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12月5日(金).
アクアは“健康診断”を受けてくれと言われて病院に行った。付き添いとして秋風コスモス、ローズ+リリーのケイ、★★レコードの北川奏絵も来ている。実はアクアがあまりにも女の子っぽいので、本当に男なのか確認して欲しいと★★レコードから言われて連れて来られたもので、北川は確認役なのだが、本人はそのことを知らされていなかった。病院に来てから
「ボク何をすればいいんですか?」
とアクアが言うので
「お医者さんに龍ちゃんの身体を見せて、少し検査したりして、龍ちゃんが間違いなく男の子であることを確認したいということなんだよ」
とケイが説明する。
アクアはそれを聞いて「やばい」と思った。今自分の身体を見られたら“間違いなく女の子であること”が確認されるだろう。
「万一ボク、女の子だと言われたらどうしよう?」
「その時は女の子には余分なものを取る手術をして女の子アイドルとしてデビューすればいいんだよ」
「嫌です」
とアクアは本当に嫌そうに言った。その言い方を見て北川はやはりこの子はただの美少年で、別に女の子になる気は無いんだろうなと思ったようである。
アクアは大いに焦っていた。しかしその焦りを顔に出したりはしないだけの演技力を持っていた。
取り敢えず採尿・採血から始まる。自粛して男子トイレに入り、個室の中でおしっこを紙コップに取る。その時、こうちゃんさんの声が脳内に響いた。
『安心して受診しろ。医者は俺の仲間だ』
へー!
それで処置室に行き、採血をしてもらう。それから泌尿器科に行った。コスモス・ケイ・北川の3人が付いてくるが、全員女性なのでクロススクリーンの向こうにいる。お医者さん?が龍虎に
「ズボンとパンツを脱いでベッドに横になって下さい」
と言う。
それで龍虎はズボンとパンティを脱いで横になった。ほとんど女の子と同じ形のお股が顕わになる。しかし医師は言った。
「確かに男性器はありますが、発達が遅いようですね」
「私、小さい頃大病をしたので発達が遅れているんです」
「なるほどねぇ。その影響で発達が遅いんだろうね。でも君の睾丸はこれ小学4年生くらいのサイズだから、その大病をした時よりは大きくなっているようだね。だから、その内、ちゃんと思春期も来て男の子らしくなるよ」
と医師は龍虎の割れ目ちゃんをアルコールで消毒しながら言った。
「ペニスは小学1年生くらいのサイズだね」
と言いながら医師がガラスの容器の中から、おちんちんのようなものを取り出すのでびっくりする。むろん表面的には平静を装う。
「小さいなとは思ったりします」
「男性ホルモンを処方しようか?」
と言いながら医師はそのおちんちんを根本の側から、龍虎の身体にグイっと埋め込んでしまった。ただし短いので先端が皮膚の中に埋もれている。これってこの春くらいまでのボクのおちんちんのサイズだ、と思った。人が見たら一見女の子のクリちゃんに見えるだろうけど。
「ホルモン的な治療はしたくないんです。自分の自然な発達に任せたいので」
と龍虎は言った。
「なるほど、君がそう思うのであればそれでもいいと思う。睾丸はちゃんと少しずつ大きくなってきているから、これは睾丸がある程度のサイズまで到達したら、そこから出る男性ホルモンによってペニスももっと大きくなるだろうね」
そんなことを言いながら彼は別のガラス容器から何か細長い臓器のようなものを取り出し、白い弾力性のありそうな棒を、まるで鞘に刀を収めるかのように差し込んだ。そしてそれを龍虎の割れ目ちゃんの奥の方にぐいっと押し込む。身体の中に明確にそれが入ってくる感覚が物凄い快感だった。何?この感覚!?
医師はそれを龍虎の身体に埋め込んだ上で、白い棒は取りだした。丁寧に洗いビニール袋に入れて軟膏でも入っているような容器と一緒に龍虎に渡す。
《このダイレーターはこれから1ヶ月くらい、寝る時にきれいに洗ってからこのクリームを塗って膣に入れて寝て。朝起きたら取り出していいよ》と書いた紙をお医者さんは見せた。
ちょっと待って。膣って・・・そんなのあるなんて、まるで女の子みたいじゃん!
「念のため、胸も見せてもらえますか?もうパンツとズボンは穿いていいですよ」
「はい」
それで龍虎はパンティーとズボンを穿いた上で、今度はトレーナーとカットソーを脱ぎ、ブラジャーを外した。春頃からは小さくなったものの、まだAAサイズくらいあるバストが顕わになる。
「胸の形は普通の男の子ですね。乳首も小さいし、君は間違い無く男の子だよ」
と言いながら医師は龍虎の両方の乳房に何か注射をして液体を注入した。その液体の分、乳房が膨らむ!
何かこれ、男の子であることを確認するための診察じゃなくて、ボク女の子に改造されてない!?困るんですけどぉ!
注射が終わると医師は龍虎の胸を少しマッサージした。その上で医師はメジャーで龍虎の胸を測定した。
医師は Under 69 Top 81 B70 と紙に書いて龍虎に渡した。更に「ブラジャーは預かるから」書いた紙を見せるので、龍虎はブラジャーを渡す。実際問題としてこんなに大きくなっちゃったら、今着けてたブラでは入らない気がした。新しいの買わなきゃ、などと考えている。
「もう服を着ていいですよ」
と言うので、ノーブラでカットソーとトレーナーを着た上で、バストサイズを書いた紙と、さっきの白い棒、軟膏をバッグにしまった。
「じゃ精子の品質を調べたいので、ちょっとそちらの部屋で精液をこれに取ってきてください」
と医師は言う。それで龍虎は容器を持って個室に入った。
さて・・・これどうすればいいのかな?と思って容器を持ったままベッドに腰掛ける。おちんちんはさっき取り付けてもらったので復活したけど、タマタマが無いので射精のしようがない気がする。もっとも龍虎は射精した経験自体が無い。
部屋の中に何だか雑誌が置いてあるので何だろうと思って見たら女の人のヌード写真が載っているのでドキッとする。
しかし龍虎はその写真を見て「きれーい!」と思った。
いいなあ。こんなに胸が大きくて、などと思って眺めている。そしたら突然肩をトントンとされたので、ギョッとする。
振り向くと《こうちゃん》である。龍虎はホッとため息を付いた。
『この子が凄いぞ』
と言って《こうちゃん》は龍虎が持っていた雑誌のページをめくる。
『ちょっと大きすぎる気がします』
『俺は大きいのが好みだ』
『ここまであったら肩がこりませんか?』
『だからワイヤー入のブラジャーが必要なのさ』
『それより、ボク女の子になりたくないのに、なんか膣を作られちゃったし、おっぱい大きくされちゃったし』
『いいじゃんか。今度子宮と卵巣も埋め込んでやるから』
『そんなのあっても困ります!』
『まあいいや。これを医者には出せ』
と言うと《こうちゃん》はビニールに入った液体を龍虎が持つ容器に注いだ。
龍虎が頷く。《こうちゃん》はそれで姿を消した。龍虎は少し考えてからスマホで時計を見て、5分経つのを待ってから個室を出た。容器を医師に渡す。
「ご苦労さん。普段はだいたいどのくらいの時間で出る?」
「7-8分でしょうか」
「中学生なら、そのくらい掛かる子もいるよ。じゃ検査に回すね。次はMRI室に行って」
カーテンの向こうでは、北川が
「出すまで結構時間が掛かったみたいね。私、自分の時計で見てたけど10分ちょっと掛かった」
と言っている。
「声変わりがまだ来てないことからも分かるように、たぶん性的な能力もまだ弱いから、出すのにも時間が掛かるんでしょう」
とケイが言っていた。
MRI室では、やはり付き添いは女性なので、廊下で待っている。龍虎は今日の検査のポイントは、男性の付き添いが居ないことだよな、という気がした。平常心でトレーナー、カットソー、ズボンを脱ぎ、パンティだけになった。
「あら、ブラジャーはしてないの?」
「はい。してません」
「中学生でしょ?いつもブラしておいた方がいいわよ」
と女性看護師が言い、それを廊下で聞いていたコスモスとケイが苦笑していた。
龍虎はそれで検査着を着せられ、MRIに入れられた。龍虎はこれに入るのはもう慣れっこである。ドンドンドンドンという大きな音がする中、ぼーっとしていた。やがて終わったようで機械の外に出される。龍虎は服を着て廊下に出た。
その後、臨床心理師さんから、多数の質問をされるが、これはガチで答えていった。これはケイたちも聞かなかったようである。これで検査は終了である。2時間ほど待って下さいということだったので、ケイたちと一緒にお昼を食べた。
やがて呼ばれて診察室に行く。これにはケイたち3人も同席した。
「陰茎、睾丸、陰嚢、前立腺といった男性器は全て存在します。卵巣、子宮、膣、陰唇、陰核などは存在しません。完全に男性の性器形態です」
と医師は言った。
「良かったぁ」
と龍虎は半分マジで言った。
「心理的にも完全に男の子ですね。女性ホルモンは中学生男子の正常値を少し超えていますが、問題無い範囲。男性ホルモンは中学生男子の正常値からかなり低いですが、小学4年生男子の標準値ですね。実際そのくらいの年齢並みの性的発達の度合いだと思われます」
「性染色体はXYで間違い無いです。ですから遺伝子的にも間違い無く男性ですね」
「それもボク、あんたはXXだとか言われたらどうしようと思った」
と龍虎。
「遺伝子的にXXの男性は普通に居ますし、本人が男性として精神的に発達していれば、そのまま男性として生きて行くことを私たちはお勧めしています。でも患者さんの場合はXYですから、男性であることは疑いの余地もないですね」
今日の診断内容を医師は診断書としてまとめてくれた。それを北川が持ち帰って間違い無くアクアは男の子でしたと報告するであろう。
龍虎は緊張感から解放されホッとしたのかトイレに行きたくなる。自粛して男子トイレに入るが、誰も居なかったので助かった。人がいたら絶対女子トイレに行けと言われる。個室に入り、おしっこをするのだが、え!?と思う。
おちんちんを取り付けてもらったから、てっきりそこからおしっこが出ると思ったのに、おしっこは今までと同じ場所から出るのである。
このおちんちん、おしっこには使えないの〜〜?
そんなことを思いながら、龍虎が結構焦っていた頃、廊下で待っていた北川がこんなことを言っていたのを龍虎は知らない。
「でも今日1日、あの子を見ていて私は確信した。あの子は男の子の心と体のまま、女の子のアドバンテージだけむさぼろうとしている」
12月7日(日).
紅川は都内江戸川区にある天羽飛鳥の自宅を訪問した。飛鳥の母、姉の柴田邦江、北海道から出てきた邦江と飛鳥の父・柴田純一郎も同席した。
「先日、帯広を訪問した時には、邦江さんに妹さんがいるとは聞いていなかったので、びっくりしました」
と紅川は言う。
「済みません。あの時は同居している者だけ言えばいいかと思ったものですから」
と父は恐縮している。
「うちの両親が、私も飛鳥もまだ幼い頃に離婚して、母は東京の実家に、父は仕事をしている帯広に残ったんですよ。子供も1人ずつということになって、飛鳥は母の許に行き、私が父の許に残りました」
「その時、まだ5歳だった邦江が私に言ったんです。まだ幼い飛鳥にはお母さんが必要だから、自分がお父ちゃんの所に残りたいって」
と父は言う。
「小さい2人に悲しい思いをさせてしまって本当に申し訳なかったです」
と母が言う。
「その後、母は弟さんが結婚してその奥さんが実家に同居したから、母は飛鳥と一緒に実家を出てこのアパートで暮らしているんですよね。父は今のお母さんと結婚して、弟が生まれて。だから今の状態は少々ややこしいですね」
と邦江。
「姉と数紀の姉弟だけ知っている人の所に私が出て行くと、数紀ちゃん性転換したの?と言われることがあります」
と楽しそうに飛鳥は言う。
「数紀の方が年下だから、背丈も飛鳥とあまり変わらないんだよね。それにふたりとも父親似だから、顔つきも似ているし」
と邦江は言う。
「姉貴はお母ちゃん似なんだよね」
と飛鳥。
「それでいかがでしょうか?飛鳥さんも、タレントをやってみる気は?」
と紅川は言う。
「いくつか問題があるのですが」
とふたりの父は言った。
「自分の娘にこういうことを言うのも何ですが、飛鳥は邦江ほどは歌がうまくないんですが」
「歌は聞かせて頂きました。お姉さんの方は本格歌手として売り出せるくらいの歌唱力をお持ちですが、確かに妹さんの方はそこまで上手くはないです。でも、リズム感がとてもいいと思いました」
「あ、私、歌は音程がずれるけど、ダンスとかは結構自信があります」
と飛鳥。
「年齢的に言って、お姉さんは来年から高校生ですし、その年齢域の歌手はある程度の歌唱力を求められます。でも妹さんはまだ中学生なので、多少歌が上手くなくてもでも許容されるんですよ。リズム感がいいということは、ずっと練習していれば結構上達する可能性が高いと思うんですね」
と紅川が言うが
「それはあまり自信無いです」
と飛鳥本人は言っている。
「飛鳥はわりと演技がうまいです。小学生の間でも、毎年学習発表会で、準主役的な役柄をしているんですよ」
と邦江が言う。
「それは主役より多分上手かったんですね。主役はどちらかというと、クラスの人気者とか、女王様タイプの子が取ることが多いので」
と紅川。
「まあ、あの歌でもいいのなら、そのあたりは本人のやる気の方が大事ですけどね。飛鳥やるの?」
「やりたい」
と飛鳥は言った。
「お前もいい?」
とふたりの父が飛鳥の母に訊く。
「本人がやりたいのならね。この子、お姉ちゃんがデビューするというので、もらってきたPVとか見て、私もこういうのやってみたーい、って、こないだから何度も言っていたんですよ」
と母。