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それでその後も見ていたら、虎に襲われそうになった霊感少女は髪の長い少女の妹だったようである。妹がこれだけ霊感があるなら、姉も最低でも同程度、ひょっとするとその数倍あってもおかしくない。そもそも妹の危機に気がつきかなり遠くから駆けつけて来たというのが、強い霊的能力を持つことを示している。
でもその能力を隠している!!
オーラだけ見たら、普通の一般人にしか見えない。
また、今手加減?したことからも想像できるのは、この子がまだ磨かれてない原石だということである。
髪の長い少女と青葉が言葉を交わしていたが、その会話内容から、この子が北海道の住民であることが分かる。そしてその後、この姉妹に付いていくと、2人が旭川近郊の留萌から遊びに出て来ていたことも分かった。
H大神が言ったのはこの子だ!
と美鳳は確信した。
そして“手の本数”について、よくよくこの子を“霊視”してみると、外見上は1人なのに、実は四重体(テトラマー)であることに気付く。もしかして本来四つ子で生まれるはずが1つに合体して生まれた子だろうか。でもそのせいで、この子、4人分のパワーを持っている。もしかしたら四重人格かも。でも4人もいれば眷属が12人いても1人3体ずつ世話することで、楽に十二天将を制御できたりして!?(勝手な想像)
それで美鳳はこの子に“十二天将アイコン・セット”をあげることにしたのである。この子には使い方を教えなくてもきっとすぐ使いこなす。
それで美鳳は千里に声を掛けた。
「すみません」
「はい」
と言って千里が振り返る。
「これ差し上げます」
と言って、美鳳は千里に“ミニ精霊セット”を渡した。
そして出羽に帰った。しかし出羽に帰った途端、千里が勾陳の(アイコンではなくその先に居る)本体を呼び出したのを認識して仰天した。
十二天将の中でも最も扱いにくい勾陳をいきなり呼び出すなんて。
私この子のパワーを読み間違ってたみたいと美鳳は思い、楽しくなったのであった。
千里Vは何か自分に付いてる(憑いてる?)みたいだなあと思いながら、母・妹と一緒に留萌に帰った。ただし村山家にはRが居るので、自宅そば30mまで来たところでW町の家に転送移動した。
「ねえGちゃん、私に何か付いてる?」
「うん。憑いてる」
とGは笑顔で言う。実はGの周囲にも飛んでいたのだが、うるさいので捕獲!してお守り袋に入れ、首から下げた。アイコンはこの状態でも使用できるはず、と思ってA大神を見ると頷いていた。
しかしVは捕獲という技ができないようだ。そもそもこの子にはアイコン自体が見えてないみたいだし。見えないと捕獲という動体視力が必要なワザは使えない。Yちゃんが三重でやったようにシールドすることならできるはずだが、思いつかないようだ。
「これどうすればいいの〜?」
「明日になれば分かるよ」
とGは楽しそうに答えた。
千里(Bを装ったV)が翌日(8/1 Sun)、神社にお仕事で出ていくと、宮司さんが千里を見てビクッとしたような顔をした。
「千里ちゃん、どこに行ってきたの?」
「えっと・・・旭川にハリー・ポッター見に行ってきただけですが」
「ハリー・ポッターの精霊をもらってきた訳じゃないよね?」
「ハリー・ポッターというより、ポケット・モンスターだね」
と香取巫女長が言う。
「眷属というか」
「式神というか」
「これかなり優秀な精霊セット」
「その使い方、分かる?」
「そんなの分かりませーん」
「じゃ、修行だな」
「えっと、どんな修行ですか?」
「うーん」
と言って宮司さんは、本棚から何やら難しそうな和綴じの本を取り出してくる。
「毎朝、30分ジョギング、滝行5分、それからこの祝詞を唱えて、瞑想20分」
「滝行ですか!?」
やだー。冷たそう!!
「それどのくらいの間するんですか?」
「1ヶ月だな。それまでの間は、お肉・お魚などのナマグサを食べないこと」
「それは何とかなると思います」
(一方、河洛邑のYは毎日美味しいお肉やお魚を食べて『私太りそう』などと思っていた:実はYが美食してRが激しい運動をしてバランスが取れている。千里は少なくともRBYWGVは体液を共有している)
しかしVは8月いっぱいこの修行をしたことで、以前よりかなり“視力”が上昇して、結構霊的なものが見えるようになった。(神社の奉仕は9:00-12:00に星子がして、修行はVが朝6:00-7:00にする)
8月1日(日)は模試があったのだが、千里は欠席した。
R:午前中は吹奏楽の大会に出て、午後は建設現場で工事を見る
B:冬眠中
Y:河洛邑で作業中
V:午前中は(この日まで)Q神社に出る。午後は寝てる。
G:全体の管理をしているのでW町の家から動けない
なお、この所C町の村山家に帰宅しているのは下記である。
5/14-7/15 R (たまにYのこともある)
7/16-7/18 Y (R=旭川)
7/19-25 V (Y=三重)
7/26 R (稚内から帰還)
7/27 V (Rが勉強合宿)
7/28-8/11 R
8/12-22 Y(三重から帰還 Rは旭川/栃木)
8/23- R(たまにY)
8月1日の夕方、千里(R)は清香に電話した。
「実はお友達の家の山間(やまあい)にある倉庫を使っていいことになったんだよ。そこで練習しない?」
「するする」
「メンツはどうしよう?実は玖美子は今札幌の学習塾の合宿に行ってるんだよ
「お勉強のできる子は大変ね〜。実はこちらの柔良も旭川の学習塾の合宿で夕張に行ってて」
「夕張に行くなら留萌と大差無い気がする」
「ね?」
それで結局今回の練習には、千里、清香、沙苗、公世の4人が参加することになったのである。
「女の子4人なら気兼ねが無くていいな」
と清香が言っているので、また裸で素振りとかやるつもりだなと思った。
しかし公世はもうほとんど女の子扱いされている。あの子、実際にはどうなんだろう?女装させたら可愛くなりそうなのに、女の子になりたい気持ちとかは無いんだろうか?と千里Rは疑問を感じた。
取り敢えず、女の子の裸を見ても平気みたいだから、恋愛対象は女の子ではないんだろうな。(←強引に慣れさせて不感症になりつつあるだけ)
それで8月2日の朝、前橋善枝(よしちゃん)に車(カローラ)を出してもらい、まずはA町に行って、公世と『見学したい』と言った公世の姉・弓枝(高2)を乗せて練習場に行く。2人をポストするが、ここには留守番として、南野鈴子(すーちゃん)が先に来ている。
善枝はC町で千里と沙苗を拾い、Q町まで行ってQ町バス停で清香を拾って練習場に戻る。
すーちゃん(朱雀)は昨日の夕方召喚して顔合わせをし、協力をお願いした。彼女は“仕事仲間”になった天后(てんちゃん:海野照美)と2人でやっていいかと言うので彼女も呼び出して2人交替でしてもらうことになる。
この後、しばしば、すーちゃんとてんちゃんはセットでお仕事をすることが多くなる。今回付くことになった12人の中では最も若く、年も近いし、元々知り合いだったらしい。朱雀は鳥さんだが、天后は海の女神の娘さんらしい。「将来は海の女神になるの?」と訊いたか「お姉ちゃんたちがたくさんいるからきっと無理」と言っていた。神様の世界も競争が厳しいようである。彼女は自動操縦車?を持っているらしく、千里は興味を持ったが、すーちゃんは「あれだけは乗らない方がいい」と言っていたので、よほどのことがない限り乗るまいと思った。
前橋善枝と契約したのは、こういう経緯である。
昨夜メンバーたちに
「誰か運転できる人居ない?」
と尋ねると、こうちゃんが
「俺トラックでも戦車でもジェット機でも運転できるよ」
と言ったが、彼の運転する車に女子中学生を乗せるなんて、あまりに危険すぎる(女子たちの貞操が)ので却下した。
「誰か女の子で居ない?」
と訊くと、今回の“仕事仲間”の中では、女子で車が運転できるのはきーちゃんだけらしい。(びゃくちゃんは実は運転できるが黙っていた)
きーちゃんには旭川でオペレーションしていてもらいたいので、他に居ないかと訊くと『太陰は人の乗ってない中古車なら運転できる』という話である。どうも運転の技量に問題があるようだ。
その時、歓喜(かんちゃん)が言ったのである。
「俺ちょっと苦手なんだけど、一応運転のうまい女知ってる」
それで歓喜が呼んだのが前橋善枝だったのである。性格の良さそうな龍族の女性だった。びゃくちゃん以上に元気の良い子という感じで、歓喜が苦手と言ったのが分かった気がした。こういう女性は千里は大好きなので、彼女とも契約し、協力をお願いした。
それで彼女が運搬をしてくれることになったのである。
なおカローラは小春所有のもので、普段は小春の家の庭に駐めている。最近はカノ子が運転することが多かった。千里が管理しているので、善枝に使ってもらった。(千里も運転してるのは内緒:千里たちは実はB以外は4人とも運転できる)
沙苗・清香と一緒に、前橋善枝の運転で、早川ラボ?への取り付け道路に進入したら、沙苗が言った。
「こここないだ来た時は暗くて気付かなかったけど、タマラちゃんちだ」
「沙苗、最近来たの?」
と千里が言うので沙苗は「うーん」と思ったものの気にしないことにした!
それにこないだ自分やセナを連れてきたのは“千里・緑”で今そばに居るのは“千里・赤”だろうし。
(赤は当たっているが緑は不正解。先日沙苗たちをここに連れてきたのは、Y(黄色)を装ったV(すみれ色)である。YとVは身体つきが全く同じなのでP大神もてっきりYだと思い込んで協力した。もっともP大神は元々沙苗やセナを早く完全な女の子に変えてあげたいと思っている。またVは更に沙苗の前でグリーンのピッチを使ってみせて千里緑であるかのようにも装っていた)
「先日来た時と家の形が完全に変わってる」
と沙苗。
「ちょっと改造させてもらった」
「“ちょっと”の範囲を超えてる気がする」
中に入ると、広いフローリングがあり、試合場も2つ取られている。
「すごーい。かなり整備されてる」
「床は一応グラインダー掛けてるけど、ささくれとか残ってたらごめん」
「それは見れば分かる気がする」
と清香は言っている。
「私も分かると思う」
と沙苗も言っているので、2人に任せた!
(実際には問題になる場所は無かった。眷属たちは優秀である)
「エアコンも入っているし快適だね」
「バスルームが1つとシャワールームが3つあるから適当に譲り合って使って」
「取り敢えず4人同時に汗を流せるな」
「水道は略式のものだから、顔洗うのとかはいいけど、念のため飲まないで。飲み水はミネラルウォーター買っておいた」
と言って千里は“留萌の新鮮な水”のペットボトル2L6本入りの箱が5箱積み上げられているのを示す。
「足りなくなったら買ってきますから」
と善枝が言っている。
「よろしくお願いします」
「夏だからどんどん飲むかも」
それで1日の練習メニューはこのようにしていた。
9:00-9:30 集合
10:00 表側の市道を3kmジョギング。その後、体操・筋トレ、素振り、ラダーなど。
12;00 お昼を食べてから、休憩
13:00 切り返し、面打ち・小手打ち・胴打ちなどなどの基本パターン練習
14:00 試合形式の練習
15:00 おやつを食べて休憩
15:30 試合形式の練習
17:00 整理運動・マッサージ
17:30-18:00 軽食を食べてから解散
市道のジョギングは必ず全員まとまってというのを全員に厳命した。
「ここ7月31日に家の改造してる最中にもヒグマが来て、たまたま猟銃持ってた人が射殺したんだよ。1人でジョギングとかしてて熊が出て来たらどうにもならないから」
「みんなでジョギングしてる時にヒグマに襲われたら?」
と公世が訊く。
「誰か足の遅い人が食べられたら、その間に他の人は逃げられるな」
などと清香が言うと、弓枝は
「アフリカのヌーの川渡りみたいなものだね。ヌーは集団で川を渡るから、その中の数匹は必ずワニに食べられちゃうけど、その数匹の犠牲で、大半のヌーは川を無事渡りきることができる」
などと言っていた。
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女子中学生・ひと夏の体験(24)