいる内に『君はダイヤモンド』を撮影した。あれは2人のアクアの記念碑の映画だった」
 
「それで僕たちの前に両方姿を見せたのか」
 
「もう時間が無かったから。映画の撮影が終わったのが11月2日だった。そして11月3日の夕方、とうとうボクたちは1人に統合された」
 
「え〜?」
 
「ボクはこの世から居なくなっちゃうと思ったから、アメリカに行って、もう日本には帰って来ないという話をしたんだよ」
 
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理史は言葉も出ないようである。
 

「ところが消えたのはボクだったんだよねー」
とMが言う。
 
「え!?」
 
「“アクア”は結局は男として生きていく道を選ぶと思った。だから消えるのはボクだと思ったのに1人になってみたらボクが残ってたからびっくり」
とFは言う。
 
「山村マネージャーとかはアクアが1人になってFだけ残ったと思っている。だから「アクアは女の子でした」という記者会見をさせようとしている。拒否してるけどね」
 

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「1人だけになってしまったのはショックだったけど、これからは頑張って1人で生きて行かなきゃとボクは決意した。ところがさ」
 
「また2人になっちゃったんだよねー」
とMが言う。
 
「実は11月から2月までは、1人になったり2人になったりを繰り返した」
「ああ・・・」
 
「なんか蛍光灯のランプが切れかかって、点いたり消えたりを繰り返すような感じだった」
 
「とりかへばや物語の撮影が当初遅れたのは、ほとんどの時間、ボクが1人だったから。でも撮影後半からは日中だけは2人でいられるようになって、撮影が進むようになった」
 
「それで何とか放送に間に合わせることができた」
 

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「1月以降は安定して2人だよね」
「たまに1人になってたりしてたけどね」
「その時どちらが残るかは、実は自分でコントロールする方法が分かったから、疲れてる方が“内側”に行って、元気な方が“外側”に出てお仕事するようにしていた」
 
「そして3月以降は一度も1人になってない」
とMは言った。
 
理史は考えてみた。
 
龍と道ですれ違って、パスポートを落としたので声を掛け話したのは映画のクランクアップの少し後だ。それはアクアが1人になったり2人になったりを繰り返していた時期だったのだろう。だから“アメリカに行く”=“自分が消滅する”という意味だったのだろう。
 
山梨の旅館で出会ったのは1月だ。その頃はほぼ安定して2人になっていた時期なのだろう。自分が消える心配が少なくなった所で、龍は僕と付き合い始めたのかも知れない。
 
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アクアMが「デザートに」と言って、一口サイズのフルーツケーキのようなものを出してきたので摘まむ。スペインのお菓子だと言っていた。
 
「この後、どうなるの?ずっと2人のまま?」
と理史は尋ねた。
 
「それは期待するなと言われてる」
とFが言う。
 
「いづれ1人になることは覚悟しておけと言われてる」
 
「千里さんは言葉を濁すけど、丸山アイさんは、2人ともずっと残る可能性もあるにはあると言った。でもアイさんも期待するなと言った」
 
「僕、その可能性に賭けていい?」
と理史が言う。
 
「ボクの卵子は冷凍保存している。もしボクが消えてしまった後でさ、もしボクの子供が欲しくなったら、その卵子を使って、誰か代理母さんに妊娠してもらえば、ボクの子供ができる」
とFは言った。
 
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「ボクの精子も保存されているよ」
とM。
 
「ボクの精子でサトシ君が妊娠してもいいけど」
「僕は妊娠できないよ!」
 

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「1人になった場合でも“フリップ状態”になる可能性はあるとアイさんは言った」
「フリップ?」
「身体はひとつなんだけど、ボクになったりMになったり」
「へー」
 
「実はさ、ボクたち、元々そういう状態だったんじゃなかろうかという疑惑もある」
「え〜?」
 
「こんなものがあるんだよ」
と言って、アクアFはまたラミネート加工された紙を出してくる。さっき見せてもらったのとは違うソフトで作成されたと思われるホロスコープが描かれている。
 
「あれ?」
「性別が女になってるでしょ?」
 
そのホロスコープには
 
“高岡龍子 女 2001/08/20 1421 神奈川県町田市”(原文ママ)
 
と書かれているのである。
 

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「お父ちゃん、高岡猛獅の遺品の中から見つかったんだよ」
「お父ちゃんはそもそもボクを女の子だと思っていたのではという疑惑がある」
「志水さんちで育てられている時に、お父ちゃんがボクに女の子の服を買ってきてくれたことがあったらしい」
 
「女の子と思い込んでいたから、こういうホロスコープを作ったのかもね」
「女の子だと思い込んでいたのは、ボクにちんちんが無いのを見ていたからかも」
「実を言うと、ボクが生まれた病院に残っていたカルテには、生まれた子供の性別が記載されていなかった。お医者さんはなぜ記載しなかったのかは覚えてないと言った」
「ボクを取り上げた助産師さんも、子供が男の子だったか女の子だったかは記憶が曖昧だと言った」
 
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「それにボクって、中学生時代はちんちん無かったんだよ」
「え〜〜?」
「そのちんちんの無い状態を、§§ミュージックの女子寮で、高崎ひろか・品川ありさ・米本愛心・月嶋優羽(つじま・ことり)とかに見られてる」
 
「当時は個室には風呂がなくて共同浴場だったからね」
「それでボクが男の子か女の子か確認しようと、何度も欺されて裸を見られた」
「それで女の子であることを確認された」
 
「正確に言うと、ちんちんがある時期もあるんだけど、無い時期もあった」
「むしろ無い時期の方が長かった」
「ちんちんが無い状態から唐突に出現する瞬間を彩佳に見られたこともある」
「安定してちんちんがあるようになったのは、実は3人に分裂した後なんだよ」
「だから元々ボクの性別って不安定だったし、今考えてみると、男の子のボクと女の子のボクが入れ替わりで表に出ていた可能性がある」
 
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「だから1人に戻った場合もMが表に出たりFが表に出たりする可能性はあるね」
 
「もしそうなった場合は、ボクが表に出てる時はサトシとセックスしてあげるね」
「セックス中にボクに変わってしまったらごめんね」
 
「いや、それてもいいから僕は君を抱きたい」
「ありがと」
と言ってFは理史にキスする。
 

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2人のアクアによる長い長い説明は食べ物を摘まみながら5時間くらいに及んだ。もう時刻は夜中0時を過ぎている。
 
「でも疲れたね」
「何か食べて寝ようよ」
「それがいい」
 
それでアクアMが冷凍ピザと冷凍小籠包をチンし、アクアFはジャスミンティーを入れた。ほたる焼きの茶器セットである。有田焼らしい。
 
それでしばらく、常滑舞音とか、羽鳥セシルの噂話などをした。
 

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0:30になる。
 
「じゃボクは帰るから、あとは二人でごゆっくり」
と言って、赤い服を着たままのアクアMは家を出ていく。
 
「車で帰るの?」
「うん」
「疲れてるのに大丈夫?」
「平気平気」
と言うと、Mは出て行き、やがて門が開く音がした。出て行ったようである。
 
「ボクたちも寝よう」
とFは言って、理史を誘って、いちばん南側の部屋に入った。
 
「取り敢えず“して”から寝ようよ」
「そだねー」
 
理史はFが消えてしまう可能性については何も考えないことにした。その時が来たら、自分はとても平静ではいられないだろうけど。でも自分が消えるかも知れないという中でFが生きているというのを考えると、Fが自分とのことにも、お芝居や歌にも、全力投球であることが分かる気がした。この子は自分が生きた証(あかし)を残したいんだ。
 
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八王子の新居を出た龍虎Mはガレージに駐めてある“アクアのアクア”#3 の“後部座席”に座ると、和城理紗に呼びかけた。
 
「代々木まで頼める?」
「OKOK」
 
それで和城理紗が運転席の所に姿を現し、この車を運転してMを代々木まで連れて行った。Mはその間ぐっすり眠っていた。
 
「着いたよ」
という声で目を覚ます。
 
「ありがとう」
と言って車を降りる。これが深夜1時半頃である。なお和城理紗はこのまま車をあけぼのテレビの巨大駐車場に回送するので、“地下の駐車場は使用しない”。
 
龍虎はエレベータで18階に昇りながら、
「もう10階の方に行くことはないんだろうな」
と思うと少し寂しい気がした。
 
彩佳たちとの“味噌汁の冷めない距離”の生活も、多忙な龍虎にとっては心癒やされることだった。
 
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「10階の方は安くてもいいから売却しようかなぁ」
などとも考える。
 

1803号の鍵を開けて中に入る、
 
抱きつかれてキスをされる。
 
「彩佳!?」
 
「お疲れ様。毎日お仕事大変ね」
と言われると今日は1日休暇だったので少し後ろめたい(ワーカホリック)。
 
「ごはん作っておいたよ」
「こんな遅い時間なのに」
 
「同じマンションに住んでたら、遅くなった時は10階に帰ってたけど、市ヶ谷だと深夜眠くなってるのに車運転して帰るの居眠り運転になる危険があるからさ。食事作って持ってきた後、遅くなったら、ここにそのまま泊まってもいい?朝運転して帰るから」
 
「まあいいけど(ダメとは言えないし)」
 
「じゃ、ごはん冷めちゃったけど温め直すから座って座って」
 
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と言われて、龍虎は取り敢えずリビングの椅子に座った。
 
彩佳がスープの入った鍋をIHにかけてタイマーをセットする。生姜焼きの乗ったお皿をレンジに掛ける。
 
「もう遅いから、ご飯食べたらすぐ寝ようね」
などと言いながら、龍虎のスカートの中に手を入れてから気付く。
 
「あ、ちんちん戻って来てる」
「昨日帰ってきたかな」
「じゃ、久しぶりに男の子として気持ちよくしてあげるね」
「何もしないで寝ようよぉ」
「うん。龍は何もしなくていいよ、私が全部してあげるから」
 
えーん。これって前より状況が悪化してないか?と龍虎は思うのであった。
 
それに桜井さん、そして理史に裸を見せるために、千里さんに男の身体に戻してもらったから(声変わりが起きないように睾丸は桜井さんに見せた後ダミーと交換してもらったけど)、ちんちんがあると無い時より運動量が大きくなりそう!
 
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実際には彩佳は朝、休日は本当に市ヶ谷に帰るが、平日はここから自分の大学に出て行くようになる。市ヶ谷からより、ここからの方がずっと近いのである!
 
大学が終わったら、いったん代々木に戻り、車を運転して市ヶ谷に帰る(?) そして3人で手分けして晩御飯を作り夜22時頃(これより早く龍虎が帰宅することはまず無い)、料理を保温用の発泡スチロールの箱に入れて車で代々木に運び、龍虎の帰りを待つ。彩佳の自転車は代々木のマンションに置きっぱなしである!
 
つまり彩佳は毎晩ここに来て泊まっていくので、Fは彩佳の居ない昼間しかここでは休めない!(Fにとっても状況は悪化したようである)
 
なお、彩佳的見解ではずっとここに居る訳ではないので同棲ではないらしい!?
 
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