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■娘たちのエンブリオ(22)

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「私もあの子が男の子だなんて、いまだに信じられない」
と高崎ひろかは言う。
 
「でもあの時脱衣場で遭遇したのなら、絢香ちゃん(品川ありさ)もアクアちゃんに裸を見られたということは?」
 
「えっと・・・」
と考えてからありさは答えた。
 
「あの時は私は脱ぎかけだった。だから下着までしか見られてない」
 
するとコスモスは更に言う。
「あの子、そういう訳で外見上は女の子の身体にしか見えないから、お風呂入る時も男湯に入るの拒否されて」
 
「いや、あの子が男湯の脱衣場にいたら摘まみ出されると思う」
 
「まあそういう訳で、小学校の修学旅行では女湯に入ったらしいよ」
「マジですか?」
「そんなのいいの?」
 
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「あの子は性的に未分化なんだよね。だから女の子の裸とか見ても何も感じないらしい」
「へー!」
「昔話の王子様とお姫様のどちらに感情移入するか?と聞いたら分からないと言う」
「うーん・・・」
 
「要するにあの子は戸籍上は男の子だけど、身体的にはほぼ中性なんだな」
「なるほどー」
 
「だからあの子に裸を見られても全然問題無い。小学校にあがる前の男の子がお母さんに連れられて女湯に入っているのと同じだよ」
 
「ああ」
「だったら問題無いか」
 
「でもそれであの子が急いでお風呂からあがった理由が分かった。何だか急いでいたのよね。ゆっくり入っていればいいのにと思ったんだけど」
 
「自分が絢香ちゃんの裸を見ることにならないように、早く上がったんだろうね」
とコスモスは言った。
 
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「ところで、邦江ちゃん」
と品川ありさは意味ありげに言った。
 
「あれ勘弁して〜!」
と高崎ひろか。
 
「何?」
とコスモスが尋ねる。
 
「高崎ひろかちゃんはですね、もしアクアが男の子だったら、裸で山手線一周する、とおっしゃったのですが」
と品川ありさ、
 
「何それ〜〜〜?」
「だって、まさかあの子が男の子だなんて、考えられないじゃん」
 
「さて、約束を果たしてもらおうか?」
「そんなことしたら逮捕されるよぉ」
「女に二言は無いよ」
 

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コスモスは笑っていたが、ふと思いついたようにして言った。
 
「じゃ、山手線一周すればいいよ」
「本当にするんですか?」
「山手線一周を電車でするとは言ってないんでしょ?だったら山手線に沿って車で一周すればいい」
「車!?」
 
「私が運転してあげるよ。私のロードスターじゃ後部座席が無いから、社長のベンツSクラスを借りようかな。それで、ひろかちゃん、後部座席に乗って、裸になれば、夜中ならまず外側からは見えないから。それで山手線に沿って一周してこよう」
 
「それなら行けるかも」
「12月だけど、エアコン入れていれば風邪は引かないよ」
「仕方ない。やろうかな。コスモスさん、それお願いします」
と高崎ひろかは言ったが、品川ありさが言った。
 
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「それ私も付き合うよ」
「え?」
「私も裸で一緒に後部座席に乗る」
「え〜〜〜!?」
「だって邦江ちゃんだけにやらせるの可哀相だもん」
 
「ふーん。だったらアクアも裸にするか」
とコスモスは言った。
 
「え〜〜〜!?」
「ついでに私も裸になってあげよう」
「うっそー!?」
「アクアをあの日、本来は男子禁制の研修所に連れて行ったのは私だからね。その責任取って私も裸になるよ」
 

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コスモスは千里に電話した。かいつまんで話をすると、千里は笑って、そのドライバーを引き受けると言った。
 
「これ紅川さんに知られたら大目玉をくらうと思う。だから紅川さんには、ひろかちゃんがありさちゃんにステーキを奢ったことにしておこうよ」
「ああ。それがいいですね」
 
「それで夜中の走行は昼間と違って色々気をつけないといけないことが多いからさ、コスモスちゃんが運転していて事故でもあったらいけないよ。私がやった方がいいと思う。ミニバンか何かを持って行くから」
 
「済みません。お願いします」
 
そういう訳でミッションは12月9日の深夜実行されたのである。
 
なお、この日、千里はレオパルダの練習は休ませてもらった。
 
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夕方トヨレンでWISHを借りて、まずは熊谷市まで行き、龍虎を乗せて都内まで戻り、夜食を買い込んでから、夜遅くなるまで江戸川区葛西のマンションで待った(龍虎は中学生なのでこの時間にはファミレスに入れない)。23時頃、コスモスを彼女のマンションに迎えに行く。コスモスは“脱ぎやすい”ようにワンピースを着ていた。コスモスもたくさん食糧を買い込んでいた。2人には3列目に乗ってもらった。そして夜中の0時に足立区の§§プロ研修所まで行った。
 
深夜の外出なので、社長の奥さんには話を通している。新人3人組の親睦を兼ねて深夜に少しドライブをして、夜食を取ってから帰宅するということにしてある。奥さんもコスモスが一緒で、しかも醍醐春海がドライバーということで了承してくれた。深夜になってしまったのは、みんな日中は予定が詰まっているからというので納得してもらっている。
 
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なお、高崎ひろかはここに住んでいるのだが、品川ありさは今日、仕事が終わった後、こちらで1泊することにして電車でこちらに入っている。
 

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高崎ひろか・品川ありさが出てくる。コスモスは玄関まで出てきている社長の奥さん・知世子さんに挨拶した。コスモスが車に戻り、ひろか・ありさが2列目に乗り込む。千里はすぐに車を出した。
 
「2人ともお疲れ様」
とコスモス。
「済みません。その節は私の性別のこと説明してなくて申し訳ありません」
とアクアは謝っている。
 
「やはり女の子の声だよね?」
「声変わりしてないので」
「お医者さんの見立てではこの子が声変わりするのは多分20歳頃」
とコスモス。
「本当に男の子なの?」
「まあ脱いでみれば分かるね」
とコスモスが言う。
 
千里は近くの公園の駐車場に車を停めた。
 
それでアクアは服を脱いだ。ひろか・ありさは後ろを振り向いてそれを見ている。
 
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「ブラジャーしてるじゃん」
「すみません。治療薬の関係で胸が膨らんでいるので」
 
ブラジャーを外す。
 
「その胸、Bカップはある」
「一時はAAカップくらいまで縮んでいたんですが、こないだ薬を変えたらまた膨らんじゃって」
「中1でそんなに胸があるのは女の子でも少数だと思う」
 
パンティを脱ぐ。
 
「ちんちん無いじゃん!」
「というか割れ目ちゃんあるじゃん!」
 
「ちんちんは肌の中に埋もれているんですよ。割れ目ちゃんみたいに見えるのは、陰嚢が縮みすぎて真ん中がくびれてしまったからなんです」
 
「ねえ、それもう男性機能は既に死んでいるのでは?」
「お医者さんは少しずつ睾丸が発達していけば、それにつれておちんちんも大きくなってきて、ふつうの男の子みたいになるだろうと言ってくれました」
と龍虎は言うが
 
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「まあちんちんはその内生えてくるかも知れないけど、体型は男の子みたいにはならずに、ずっと女の子みたいな体型のままというのに1票」
と千里が言っている。
 
「まあそういう訳でこの子は暫定的に女の子みたいな体型だけど、その内、ひょっとしたら男の子みたいな身体になるかも、という状態かな」
とコスモスは言った。
 
「でもこの子が男湯に入れなくて、女湯に入れられてしまう理由は分かるでしょ?」
と千里が言った。
 
「うん。この身体なら女湯に入るしかないと思う」
「あんた、女の子の裸見ても何も感じないと言ったね」
「はい。何も意識しません」
 
「試してみよう」
と言ってコスモスが服を脱いでしまう。それを見ても龍虎の表情は変わらない。少し恥ずかしがっている感じなだけである。
 
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「コスモスさんが裸になっても、それ男の子が女の裸を見る視線じゃない」
「ふつうに女同士で、スタイルのいい女性の裸を見て見とれている感じ」
「おっぱい大きくていいなと思っちゃった」
と龍虎は言っている。
 
「やはりあんたおっぱい、もっと大きくしたいんだ?」
「そんなことは無いんですけど・・・」
と言って龍虎は恥ずかしそうに俯いた。
 
絢香と邦江は顔を見合わせた。
 
「結局、アクアちゃんが男の子だというのは、戸籍上の話だけのような気がする」
「アクアちゃん、まだ睾丸あるのなら、もうそれ取っちゃったら?」
「え〜〜?」
「もうそのまま女の子の身体になっちゃえばいいじゃん」
「そうそう。ちんちんがクリちゃん並みに小さいのなら、それそのままクリちゃんということでいいし」
「結婚する前にヴァギナを造れば完璧だよね」
 
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と言われて龍虎はドキドキしている。ボクまさか男の人と結婚するなんてことにはならないよね?などと思っている。なおダイレーションはこないだ病院の医師(?)に言われたように毎日やっている。こんな大きなもの入れて痛くないだろうか?とも思ったが全く痛くない。
 
「女の子になっちゃった方がいいって、私小さい頃から、何万回言われたか分かりません」
「ああ。何万回も言われるだろうなあ」
 
「でもアクアちゃんがそういう身体なら、私も脱いじゃおう」
と言って、邦江は服を脱いでしまった。
 
「じゃ私も脱ぐ」
と言って絢香も裸になってしまう。
 
むろん座席の陰になるので、ひろか・ありさの裸は龍虎からは見えない。ひろかたちが2列目、龍虎を3列目に乗せたのは、そのためである。龍虎が見てしまうのはコスモスの裸体だけである。
 
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「じゃ私も脱ごうかな」
と千里が言ったが、
 
「醍醐先生はヌードで運転していたら、捕まります!」
とコスモスが言ったので、千里は結局下半身だけ脱いだ。
 
「醍醐先生もちんちんは付いてないですね」
とわざわざ覗き込んだ邦江が言っている。
 
「実は付いてたけど、取っちゃったんだよ」
「マジですか?」
 
「醍醐先生はよくそのジョーク言ってますけど、嘘だというのは、お友だち(実はマリと美空)の証言で明らかです」
とコスモスは言っていた。
 

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それでともかくも、コスモス・アクア・ありさ・ひろかが全身ヌード、千里も下半身ヌードの状態で千里は車を出した。
 
まずは上野駅まで行く。ここでコスモスが駅の写真をLumixで撮影した。
 
「どっち周りで行く?」
と千里が訊くと
「時計回り。つまり外回りで」
とコスモスは言った。
 
「時間が進んでいくように、この子たちの芸が進化していくように」
「なるほど。実は今日WISHを持って来たのも、ここにいる5人の望みが叶うようにという思いを込めてなんだよ」
「わあ、そうだったんですか!」
「じゃ次は御徒町」
 
それで一行はこのように山手線に沿って時計回りに一周したのであった。
 
上野→御徒町→秋葉原→神田→東京→有楽町→新橋→浜松町→田町→品川→大崎→五反田→目黒→恵比寿→渋谷→原宿→代々木→新宿→新大久保→高田馬場→目白→池袋→大塚→巣鴨→駒込→田端→西日暮里→日暮里→鶯谷→上野
 
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コスモスが全ての駅の写真を撮影した。
約2時間の深夜の旅であった。
 

車内では「裸の付き合い」で、みんな龍虎とコスモスがもちこんだおやつを食べながら楽しくおしゃべりして過ごした。
 
「でも裸の付き合いといったらお風呂だよね」
「これもしかして最初からお風呂でやってもよかったかも」
「そうすると、アクアを女湯に入れることになって他の人の目に曝すからやばい」
「あ、そうか、アクアちゃんは建前上男の子ということになってるのね」
「建前でなくても男の子ですー」
「いや。あんたは99%女の子だ」
 
「だいたいこうやっておしゃべりしていても、女の子と話している感じしかしない」
「ボク、友だちが女の子ばかりなんですよぉ」
「まあそうだろうね」
 
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おやつは食べるが全員、飲み物は控えていた。この状態でトイレに行きたくなっても、裸で降りられない! 念のため緊急用のトイレ(ジェル状に固まるタイプ)は10枚も積んでいたが、使うハメになることは無かった。
 

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上野まで戻ってきた後は、足立区まで戻ってから公園に停め、全員ちゃんと服を着た。そして公園のトイレにみんなで行ってきた!むろんアクアは女子トイレを使用した。「君が男子トイレに入って行ったら確実に襲われる」と絢香が言っていた。
 
「でも楽しかった」
と車に戻ってから言う。全員居るのを確認して車を出す。研修所に向かう。
 
「みんな仲良くなったね」
「裸の付き合いしたもんね」
「アクアちゃんがほぼ女の子であるなどという重大な秘密を知ってしまった」
 
「でもこれは秘密ね。今夜のことも」
とコスモス。
「特に社長には絶対言えないですね」
と絢香。
 
「今度どこかで次は着衣でパーティーでもしましょうよ」
「あ、それ4月になる前にやりたいです」
 
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「邦江ちゃん、妹さんも連れておいでよ」
とコスモスが言う。
「いいんですか?」
「あの子もここのルーキーのひとりだし」
「じゃ、あの子の都合のつく日をコスモスさんにお伝えしますから、それで調整できます?」
「OKOK」
 
「また深夜になったら、今度は研修所でやりましょう」
「うん。それでもいいね」
「研修所のお風呂にみんなで入りましょう」
「そうか!その手があった!」
 

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