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■娘たちのエンブリオ(21)

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(C)Eriko Kawaguchi 2019-01-01
 
12月12日。那覇マリンセンター(定員3200)で今年のローズ+リリーのツアーは始まった。ローズ+リリーのライブは、マネージャー?の秋乃風花さん総指揮の下、★★レコードの氷川さん他数名、UTPの甲斐窓香さん、そして沖縄のイベンターの人たちが動き回り進行していく。幕間ゲストの小野寺イルザさんはライブが始まって少ししてから楽屋にやってきた。
 
コスモスとハグし、勢いでアクアともハグしてから、コスモスがアクアを彼女に紹介した。
 
「へー。『ハートライダー』の後番組に出演するんだ?」
「あれは3年間お疲れ様でした。小島秋枝がF1を走る姿を見たかったんだけどね〜」
「まあそのあたりは想像してもらうということで」
「イルザちゃん、個人では何に乗っているの?」
「ポルシェ991買っちゃったよ。長期ローンで」
「すごーい!」
「プライベートで富士スピードウェイを結構走っている」
「気持ち良さそう!」
「コスモスちゃんはロードスターだったよね?」
「よく覚えてるね〜!」
「サーキット行かないの?」
「それは未体験だ」
「気持ちいいよ」
「そうそう。このアクアもポルシェ持ち」
「嘘!?あんた何歳?」
「この子のお父さんが996 40th Anniversary Editionに乗っていたのよ。お父さんは亡くなっているんだけど、この子はそれを引き継いで所有だけしている。実は醍醐春海さんに車は預かってもらっているんだよ」
「わぁ!そこに醍醐先生が絡むのか!」
 
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「この子のデビュー曲は、ゆきみすず作詞・東郷誠一作曲という名義だけど、実は葵照子・醍醐春海ペアが書いた」
「ああ。あの人たちは仮名(かめい)書きが多い」
とイルザも笑っている。
 
「じゃ18歳になったら免許取ってポルシェ走らせるの?」
「この子は契約書で30歳になるまで運転禁止」
「厳しいね!」
「運転の練習はさせるけどね。壊しても惜しくない車で」
「ああ。それはしておいた方がいい。解禁になっていきなり事故る子多いから」
「ありがち、ありがち」
 
「でもお父さん、亡くなっているんだ?大変だったね」
「いえ。優しい人たちに大事にしてもらえたから」
「それは良かった」
 
「でもこの世界に来る子って、家庭環境に色々あった子も多いよね」
「まあお互いにね」
 
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ちなみにコスモスはアクアが男の子であることを説明するのを忘れていた!
 
なお、3人がいるのは女性用控室である!
 

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ライブは最初「幕を開けたら観客が誰も居ない」というドッキリ企画から始まり、仕切り直しで観客を入れてから再度オープニングの『サーターアンダギー(沖縄バージョン)』を演奏する。それから『花の里』『花の祈り』と続いて、その次が『雪を割る鈴』である。
 
近藤うさぎが運転するトミーカイラZZ-EVが舞台下手から出てきて、中央付近よりやや左手側に停まる。運転席が近藤うさぎ、助手席が魚みちるなのだが、実はアクアは魚みちるの足元に隠れている!(定員オーバー)
 
近藤うさぎ・魚みちるのペアが車から降りて、ゆっくりとしたテンポの曲に合わせて踊り出す。やがて大きな鈴を持った男性スタッフ3人が鈴をステージ中央まで運んでいく。この曲はまだほとんど知られていないので、観客は何だろうという感じで見ている。
 
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「アクアちゃん出て」という風花さんの指示でアクアは車の床に置いていた剣を持ち、車の中から出た。観客のざわめきが心地よい。曲を聞きながら待機するが、下手に居る風花さんの合図で、アクアは大きく剣を振りかぶって「えい!」という声とともに鈴の割れ目の所に剣を当てた。
 
たちまち鈴が割れて、中から多数の鈴が飛び出す。バンドの音楽がアップテンポに変わり、近藤・魚のダンスも激しいものに変わる。アクアは剣を置いて近藤・魚ペアの横に行き、一緒に踊り出した。
 
実は鈴を割った後どうすればいいかというのは指示されていなかったのだが、ここは踊るんじゃないかと瞬間的に判断したのである。アクアがしっかりダンスしているので、近藤うさぎが感心したような顔でアクアを見ていた。
 
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終曲。
 
「ダンサー、近藤うさぎ・魚みちる、そして鈴を割ってくれた人は、アクア君です。彼は4月からΛΛテレビで放送される『ときめき病院物語』に出演予定です」
 
とケイが紹介してくれた。しかし観客がざわめくのでケイは追加説明をした。
 
「念のため言っておきますが、アクア君は間違いなく男の子です。女の子ではありません」
 
「えーーー!?」
 
「でも女の子みたいに可愛いですね。多分女の子になりたい男の子ではないと思います。だよね?」
 
「女の子になったら?とかよく言われますけど、僕はその趣味は無いです」
とアクアがまるで女の子のような声で言うと
 
「可愛い!」
という多数の女性観客の声があがった。
 
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いきなり1000人くらいアクアのファンが生まれた感じでもあったが、この時点で観客たちはアクアを声変わり前の小学生タレントと思ったような感じはあった。
 

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後半のステージを楽屋で聞いていたら、加藤課長から言われた。
 
「トイレ行くのにロビーに出てきた観客の声を聞いてたら、アクアちゃん、凄い話題になってるよ。既にツイッターにもこんなに書かれている」
 
と言って加藤さんは自分のスマホをアクアとコスモスに見せる。
 
「わぁ・・・」
「このツアーの中でどこかもう1回くらい登場しない?」
 
それでコスモスがスケジュールを確認すると、12月21日(日)はローズ+リリーは富山公演なのだが、午前中で雑誌社の取材が終わるので、その後、移動すれば間に合うことが分かる。
 
「じゃ、その日お願い」
「でも誰かその日は既に予定されていたのでは?」
とコスモスは尋ねる。
 
「あ、それは大丈夫です。この鈴割り役って、全部直前に誰かにお願いしてますから」
と氷川が言った。
 
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「へー!」
「誰も適当な人が見つからなかったら、観客の中から選ぶという趣向なんです」
「なるほどー」
 
「だったら、やろうか?」
とコスモス。
「はい」
とアクアは答えた。
 
それでコスモスは予定をwikiに入力していた。それでアクアはもう一度ローズ+リリーの公演に付き合うことになった。
 

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12日のライブは夕方からだったので、その日もまたLホテルに泊まり、13日(土)の飛行機で東京に戻った。
 
羽田空港でゆみが「トイレ行ってくるね」と言って離れるが、アクアも「ボクも行ってきます」と言って、その後に続いた。コスモスはボーっとして2人が戻って来るのを待っていたのだが、声がする。
 
「君、こっちは男子トイレだよ!」
 
あぁぁ、またアクアったら。女子トイレに入れと言ってたのにと思うが、声のした方を見ると、アクアではない。
 
「すみません!僕よく間違えられるんですけど男です!」
と《変声済み》の声で男の子?が反論している。
 
「あれ?君、確かに男の子の声だね。ごめんごめん」
と男性が言っている。
 
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そしてちょうどそこに男子トイレからアクアが出てきた(ゆみが女子トイレに入ったので恥ずかしくて男子トイレに侵入したらしい)。アクアを見た男性は「君、ここは男子トイレ・・・だっけ?」と唐突に不安になったようで、男女のサインを探していた。
 
コスモスは楽しい気分になって、彼らの方に歩み寄った。そして
 
「ふたりとも、女子トイレが混んでいるからって、男子トイレに入っちゃダメじゃん。おいで」
 
と言って、アクアと、やはり性別を間違われた男の子(?)を女子トイレに連行したのである!手を洗っていたゆみがびっくりしていた。
 

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その子を含めた4人は女子トイレを出た後、空港内のレストランに入った。
 
少年は「天月西湖(あまぎ・せいこ)」と名乗り、ひとりで九州の祖母に会いに行ってきたのだと言った。
 
「ひとりで飛行機に乗るって偉いね」
「うちの両親も忙しいので」
「お父さんは何してるの?」
 
「舞台俳優なんです。母も。舞台に穴を開けられないから、小学6年生ならひとりで行ってこいと言われて。夏休みにもひとりで行ってきましたし」
 
「へー、舞台俳優か。知っている人かな。芸名は?」
「たぶん、ご存じ無いと思います。うちの劇団、あまりお客さん入ってないみたいだし。父は高牧寛晴、母は柳原恋子というのですが」
 
「あら、黒部(くろぶ)座なんだ?」
とコスモス。
 
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「ご存じなんですか!?」
「柳原恋子さんって、上野陸奥子さんのお姉さんでしょ? でも柳原恋子さんにこんな可愛い息子さんが居たって知らなかった」
 
「え〜〜!?叔母のことまでご存じなんですか?」
「だって、私、上野陸奥子さんの後輩だもん」
 
「後輩・・・って?」
 
「私、上野陸奥子さんが所属なさっていたのと同じ事務所に現在所属している歌手で、芸名は秋風コスモスというの」
とコスモスが言うと
 
「うっそー!?」
と言って、西湖は本当に仰天したような顔をした。
 
それを見て、ゆみが吹き出した。西湖はゆみも認識していなかったので、AYAのゆみだと言うと、また仰天していた。
 
「あのぉ、そちらもタレントさんですか?」
と恐る恐るアクアを見ながら尋ねる。
 
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「ボクは今月末にテレビデビューする予定なんですよ」
とアクアは説明した。
 
「ところで、君、うちのアクアと背丈といい、体格といい、似てるよね。ちょっと並んで立ってみて」
とコスモスが言うと、ふたりは席を立って並んでみる。
 
「ちょっとだけ、西湖ちゃんのほうが低いかな」
「でもほとんど同じだね」
「体格もほとんど同じ感じ」
「これなら同じ服が着られるよね」
 
「同じ服って何か?」
「ねえ、君、この子のボディダブルやる気無い?」
「え!?」
「ボディダブルってどういうのか知ってる?」
「はい、それは分かります」
 
「取り敢えずボディダブルをしてもらって、将来的には君も俳優デビューという線とかはどうかな?」
 
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「やりたいです!」
と西湖は笑顔で言った。
 
「あっ。ただ・・・」
と言ってコスモスは少し考えるようにする。
 
「何か条件とかあるんですか?頭を丸刈りとかくらいは構いませんよ」
と彼は積極的である。
 
「むしろ髪は長いままにしてほしい。それ君が進学する中学校と交渉できるかな?実はアクアは、男の子役と女の子役の1人二役をするんで、西湖君にはアクアが女の子役をする時には男の子の衣装を着て、アクアが男の子役をする時には女の子の衣装を着て、一緒に画面に映って欲しいのよ」
 
「わあ、女の子の服も着るんですか?」
「うん。それをしてもらえるかどうかなんだけど」
 
「僕、女の子の服を着るのは慣れてます。実は父の劇団の舞台でしばしば女の子役をさせられるんですよ」
 
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「なるほどー!」
 
コスモスはなぜ自分がこの子にアクアのボディダブルをさせたくなったのか、その理由が分かった気がした。
 

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「うっそー!? アクアちゃんって男の子なの?」
と、その話を聞いた品川ありさは仰天して言った。
 
「でもでもでも、私、10月に研修所であの子に会った時、お風呂からあがってきたのを見てるけど、あの子、おちんちんなんか無かったし、おっぱいも少し膨らんでいたよ。どう見ても、女の子の身体だったんだけど、まさか性転換手術済み?」
と品川ありさは言う。
 
コスモスは言った。
「あの子、小さい頃に大きな病気していて、小学1年生の時に生きるか死ぬかの大手術を受けているんだけど、手術の後も、治療のためにかなり強い薬を使っていたらしいのよ。それで一時期は髪も全部抜けてしまっていたし、肌なんかも凄く荒れて爪はボロボロだったらしい。それで男性器も縮んでいたらしい。髪とかは復活したけど、おちんちんはまだ短くなって身体の中に埋もれたままだし、タマタマの入っている袋は身体に張り付いた状態になっているから、一見女の子のお股に見えるんだって」
 
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「うっそー!?」
 
「おっぱいが少し膨らんでいるのもその治療薬の副作用らしいよ。一時はBカップのブラジャーが必要なくらい膨らんでいたのが、今はAAカップくらいまで小さくなったらしい。多分あと1〜2年すれば、おっぱいは消えてしまうんじゃないかな」
 
「え〜〜〜!?」
と品川ありさは本当に驚いていた。
 
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