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■春花(27)

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アクアはこの春にタヒチで写真集の撮影をしたばかりなのだが、高校卒業前にあと1冊写真集を出したいという話があり、11月上旬にドイツのロマンティック街道で撮影をしてくることになった。
 
これまでアクアの写真集は(テレビ番組の企画やライブ写真集などを除いて)このようなところで撮影してきた。
 
2015 ハワイ
2017 プーケット
2019 タヒチ
 
最初撮影候補地としてはセーシェルが挙げられ、川崎ゆりこが
「アクアのセミヌード写真集出しましょう」
と言ったのはコスモスが却下したが、却下の理由というのが
「女の子の身体なのがバレたらヤバいじゃん」
ということだった。ゆりこは
「今更だと思いますけど」
と言ったのだが、ともかくも今回は着衣での撮影となった。
 
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アクアの写真集はこれまで南の島で撮影してきているので、今回は趣向を変えてロマンティック街道に行くことにした。
 

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撮影は(2019年)11月1日(金)にドイツへ飛び、1週間ほど掛けて撮影し、11月10日(日)に帰ってくるコースである。
 
11/1(Fri) NRT 11:00 (JL407 787-9) 15:15 FRA (12'15)
フランクフルト泊
11/2(Sat) フランクフルトで撮影。ヴュルツブルクに移動して泊。
11/3(Sun) ヴュルツブルクで撮影。ローテンブルクに移動して泊。
11/4(Mon) ローテンブルクで撮影。アウクスブルクに移動して泊。
11/5(Tue) アウクスブルクで撮影。フュッセンに移動して泊。
11/6(Wed) シュヴァンガウのホーエンシュヴァンガウ城、ノイシュヴァンシュタイン城で撮影。フュッセンに戻って泊。
11/7(Thu) フュッセンで撮影。ミュンヘンに移動して泊。
11/8(Fri)ミュンヘンで撮影。フランクフルトに戻る。
11/9(Fri) フランクフルトで多少の追加撮影。その後数時間フリータイム。
FRA 11/9 19:40 (JL408 787-9) 11/10(Sun) 15:00 NRT (11'20)
 
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帰りの方が速いのはむろんジェット気流のせいである。なお11月は冬時間であることに注意(日本との時差は8時間)。
 

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申し訳無いが、今井葉月にはこの期間は学校を休んでもらい、一緒に行くことになる。山村マネージャーはスケジュールもハードであることから、葉月ひとりではアクアのボディダブルは無理だと主張。それでもうひとり姫路スピカも参加させ、スピカがアクアの男役のボディダブル、葉月が女役のボディダブルをすることになった。最近スピカはかなりアクアのボディダブルにかりだされているが、やはり演技力のある人にしか代役は務まらないからである。この年はスピカは自分自身のタレント活動での収入より、アクアの代役としての報酬のほうが金額的に上回ることになる。
 
実際には、山村とアクアの話し合いで飛行機にはアクアMが乗ってFは転送することにした。Fはせっかくパスポート作ったから、それで自分も一緒に出国してみたいと言ったのだが、長旅で疲れているアクアを撮影する訳にはいかないからどちらかは転送せざるを得ないのである。
 
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アクアと葉月・スピカ以外に撮影に同行するのは、コスモス社長、和泉、マネージャーの山村勾美、緑川志穂、桜木ワルツ、和城理紗である。今回、アクアのサポートでやはり若い女子が必要とコスモスが判断し、緑川志穂か河合友里のどちらかに付いてきてと言った。すると、ふたりともロマンティック街道に行きたいと言ってジャンケンした結果、緑川志穂が勝って付き添うことになった。河合友里が悔しがっていた。
 
ちなみに部屋割では山村は1人部屋にして緑川・桜木・和城の3人で1部屋、している。山村はほぼ男扱いである。葉月とスピカも相部屋だが、アクアはツインのシングルユースという建前で3人のアクアが泊まる。ベッドは女の子のFが1個独占し、MとNは同じベッドで寝る。コスモスと和泉は同室であるがこれは2人がたくさん打ち合わせる必要があるのもある。
 
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なお、スピカは実は従姉の竹中花絵と一緒に、半月前にドイツにわたり、写真家の桜井理佳および助手(三輪志保・四家芳絵・六本松晃)と一緒にロマンティック街道を巡ってロケハンをしている。男の子アクアと女の子アクアが並んだポーズの確認をするのに2人必要なので従姉を同行したのだが、むろんスピカが男の子役である!それでスピカは半月にわたりロケハンの被写体役をした上で、本番撮影でもアクアのボディダブルを務めた。
 

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コスモスと和泉の話し合いで撮影はだいたい1時間ごとに“衣装チェンジ”してアクアに男子衣装・女子衣装を着けてもらおうということになったので、山村はその時にMとFを入れ替えようと考えアクアにも話した。男の子アクアには女装の葉月、女の子アクアには男装のスピカが相手役をする。
 
これまでの写真集撮影ではアクアが複数いるのに葉月は1人でやっていたので、撮影の後半になるほど葉月がクタクタになっていたのだが、今回はスピカも加わっているのでも最後まで葉月もスピカも元気に撮影ができた。
 

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撮影は最初のフランクフルト・アム・マインでは『アルプスの少女ハイジ』でハイジがアルプスが見えるかもと思って登ったカタリーネン教会、クララ・ゼーゼマンの家のモデルになったと言われるゲーテハウス、そのゼーゼマン家から見えていたレーマー広場、また近くの聖母の泉、聖バルトロメウス大聖堂なども背景にして写真を撮る。
 
基本的に写真は男装アクア(中身は龍虎M)+女装葉月で撮影して1時間以内に服装を替えて男装スピカ+女装アクア(中身は龍虎F)で撮影している。アクアの衣装チェンジが大変だが、時間を置きすぎると太陽光線の加減が変わってしまい、あとで合成困難になってしまうのである。
 
もっとも実際にはアクアはまったく衣装チェンジしていない。人間そのものが入れ替わっているので本人は割と楽である。また撮影に適した場所は事前にスピカと従姉の2人で見つけているので短時間で撮影をすませることができる。
 
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2日目のヴュルツブルク(ロマンティック街道の北端)ではレジデンツ(司教宮殿)、石像が建ち並ぶ旧マイン橋などで撮影をする。
 
3日目のローテンブルク・オプ・デア・タウバー(ロマンティック街道の宝石と言われる)は“ドイツの黒田武士”ことゲオルク・ヌッシュのエピソードが残る旧市街で撮影する。ドイツの古い街並みが残っている。ここを征服した将軍が、4リットルほど入る大杯の酒を一気飲みしたらこの町を焼かずに済ませると言ったので、市長のヌッシュが、自分が飲むと言って一気飲みしてみせたというものである。アクア(M)が、その市長が飲んだという大杯(のレプリカ)を抱えて飲む真似をする所を撮影している。4Lは水でも辛いので、飲み干すシーンを撮るのはやめることにした。
 
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4日目のアウクスブルクでは“我らが聖母大聖堂”、“聖ウルリヒおよび聖アフラ教会”、また“7人の子供”のレリーフの前や“シュトイネルネ・マ”(片腕のパン屋“ハッカー”(パン職人の名前))の像などの前で撮影をした。
 
「7人の子供というのに6人しか居ない」
とアクア(F)が言うと
「もう1人はそこに描かれている棺(ひつぎ)の中に居るんだよ」
とコスモスが教えてあげた。
 
「えー?だったらこれはお葬式?」
「子供を亡くした人が作らせたものらしいね」
「そうか。悲しい場面だったのか」
 
この日はロマンティック街道の南端フュッセンに移動する。
 

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5日目はこの旅の、そして撮影の目玉ともなるノイシュヴァンシュタイン城に行った。このお城の見学は、ホーエンシュヴァンガウ城とセットで、必ずそちらから先に行くことになっている。アクアは普通の服装のほか、中世の騎士の格好、お姫様の格好をして撮影している。アクアが騎士の格好の時は葉月がお姫様の格好、アクアがお姫様の時はスピカが騎士の格好である。しかし桜木ワルツの騎士の格好をさせて、スピカと花絵が女性の衣装で加わった写真も撮った。これはそのまま写真集に残る予定だが、スピカと花絵はまるで双子の侍女のようである。
 
アクアは衣装チェンジが大変そうだが、実際には龍虎Mは騎士の服装、龍虎Fはお姫様の格好のままで、実は衣装チェンジはしていない。
 
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「ところでドイツ語でお城のこと、何と言うか知ってる?」
と桜井さんがアクアたちに訊いた。
 
「うーん。英語ではキャッスル(castle)、フランス語ではシャトー(chateau)だから、やはり何かCの付く言葉かな・・・」
などとスピカが悩んでいる。
 
「城ス」
と桜井さんは言った。
 
「へ?」
「正確に発音するとSchloss(シュロス)(*10) だね」
「それちょっと面白いですね」
「日本語の塔と英語のタワー(Tower)が似ているような感じ?」
 
(*10)綴り最後のssは“エスツェット”にして Schloß と書かれることもある。
 

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「ここまでに寄った、ヴュルツブルクとかローテンブルクとかの“ブルク”も城ですよね?」
と和泉が尋ねている。
 
「そうそう。日本で言えば戦国時代の城のような城砦(じょうさい)がブルク(burg)で、安土桃山時代以降の城のような城館がシュロス(schloss)なんだよ」
 
「なるほどー」
「だからこのノイシュヴァンシュタイン城はSchloss Neuschwanstein」
 

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そんなことを言いながら撮影していた時、少し向こうの方に人だかりがして歓声が上がっていたので見たら、若い白人の美形男子が騎士の衣装をつけて撮影している。
 
「あれはミハエル・クラインシュミットじゃん」
と和泉が言う。
 
「『太陽の騎士(Sonnenritter ゾーナリター)』のローエン(Lohen)を演じた人ですよね?」
とスピカ。
 
「そうそう。でもあれは太陽の騎士の衣装じゃないね」
「うん。もっと新しい時代の騎士の格好だと思う」
「また何か新しい映画かあるいはドラマか」
「でも観光客っぽい人を遠ざけていないし、握手とかまでしてるから何かのキャンペーンかも」
 
などと話していたら、向こうがこちらに気づいたようで、近づいてきた。この時はアクアFがお姫様の衣装をつけていた。
 
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「Are you Ms "AQUA" from Japan?」
(日本のアクアちゃんだよね?)
「Yes, I am AQUA. Herr Kleinschmidt. I watched the Movie "Sonnenritter", You were so cool(*11) in that movie」
(はい、アクアです、クラインシュミットさん。『太陽の騎士』の映画見ました。かっこよかったですね)
 
(*11)アクアたちは英語で話しているが実はドイツ語でも cool は外来語として「かっこいい」という意味に使用される。
 

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「Thank you. I am very appreciated to be praised by number one Japanese girl singer」
(ありがとう。日本で1番の少女歌手に褒められると僕も嬉しいよ)
 
などとミハエルは言っている。アクアは何も思わなかったようだが、和泉が反応した(そもそも最初にMs AQUAと言われている)。
 
「Entschuldigung. He is often misunderstood, but, He is NOT a grl singer. AQUA is a boy singer」
(すみません。よく誤解されるのですが、彼は少女歌手ではなく少年歌手です)
「Kidding!」
(嘘でしょ!?)
 
「Perhaps, Half of AQUA's fan are convinced AQUA is a girl」
(多分アクアのファンの半分はアクアのことを女の子だと思いこんでいる)
 
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などとコスモスまで言っている。
 
「アクアちゃん、パスポート見せてあげなよ」
とスピカが言うので、パスポートをバッグから取り出してミハエルに見せるとSEx:Mの記述を見て
「I cannot believe!」
(信じられない)
 
などと言っている。
 
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