広告:まりあ†ほりっく 第2巻 [DVD]
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■春転(14)

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「この本宅だけでいいと思うなあ。これ水道とか電気とかは?」
「上下水道はもうつないでる。代金は和紗に言って、お前の口座勝手に登録したぞ。電気は太陽光パネルを屋根に並べたから、東電と契約しなくても電気は使える。ガスは危ないからやめとけ。調理はIHを使えばいい」
 
「それがいいかも」
と龍虎も言った。
 
家の中に入ってみる。
 
「広ーい」
と龍虎は声を挙げた。
 
「物凄く広いLDKですね」
 
幅は2間(けん)=3.6m 程度だけど、向こうの端まで20mくらいある。
 
「広すぎて落ち着かないかも知れないから、真ん中で2つに分割できるようになっている。こちらがLDKで向こうはラウンジだな」
 
「なるほどー」
「トイレはここと・・・向こうの端にあるのもトイレかな?」
「そうそう」
「お風呂はどこ」
「各部屋に付いてる」
「へ〜〜!」
 
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「この家はアメリカンスタイルだから、各部屋にトイレとバスルームが付いてるんだよ」
と言って、《じゅうちゃんさん》は手近の部屋を開け、中に2人を案内する。
 

 
「ほらここが洗面台兼脱衣所で、こちらがトイレ、こちらがお風呂」
「お風呂は日本式ですね」
「これ建てたのは日本人だからな」
「へー」
 
充分浸かって入れる深さのホーロー製バスタブが埋め込まれている。かなり広いし、シャワーは2個設置されている。2人で一緒に入れるようだ。
 
「まあこの家屋は余ってたの置いただけだから、お前の好みであらためて建てるぞ」
と《じゅうちゃんさん》は言ったが、龍虎は理史と顔を見合わせる。
 
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「わざわざ建て直さなくても、このままでいい気がする」
「そうか。じゃこのまま使うか」
 
「でも、こんなのどこに余ってたの?」
「知り合いの金持ちだよ。崩してマンション建てると言ってたから、崩す前にもらっていい?と聞いたら、どうぞどうぞと言うから、もらってきた」
「許可を取ったんなら、いいや」
 
理史はその建物を解体移築したのだろうかと考えたが、龍虎はその崩す予定だった建物をひょいと抱えて飛んできて、ポンと置いたんだろうなと想像した。山を崩したり、川を堰き止めて湖を造ったりするのが趣味な人たちだからなあ。
 
「10年くらい放置されてたから、だいぶ痛んでたのを補修したけどな」
 
元々痛んでいたのをきっと抱えて飛んでくる最中にも更に痛んでる。でも彼らが補修したのなら、雨漏りとかもしないだろう。人間とは違って微細なパーツのずれをちゃんと見抜く力を持っている。
 
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「じゃその移築費と補修代を払うよ」
「要らん要らん。こういうのは俺たちの趣味だから気にするな」
 
「そういえば、楽しいから建設するんだと言ってたね」
「千里にはだいぶ甘えて色々建築させてもらったけどな」
「それで千里さん、あちこちにたくさん体育館を建ててるんだ?」
「うん。ああいう大きな建物を建てるのは楽しい」
 
「まあ趣味ならいいか。借りにしとく」
「OKOK」
 

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龍虎は理史と一緒に家の中を見て廻り、それから表に出て“ハリボテ”の建物の中身を見たりしていた。しかし龍虎はふと気付いた。
 
「ね、この西の対(たい)との渡殿(わたどの)って、どこからアクセスするんだっけ?」
 
北の対・南の対は、LDK/Loungeから(ドアを設置すれば)アクセスできる。しかし西側は個室で埋まっていて、通路的なものがない。
 
「うーん・・・・」
と《じゅうちゃんさん》は考えていたが
「無理だな」
と言った。
 
《じゅうちゃんさん》らしいなと龍虎は思った。彼は2階建ての家を建てて階段を作り忘れたこともあると千里さんから聞いた。
 
「物置か何かにするかなあ」
 
「どっちみち本殿以外の3つの建物は不要という気がする」
と理史。
 
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「折角の力作だけど、北の対(たい)を崩して、そこにガレージを置けばいい気がする」
「うん。そうするか」
 
「南の対は使い道無いかな」
「歌や演劇の練習室でも造ったらどうだ?その内、お前赤ん坊産んだら子供が寝てる所では楽器の音出して練習できないぞ」
「ああ。それは使い道があるかも知れない」
と龍虎は言ったが、理史は何だか照れてる。
 
ボクが赤ちゃん産んだらという話で、照れたな?と龍虎は思った。
 

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「じゃ、そのあたりをまた調整しとくよ。そのあとで登記する」
 
本当にこれ登記できるのか?と龍虎は疑問を感じたが、彼らには何かやり方があるのだろう。建築確認とかも取ってないと思うけど、持って来てポンと置いたのなら、イナバの物置みたいな扱い?
 
「じゅうちゃんさん、そのあたりの作業代と言っても受け取らないだろうから、みんなのお酒代で300万くらい出すよ」
「おお、それは歓迎だ」
と彼は嬉しそうに言った。
 

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5月24日(月).
 
数紀や篠原倉光などが通う世田谷区のM高校では、体育祭が行われた。コロナの折、保護者の来場は無しとなり、そのため日程も平日になった。時間も午前中だけに短縮されている。実は昨年は体育祭そのものが中止になったのだが、今年は感染対策に充分気をつけて短時間で済ませようということで規模を縮小して実施することになった。感染を起こしかねない玉入れや騎馬戦・借物競走などは実施しない。
 
一週間前(5/17)、数紀はクラスの女子たちから
「かずちゃん、チアやってよ」
と言われた。
 
「ボクがチアガールなの〜?」
「だってかずちゃん、ダンス凄いうまいよね」
「そうかなあ」
「こないだの体育の時間もいちばん目立ってたもんね」
「でもボクあまり練習時間取れないけど」
「かずちゃんならたぶんちょっと練習するだけで覚えちゃうと思う」
 
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「24日の午前中、お仕事は大丈夫?」
「うん。特に学校休んでとかは言われてない」
「じゃよろしくー」
 
と言ってチアの赤い衣装が入ったビニールを渡された。
「今日練習があるの?」
「練習は水曜日からだけど、それまでに各自で洗濯しておいて欲しいのよ。感染対策」
「分かった。中身は・・・上着とスカートか」
「うん」
「これ結構短いスカートだね」
「チアは当然スカートの中が見えるからアンダースコート穿くんだけど、色は黒で統一しようと言ってるのよ。黒のアンダースコートとか持ってる?」
「うん。黒は持ってる」
「じゃ水曜日はこれ洗濯したのとアンダースコートよろしく」
「OKOK」
 
ということで数紀はスカートの衣装をつけることに何の抵抗も示さなかったし、アンダースコートを持っていることも明らかにしたので「やはりね」と女子たちは噂した(普通男子はアンダースコートなど持っていない)。
 
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水曜日(5/19)の昼休み。
 
「かずちゃん練習行こう」
「どこで着替えるの?」
「ここ(教室)で着替えるよ」
「更衣室閉鎖されてるし」
 
それで全員、教室後方の空きスペースに集まる。
 
リーダー格の由美ちゃんが「男子は前の方向いててね」と声を掛けて着替え始める。
 
「ボク後向いて着替える」
「かずちゃんなら気にしなくていいのに」
 
それで数紀は窓付近に行き、教室の外側を向いた状態で、制服の上着とズボン、ワイシャツを脱いで、チアの上着とスカートを身につけた。アンダースコートは実は朝から穿いて来ていた。
 
ちなみに男子用ボクサーの上にアンダースコートを穿くと、ボクサーがはみ出してしまう!ので、5秒ほど悩んだ末に、数紀は女子用ショーツの上にアンダースコートを穿いて今日は出てきている。実はアンダースコートを着けたまま出て来たのは、着替える時にショーツを穿いてるのを見られないようにである。
 
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(でもアンダースコートからパンツがはみ出てないことで、男子下着ではないものを着けていることがバレバレ)
 
なお、そういうのを着ていると必然的に小便器が使用できないが、数紀は元々小便器を使用しないので全く問題無い!
 

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数紀がチアの衣装に着替えた所に、芙実ちゃんが後から抱きついてくるので、数紀は思わず「わっ」と声をあげた。抱きつかれた時に胸も触られた気がしたが、気にしないことにする。実は今日はショーツを穿いた解析学的延長?でブラも着けていた。
 
「着替え終わったね」
「うん」
 
「おお、可愛い可愛い」
とみんなから言われる。
 
「さ、行こう行こう」
と芙実ちゃんが数紀の手を握って、一緒に練習場所に向かった。
 
普通の男子なら女の子に手を握られたらドキドキするのだが、数紀は詩恩のスタンドインで女子生徒の役をたくさんして、共演者の女子と手を握ったりハグしたり!するのに慣れているので、特に何も感じない(既に女性に対して不感症になっている:不感症はたぶん幼い頃から)。
 
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運動会の応援は「縦割り」なので、各学年の1組(白)・2組(赤)・3組(青)・4組(黄)・5組(緑)が一緒にチームを組む。2組のチアは赤い上着と赤いスカートである。
 
数紀たちは3年2組の女子たちから基本的な動きやフォーメーションを教えてもらった。
 
それで少し練習していたら、3年生が数紀に目を留める。
 
「あんた、凄く動きがいいね」
「この子、アイドルの卵なんですよ」
と芙実ちゃんが言う。
 
「それでか。あんた前面で踊ってよ」
 
それで数紀は最前列に上げられたのだが、最終的には前面中央で踊ることになった。数紀の隣で踊ることになった子には見覚えがあった。
 
「お早うございます、東野ミリオさん」
 
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WaterFly20のメンバーで東野ミリオである。彼女は2年生だ。ドラマの撮影で一緒になったことがある。
 
「お早う、って、あんたは松梨詩恩ちゃんの妹さんか!東京に出て来たんだ?」
 
弟なんだけどなあ。でも訂正するのも面倒だ。
 
「覚えていてくださってありがとうございます。柴田数紀です。先日水森ビーナという芸名を頂きました」
「おお、可愛い名前だ」
 
という芸能人同士の挨拶は置いといて、彼女はさすがに上手いので、数紀は彼女に負けないように一所懸命踊った。
 
「あんたたち2人とも凄いよ。これは応援合戦はうちが優勝するかもね」
と3年生のリーダーの女子が笑顔で言っていた。
 

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数紀はその後、金曜日(5/21)の練習にも参加した。
 
土日はCMに出たり、先輩たちの音源制作のコーラス要員などの仕事をしていた。土曜(5/22)の午前中は羽鳥セシルちゃんが主演するお菓子のCMに共演(女子高生の制服っぽいのを着た)し、午後は水谷雪花・鈴鹿あまめと3人で常滑真音ちゃんの歌のコーラスを入れた。これは数紀でも充分出る音域だったので、普通に歌うことができた。
 
日曜(5/23)は午前中にアクアちゃんが主演するソーラーパネルのCMに共演した。なんか貫頭衣みたいなのを着た。原始時代っぽい雰囲気。アクアは女神様みたいな衣装だった。真っ白いドレスである。上半身は絞っているので結構バストが目立つ服だ。腰から下は大きく広がる。あと何の意味があるのか知らないが、おでこの所にヘッドライトのようなものをつけていた。
 
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午後からは姉・高崎ひろかの音源制作でコーラスを入れた。これは長浜夢夜(松本徳世)ちゃんと2人だった。昨日のはユニゾンで歌ったのだが、今日はパートが分かれている。夢夜がソプラノパートを歌い、数紀がメゾソプラノを歌う、夢夜ちゃんは睾丸を取っているだけあって、伸び伸びとしたハイソプラノの声が出ている。「凄いなあ」と思いながら、一緒に歌っていた。
 
そういえば、自分も小学生の頃、姉たちから「あんたの声が声変わりするのはもったいない。声変わりする前に睾丸取っちゃおうよ」と随分言われたなと思い出していた。
 
ボクもあの時、睾丸取ってたら、夢夜ちゃんみたいな感じになってたのかなあなどと数紀は思っていた。でもそうしたら今は女子高生になっていたんだろうかと思うとドキドキした。
 
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月曜日(5/24)は体育祭の本番だった。
 
「あれ?ミリオちゃんは?」
「なんか急に仕事が入ったらしい」
「え〜?」
「だから、今日はフロントは数紀ちゃん1人でお願いね」
「ひゃー」
 
数紀の左側は3年生のリーダーの人でこの人は結構うまい。右側は同じクラスの由美ちゃんで、彼女はバレエ経験者らしく、手足の先がピシッと伸びて美しい。それで数紀を中心にこの3人が実質的なフロントになってこの日のパフォーマンスをした。
 
数紀が2組の前面で踊っていると、3年2組の篠原倉光が目を留めて
「なんか凄い動きのいい子がいると思ったら、数紀ちゃんか」
と言う。
 
「どうもどうも」
「でも数紀ちゃん、スカート穿くのは平気なのね?」
「え?スカート穿いたら、何か問題あるんですか?」
と数紀はキョトンとして訊いているので、篠原君の方が返答に困った!
 
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