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■春花(23)

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10月13日(日)はよく晴れた。
 
この日は観音寺市内の宿を7時に出て、三豊市から善通寺市を歩き巡った。
 
4.5km(50分)歩いて70本山寺(8:00)
11.3km(105分)歩いて71弥谷寺(10:25)
3.5km(30分)歩いて72曼荼羅寺(11:50)
0.5km(3分)歩いて73出釈迦寺(12:25)
2.2km(17分)歩いて74甲山寺(13:20)
1.6km(10分)歩いて75善通寺(14:15)
3.8km(45分)歩いて76金倉寺(16:30)
3.9km(45分)歩いて多度津市内で宿泊(18:00)
 
読み方は、もとやまじ、いやだにじ、まんだらじ、しゅっしゃかじ、こうやまじ、ぜんつうじ、こんぞうじ。
 
善通寺は大きなお寺でもあり、高野山・東寺とならぶ弘法大師三大霊場のひとつなので1時間半掛けてお参りしている。善通寺市は弘法大師の出生地であり、このお寺も、元々は弘法大師の父が創建したものである。
 
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この日は日曜日でもあり観光客が多く、握手を求めてきた人も結構いたので千里はこの日たくさん握手をしている。
 
この日の《こうちゃん》は何だか凄く楽しそうだった!
 
10月13日の行程31.3km
 

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10月14日(月)も晴れであった。
 
今日は多度津町、宇多津町、坂出市、高松市、坂出市と歩き回る。今日は札所と札所の間が全部徒歩1時間程度である。
 
宿を出てからすぐの所の77道隆寺(8:00)
7.2km(60分)歩いて78郷照寺(9:40)
5.9km(50分)歩いて79天皇寺(11:15)
6.6km(60分)歩いて80國分寺(12:50)
6.5km(50分)歩いて81白峯寺(14:20)
5.0km(50分)歩いて82根香寺(15:55)
11.9km(110分)歩いて高松市内で宿泊(18:30)
 
読み方は、どうりゅうじ、ごうしょうじ、てんのうじ、こくぶんじ、しろみねじ、ねごろじ。
 
天皇寺は崇徳上皇を祀った白峰宮の別当寺であった所。天皇寺という名前も崇徳院にちなむものである。また白峯寺は崇徳院の墓所の近くにあった寺で、近くであった縁で、院をお祀りしている。
 
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崇徳院は「瀬を早み、岩にせかるる滝川の、われても末に逢はむとぞ思ふ」の人であるが、保元の乱で敗れて讃岐に流され、物凄い呪詛をしながら亡くなった。千里もここでは厳粛な気持ちにならざるを得ない。普段は冗談と悪ふざけばかりの《こうちゃん》でさえ、ここでは厳しい顔をしていた。
 
(こうちゃんはエイリアス使いなので、千里1の傍に1人、千里2の傍に1人付いているほか、別の1人がアクアのマネージャーもしている。千里3が呼んでもすぐ駆けつける。虚空にもわりと雑用でこき使われている。彼がエイリアスを最大何人出せるのかは、長い付き合いである虚空も知らない)
 
千里も正直今日は白峯寺で終えたくはなかったので、根香寺まで行けるように頑張った。
 
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10月14日の行程43.1km
 

10月24日(木)にK大水泳部で、4年生の送別会が行われた。青葉たち4年生は一応卒業まではK大水泳部に籍は残るものの、この後は卒論や就活などもあり、顔を出せなくなる人が多いので、この時点で送別会を実施したのである。
 
4年生のメンバーでは、青葉は〒〒テレビ入社が決まっているし、杏梨と春貴は理系なので修士課程への進学を予定しており、蒼生恵と吉田君は金沢市内の企業への就職が内々定している。中原君は東京の企業に行くらしい。
 
この日は金沢市内の焼肉屋さん(ファミレスの予定が吉田君の希望で焼肉屋さんになったらしい)でノンアルコールで賑やかに送別会が行われ、記念品も渡された。青葉は水色ボディのボールペンをもらった。ひとりひとり色が違うようで、杏梨は赤、蒼生恵は青、吉田君は緑、中原君は黄色、そして春貴は紫であった。
 
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「何となくこの人はこの色かなあというイメージで決めた」
などと新部長の希美が言っていた。
 

10月26-27日(土日)には東京辰巳国際水泳場で日本選手権(25m)水泳競技大会が行われた。青葉は世界選手権代表なので全ての種目にエントリー可能だが、400m, 800m, 400m個人メドレーに出場した。
 
青葉は24日(木)に大宮まで出ていき、その日は彪志のアパートに泊まる。25日は公式練習日だったが、軽く流しただけですぐ引き上げ、深川アリーナの25mプールで夕方まで泳いだ。この日は深川アリーナの休憩室に泊まらせてもらい、26日朝も軽く泳いでから辰巳に出て行った。
 
東京辰巳国際水泳場のメインプールは長さは50mだが、幅が2.5m×10コースで25mある。そこでこれを半分に切ってA面・B面という2つの25mプールとして使い、同時進行で別の種目を実施するのである。今回の大会では、A面では午前中女子の予選、B面では男子の予選を行い、午後からはA面のみを使い男女のB決勝と決勝を行うという方式が採られた。つまり女子はA面のみ使用する。
 
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青葉は26日には400m個人メドレーと800mに出場した。まずは午前10時すぎに400m個人メドレーの予選に出場する。これは問題無い。
 
15:36、女子800m自由形のタイム決勝最終組がおこなわれる。これは実質青葉とジャネの競争のようなものであった。他の選手はこの2人に大きく離される。結果は0.2秒差でジャネの優勝である。青葉は悔しい顔をしながらも彼女と握手した。3位は南野さんであった。
 
16時半、400m個人メドレーの決勝が行われる。正直800mを泳いだ1時間後にこれを泳ぐのは辛い。しかし頑張る。気合いである。そして青葉は
金堂さんと0.1秒差で優勝した。金堂さんが、かなり悔しそうだった。
 
世界選手権では青葉はフライングで失格し、繰り上げで決勝に出た金堂さんが銀メダルを取っているし、彼女は400m個人メドレーの日本記録保持者でもある。ここは優勝してスッキリしておきたかったろうが、青葉も
彼女にそう楽はさせないつもりである。3位は竹下リルだった。
 
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27日は午前中10時半頃から400m自由形の予選が行われた。そして16時半頃から決勝が行われた。
 
これは青葉・ジャネ・金堂3人の戦いである。春の日本選手権では、0.28秒差の中に3人が入っていた。3人ともハイペースで飛ばすので
4位以下との差がどんどん開いていく。
 
タッチ。
 
青葉は時計を見て首を振った。
 
ジャネが1位、青葉は0.01秒差の2位、金堂は青葉と0.18秒差の3位
だった。つまり0.19秒差の中に3人が入っていたのだが、優勝した
ジャネに笑顔は無かった。長身で腕の長いジャネが0.01秒差(距離で1.6cm)で勝ったということは、身体自体は青葉が5-6cm先行していたことになる。
 
(実際着順が逆では?という声が観客の中から随分あった)
 
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しかし3人の中で最も長身の金堂が2人に握手を求めたので、それで
青葉とジャネも握手し、3人で笑顔で表彰台に登った。
 

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青葉は10月24日夕方の新幹線で大宮まで出てきて、25日は午後辰巳水泳場に顔を出しただけで、あとは深川でずっと練習していたのだが、この日は物凄い雨だった。休憩時間にニュースを何気なく見ていたら、千葉県でかなりの被害が出ているようなので驚く。
 
彪志にメールする。
《千葉で雨が凄いことになっているみたいだけど、お友だちとか大丈夫?》
 
《mixiで呼びかけたけど、無事な人からは反応が返ってきてる。でも反応のない人の中に無事じゃない人がいるかも》
 
確かに無事じゃない人は反応もできないだろう。
 
病院で医薬品が不足する所なども出る可能性があるので、今夜は社内待機してくれと言われているという話だった。
 

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『姫様、神社は無事でしょうか?』
と青葉は後ろに居候している姫様に尋ねる。
 
『神社自体は無事だが、真知が孤立してるぞ』
と《姫様》は言った。
 
「それはまずい」
と青葉は声を出し、千葉玉依姫神社の巫女長(に千里姉が任命した!)をしている後藤真知に電話を掛けてみるものの繋がらない。
 
『あそこは高台だから大丈夫だし、動かない方がよいから、私が伝えておこう。ついでに食糧を下僕(しもべ)に届けさせるから、5000円くらい頼む』
『分かりました』
というので青葉は姫様に1万円札を渡した。
 

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実際1人で玉依姫神社の社務所に居た後藤真知は、豪雨を見ながら、どうしたものかと悩んでいた。これではバイク(GSR250S)で自宅に帰るのも難しそうだ。自宅(江戸川区)も被害が出ているかも知れないが、母に電話が通じない。そもそもどこにも電話が通じない!
 
その時、後ろでガタッという音がした気がした。
 
何だろう?雨でどこか社務所の屋根でも壊れた?と思って振り返ると、縁起物の招き猫を多数並べた棚の所に三毛猫がいた。三毛猫がしゃべった!
 
「真知ちゃん、ここは高台だから雨の被害は無いと思う。落ち着くまでここにずっと居た方が安全だよ。ちなみにお母さんも無事だよ」
 
三毛猫がそうしゃべるのを真知は呆然として見ていた。でもこの三毛猫は何度か見たことがある気がした。近所に住んでる三毛猫だろうか?などと思う。
 
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しかしよくよく見たら、そこには三毛猫ではなく、見慣れないレジ袋があった。
 
何だ何だ?と思って見てみると、中にまだ暖かいチキン南蛮弁当とペットボトルの暖かいお茶のほか、カップ麺、サトウのごはん、レトルトの銀座カレー、お菓子などが多数入っている。ペットボトルの水もある。
 
「これ猫が化けたものではないよね?」
と悩んだものの、
「タヌキは化けるかも知れないけど、猫は化けないだろう」
 
などと呟きながら、取り敢えずペットボトルのお茶を飲みながらお弁当を食べ、まだ入る気がしたのでお湯を沸かして“一平ちゃん”を食べたら、結構落ち着いた。
 
「よく分からないけど、これだけ食糧があれば何とかなるよね」
などと思っていたら、今度は縁起物を渡す所のガラス戸がノックされた気がした。
 
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まさかこんな時に客?と思って見ると、そこに八村塁(NBAワシントン・ウィザーズ所属の日本人プロバスケット選手)が居る気がした。
 
「きゃー!!塁さまぁ!」
と黄色い声をあげて窓を開けるものの、誰も居ない。
 
あれぇ?幻でも見たかなと思ったら、何か飛び込んできた。
 
「きゃっ!」
と悲鳴をあげて窓を閉める。
 
見ると床に何かズタ袋が落ちている。あけてみると、缶詰、カップ麺、レトルト食品の類いが大量に入っている。食パン、ハム。チーズ、ジャム、アルファ米の炊き込みごはん(水を掛けると勝手に暖まり食べられるようになるもの)まである。ペットボトルの水にジュース、ビール!?まで入っていた。
 
「助かる〜。でも誰が投入してくれたの?やはり塁様?」
と真知は声をあげたが、アメリカに居るはずの八村塁がこんな所に来る訳が無い。
 
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結局真知は日曜の夜までずっと神社に滞在した。ここは電気は太陽光パネルによる自家発電だし、雨水を溜めた水槽から取った水をいったん電気ケトルで沸騰させれば飲用に使えるので、食糧さえあれば結構何とか自立生活が可能なのである。むろんペットボトルの水がある間は雨水を使わなくてもそちらでやっていける。
 
もっともさすがにこの豪雨の中では、参拝客は誰もこなかった。
 
電話もネットもつながらず暇なので、真知はずっと地下のバスケット練習場でバスケのシュート練習をしたり、社務所内で仮眠したりしていた。
 
日曜日になって警察の人が来て
「無事ですか?」
と尋ねたが、
「ここは自家発電もあるし何とかなってます」
と答えると
「何かあったら署に連絡ください」
と直通の番号の入った名刺を置いていった。
 
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「最近は男性の巫女さんも居るんですね」
と警官が言ったのは気にしないことにした!
 
(真知は伊勢の神宮に巫女研修に行った時『男性の方は困るんですけど』と言われたクチである)
 

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康子は物凄い雨の音に驚いて目を覚ましたが、窓を開けて外を見ると、家の前の通りが川になっている!どうしよう?と思った時、千里さんの『お母さん、2階に逃げて』という声を聞いた気がした。
 
そうだ、2階ならと思い、まずは仏間に行って、夫・夫の前妻・信次の位牌、千里さんからもらったお遍路の菅傘と遍路衣装を持って2階に駆け上がった。2階の部屋の床の間にそれを置くと少し落ち着いてきて、再度1階に降りて、まずは布団や毛布を持って2階にあがる。それから台所に降りて冷蔵庫の中から少し食糧を持ってこようとしたら既に廊下や居間の畳の所まで水が来ていた。
 
取り敢えず食糧をボウルとかエコバッグに入れて2階にあがったが、これどのくらい2階にいなければならないんだろうと悩んだ。トイレとかどうしようかな?と思っていた時、2階の部屋の窓がトントンとされた気がした。
 
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2階にお客?
 
な訳無いよね?と思いながら窓を開けたら何か飛び込んできた。
 
何?何?
 
と思うが窓から凄い雨が降り込むので、すぐ窓を閉める。それで畳に落ちているものを見ると、何かのズタ袋である。
 
おそるおそる中を見ると大量の食糧が入っていた。
 
「助かる!」
と思う。カップ麺やレトルトカレー、ペットボトルの水などもある。ピンクのビニール袋に入ったものがあるので何だろう?と思って見ていたら、緊急トイレであることが分かった。
 
助かるかも!と思った。取り敢えずおしっこはこれで何とかなるようであった。
 
しかし大の方はできないようだ。
 
と思ったら急にしたくなった!
 
康子はおそるおそる1階に降りて、玄関で長靴を取ってくる。それを履いてトイレに行き、何とか用を済ませた。まだ長靴を履けば1階は歩けるようである。そして降りたついでに、台所から電気ケトルとオーブントースター、IHヒーターを持ってあがった。これでカップ麺とかは食べられる。
 
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でも食糧とか投下してくれたのは誰だろう?自衛隊かな??
 
などと考えた。
 
(ちなみにすぐ停電したのでせっかく康子が決死の思いで持って来たケトルやIHヒーターは使えなかった。台風15号の被害の後で買っておいたカセットコンロとボンベを再度取りに行くはめになった)
 

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春花(23)

広告:わたし、男子校出身です。(椿姫彩菜)