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■春花(11)

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「あれ〜?黄色い彼岸花だ」
と、幸花がそれを見付けて言った。
 
「これも彼岸花の近隣種かな?」
と明恵が真珠に訊く。
 
「黄色いのはたぶん鍾馗水仙(しょうきずいせん)です。これもやはり曼珠沙華の近隣種です」
と真珠。
 
「しょうき?」
「七福神の鍾馗様(しょうきさま)ですよ。花の形が鍾馗様のヒゲに似ているとかで」
と真珠が説明すると
「ああ、その鍾馗か!」
と幸花は納得していたが、これは真珠の勘違いで七福神に鍾馗様は入っていない!(*2)
 

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(*2)七福神は通常、恵比寿、大黒、弁天、布袋、毘沙門、福禄寿、寿老人とされる。この中で大黒天(だいこくてん)は日本の大国様(だいこくさま)こと大国主神(おおくにぬしのかみ)と同音であることから混同され、また弁天(弁才天/弁財天)は同じ水の女神であることから宗像の神(宗像大社や厳島神社の神)市杵嶋姫神(いちきしまひめのかみ)を長女とする三姉妹神と習合されている。毘沙門天の別名は多聞天である。
 
ただ過去に他の神が七福神に数えられたこともある。
 
吉祥天、ダルマ、などはよく入れられるが、他におたふく(御多福)&ひょっとこ、不動明王&愛染明王、鍾馗(しょうき)、白髭明神、宇賀神などが入れられたこともあるらしい。
 
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だから真珠の発言は誤りとは言えないが、実際には“ミステリーハンター”真珠は七福神が普通、恵比寿・大黒・弁天・布袋・毘沙門・福禄寿・寿老人であることを知っており、この発言は単純な勘違いである。またこの時は、同様の知識があるはずの明恵も間違いに気付かなかった。青葉は気付いたが、話の腰を折るので訂正しなかった。そこで放送時には真珠の「勘違いしてました。ごめんなさい」という謝罪シーンが挿入されることになる。
 

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「実は白曼珠沙華は、赤い曼珠沙華と鍾馗水仙のハーフではないかという説もあるんですよ」
 
「ああ、赤い曼珠沙華の花粉が鍾馗水仙に雌蘂(めしべ)について種ができたみたいな?」
 
「それが困ったことに、曼珠沙華って不稔性(ふねんせい)で、種を作らないんです」
「え?そうなの?」
 
「曼珠沙華って、毒々しいまでの美しさがありますよね。それで子供を作れないから、私は男の娘みたいだって、よく思ってました」
と真珠が言う。
 
男の娘であった真珠が言うと、この言葉は重く感じられた。性別を超えて生きようとする人は、それと引き替えに子孫を作る能力を放棄している。
 
もっとも真珠も明恵も女としての生殖能力を獲得してしまったようだが!(2人とも8月中旬に初めての生理、9月中旬に2度目の生理が来たらしい)
 
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「でも種を作れないなら、どうやって増えるの?」
「球根を作って増えるんです」
「ああ!」
 
「球根から発芽してできた個体は元の植物のクローンなんですよね。だから実は日本に存在する曼珠沙華は全て同一のルーツを持つクローンなのではという説もあるんですよ」
 
「日本のミジンコが全部4個体のクローンなのではという説みたいな」
「そうです、そうです。彼岸花も、ひょっとしたら1個だけではなくて、2〜3個体のクローンかも知れないけど、調査するのは大変でしょうね」
「まあミジンコの場合もよく調べたね」
 
ミジンコの場合は全国300の湖沼でミジンコを集め、遺伝子的に同一な4種類しか存在しないという結論に達している。
 
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「でも不稔性ならどうやってハーフができた訳?」
「謎ですね。男の娘同士で子供が作れるか?みたいな話かも」
 
「作れないことはないけど難しい」
と青葉が言ったので
「作れるの!?」
と幸花が驚いて言った。
 
「カエルだったかではオス同士の子供を作る実験が成功していたはず。後でやり方を説明するよ」
 
「ちょっと興味あるなあ」
と明恵も言っていた。
 
(物凄く大雑把に言うと、母親にしたいオスのクローンでメスになる個体を作り、その個体が作った卵子と、父親にしたいオスの精子を掛け合わせる。ごく低確率で発生する“コピーエラー”を利用して、性別の違うクローンを作るというのがミソである)
 

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「だけど彼岸花って毒花でしょ?なんでこんな身近にたくさん咲いているんだろうね。セイタカアワダチソウみたいに駆除しようみたいな話も起きないし」
と唐突に幸花が言った。
 
これは青葉が知っていた。
 
「毒花を水田の周囲に植えることで、ネズミやモグラを水田に近寄らせないようにしていたんだよ」
 
「あぁ!」
 
「だから山中に唐突に彼岸花が咲いているような場所は、たぶん昔は水田があった所」
「へー」
 
「更に彼岸花の毒って水溶性なんだよね」
「うん?」
「だから毒抜きが可能。それで飢饉の時は、実は非常食にもなるんだよ」
「へー!」
「これ毒抜きの方法は難しいから素人が適当にやると、1度食べただけでは死ななくても、体内に毒が蓄積して数回食べた所で死ぬこともあるから」
 
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「怖い!」
 
「だから食べることが可能だからといって、素人はやってみない方がいい」
「なんか推理小説のトリックに使えそう。1回では死なないけど、毎日食べさせていたら、やがて死ぬみたいな」
 

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明恵が言った。
 
「ネズミとかモグラ除けに使えるなら、幽霊除けには使えませんかね?」
 
「幽霊はモグラとは違うと思うが」
と幸花。
 
「いや、この土地を使うなら、多少の魔除けにはなりますよ」
「ああこの敷地の周囲をずらっと、赤・黄・白の彼岸花で囲むときれいかもね」
 
「それは実際に害虫除けにもなるかもね。現代ではマムシ除け・ムカデ除けとかの忌避剤を撒くけど、ニガウリを虫除けに使っている所とかもあるよね?彼岸花も害虫除けに使えるし、やり方によっては幽霊除けにも利用できると思う」
と青葉。
 
「幽霊にも利くんだ?」
「やり方次第。これは秘伝の方法がある。実は別の所で、アテの木を使って結界を作ったことあるんだけど、彼岸花も使えると思う」
 
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「それやりましょう!」
と幸花が言うが
 
「他人の土地で勝手なことはできないよ!」
と青葉は言った。
 

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「いっそテレビ局でここの土地を買って〒〒テレビ・スポーツセンターとかにするとかは?人が出入りしていれば幽霊も寄りつかないんでしょ?」
と幸花が言う。
 
「さすがにうちの番組の予算で7億は出ない」
と神谷内さんは言ったが、放送した時に、さりげなく値切っていると言われた!(実際には勘違いだったらしい)
 
「ドイルさんなら買えません?ドイルさんって結構な資産家でしょ?毎年数億円の税金を払っているとか」
と幸花が言う。
 
「そういうこと、テレビで言わないでよぉ」
と青葉は文句を言うが、支店長さんが(多分半分冗談で)
 
「遊休地ですし、お安くしますよ。7億円でもいいから、お買いになりません?消費税増税前に」
などと言う。
 
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「それあと3日しか無いじゃないですか!」
と青葉。これは9月27日放送という前提で発言している。実際に取材しているのは9月16日である。
 
「確かに7億円の2%は140万円もあるから大きいですよね(*3)」
と幸花。
 
(*3)幸花は計算間違いしている。7億円の2%は1400万円である。これも放送時に幸花の謝罪シーンが挿入された。
 

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「これ買って何か建てる場合、町側の認可とか必要なんですか?」
と神谷内さんが訊く。
 
「開発許可は必要でしょうけど、ラブホテルとか建てるんじゃなかったら認可出ますよ」
と不動産部長さん。
 
「さあさあ、ドイルさん、買いますか?買いませんか?」
と幸花。
 
何か既に『霊界探訪』ではなく『有吉ゼミ』になっている!
 

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「ドイルさん、筮竹(ぜいちく)で易でも立ててみては?」
と明恵が言う。
 
「筮竹ですか〜?」
 
と言って青葉はバッグの中からスパゲティケースに入れた筮竹を取りだした。筮竹の保管と持ち運びにはスパゲティケースが良いと教えてくれたのは千里姉である。青葉は以前は布の袋に入れていたので実は折ってしまったことがあった。
 
「面白いものに入れてますね」
と真珠が興味深そうに言う。
 
「折ったりすることがなくていいよ。ちょうどサイズが合うんだよね」
と青葉は言っている。
 
筮竹を4回使用して易卦(えきか)を立ててみる(四遍筮という少し珍しいやりかた)。
 
「沢地萃(たくちすい)の天火同人(てんかどうじん)に之(い)く」
「吉ですね!」
と明恵。
 
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「人が集まってきて賑わいますよ」
と真珠。
「同じ趣味の人たちが出会って新しい文化が生まれるんですね」
と明恵。
 
この2人はどうも易の少なくとも基礎知識はあるようだ。
 
誤魔化せないじゃん!
 
「買っちゃおうかな」
「おぉ!」
 
「これで幽霊は出なくなりますね」
と明恵と真珠は喜んでいるが
 
「究極の自爆営業だな」
と神谷内が言った。
 
そういう訳で、青葉はこの土地を買っちゃうことになったのである!
 
(最終的には銀行側とあらためて交渉して、取り付け道路まで含めて7億円+消費税(8%)で、756,000,000円で増税前最後の平日2019.9.30付で青葉はこの土地を購入した。7億でもいいと言っちゃった銀行の津幡支店長さんは、1億円も安くしたことを頭取から叱られたものの(まさか“お買い上げ”になるとは思いもよらない)、遊休地を処分してくれたことは褒められ金一封をもらったらしい)
 
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そういう訳で、9月27日放送の『霊界探訪』は前半で裏磐梯・浄土平と浄土松公園をやり、後半にX町の集会所と津幡町のスポーツ施設・建設放置跡の幽霊処理を放送した。幽霊の処理のほうが『霊界探訪』っぽいものの、実際には浄土平や浄土松公園のヴィジュアルがかなりの反響を呼んだようである。
 
(浄土寺川ダムと射水市の浄土寺町はカットされてしまった!浄土沢と浄土山は素晴らしい景色なので、今回は尺不足で入れられないものの、次回使おうという話になった)
 
ちなみに金沢ドイルが7億円の土地を買っちゃった件については
 
「ドイルさんって、なんでお金持ちなの?高額見料で儲けているとか?」
という疑問がネットにあがるが
 
「違うよ。金沢ドイルは、本業は作曲家でアクアのプロデューサー大宮万葉。アクアの印税で儲けているんだよ」
という情報がすぐに書き込まれる。
 
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「金沢ドイルが大宮万葉なのか!」
「アクアの印税は確かに凄そうだ」
「それなら7億くらいポンと出せる訳だ!」
 
ということで、金沢ドイル=大宮万葉であることが知れ渡ることになる。
 

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千里1の高知(土佐)路の旅は続いていた。
 
9月22日(日)。雨はあかっているがまたいつ降り出さないとも限らないので、早く出発することにした。それで早めに朝御飯を出してもらい、おにぎりも作ってもらって、朝6時に宿を出た。高浜アリスは日和佐からの40km歩行で疲れたようで朝起きられなかったようだ。風邪は《びゃくちゃん》が治してあげたものの、洗濯してもらったお遍路衣装や、単純に干している菅傘が乾くまであと1泊したほうがいいんじゃないかなーと千里は思った。この宿、御飯の量が多いわりに宿賃は異様に安いし!
 
「白虎が風邪を治したから、俺はあそこを直してやろうか?」
と《こうちゃん》が言ったが
「よけいな親切はしないように」
と千里(千里1)は釘を刺しておいた。
 
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もっとも千里は昨夜アリスと“握手”したので、彼女はきっと朝起きたら仰天するだろう。《こうちゃん》は千里1の暴走を知ってて、何も停めようとせずに、むしろ性別の怪しい人と握手するように仕向けている感もある。
 
おかげでこの年“お遍路すると性別が変わる”という噂がトランスの人の間で流れ、翌年春の季節のよい時期に大量のGIDお遍路が発生することを千里1は知るよしもない!
 

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さて千里1は、まず民宿から6時間歩いて室戸岬の近くまで来る。そして24番・最御崎寺(ほつ・みさきじ)にお参りする。
 
昨日歩いた分と合わせて75kmになる。東京から小田原までが83kmであることを考えるとこの距離の凄さが分かる。この距離を千里は1泊2日で歩いたが、スポーツ選手でもあり、毎日100km歩く修行(但し持ち物は錫杖のみ)をしている千里だからできることであり、普通の人は3日か4日掛けて歩いてもいいと思う。ここは88ヶ所を順打ちする場合、最初の遠距離間隔の場所である。
 
日和佐から室戸岬への行程は、室戸半島の東側・紀伊水道沿いの海岸をひたすら南下するルートである。この日お参りしたのは下記である。
 
36.5km(6時間)歩いて24.最御崎寺(12:00-)
6.5km(1時間)歩いて25.津照寺(13:40-)
3.8km(45分)歩いて26.金剛頂寺(15:05-)
 
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読み方は、ほつみさきじ、しんしょうじ、こんごうちょうじ。
 
今回は訪れていないが、最御崎寺の近くには御蔵洞という洞窟があり、若き日の弘法大師・空海が、そこに籠もって海の音を効きながら、ただひたすら読経(虚空蔵求聞持法)に明け暮れた。そのとき彼が念じていたのは自然と一体となることで「わが心空の如くあれ、わが心海の如くあれ」といったものであった。
 
ここから空海の名前が出た。
 

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春花(11)

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