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■春花(26)

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千里1はその後《こうちゃん》が運転するハイゼットの助手席でうとうとしながら市川町に移動した。
 
市川ラボでシャワーを浴びて汗を流す。お遍路衣装の洗濯は既に頼んでいたのだが、他の服も《たいちゃん》に『悪いけど洗濯しといて』と言ってスヤスヤ眠った。
 
「なんか千里、復活してから眷属使いが荒くなってないか?」
と《りくちゃん》。
「でも私は千里が復活してくれただけで嬉しいよ」
と《たいちゃん》は言いながら洗濯機を回した。
 

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10/18 朝1番に普段着のまま市川ラボに駐めているバイク Gladius 400 に跨がり神戸まで走る。そして阿倍子の家に行く。千里に気付いて京平(4歳)が鍵を開け中に入れてくれた。
 
「お母ちゃん、お早う」
「おはよう、京平」
 
と言って抱きしめる(むろん性転換はしない!)。例によって阿倍子は寝ていて、京平はひとりで朝御飯を作ろうとしている所だったらしい。
 
「朝御飯ね。作ってあげるからテレビでも見てなよ」
「ありがとう。そうだ四国お遍路満願おめでとう」
「ありがとう。緩菜に鈴をあげたから、京平にはこの杖をあげるよ」
「これなんか凄い杖という気がする」
「確かに凄いかもね」
 
それで千里は京平にもオムライスを作ってあげた。美味しい美味しいと言って食べていた。それで1時間くらいおしゃべりしてから
「またね」
と言って家を出た。そして三ノ宮駅まで走った所で
 
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『こうちゃん、このバイク市川に戻しといて』
と言ってバイクを降りると電車に乗った。
 
《こうちゃん》はぶつぶつ言いながらバイクに跨がっていた。
 

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千里は今日はこのようなルートを辿る。
 
三ノ宮10/18 9:06(JR)9:28大阪/西梅田9:38-9:44なんば/南海難波10:00-11:25極楽橋11:34(ケーブルカー)11:39高野山/高野山駅前11:45(バス)12:06奥の院前
 
南海電車の中で《たいちゃん》が『お遍路衣装乾いたよ』と言って持って来てくれたので、着ているポロシャツの上にその衣装を着てしまった。
 
鈴と杖は緩菜と京平にあげてしまったので、お遍路衣装と菅傘だけで参道を歩き、奥の院まで行った。そしてここでも納経した上で掛軸最後の御朱印をもらった。これで納経軸の完成である。
 
奥の院には1時間ほど滞在してから山を下りる。
 
奥の院前15:22(バス)15:43高野山駅前/高野山15:52(ケーブルカー)15:57極楽橋16:06-16:53橋本17:10-17:58新今宮18:08-18:24大阪18:30-18:59京都
 
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この日はそのまま京都駅近くのホワイトホテル!に泊まる(偶然にも予約が取れた)。
 
(ホワイトホテルは京都駅に近い有名な安ホテル。部屋数が少ないのでいつも旅慣れた人の予約で一杯である)
 

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10月19日朝、ホワイトホテルで朝食を取るが、お遍路衣装なので、興味を持った他の客に訊かれる。
 
「歩いて一周してきたんですか!」
「すごーい!」
「後は東寺にお参りしてご報告するだけなんですよ」
「なんか握手してもらったら御利益ありそう」
というので、千里は何人もの泊まり客と握手した。
 
《こうちゃん》が面白くなさそうな顔をしているので千里1は何だろう?と思った。しかし千里2と千里3は握手した人たちに異変が見られなかったという報告を《きーちゃん》から聞いてホッとした!!
 
千里はホワイトホテルを出ると、そのまま東寺まで歩いて行き、お参りをしてから高野山まで入れて89の御朱印が押された掛軸を提示して“成満証”を頂いた。
 
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これで千里1のお遍路は完全に終了した。
 

その日の新幹線で東京に移動し、千葉まで行って康子の家に行き、満願の報告をして仏檀にお線香をあげ、掛軸、お遍路衣装に菅傘は康子さんにあげた。
 
「もらっていいの?」
「お母さんの名代でお遍路してきたようなものですから」
「じゃもらっておくね。掛軸は表装してもらおう」
と言って、康子さんは衣装と菅傘を仏檀に供えていた。
 

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千里はその日は康子さんの家に泊めてもらい、翌10月20日、とりあえず桃香が滞在している高岡の桃香の実家まで新幹線で移動した。
 
「お遍路満願おめでとう。全行程歩いたんだ?」
「はい。約1200km 300里かな」
と言って、89の御朱印が押された掛軸のカラーコピーを朋子に渡した。
 
「これコピーですけど、お母さんにあげますね」
「わあ、仏檀に飾っちゃおう」
「そうそう。出発の時、おにぎりありがとうございました」
「うん。お接待、お接待」
「南無大師遍照金剛。じゃ、お母さんにも納札1枚お渡ししますね」
 
「しかし歩きお遍路ってその間の食事と宿泊費が凄いんじゃないの?」
とちょうど来ていた、朋子の妹・典子さんが言う。
 
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「そうなんですよ。だから歩きお遍路は実はいちばん贅沢だとも言われますね」
「どのくらい使った?」
「計算してないですけど、1日食費と宿泊費で7000円使ったとして30日間で21万円になるかな」
 
「ひぇー!」
と言っているのは桃香である。
 
それを見て青葉は先日の起工式で神主さんに210万円払ったと聞いたら桃姉は腰を抜かすだろうなと思った。
 

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結局千里1はそのまましばらく高岡に滞在することになった。かなり身体が傷んでいるから、ヒーリングしてあげるよと青葉が言うので、そのヒーリングを受けるのもあった
 
もっとも青葉は10月24日には、短水路選手権に出場するのに東京に出ていき、千里と桃香が高岡に取り残される。
 
「でも私たちもそろそろ東京に戻ろうか」
「そうだな。だいぶ長居してしまったし」
 
それで週明けの10月28日(月)に帰ろうかと言っていたのだが、そこに飛び込んできたのが25日に千葉を襲った豪雨のニュースである。
 
当日は千葉の友人・知人と全く電話がつながらなかったが、千里は《こうちゃん》に様子を見てきてくれるよう頼んだ。すると、康子さんの家は元々低い所にあるので1階は完全に床上浸水したが、2階は無事で康子さんは2階に避難したまま孤立していたので、とりあえず食糧を投下してきたということだった。また千葉玉依姫神社にいたかもと思った後藤真知については、神社自体が高台にあるので無事ではあるが身動きが取れないようだったので、こちらにも食糧を投下してきたという。
 
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「どこからともなく食糧が飛び込んで来たら変に思わないかな」
「きっと自衛隊が緊急投下してくれたんだと思うよ」
「ああ、そうかもね」
 
しかし康子さんは霊感無いから自衛隊と思うかも知れないけど、真知ちゃんは少し霊感があるから“龍が食糧を持って来てくれた”と思うかもね。まあそれで動じるような子ではないだろうけど。(八村塁に見えたというのはさすがに千里の想像外)
 
なお康子さんは仏檀の位牌とか、千里からもらった菅笠とお遍路衣装を持って2階に避難したらしい。掛軸は東京の表装屋さんに出していたので、結果的に無事だったらしい。
 
なお常総ラボに関しては被害は出ていないようだということだった。そちらを《びゃくちゃん》がチェックしていたら、隣の運動公園の人が来て、こちらの体育館だけでは足りないので、そちらにも避難民を入れさせてもらえないかということだったのでOKしたということだった。すぐそばで2つの避難所が使えることになったので、常総ラボは女性のみということにしたらしい。
 
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避難所は男女を分けてくれるだけでもかなり避難した人のストレスが小さくなる。
 
また《びゃくちゃん》は、“ちょうどその辺にいた”《こうちゃん》に頼んで大量の食糧を調達してきてもらい
 
「これうちの備蓄ですけど良かったら」
と言って、避難してきた人たちに提供したら、歓声があがっていたらしい。
 

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千里(千里1)と桃香は結局関東方面が少しは落ち着いたと思われた10月30日(水)になって新幹線で東京に出ていった。
 
千里は康子さんが心配だからと言って、東京駅から更に千葉に向かい、桃香は早月と由美を連れて小田急で経堂まで行く。
 
それで
「ただいまあ」
と言ってアパートのドアを開けたのだが・・・
 
「何これ!?」
と絶叫する。
 
「すみません、お邪魔してます」
と季里子が言った。
 
桃香は室内に多数の人間がいるので唖然としていた。
 

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取り敢えずこの狭い1DKのアパートにこの時点で座っていたのは下記のメンツである。
 
紫尾季里子 桃香の妻?
紫尾来紗 季里子の長女(2013.6.03生)
紫尾伊鈴 季里子の次女(2014.8.10生)
季里子の父
季里子の母
古庄夏樹 来紗と伊鈴の遺伝子上の父
高園桃香
高園早月 桃香の長女(2017.5.10生)
川島由美 桃香の次女(2019.1.04生) (*9)
 
(*9)話が面倒になるので桃香の次女ということにした。由美は法的には川島信次を実父とし実母不明の、千里の養子である。但し遺伝子上の父が信次、遺伝子上の母が桃香であるという正式なDNA鑑定書が作られている。季里子は小空と小歌のことは知らない。結局桃香の遺伝子上の子供は4人いるのである。もっとも桃香の友人たちは「桃香にはあちこちの女に産ませた子供がきっと10人は居る」などと噂している。
 
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9畳の部屋に9人というのは、その内4人が子供とはいえ、かなり密集した感じがある。全員を紹介できるのが季里子だけなので、紹介するが、季里子の父は彼女と桃香を一度強引に別れさせているだけにかなり恐縮していた。
 
夏樹を季里子は「元旦那の夏樹ちゃん」と紹介したが、夏樹が女装なので、桃香は昔の愛人なのだろうと解釈したようであった。“夏樹”という名前は女性でもある名前だ。逆に季里子が桃香を「私の夫」と紹介した時、夏樹は「キリちゃん、男の人とも付き合ってるの?」と嫉妬するような視線で桃香を見た。
 
「この子、男に見えるけど女なんだよ」
「なんだ。それならいいや。FTMさんですか?」
「いや、ただのレスビアンです」
と言いつつ、桃香は嫉妬の視線を感じたので、この子、まだ季里子に気があるのかな?と思った。でも男なら嫉妬するけど女ならいいって、なぜだ?と考えるもののよく分からない。
 
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人物の紹介が終わった所で、季里子が事情を説明した。
 
「季里子も、その元カノさんも、住んでいた所が大雨で崩壊したのか。だったら住む所が見つかるまで取り敢えずここに居ていいよ」
と桃香は言った。
 
「ほんとに申し訳ありません」
と季里子の父が言うが
 
「困った時はお互い様ですよ」
と桃香は言った。
 
しかしこの夜、9人がこの狭いアパートで寝るのはかなりの困難を生じた。結局“唯一の男性”である季里子の父は台所で寝て、来紗・伊鈴は季里子のそばに、早月・由美は桃香のそばに、そして季里子の母と夏樹は各々単独で寝ることになった。
 

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一方千葉に向かった千里は、康子の家を見て腕を組んで悩んだ。
 
「1階は畳を全部入れ替えないといけないし、そもそも床下の掃除とかもしないといけないけど、便利屋さんとかはみんな今どこも空いてないみたいだし、そもそも電気もガスも水道も止まったままで」
と康子は困ったように言った。
 
太一はガス会社に勤めているので、復旧作業やお客様対応に追われていて、とても実家のことまで手が回らないらしい。
 
「そのあたりは私が何とかしますよ」
と千里は言い、《きーちゃん》に電話して
「これ何とかしてくんない?」
と頼んだ。
 
すると《きーちゃん》は余力があると思われた仙台コシネルズのメンバーを呼び出し、彼女たちに畳の交換と床下掃除をしてもらった。
 
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もっとも康子さんは彼女たちの性別に首をひねっていた。
「あなたたち、女性ですよね・・・」
などと言うので
 
「ああ、私は男の娘ですよ」
「私は元男性」
「私は男性を廃業済み」
などとメンバーたちが言うので
 
「ごめんなさい!変なこと訊いて」
と康子さんは恐縮していたものの
「性別のこと言われるのは全然気にしませんから」
と彼女たちも笑顔で言っていた。
 
もっとも康子さんは性別の方に注意が行ってしまったので、彼女たちの多くが韓国人・中国人・(一部モンゴル人)であることには気付かなかったようである。
 
彼女たちの作業は10月31日(木)と11月1日(金)の2日間で完了し、康子さんは1階でも生活することができるようになった。それでも電気・ガス・水道は止まったままである。千里はミラを運転して比較的物資があると思われた埼玉まで買い出しに行って、食糧のほか、カセットコンロの予備とボンベ多数、ペットボトルの水、モバイルバッテリーなどを調達してきた。バッテリーは桃香のアパートで充電してくる。
 
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「桃香に電話したら、向こうもお友だちで家が崩れちゃった人をしばらく同居させることになったらしいです。だから私はしばらくここでお母さんと暮らすことにしますよ」
 
「ありがとう!助かる」
と康子は言った。
 
千里は子供たちはあの狭いアパートでは辛いのではと考え、こちらの1階が使えるようになった時点でミラを運転して経堂まで行き、子供4人をこちらに連れてきた。これで向こうは人数が大人5人になるので、まだ何とかなるだろうと考える。来紗と伊鈴について康子から聞かれたら千里は「桃香の隠し子なんですよ」と答えておいた。
 
「桃香さんが産んだ子?」
「桃香はこの子たちの父親ですね」
と言うと、康子さんはかなり悩んでいた。
 
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「桃香さんってやはり実は男性なんだっけ?」
「女だとは思いますが、たぷんちんちんあります」
「私もう性別が分からなくなって来た」
「なんか微妙な人が多いですね」
 
季里子は最初毎日経堂から電車で千葉まで来て子供たちの世話をしていたが、康子が「あなたいっそ泊まり込んだら?」と言うので、結局、康子・千里・季里子の3人で子供たち4人の世話をすることにした(桃香はどうせ役に立たない)。
 
ちなみに康子は来紗・伊鈴が「桃香と季里子の間の子供」というのを信じてしまったようである!
 
(結果的に経堂は、季里子の両親、夏樹、桃香の4人が暮らすことになる)
 
なお、夏樹は11月11日になって都内のアパートを確保することができ、転出していった。季里子の父が保証人になってあげた。ちなみに契約書類の性別欄には女の方に丸を付けた。桃香は最後まで夏樹を女性と思い込んでいた。季里子および両親が住む場所(2DKのアパート)も11月18日には見つかった。
 
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春花(26)

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