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■娘たちのエンブリオ(18)

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もちろん審査員は全員10点をつける。50点満点になったのは本騨真樹、ヒロシに次いで3人目である。
 
「50点満点です。50点満点の人はこの番組終了後、病院に入院して性転換手術を受けてもらうことになっています」
と司会者。
 
「嫌です」
とアクアはほんとに嫌そうに言った。
 
「これは拒否できないんだけど」
「でしたら、ボクの代わりにどなたか視聴者の方で希望の方に性転換手術を受けさせてあげてください」
 
とアクアが言うと司会者はディレクターを見る。ディレクターがOKサインを出している(ところをカメラが映す)。
 
「それでは性転換手術を1名様、プレゼントします。希望の方はここに出ている住所にハガキで応募してください」
と司会者は言った。あとで編集でテロップで宛先を入れることになる。
 
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メールとかtwitterではなく古典的なハガキでの応募にするのは悪戯で大量に応募が入るのを防ぐためかな?とアクアは思った。でもボクの代わりに性転換手術を受ける人って、どんな人になるかな?
 
とアクアはこの時思ったのだが、この「性転換手術プレゼント」はテレビ局内の倫理委員会の許可が下りず、ボツになってしまった。放送では「ごめんなさい」のテロップが流れることになる。
 

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アクアはそのまま雛壇の最後に座った。
 
そして最後に大林亮平の女装が披露され、審査員たちはノリで全員満点をつけた。
 
その後、審査員が集まり、協議している(ふりをする)。それで「決まりました」と言うので、司会者は全員を並ばせて、ひとりずつ紹介した。ただしここに並んだのは23人いた。本来出場者は20人なのだが、大林亮平がハプニングで出演することになったし、また万一今日の出演者に放送までの間に不祥事などがあった場合に備えて、2人予備で女装させられていたのである。
 
「それでは性転の女王を発表してください」
と司会者は言った後で付け加える。
 
「なお、性転の女王に選ばれた人は、ただちに性転換手術を受けて頂きます。既に病院ではお医者さんがスタンバイしています」
 
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出場者同士がお互い嫌そうな表情で顔を見合わせている。アクアもドキドキしたような顔をしている。
 
「それでは発表します。性転の女王は、10番・ハルラノの慎也さん」
 
「はあ!?」
と本人が大きな声をあげる。
 
「だって俺0点だったじゃん」
「点数は点数として性転の女王に決定しました」
 
「それではハルラノの慎也さんにはこれから性転換手術を受けてもらいます。連れてって」
 
と司会者が言うと、屈強な警備員(役の人)が2人出てきて、慎也を拉致して連れていく。
 
「ちょっと待ってくれ〜。いやだぁ! 性転換なんてしたくない。助けて」
 

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「それではこれで番組を終わります。でもみなさんきれいでしたね」
と司会者は言ったが、審査員長がそれを遮って発言する。
 
「もうひとつ特別賞をあげます」
「はいはい」
「20番・とても可愛い女装を披露してくれたアクアちゃんに特別賞を差し上げます」
 
「ああ。それはいいですね」
 
それで荻田さんがアクアに賞状とトロフィを渡した。
 
「副賞はウィングのランジェリーが買える商品券100万円分です。君女の子にしか見えないし、可愛い下着を着けて女を磨いてね」
 
と言うと、アクアは頭を掻きながらも笑顔で副賞の目録を受け取った。
 
「なお、ハルラノの慎也君の性転換手術の様子は、お正月明け1月2日の特別番組『これが性転換だ』で放送します。お楽しみに」
 
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と言って司会者は締めくくった。それで番組は終わったが、撮影終了後、出演者の中から質問が出る。
 
「あれ、慎也はマジで性転換されちゃうの?」
「マジです。ペニスと睾丸を除去して、ヴァギナとバストを作ります。顔も整形します。それで可愛い女の子に生まれ変わるはずです」
「それ無理。あいつの顔をどう整形したって可愛くはならないよ」
「強制性転換手術とかやって、テレビ局訴えられない?」
「大丈夫です。自分が可愛くなって、きっと泣いて喜びますよ」
「そうだ。鉄也君、結婚したいとか言ってなかった?」
「結婚したいという声があがっていたのはヒロシだな」
「慎也が女になっても結婚しないよ。アクアちゃんとなら結婚したいけど」
 
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と鉄也は言っている。鉄也が冷静なのでここにいる多くの人が、強制性転換手術というのは、やはりフェイクなのだろうと思ったようである。
 
しかし突然結婚したいと言われてアクアは、かぁっと赤くなった。
 
「いや、アクアちゃんと結婚するなんて犯罪だ」
「ロリコン犯罪者は去勢だな」
「そうだ。鉄也も性転換して女漫才になったら?」
「やだ」
 
「ちなみにアクアちゃん?君、本当は女の子ということは?」
「男の子ですぅ」
「アクアちゃんは男の子ですけど、この後、自宅から男物の服は全部撤去することになっていますから、3学期からはセーラー服を着て学校に通ってね」
と司会者の古屋が言うと
 
「え〜〜?マジですか?」
とアクアが困ったような顔で言った所までしっかり撮影されていて、後日放送されることになる。むろん他の出演者は笑っていた。
 
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ところでこの撮影の中で、
 
「院長先生の息子役じゃなくて、娘役に変更しましょう」
 
と司会の古屋が言ったが、翌12月2日に、自分の番組とも関わってくるので未編集のビデオを見せてもらっていた橋元プロデューサーはここの部分を見て、唐突に思いついた。
 
すぐ§§プロの紅川社長に電話する。
 
「神田ひとみちゃんの代役の件なんですけど」
「はい?」
「ちょっと考えたんですが」
「はい。その件は本当に申し訳無いのですが、先日もお願いしたように神田ひとみの代わりに新人の高崎ひろかでという線で何とかご了承頂けないでしょうか?」
 
「そうじゃなくてさ、アクアちゃんにそれやらせない?」
「え?娘役をアクアですか?」
「そうそう」
「すみません。アクアは男の子なので女の子役というのは困ります。彼は佐斗志役で」
「違う違う。アクアちゃんにはもちろん佐斗志役もしてもらうけど、合わせて友利恵役もしてもらう。つまり一人二役」
 
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「え!?」
 
紅川は驚いたものの、橋元の意見を聞いた瞬間、確かにこの子は男女両方の役ができそうな気がした。しかしアクアを女装させる番組でテレビ初登場させることに渋々同意したのに、更にドラマでレギュラーの女の子役をさせると、アクアは“色物”と思われてしまう危険があると思った。それで渋るのだが、元々は神田ひとみの突然の降板でテレビ局に迷惑を掛けることになってしまっているという負い目がある。それで紅川は承諾したのである。
 
そしてすぐにコスモスとアクアを呼んだ。ふたりは都内で別の放送局との打合せに行っていたのだが、紅川から呼ばれて、その打合せ終了後、事務所に戻ってきた。それでアクアに友利恵と佐斗志の2役をして欲しいと言うと、
 
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「そんな!私に女の子役とかできませんよ」
と言った。
 
しかしコスモスは少し考えてから言った。
 
「アクアちゃんに女の子役ができないということだけは絶対に無い」
「そうでしょうか?」
「私はむしろアクアちゃんに男の子役ができるかを心配している」
「うっ・・・」
 

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その日の内に、紅川・コスモス・アクアの3人で橋元の所に行った。
 
「ちょっとこのセリフを読んでみてくれない?」
と言って指し示されたのは、友利恵のセリフである。
 
「もう、佐斗志ったら、使った後はきちんとマーガリン片付けてよね。外に出してたら悪くなっちゃうじゃん」
 
とアクアはセリフを読み上げた。
 
「完全に女の子の口調だね」
と橋元は感心している。
 
「ええ。女の子が言っているように聞こえました」
とコスモスも言う。
 
「次はここを読んでみて」
と言って佐斗志のセリフを指し示される。
 
「そんなの気が付いたらしまえばいいじゃん。姉貴もいちいち細かいなあ」
 
とアクアは台詞を読んだ。
 
「男の子の口調だ!」
「男の子が言っているように聞こえる」
 
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「僕が思った通りだ。この子、男女2役行けますよ」
と橋元。
 
「やらせますか?」
と腕を組んで考えていた紅川も言った。
 
「それで行きましょう」
「でもアクアは女の子の役はできるかも知れませんけど、女子高生を演じられますかね?」
とコスモスが訊く。
 
「年齢の問題か!」
「この子、小学生でもまだ通るから。女子高生の制服を着せても高校生に見えないです」
 
「うーん・・・」
と考えていた橋元はやがてこう言った。
 
「分かった!女子中学生にしましょう。そして佐斗志が兄で友利恵が妹にすればいいんですよ」
 
「へー!」
「姉と弟から、兄と妹に転換ということで」
 

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そういう訳で、これまで10代の4人は
 
上原家
友利恵(高3)神田ひとみ
佐斗志(中3)アクア
黒間家
純一(高3)岩本卓也
舞理奈(中3)馬仲敦美
 
となっていたのを
 
上原家 佐斗志(中3)アクア
友利恵(中1)アクア
黒間家
純一(高2)岩本卓也
舞理奈(中2)馬仲敦美
 
と変更する。姉弟から兄妹に変えたのは、アクアに演じさせる場合、どちらも中学生でないと無理なので、年子にならないよう中3と中1にせざるを得ないのだが、その場合、中2の舞理奈と中1の佐斗志が恋し合うのは不自然になること。といって、馬仲の年齢では中学1年を演じるのは無理があることから、長幼を逆転させるという方法を橋元は思いついたのである。
 
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なお、演じる人の実年齢は(来年の誕生日が来た時点で)岩本20歳、馬仲16歳(高1)、アクア14歳(中2)である。
 
結果的に「同級生」という設定は捨てざるを得なくなった。それで教室内のシーンを想定して書いていた脚本部分を習い事や部活のシーンに改変することになった。純一と友利恵はどちらもエレクトーン教室に通っていて、同じクラスに入り親しくなる。佐斗志と舞理奈は英語部で、文化祭の英語劇『ロミオとジュリエット』のロミオ・ジュリエットを演じて、お芝居の中のセリフにお互いの心が重なり合っていく。
 

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12月1日(月).
 
&&エージェンシーは前日契約解除申入書を提出した吉野美来(光帆)を解雇すると発表した。理由はXANFUSの制作に非協力的で、信義に反するからというものである。そして美来の違反に基づく契約解除だから、違約金を1億円払えと要求してきたのである。
 
多くの人が唖然としたのだが、美来は冬子から1億円借りて、わざわざ現金で事務所に持参して支払った。
 
しかしおかげで、横浜網美・原田知佳・平手涼世・日野奈美の4人掛かりで、確かに1万円札が1万枚あることを確認するのに1時間掛かった!悠木朝道社長が銀行の封印のある100万円の札束もバラして全て本当に1万円札なのか確認しろと言ったからである。
 
しかも社長は万一後で千円札が混じっていることが分かったら数えた奴に弁償させるぞ、などと言ったので日野奈美が「私弁償できないよぉ」と泣くのを、横浜が「その時は私が奈美ちゃんの分まで出してあげるから」となだめていた。
 
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しかしこれで美来は自由の身になった。それで美来は織絵と一緒に∞∞プロ系列の@@エンタテーメントと契約。新たなユニットΦωνοτον(フォノトン)を結成した。@@エンタテーメントは、神崎美恩・浜名麻梨奈とも作詞作曲契約を結んだ(年間最低12曲はΦωνοτονに提供する契約。それ以外に書くのは自由)。これでXANFUSから解雇された8人の内の4人が再集結したことになる。Purple Catsの4人は実は今丸山アイのキャンペーンに同行しており、そちらの仕事が一段落したら、やはりここに合流するものと思われた。
 

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龍虎はその日、お風呂空いたよという声に着換えを持ってお風呂場に行った。脱衣場でトレーナー、Tシャツ、スカートを脱ぎ、ブラジャーを外してパンティを脱ぐ。そして浴室に入り身体にシャワーを掛ける。
 
あの付近を洗う。
 
今までとは全然洗い方が違うなあと思った。
 
この中も多分きれいに洗っておかないといけないよな、と思いそこを開いて、シャワーを当てながら指で優しく洗う。こうちゃんさんの仕業だと思うけど、困るよなあ、と思う。こんな所見られたら。これほとんど女の子みたいなんだもん。でもクリちゃんとかヴァギナとか、女の子には存在するはずのものも見当たらない。要するに中性状態なのかな?
 
おしっこが物凄く後ろから出るのには最初戸惑ったけど、少し慣れたかな。
 
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