広告:ここはグリーン・ウッド (第5巻) (白泉社文庫)
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■春転(4)

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アクアがロミオとジュリエットの両方を演じる映画『星遮りし恋人』の撮影は、5月4日に終わったが、アクアは5月5日の1日だけお休みをもらって、郷愁村のコテージ“桜”で、2人のアクアだけで、のんびりとした1日を過ごした。
 
5月6日の午前1時!千里がアクアたちの泊まるコテージにやってきた。
 
「アクアちゃんたち、お仕事だよ」
「眠いですー」
「飛行機の中で寝てていいから」
と言って、2人をヴィッツの後部座席に乗せて連れ出す。そしてHonda-JetRedに乗せた。Redは1時間ほどの飛行で、午前3時頃、小浜市のミューズ飛行場に着陸する。アクアたちは実際機内でもほとんど寝ていた。
 
黒いインプレッサを《いんちゃん》に頼んで東京から回送しておいたので、その車に2人を乗せて、できたばかりの“鏡の迷宮”に連れて行く。そして写真撮影場所となるこの迷宮の中を案内してあげた。
 
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迷宮の中に2ヶ所、開(ひら)けた空間があり、片方にはお城、片方には(七人の小人の)山小屋が作られている。お城の中には、ガラスの靴が落ちている階段、魔法の鏡がある王妃の部屋、眠り姫が眠っている寝室などが作られている。Fは螺旋階段を登った所にある、塔の部屋の中で紡錘に指を当て
 
「あ〜れ〜」
などと言って、その場に崩れ落ちる。
 
「私100年の眠りに就いちゃったから、Mが理史のお相手してあげてね」
「ボクは男に抱かれたくないよ!」
 
などとやっていた。
 
千里は、龍虎が最終的に1人になってしまった場合、どちらが残っても女の子にしてあげた方がいいのではという気がして来た。女の子なら理史と付き合えるし、彩佳は龍虎が女の身体でも全く気にしないだろう。そもそも国民のほとんどがアクアは女の子だと思っている!
 
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アクアの性別に関する国民の認識統計(千里の想像)
 
アクアは男の子だったけど病気のせいで女の子に変わった 10%
アクアは男の子だったけど病気治療のため女の子になった 10%
アクアは半陰陽で女の子に変化した 25%
アクアは女の子になりたくて性転換手術を受けた 5%
アクアは元々女の子 50%
アクアは男の子 0%
 
アクアが普通の女の子にしては発達が遅いことから、半陰陽説というのは実は結構根強いのである。でもきっと多くの国民はそもそもアクアを女の子アイドルと思っており、“彼女”の性別には何の疑問も感じていない!
 
アクアにバレンタインを贈ってくる子たちの多くは
「アクア様は女の子だけど“設定男の子”なのよ」
などと認識しているようである。
 
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タレントには実年齢と数歳違う“設定年齢”を持つ人がいるので、それと似たようなもので「田代龍虎は女子だけどアクアは設定上男子」というお遊びだと考えているっぽい。
 
だいたいアクアの歌声を聞き、アクアの写真集を見たら、これで男子と思えというほうが無茶である。
 

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アクアたちを午前中3時間ほど掛けて迷宮内を案内した後は、旅館藍小浜の特別室に入れて、夕方まで休ませた。2人とも疲れが溜まっているのでぐっすり眠っていたようである。
 
夕方、写真家の桜井さんがコスモス社長と一緒に到着するので、千里、コスモス、アクアMで撮影のための打ち合わせをした。桜井さんは「この迷宮でアクアちゃんの美しいヌードを撮ろうよ」と勧誘していたが、この日の打ち合わせに出ているのはMのほうなので、最後まで断った。Fならヌード撮影に同意してしまうかもと思い、千里はわざとMの方を出席させたのである。
 

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翌5月7日(金)朝8時すぎ、帯広空港にHonda-JetRedが着陸した(アクアたちを小浜に運んだ後いったん郷愁に戻り、帯広まで飛んだ)。
 
天月和紗(桜木ワルツ)が降りてくる。そして空港ビル内で、厚手のトレーナーにジーンズのパンツを穿いた柴田数紀(高1)およびその両親・柴田純一郎・丹生夫妻と会った。取り敢えず、2階のレストランに入り、一緒に朝食をとる。その食事が終わってから、お話し合いをする。
 
「こいつも、色々悩んだけど、自分もふたりの姉同様に歌手を目指したいというので、芸能活動を認めることにしました」
とお父さんは言い、芸能活動承諾書を和紗に渡した。
 
和紗はその内容を見て、問題無いことを確認。封筒にしまって
「分かりました。書類は社長に渡します。ではご子息をお預かりしますね」
と言う。
 
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柴田数紀は高崎ひろか・松梨詩恩姉妹の弟である。数紀の父が離婚・再婚しているため、その関係は少しややこしくなっている。
 

 
なお、純一郎と亜矢子の離婚原因は純一郎が仕事にかまけすぎて家庭を顧みなかったことによるものであり、また丹生と知り合ったのは離婚後である。そのため亜矢子と丹生は仲は悪くなく、子供のことで連絡を取りあったりすることもあった。それもあって数紀は物心ついた頃から、一緒に暮らしている邦江だけでなく、時々父に会いに来る飛鳥も自分の姉と認識して育った。
 
また実は飛鳥と数紀はとても顔が似ている。どちらも父親似だが、この父親が「きっと若い頃は美少年だったんだろうな」と思わせる風貌である(多分今でも女装させたら普通の“奥様”に見える)。それで数紀は女顔なので、しばしば邦江や飛鳥の“妹”と誤解される。
 
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数紀は飛鳥と似ているので、飛鳥がアイドルデビューして以来、飛鳥のスタンドインやボディダブルをよくさせられている。女の子の服を着せられて「こんな服着るって恥ずかしいよぉ」などと言っていた。詩恩が出演する映画で、遠景を女子高生制服を着せた数紀で撮影したこともあり、つまり顔まで写っている。
 
年に3〜4回はそれで東京に呼ばれており、昨年のコロナ下でも§§ミュージックの専用機で帯広空港から羽田に飛び(郷愁飛行場のオープンは2020.11)何度もドラマや映画の撮影に参加した。その度に女の子の服を着せられ、その服は“お持ち帰り”になるので、実は女物の服が溜まって困っている!?頻繁にスカートを穿かせられるので、いつも足の毛は処理している。体育の時間など
 
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「柴田君、足の毛が無いんだね」
「ちょっと事情があっていつも剃っているんだよ」
 
などといったやりとりがあり、“やはり”女装趣味があるんだろうな、と思われていたりする。元々彼は小学生時代はいつも女の子に間違えられていた。トイレの場所を訊くと女子トイレの場所を教えられたり、プールで男子更衣室に入ろうとして「待った。そちらは違う!」と停められたりするのは、しょっちゅうであった。中学の時も(男子)更衣室で着替えの時に肩にブラ跡があるのを、多くのクラスメイトに見られている!
 

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「それとこれも書きました。精子は冷凍保存しましたので、キンタマもチンコも取っていいですので」
と父は和紗に言った。
 
「は?」
 
和紗が渡された書類を見ると「去勢手術同意書」などと書かれている。
 
私、柴田純一郎は、息子・柴田数紀が、男性器の除去手術をするのに同意します
 
などと書かれており、芸能活動承諾書と同様に署名・捺印がされている。
 
「えーっと・・・」
と和紗が戸惑っていると
 
「ガールズに入るには、ペニスまでは取らなくてもいいけど、睾丸は取らないといけないと姉から聞いたので。でも僕も覚悟を決めました。玉は取っていいです」
 
などと数紀は言っている。
 
和紗は言った。
 
「あのぉ、何か誤解しているようですが、別に信濃町ガールズに入団するのに睾丸を取る必要はないんですけど」
 
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「え?そうなんですか?」
と数紀も父も驚いている。
 
松梨詩恩が弟をからかって、そんなことを吹き込んだのでは?と和紗は思った。
 

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和紗は説明した。
 
「そんな中世の聖歌隊みたいな話は無いですよ。信濃町ガールズに男子メンバーは現在8人いますけど、睾丸取ってるのは、将来女の子になりたいと言っている2人だけです(既に女の子になっているのではという疑惑はあるが)。他の子は女の子になるつもりも無ければ、睾丸を取ったりはしていません。だいたいうちには西宮ネオンのようにちゃんと男性アイドルとして活動している子もいますよ」
 
ここで和紗が言う2名というのは、上田雅水と松元徳世(長浜夢夜)である。和紗は最近(密かに去勢していた)弘原如月が“女の子”生活に移行しつつあるのをまだ認識していない。和紗は(みんなが性転換済みと思っている)木下宏紀は(実は)睾丸を維持していることを千里から聞いて知っている。彼の睾丸は偶然か故意かは不明だが、機能不全だと思うと千里は言っていた。
 
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「そういえば西宮ネオン君がいますね!」
と数紀も今気がついたように言った。
 
「だからこれはお返しします」
と言って、和紗は手術同意書を“数紀に”返した。
 
数紀は「分かりました」と言って、それを自分のカバンに入れた。
 
(本人が持つということは、数紀が本当に睾丸を取りたくなった時はこの同意書を行使できることになる。もっとも彼は睾丸を取りたくなりそうには見えないが)
 

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誤解も解けた?ところでお茶など飲みながら、離陸許可の出るのを待った。
 
やがて10時すぎの離陸OKと出たので、9時半頃、パイロットと和紗・数紀がホンダジェットに乗り込み、帯広空港を離陸した。そして2時間弱の飛行で小浜のミューズ飛行場に到着した。
 
なお彼の荷物は既にまとめてあり、東京に向けて発送されているので、数日中には用賀の男子寮に届くものと思われる。彼は3階に入居する。
 
201 菱田ユカリ(中2)
202 須舞恵夢(中2)
203 204 205
 
301 柴田数紀(高1)
302 303 篠原倉光(高2)
304 末次一葉(中3)
305
 
401 弘原如月(高2)
402 松元徳世(中1)
403 404 上田雅水(中2)
405 木下宏紀(19)
 
501 西宮ネオン
 
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なお、彼はこの用賀の男子寮から歩いて行ける距離にあるM高校に編入させてもらえることが決まっている。男子寮からすぐの所にあるJ高校(ルキアや坂出モナ、それに弘原如月が通っている学校)にも照会してみたのだが、数紀の全国模試の成績を見て「申し訳無いがこの成績では」と断られてしまった。M高校のほうは入試で落とされるのは、面接の時によほど態度が悪かった生徒だけという学校で、聖子が3年間通ったS学園と似たようなレベルの高校である。S学園に入れたら近いし便利だが、困ったことにS学園は女子高である!
 
M高校は必要出席日数がわりと厳しめなので、聖子のような多忙な生徒には無理だが、一応授業を6時間目まで受けられる子であれば、卒業に苦労はしない学校である。中間期末は名前さえ書けば赤点になることはないという伝説がある(S学園より緩い)。実は木下宏紀の母校であり、現在篠原君もここに通っている。
 
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M高校側は、数紀の(4月に入学したばかりの)帯広市内の私立高校の書類、中学時代の内申書(重要なのは生活態度など)を見て、更にコスモスが個人的に保証人になると言うので、姉の高崎ひろか・松梨詩恩の2人とだけ面談して編入を認めた。M高校の制服は連休前にオーダーしており、本人が行けばすぐ受け取れるはずである。制服のサイズについては、父に連絡してFAXで送ってもらったものをそのまま業者さんに渡した。
 
 
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