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■春転(8)

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「それで私、M高校に連絡してみたんだよ。もし制服が間に合わなかったらどうすればいいかと」
「うん」
「そしたら、出来上がるまでは前の高校の制服で登校してもいいですよと。異装許可証を出してくれるらしい」
 
「前の高校の制服って・・・」
「帯広から送った荷物は11日には届くみたいよ。その中に向こうで作った制服も入ってるよね?」
 
「入ってる。ボクは要らないと言ったけど、お母ちゃんが記念に持って行きなよとか言うから」
 
「お母ちゃんって、昔から数紀の女装を喜んでいる気がする」
「多分女の子が欲しかったんじゃないかなあ。ボク小さい頃、結構スカート穿かされてたし」
「うん。よく穿いてた」
 
邦江が帯広の家を出て東京に出て来たのは2014年の夏で、当時数紀は小学3年生だった。彼は学校にはズボンで登校するが家の中ではわりとスカートも穿いていた。
 
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姉の目から見ても凄く可愛くて、お母ちゃんもこれだけ可愛ければ、この子にスカート穿かせたいだろうな、などと思っていた。だからほとんど冗談で
「ちんちん取って女の子になっちゃう?」
とも言っていた。たぶん彼は友だちとかからも、似たようなことを言われている。
 
その後の彼の“生態”は知らないが。
 
信濃町ガールズに入るのに去勢してと言われて普通の子は拒否すると思うが、この子は同意した。それは小さい頃から女の子の服を着ていた影響かも知れない。
 
「あんたスカート穿くのには抵抗ないと言ってたね」
「それで人前には出ないけどね」
 
ほんとかなぁ。この子がスカート穿いてても、友だちとかは今更驚かない気がする。
 
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「でも飛鳥の代役でだいぶ女の子の格好させられてる」
と邦江は指摘する。
 
「そうなんだよね」
 
「じゃ明日にも男子制服をあらためて頼むことにしてさ、それができるまでは明日届く荷物の中に入っているはずの向こうの高校の制服で通う?」
 
「女子制服で登校してしまったら、制服ができあがっても女子制服で登校するはめになりそうな気がする」
 
と数紀が言うので、この子、やはり女子制服で登校すること自体にはあまり抵抗が無いみたいと邦江は思った。
 
「できあがったらというかM高校の制服は既に夏服・冬服ともに揃っているんだけどね」
と邦江は言う。
 
「どうしよう?」
 
「やはりこの女子制服で通学する?どっちみち女子制服着るなら、前の学校の制服よりは、こちらの高校の制服を着たほうがいいと思うけど」
「それはそうだけど」
 
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「取り敢えず試着してみなよ。サイズ合ってるかどうか確認しよう」
「うん」
「ブラウスもお母ちゃんからサイズ訊いて買っといたよ」
「ありがとう」
 
それで数紀は(男物の)下着だけになり、ブラウスを着てから、取り敢えず冬服の女子制服を着てみた。着替える間は邦江姉は後を向いててくれた。
 
「リボンの結びかた分かる?」
「たぶん」
と言って、数紀は手際よくリボンを結ぶ。さすが頻繁に女の子の服を着せられているだけある。数紀はドラマなどでセーラー服や女子高生制服をかなり着ている。
 
もっとも服のサイズ確認にリボンまでは不要な気がする!
 
「ウェストはピッタリみたいね。アジャスターでプラスマイナス3cmくらいは調整できるみたい。あんた今ウェストは?」
 
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「分からないけど、12月に東京に来た時は59cmって言われた。飛鳥お姉ちゃんの服がそのまま着れる」
「あんた逆に男物の既製服が着られないね」
「中学の時もズボンは女子用のを穿いてた」
「なるほどねー」
 
女子用のズボンでこの子、トイレはどうしてたんだ?と邦江は一瞬疑問を感じた。
 
邦江が「記念写真」と言って、この制服姿の数紀を撮影する。本人は笑顔で女の子っぽい可愛いポーズを取っている!恥ずかしがってもいない。
 

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その後、夏服も着てみたが、夏服も特にサイズ的には問題無いようだった。夏服の写真も1枚撮った。
 
「じゃこの制服で明後日から登校する?」
と邦江は(わざと)訊くが
 
「やはり女子制服で登校しないといけないのぉ?」
と数紀は不安そうな顔である。
 
でも嫌がっている風ではない。ひょっとすると、後一押しすると、女子制服で通学すると言い出すかも知れない気がした。
 
「数紀が女子高生になるのなら、応援してあげるよ。女性ホルモンとかも調達してあげるし」
 
「女性ホルモンって飲むの?」
「おっぱい大きくなるよ」
 
「どうしよう?」
と数紀は悩んでいるようだ。女性ホルモンも嫌だとは言わなかったな。実は女の子になってもいいと思っているのでは?本当に去勢手術受けさせちゃおうか?
 
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でもこのあたりでいいかなと邦江は思った。
 

「まあ一応男子制服も調達したけどね。女子制服とどちらを着るかは自分で決めて」
 
「え?男子制服があるの?」
と数紀は“残念そうな”顔をして言う。
 
この子、やはり女子制服で通学したいのか?
 
「昨日これを受け取ってさ。それで今から男子制服をオーダーしてもたぶん最短でも4-5日は掛かるという話だったのよねー。今の時期は夏服作る子がたくさん居るから、工場がわりと混んでるみたいで」
 
「うん」
 
「でも卒業生から譲ってもらう手があると思ったのよ」
「そうか!」
 
「M高校はこの男子寮の“主”(ぬし)の木下宏紀くんの母校だからさ、彼にM高校の男子制服まだ持ってないかと訊いてみたのよ」
「うん」
 
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「そしたら、卒業式前日にお母さんに捨てられちゃったという話で」
「捨てられたってなんで〜?」
 
「女子制服で卒業式に出るようにということみたい。木下君は仕方ないから本当に女子制服で卒業式に出たみたいよ。写真も見せてもらった」
 
「女子制服も持ってたんだ?」
「持ってたけど、本当に女子制服で学校に行ったのは、その卒業式の日だけだって(本人が言うには)」
 
「へー。女子制服持ってたというのは、やはり女の子になりたかったの?」
 
「あの子は既に女の子になってると思うけどね」
「そうなんだ?」
「でもカムアウトしないね」
「やはりカムアウトって大変なんだね」
 
「あんたはカムアウトする?」
「ボクは別に女の子になりたくないんだけど」
 
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本当かな?
 

「まあそれで木下君はお友達何人かに問い合わせてくれたんだよ」
「わあ」
「そしたらまだ持ってて、譲っていいという子がいたから、もらってきてくれた」
「助かる〜!」
「という訳でそれすぐ特急でクリーニングに出したから、明日受け取れるはず」
「よかったぁ」
 
でも残念そうな顔してる!
 
「ただサイズが合わないと思うから、それ木下君、裁縫も得意だから、補正してあげるって」
「助かる」
「だから、この件は明日になったら、木下君の部屋405号室に行って、訊いてみて。御礼もよく言ってね」
「うん」
「クリーニングの控えも彼が持ってるから」
「分かった」
 
「ところで、あんたブラジャーとかはあるよね?」
「それも要らないというのに、お母ちゃんが荷物に入れてた」
「じゃ問題無いね。まあ男子制服も明日には確保できるみたいだけど、女子制服で通う気になったら、勇気を出して女子学生してね。あんた女子制服着たら、ふつうに女子高生で通るし。どっちみち、12日の朝は付いていってあげるから」
 
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「あ、うん」
 
「じゃ帰るね」
「ありがとう」
 
それで邦江姉はSCCのドライバーさんを呼んで女子寮に帰っていった。
 

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数紀は壁に掛けられた女子制服を眺め、少しドキドキした。自分のバッグの中から、1セットだけ密かに持ってきていた女の子下着(ブラジャーとパンティ)を取り出して身につけ、さっきも着たブラウスを着てから、女子制服を再度着てみた。部屋に据え付けの姿見に映してみると、我ながら結構可愛い気がした。鏡に向かってニコッと微笑む。
 
お姉ちゃんが男子制服を調達してくれなかったら、ボク明後日からこの服で通学することになってたのかなあと思うとまたドキドキする。
 
スマホで1枚自撮りしてから、女子制服を惜しそうに脱ぎ、スウェットの上下に着替え(下着は女の子下着のまま)、真新しい布団に潜り込んで寝た。
 
男子寮(男の娘寮?)の1日目であった。
 
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千里は2021年5月14日(金)から23日まで、日本代表候補の第4次合宿に入った。今回招集されたのは17名で、前回よりまた2名減っている。これから本番までの間にあと更に5名落とされることになる。
 
現時点で最年長は花園亜津子(1989.04.07=32)、次が玲央美(1990.08.17=30), その次が自分(1991.3.3=30)だ。かつてこの3人は最年少の代表候補で、実力はあっても年齢が上の選手を優先する指導者の方針で、大きな大会の直前に代表から落とされるという苦渋を味わった。しかしあれから10年ほどの時間が経ち、今や逆に代表候補の中の最年長になってしまった。
 
花の色は移りにけりな、いたづらに、我が身世にふるながめせしまに
 
などといった歌が脳裏をよぎった。
 
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常滑真音の招き猫の歌が海外でも話題になっているということで、FMIから海外版がリリースされることになった。§§ミュージックの歌手でFMIとの契約をしたのはアクアに次いで2人目である。取り敢えず次の2枚のCDを6月に出すことになる。
 
『とことこ・なめなめ・招き猫(oversea mix)/マネがマネのマネをした』
『舞音の招きマネキン/マネ・イズ・マネー』
 
舞音は英語・フランス語・ドイツ語・スペイン語・ロシア語・中国語(北京語)でこれらの歌を歌った(その後、広東語・タイ語・ベトナム語・タガログ語・ヒンディー語・インドネシア語でも歌うことになる)。
 
多数の言語の歌を歌ったので、舞音は
「もう頭の中がフライン語になりました」
などと言っていた。
 
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2021年5月19日(水)、"Ye-Yo"こと甲斐絵代子の待望の2枚目シングル『夢見る16才/Aejostar』(両A面)が発売された。
 
『夢見る16才』は松本葉子・松本花子の作品で、音源制作はシュールロマンティックの野潟四朗さんが指揮している。これは1月に出たロッテ・ショコエールのCM曲の第二弾である。
 
『Aejostar』(エーヨスター)は夢紗蒼依の作品で、音源制作の指揮は丸山アイである。音源制作は2月に終わっていたのだが、甲斐絵代子のマネージング体制が固まらなかったことから音源としての発売は延期されていた。しかし2月から中高生向けのファッションブランド“ラフラー・ドゥース”(La Fleur Douce)のイメージCM曲としてテレビなどで流れていて、この曲自体が待望の音源発売だった。制作した時は別のタイトルだったが、CM曲としてテレビやネットに流し始める直前に丸山アイが唐突にこのタイトルを思いつき、変更してもらった。
 
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『夢見る16才』はこのCD発売にタイミングを合わせてこれを使用したCMが放送され始めたのだが、『Aejostar』は既にかなり浸透していたこともあり、非常にたくさんダウンロードされることになる。その結果、デイリーランキングでは大したことが無かったものの、5/17-23ウィークリーランキングの1位となる28万枚を売って、甲斐絵代子は§§ミュージックのプラチナ歌手の仲間入りをした。§§ミュージックでプラチナを達成しているのは下記7人であり、甲斐絵代子は8人目のプラチナ歌手となった。
 
アクア、常滑舞音、ラピスラズリ、白鳥リズム、品川ありさ(以上はダブルプラチナ)、姫路スピカ・高崎ひろか
 
(以上最高到達枚数順)
 
ラジオ局などへのリクエスト、またネットストアからのダウンロードでは、明らかに『Aejostar』の方が圧倒的に多く、このヒットは『Aejostar』が牽引していることが分かる。
 
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この結果を受けて、コスモスと川崎ゆりこ・花ちゃんの3者は話し合い、今後の甲斐絵代子の制作に関しては、丸山アイもしくは彼女が忙しい時は彼女に親しい鹿島信子に制作の指揮をとってもらいたいという方針転換をすることになる。
 
花ちゃんは言った。
「楽曲自体の完成度は野潟さんが指導してくださったものの方が高いです。でもこの曲でエーヨは音程・リズムを正確には歌っていますけど、歌唱に勢いが無いです。失敗しないように、失敗しないようにと、萎縮して歌っているんですよ。アイちゃんの指導で吹き込んだものは、あちこち音を微妙に外してはいますけど、歌に勢いがあるし、エーヨは楽しそうに伸び伸びと歌っています。アイドル歌謡ではそちらが大事だと思うんてすよね」
 
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それで今後甲斐絵代子のメインプロデューサーになって欲しいとコスモスから打診された丸山アイは(やや後ろめたいので)快諾したものの「しまったぁ、あまりにも売れすぎた!」と叫んだとか!?
 
またこの方針転換には、常滑舞音の曲のほとんどが松本花子作品なので(あれだけ大量に楽曲を制作できるのは松本花子しかない)、甲斐絵代子は夢紗蒼依の方を使って、両者の路線を分けていこうという戦略も働いている。
 
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春転(8)

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