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■春転(15)

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この日のプログラムはこのようになっている。
 
8:30 開会式(入場行進は省略)
8:40 1年生マスゲーム
9:10 100m競走(1→3年)
10:00 2年生マーチングバンド
10:30 運動部クラブ対抗リレー
10:50 3年生フォークダンス
11:20 応援合戦
11:50 学年縦断クラス対抗リレー
12:00 閉会式
 
フォークダンスでは手を繋がない!リレーに出る選手はプラスチック手袋をつけるなどの感染対策をしている。ゴールテープも使わない。賞状は後日渡し。時短のため、徒競走は例年200mだったのを100mに短縮している。また 800m, 1500m などの長距離走も外された。保護者が来場しないので、保護者参加種目も無い。
 
開会式は各クラスの代表だけが校長先生の前に並んで行われた。
 
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数紀は1年生のマスゲームに出た後、100m走に出たが1年生は先に終わるのでその後は校庭の隅でチアの衣装に着替えて(他の子も隅の方で着替えていた:男子は後向くの禁止らしい)、2〜3年の走者に声援を送った。2年生のマーチングバンドでは、音楽に合わせてチアはみんな踊っていたし、クラブ対抗リレーでも声援を送った。
 
3年生のフォークダンスが始まろうとしていた時、芙実ちゃんから
「次は応援合戦だから、その前にトイレ行っとこうよ」
と誘われる。
 
「そうだね」
数紀は何も考えずにそう返事して、一緒に校舎の方に行く。それで中に入り、トイレの前で「じゃ後で」と言って、男子トイレに入ろうとして所で、芙実ちゃんにキャッチされる(また胸を触られた)。
 
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「待て、どこに入る?」
「え?男子トイレに」
「スカート穿いてて男子トイレは無いわあ」
「え?でもボク男子だし」
「それ怪しい気がしてるんだけど。だってかずちゃんって触った感じが男の子の感触じゃないもん」
「そ?そう?」
 
「取り敢えずスカート穿いてる時は女子トイレ使いなよ」
「え〜〜?」
とは言ったものの、結局彼女と一緒に女子トイレの中に入り列に並ぶ。数紀が何の戸惑いもせずに、さっと行列に並んだのを見て、芙実と、1つ前に居た公佳が視線を交わして頷いていたが何だろうと思った。
 
結局3人でおしゃべりしながら待ち、公佳・数紀・芙実の順で個室に入るが、出る時は芙実の方が先に出た。数紀は待ってくれてた2人に「お待たせ」と言い、一緒に校庭に戻る。
 
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「やはり、かずちゃん女子トイレに慣れてるね?」
「そんなことないと思うけど」
「男子トイレには待ち行列とかあまり無いでしょ?」
「そうだっけ?よく分からない」
「女子トイレ内でも全然緊張もせずに普通におしゃべりしてたし」
「緊張するもんだっけ?」
 
芙実と公佳が緯線を交わしている。
 
「男子が噂してたけどさ、かずちゃんは、男子トイレで小便器を一切使わないって」
と公佳が言った。
 
「ボク、座ってするのが好きだし」
「実は立ってできないのではとみんな言ってる」
「えーっと」
 
「やはりかずちゃん、女の子なのでは?」
「うーん・・・・」(←なぜ否定しない?)
「女の子だったら、女子制服着てくればいいと思うなあ」
と公佳は言っていた。
 
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「女子制服持ってないの?」
「それは持ってるけどね」
 
芙実と公佳が頷いている。
 
「だったら着て来るといいよ。先生たちもきっと認めてくれるよ」
 
なお、数紀がチアの衣装をつけて女子トイレを使用したが、数紀は明らかに女子トイレ慣れしていたということ、更に数紀は女子制服を所有している、という情報がその日の内にクラスの女子全員に伝搬していたことを数紀は知らない。
 

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その後、組対抗の応援合戦が行われ、数紀はチアリーダーのフロント中央で熱いパフォーマンスをした。
 
その数紀の活躍もあり?2組がこの応援合戦には優勝した。
 
やったやったと言って、数紀は思わず隣の由美ちゃんと抱き合ってしまい、その後あわてて「ごめん」と言って離れた。「謝ることないよ。女の子同士じゃん」と由美ちゃんは笑顔で言っていた。
 

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2021年5月25日(火).
 
常滑真音初主演『舞音の招きマネキン』のドラマ第1回が放送された。
 
タイトルも見ずに何気なくテレビを点けていた人は、てっきり花咲ロンドが主役かと思うのだが、見ている内に、主役は、何のセリフも発せず、何も表情を変えない“舞音マネキン”であることに気がつく。
 
そしてブティックを舞台に繰り広げられるコメディ(?)とそれを陰で演出している舞音マネキンに引き込まれていく。
 
放送が始まった9:05くらいの段階では3%しか無かった視聴率が、終了する9:50頃には15%まで増えていて、これまで常滑舞音を知らなかった人にも「この子、何か不思議な子だ」といった印象を与えることになる。
 
この放送をきっかけに、ドラマの主題歌にもなっている『舞音の招きマネキン』のセールスがまた押し上げられることになった。このCDは5/24-30の統計で70万枚に到達する。この週だけで18万枚売り、週間ランキングの2位であった。
 
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1位については↓に述べる。
 

2021年5月26日(水).
 
常滑真音の5枚目のシングル『プレルージュ/ガラスのエンブレム/風読みシンドバッド』が発売された。
 
これは6月5日(土)に放送予定のアクア主演2時間ドラマ『シンデレラ』の主題歌・挿入歌と、K化粧品から新発売された新しい女子高生向けカラーリップクリーム“プレルージュ”のCM曲なので、商品の発売にも合わせてCDリリースされたものである。
 
『シンデレラ』の放送が6月5日(土)だから、6月2日(水)に発売する選択もあったのだが、その日はアクアのシングル『Natator Aqua/綺羅星の如く』が発売されるので、アクアの発売が優先され、舞音のCDは1週間前倒しにされたのである。
 
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取り敢えず舞音のCDは初日で15万枚売れ、ゴールドディスクとなり、またデイリー・ランキングの1位も取った。また5/24-30の週間統計では25万枚でランキングトップだった。
 
そして実はこの週は『マイルドな夜明け』も12万枚売れていて、これが3位となっていた。
 
つまり・・・この週は舞音のCDが1位・2位・3位を1人で独占したのである。(1『プレルージュ』2『招きマネキン』3『マイルドな夜明け』)
 
「おまえ独占禁止法違反や」
とベストソング(1人で3曲続けて歌った)の司会者ブリックリンからド突かれた。
 
この時、舞音はいきなりド突かれたのでよろけそうになり、後で「舞音ちゃん可哀想」とネットで非難の声があがる。それで翌週謝るという事態もあった。でも再度ド突かれた!舞音も今度は持ちこたえて「修行してきたな」と言われる。すると即「ミズノのシューズで鍛えました」と返したので「ちゃっかり宣伝してる」と言われる。
 
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ここで舞音はミズノのスポーツ用品のCMに出ている:この音楽番組のスポンサーにミズノのライバルになるような企業が入ってないことを瞬間的に判断している。
 

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舞音のCDは、ひじょうに短い間隔でリリースされているが、舞音自身はもっとたくさんの歌を歌っている。
 
『招き猫』で注目されたことから、舞音は現在、多数の企業からCMに出てくれというオファーが殺到しており、舞音は4-5月は数日おきに新曲を歌っている。それを全部はいちいちCDにできないので、これは6月くらいにアルバムにしてまとめて出そうかという話になっていた。
 
そんな話も進む中、5月28日(金)、舞音の専属バンド“招き猫”が発足した。これは、信濃町ガールズ最古参の木下宏紀が提唱したもので、彼がリーダーに指名された。メンバーは下記である。
 
Gt "Hiro" 木下宏紀(2002) (KB.Sax.Vn.Fl) Leader
Dr "Kura" 篠原倉光(2003) (Gt.B.KB.Vn.Fl)
B_ "Lucy" 平田留美(1997) (Gt.KB.Mar/Vib,Tp,Tb)
Pf "Basa" 谷口翼(1998) (Fl.Cla,Sax,Tb)
 
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木下・篠原は信濃町ミューズ卒業となる。また篠原は“春日ライト”の芸名を返上したので、バンド内では本名で活動する。
 
それで6月に制作しようと言っていた上述のアルバム(多数のCM曲をまとめたもの)は彼らが全て伴奏することになった。制作手順は舞音が多忙すぎることと、レコード会社から伴奏と歌は別録りと指定されていることから、↓の手順で行う。
 
舞音が自らキーボードを弾きながら仮歌を作る→それを聞きながらバンドで伴奏制作→それに舞音が歌を乗せる。
 
仮歌制作と伴奏制作では、醍醐先生または、その代理で名寄多恵(若生暢子)あるいはイリヤ工房の本山隆信さんが監修してくださる。雨宮先生は主としてPV制作に顔を出す!
 
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舞音は正直、名寄先生とも本山さんとも価値観が近いので、ホッとした。
 

柴田数紀は衣替えを前にした5月下旬の金曜日、教頭先生の所に呼ばれた。
 
「転校から半月くらい経って、少しこちらの生活に慣れた?」
「はい、おかげさまで。みんな親切ですし」
「友だちはできた?」
「はい、何人か」
 
芙実ちゃんとか由美ちゃんとか、公佳ちゃんとか、仲よくなったしと思う。
 
「そうだ。君にこれを渡しておく」
 
と言って、教頭は数紀に書類を渡した。
 
《1年2組柴田数紀は、女子制服での通学を認める。M高等学校長》
 
と書かれている。
「えーっと?」
「今は遠慮して男子制服で通っているみたいだけど、遠慮せずに女子制服で通ってもいいからね」
 
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「特に女子制服で通いたくはないですけど」
「何なら来週の衣替えから、夏服の女子制服を着たら?」
 
本来衣替えは6月1日だが、今年は5月31日が月曜日なので、31日からフライングして夏服を着てくる子もわりと居る。特にこの高校は“緩い”高校なので、そのあたりが自由である。
 
「えーっと、女子制服を着た方がいいのでしょうか?」
「それは君の気持ちに任せるよ。好きな方を着ていいからね。女子制服は持ってるんでしょ?」
 
「ええ、それは持ってますけど」
と数紀が答える、教頭は大きく頷いていた。
 
(普通の男子生徒は女子制服など持っていない)
 
「どちらを着てもいいから、制服を変更するの遠慮しないでね」
「はい」
「女子制服を着てきた日は女子トイレを使っていいから」
「分かりました」
 
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と言って、数紀は職員室を出たが、
「ボクやはり女子制服で通学しないといけないのかなあ」
と悩んだ。
 

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なお、数紀は、男子制服の夏服もオーダーして既に受け取っている。これを頼む時、邦江姉が付いていき
 
「この子は女子体型なので、ウェストとヒップの双方を測ってそれに合わせてください」
 
と特に指定した。そうしないと、ウェストだけ測って通常の男子体型で制作すると、絶対にヒップが入らない。でも受け取った時、洋服屋さんは
「時々女子でズボンを穿く人もいるんですよね」
 
と言っていたので“女子体型なので”と邦江姉が言ったことばを洋服屋さんは“女子なので”と聞いたようである。だいたい数紀の容貌なら何も言わなくても普通に女子と思われる。
 
そして実は、数紀は最初に女子制服を頼んでいるので、洋服屋さんのデータベースでは数紀は女子として登録されていることに数紀も邦江も気付いていない!
 
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