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■女子中学生・ひと夏の体験(20)

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千里Rは勉強合宿が終わった後、29-31日はP神社に顔を出し、ここの裏庭で沙苗を誘って、一緒に素振り、切り返しなどの練習をした。千里がP神社にいるので宮司さんが
 
「あれ?千里ちゃん、三重のほうの用事は終わったの?だったらうちの神社の方も手伝ってよ」
と言われ、29-30日は恵香と交替で昇殿祈祷の笛を吹いたりもした。
 
なお普段P神社に居る千里Yは、Tes No.222 を使用しているが、“この千里”千里Rは Tes No.228 を使用している。
 

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ただ7月30日(金)は吹奏楽部の練習(大会の2日前!)があるので、千里R(フルート担当)と沙苗(サックス担当)がバスで学校まで行き、練習に出た。
 
今回演奏する曲は課題曲『吹奏楽のための「風之舞」』という曲と、自由曲『ポップホーン』という曲である。
 
実はRはどちらも全く練習していなかった!
 
沙苗は結構練習していたようだ。旭川にもアルトサックス(学校備品)を持ち込んで、ピアノ室(防音)で結構吹いていたし。千里も練習しないの?と言われたが「疲れたぁ」と言って、寝てた。
 
だから千里は実はこの日ほぼ初見だったものの、まるで自分がどちらの曲もかなり吹き込んでいるかのように演奏できたので「良かったぁ」と思った。
 
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「千里忙しいのにだいぶ練習していてくれたんだね」
「そうかな」
「だいたいフルートの技術自体がかなり進化してる」
 
まあフルート自体はこの1年間けっこう鍛えたからなあと思った。
 
(実際は前述のようにGが練習していたお陰である)
 

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7月31日(土).
 
この日は沙苗がP神社はお休みだったので、千里Rはひとりで素振りなどをしていた。そして夕方、ふと気がつくと、自分の周囲に12人の小さな精霊がまるで自分を周回するかのように飛んでいた。
 
千里Bなら「マグネシウムの電子軌道みたい」と言うところだが、あいにくこの千里は電子軌道なんて話は分からない。しかし12人の精霊がうまくお互いに衝突しないような微妙な軌道で周回していることは認識し「器用だな」と思った。。
 
Mg(12)の電子軌道: 1s2 / 2s2 2p6 / 3s2
 
1s 表:貴人、裏:天空(副将)
2s 表:騰蛇、裏:大裳(中堅)
2p 天:天后、地:大陰、東:青竜、西:白虎、南:朱雀、北:玄武(次鋒)
3s 表:勾陳、裏:六合(先鋒)
 
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むろん大将(本丸)は千里!貴人(きーちゃん)は最終守護神・最後の砦。
 

千里Rは彼らを見ている内にあることを思いついた。花絵さんに
「今日は早引きします」
 
と言って神社を出る。そして近くの空き地で千里は辰の方位(真東から30度南)を向いて唱えた。
 
「子丑寅卯辰巳午未申酉戌亥(シチュウインボウシンシゴビシンユウジュツガイ)の辰(シン)。勾陳(こうちん)、我が許(もと)へ本体を顕せ(あらわせ)」
 
と呼びかけると、人間なら40-50歳程度に見える男が姿を現した。
 
ふーん。1430歳か。長生きだな。
 
「小娘、何の用だ?」
と男は言う。
 
「お前態度悪いな」
「態度悪くて悪かったな」
「お前、H大神に命じられて私に付いたのだろう?だったら私を主人と思ってちゃんと言うことを聞け」
「ああ、言われたことはしてやるよ」
 
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こいつは一度“おしおき”が必要だな、と千里は思った。
 
千里は携帯で地図を示す。
「私をここに連れて行け」
「いいよ」
 
すると男は龍の姿に変わり、千里をその背中?に乗せていた。千里は「なるほど。こいつは黄龍か」と彼の種族が分かった。
 
ほんの数秒でN町の山間(やまあい)に降りる。
 
「用事はこれだけか?帰るぞ」
「お前、ほんとに態度悪いな。ちょっと来い」
と言って、千里は太陽がどんどん高度を下げていく中、勾陳を連れて細い道を歩き、古ぼけた民家の前に来る。
 

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「あのさ。この家の1階と2階の間の床というか天井というかを取り払ってくれない?あんたなら腕力ありそうだから、そのくらいすぐできるかと思ってさ」
「できるけど、そんなの外してどうするのさ?」
 
「剣道の練習ができる場所が欲しいんだよ」
「お前。剣道やるの?」
「来月20日に全国大会に出るからさ、その練習がしたいんだよ」
「全国大会に出るというのは、お前なかなかだな」
と言って、勾陳は千里に少しだけ興味を持ったようである。勾陳は強い人が好きである。最初千里を見た時は、いかにも“か弱そう”に見えたので、こんな娘に付くなんてと思った。
 
勾陳は虚空と50年ほど付き合ったのに「凄い人ほど大したことないように見える」というのが全然分かっていない。
 
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「だったら、こんなぼろっちい家は崩して、代わりにもう少し大きな倉庫でも建てたらどうだ?」
「それ時間かからない?」
「余ってる倉庫があるから、それ持って来てここに置くよ」
「ああ。余ってるのなら持って来ていいよ」
 

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それで勾陳はその古家を“ひょいと持ち上げて”どこかに持って行ってしまった。更にその付近に生えているミズナラの木を40-50本“引き抜いて”、これもどこかに持って行った。そしてどこかから本当に小さな倉庫のようなものを運んできて、ポンと置いた。
 
なかなか大したもんだなと千里は見ていた。
 
「これトイレはあるんだっけ?」
「ああ。じゃそれも余ってるの持って来てやるよ」
「2個くらい持ってこれる?」
「いいよ」
 
と言って勾陳はまたどこかに飛んで行き、トイレらしきものを2個抱えて戻って来た。そして便槽を作るのだろう。地面を深さ3mほどヒョイと“取り外して”どこかに持って行く。そして大きな鉄の箱のようなものを持って来て地面に開けた穴に押し込む。
 
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ユニット工法だな、と千里は思った。そして倉庫の壁を一部崩してトイレのユニットを接続しようとしているようである。
 

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千里は彼の作業を見ながら、旧友に電話を掛けた。
 
「おっはー(*17)。タマラ元気してる?うんうん」
「それでさ、タマラんちのN町の山間(やまあい)の別宅だけどさ、あそこ少し借りてもいい?」
「あ、自由に使っていい?だったら少し改造したりしてもいい?あ、自由に改造してって?じゃちょっと改造ざせてもらうね。さんきゅー」
 
ということで、実はここは早川タマラ(の父)の所有物件なのである。
 
でも「ちょっと改造」の範囲を超えている気がする!!
 
ここはタマラが室蘭に引っ越して以来、4年間空き家になっていた。
 
本宅の方は入居したいという人があり、その人に300万円!で売却している。元々400万円で買ったもの(1950年代に建てられた20坪5DK 敷地50坪)で、タマラたちは6年間使用した。千里が来たこの別宅はニシン漁盛んな時期には普通の住宅として使われていたようだが(ここを含めて10軒ほど家が建っていた跡をよくよく見ると見付けることができる)、1990年代当時は年老いた炭焼きさんの仮泊場所となっていた(それでこの1軒のみ残されていた:推定築80年 3DK 敷地は200坪)。
 
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タマラの父はそれを20万!(住宅は無価値で土地が1坪1000円)で買ったが、後述の理由により事実上放棄した。
 
(*17) 「おっはー」は2000年に“慎吾ママ”が『慎吾ママのおはロック』で流行らせた。
 

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電話を終えた時、千里は背後に気配を感じて振り返った。
 
ヒグマである。まだ小さい。2歳くらいかなと思った。
 
どうも向こうは気配を殺して接近してきていたようである。でもこの距離まできたらさすがに千里は気付く。
 
できたら平和にお引き取り頂きたいんだけどなあと思ったが、どうも向こうはこちらを今日の晩御飯にしたいようである。だから静かに近づいて来ていた。千里が振り向いたので、いざ勝負ということで、こちらに向かって走ってくる。
 
仕方ないので千里は相手との距離が5mくらいになった所でエネルギー弾をぶつけて瞬殺した。
 
相手はドーンと大きな音を立てて地面に落ちた。熊が走って来た勢いで、熊の身体は千里の手前1mくらいの所まで来て停まった。が、ピクリともしない。
 
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即死だろうから苦しみは無かったはず、と千里は思った。頭が少し潰れている。強すぎた?でも弱すぎるよりはマシだよね?
 
熊が倒れる音に驚いて、勾陳がこちらに来る。
 
「ヒグマか!」
「ねぇ血抜きしたいから、この熊をそこの斜面まで運んでくれない?」
「お前が倒したのか?」
「そうだけど」
「よく倒せたな」
「ヒグマくらい倒すよ。これあんたの晩御飯にしてもいいよ」
「もらっていいの?」
「ちゃんと火を通して食べなよ」
 
それで勾陳は楽しそうにヒグマを斜面に運んでくれた。勾陳からナイフを借りて千里が熊の首の血管を切る。血が流れ出す。これで数時間で血抜きできるはずである。
 
「要領いいな」
「前にもやったことあるからね」
「前にもヒグマを倒したことあるのか?」
「その時は学校のみんなで楽しく熊肉パーティーしたよ」
「お前、凄いな」
 
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千里がヒグマを倒したことで勾陳はかなり千里を見直したようである。
 
「剣道の練習するなら、板張りがあったほうがいいよな?」
「水道使えるようにした方がいいよな?」
「キッチンとお風呂も付けようか?」
「電気も使えるようにしてやるな」
 
と言って、まずはたくさん板を運んできて、あっという間にフローリングを作ってしまった。少し暗くなってきたのでキャンプ用の発電機を回して倉庫内を明るくして作業している。千里も虫が来るので中に入って作業を見ていた。
 
彼は板をグラインダーで平滑にし、ラッカーも塗ってくれる。その作業も物凄く効率が良く速い。
 
「こんなものでいい?」
 
千里は素足で歩いてみたが、きれいに平滑になっている。まるでタイルでも敷いたかのようである。大したものだ。
 
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「いいよ。あんた有能だね」
 
彼は褒められたので気を良くしたようである。10m×10mの四角形を2つ、白いテープで貼って試合場を2枠作ってくれた。
 
「少し暗くなってきたな」
 
この日の日没は18:54だった。それから30分くらい経ったので、そろそろ日暮れになる。
 
「続きは明日にしたら?」
「そうだな。じゃ熊を食うか」
 
それで彼は千里に
「仲間を呼んでもいい?」
と確認し、“仕事仲間”になった六合、騰蛇、青竜、玄武、白虎の5人の男(女も1人いるが)、更には個人的な“友人”(←「悪い仲間」と読む)の歓喜(*18)、九重を呼び寄せた。
 
(*18) 後の“播磨工務店”社長、南田兄のこと。人間の歓喜(八重龍城)とは別人。
 
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血抜きはまだ2時間くらいで完全では無かったのだが、勾陳はヒグマ(推定150kg程度)の両足を持つとハンマー投げの投げる前の回転のようにヒグマをぐるんぐるん回して遠心力で強制的に血を抜いてしまった。
 
そして、庭で焚き火をして焼き肉パーティーを始めた。
 
(ここで焚き火してもいいのか?)
 
「この熊、千里さんが仕留めたんですか?」
「すごーい」
「虫も殺せないような顔をしていて、実はスーパーガールだな」
「さすが我らの御主人様だ」
などと言っている。
 
どうもこれで男性陣(女も1人居るけど)は結構まとまったな、と千里は思った。女性陣は簡単にはいかないだろうから、少しずつ手懐けていくか。
 
どうしても女同士は厳しくなる。
 
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「千里さんもどうぞ」
と言って串に刺した熊肉をくれる。
 
「さんきゅさんきょ」
と言って、焼けているお肉をもらって食べる。
「美味しいね」
「やはり新鮮なヒグマは美味いです」
 
「だけど、あんたは“こうちん”というより“こうちゃん”だな」
「“ちゃん”なの〜?」
と本人は情けなさそうな顔をする。
 
「あはは。泣く子も黙る應龍様も形無し(かたなし)だ」
「千里さん、千里さん、俺たちは?」
「じゃあんたたちは、りくちゃん(六合)、とうちゃん(騰蛇)、せいちゃん(青竜)、げんちゃん(玄武)、びゃくちゃん(白虎)、かんちゃん(歓喜)、じゅうちゃん(九重)で」
 
「ああ、なんか可愛くなった!」
と言って、彼らは喜んでいた。
 
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「俺たちもセーラー服着るか?」
「俺セーラー服好き」
「ああ。水兵さんか」
 
「あ、そうそう。千里さん、呼び名を付けてもらったから、俺たちを呼び出す時は面倒臭い召喚の呪文とか唱えなくても単に《こうちゃん》とか《りくちゃん》とか呼べばいいですよ」
と《りくちゃん》が言う。
 
彼は人の良さそうな初老の紳士である。この子は1418歳か。《こうちゃん》とほぼ同世代だな。見た目は随分違うけど!
 
「そう?じゃそうさせてもらおう」
 
 
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