広告:わが輩は「男の娘」である!-コンペイトウ書房-いがらし奈波
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■春からの生活(26)

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その日の4時限目には身体測定も行われた。全員で保健室に行くがこの時西湖は「あれ?」と思った。西湖と同じことを水希(Fire Fly20)も思ったようで
 
「あ、そうか。男子と女子を分けないんだね」
と言って
「うちの学校に男子はいない」
と他の子から言われている。
 
そうなのである。身体測定は、西湖の小学校では男子と女子は時間差を付けていて、男子が保健室に行って来た後、次は女子といった感じで行われていた。中学の時は部屋が分離されており、女子は保健室、男子は理科室だった。
 
中学時代、西湖は身体検査がある日は前日に忘れずにブレストフォームを外さないといけないので大変だった。それでも上半身裸になるとブラ跡が付いているので、それを他の男子に指摘されて、かなり恥ずかしかった。ただこの問題は保健委員の子が先生に言ってくれて、その後、西湖だけは身体検査の時にシャツを着たままでいいことにしてもらった。でもそのことで疎外感を感じた。
 
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(一方龍虎は「テレビで女の子役してるから」と言って、堂々とブラ跡を曝して身体検査を受けていたのだが、内気な性格の西湖はテレビに出ていることも同級生たちに言ってなかったので、かえって誤解されていた感もある)
 

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そんなことを思い出しながらも、みんなと一緒に保健室に行き、制服を脱いで下着だけになる。キャミソールやスリップをつけている子はそれも脱いでブラとパンティだけになる。ブラ付きキャミソールの子はそのままで良い。西湖もブラとパンティだけになったが、クラスメイトたちと同じなので、仲間意識のようなものを感じて、ちょっと嬉しい気分だった。
 
むろん西湖は女の子の下着姿を見るのは全然平気である。仕事ではしばしばアクアと一緒に女性タレントの控室にいるが、他の女性タレントが着換えているのを見ても何も感じない。
 
しかし下着姿になると、やはりバストの大きな子は
「おっきいねー」
 
とか言って触られたりしている。先頭に並んでいる瀬梨香も次の童夢から
「これすごーい。Dカップ?」
 
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などと言われて、少し恥ずかしがるような顔をしていた。バストが大きいこと言われて恥ずかしがるって、意外に純情なんだなと西湖は思った。
 

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西湖の胸はブレストフォームでBカップサイズの胸にしているが、標準的なサイズなので、あまり注目されずに済む。出席番号順で次の奈津から
 
「私と同じくらいのサイズだ」
と言われて少し触られたくらいである。触られたのでこちらも
「ほんとだ」
などと言って彼女のバストにも触ったが、このくらいでは気持ちは乱れない。平常心である。
 
身長計に乗って保健委員の子が数字を読み、それを担任の大月先生がパソコンを使って入力する。西湖は157cmと言われた。あれ?158cmと思っていたんだけどなあと思うが、まあ誤差の範囲であろう。
 
その後体重計に乗るが、これはワイヤレスの体重計なので、西湖が体重計に乗ると、大月先生の手元に置かれた表示ユニットに体重が表示される。先生はそれを記録する。つまり体重は読み上げられない。これはやはり女子ならではの微妙な気持ちに配慮した方式だよなと西湖は思った。西湖の体重は46.7kgであった。
 
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ただ西湖はブレストフォームをつけていて、その重さが実は1kgほどあるので本当の体重はこれより1kg軽いことになり、やや痩せすぎの部類になる。
 

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翌日11日(水)には、視力、聴力、歯科の検査があった。これはもちろん着衣なので何も問題が無かった。
 
そして12日(木)は、内科検診・心電図検査・胸部X線間接撮影である。この日西湖はこの検査内容のことを、なーんにも、考えていなかった。
 
それで先日の身体検査の時と同様にクラス全員で保健室に行くが、まだ前のクラスがやっていて、西湖たちは廊下で待機した。
 
「そういえば聞いた?用賀駅から学校まで歩いてくる途中に銭湯があるじゃん」
「うん。何かあったの?」
「昨日痴漢が捕まったんだって」
「のぞきか何か?」
「それが堂々と女湯に入っていたらしいよ」
「うっそー!?」
 
「女に見えるように、長い髪のカツラをつけて、胸にも付けおっぱいを貼り付けていたらしい」
「でもあれが付いてるんでしょ?」
「そうそう。お股にあるものは隠せないよね〜。更にお化粧までして湯船につかっていたらしい。ヒゲを隠すのに」
 
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「お化粧したまま浴槽に浸かるなんて、怪しすぎる」
 
「普通浴室に入る前にお化粧くらい落とすし、そのまま入っても浴槽に浸かる前に洗い場で落とすよね。それで不審がられて、お股の所タオルで隠しているし、妙に肩が張っているから、入浴していた女性が気付いて、『あんた男じゃないよね?』と言ったら逃げようとしたんで、みんなで椅子とか投げつけて、ひるんだ所を取り押さえて、すぐに警察呼んで引き渡したらしいよ」
 
「ふてぇやっちゃな」
 
それって私も下手したら捕まっていたかも知れないよぉ、と西湖は内心冷や汗を掻いていた。西湖の所には先日CBF(女湯に入る会)の会員証が送られて来ていたが、それと同時に丸山アイから「また一緒に女湯に入ろうね♥」というメールも来ていた。
 
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「でも付けおっぱいとかあるんだ?」
「結構リアルらしいよ。ちゃんと乳首も付いているんだって」
「それどうやって取り付けるの?吸着式?」
「普通のバストパッドなら、粘着式のもあるんだよ。でも付けおっぱいは重たいからそんなのでは無理で、両面テープで貼り付けるらしいよ」
「でも境い目でバレない?」
「そうそう。よく見れば境い目があるからバレる」
 
「でもそんなの貼り付けても、ちんちんがあったらバレるに決まってる」
「実際男が女湯に入ったら、ちんちん立つだろうから、凄くバレやすい」
 
なんか結構凄いこと言ってるなあ。でも女子高の会話ってこんなものかも、と西湖は思いながら聞いていた。
 
しかしこの会話をしていた時、瀬梨香がなぜか居心地の悪そうな顔をしていたので、何だろう?と思った。
 
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やがて前のクラスの最後の子が終わって、体育館の方に向かう。6組の担任が出てきて「次どうぞ」という。4年7組の西湖たちが保健室に入る。ここでは心電図と内科検診が行われる。ここが終わってから体育館傍に停まっているレントゲン車で、胸部X線間接撮影が行われる。
 
保健室の途中にクロススクリーンが立ててあり、その向こうで検査をしているようである。
 
最初に3人入って下さいと言われるので出席番号1〜3の青島瀬梨香、浅井童夢、天月聖子と入る。このスクリーンの向こう側に更にスクリーンが立ててある。服を脱いで下着だけになって下さいと言われるので、3人とも服を脱ぐ。最初の人入って下さいと言われるので瀬梨香が入る。どうも心電図を取った後、医師の健診を受けるという順序のようだ。瀬梨香が中に入ったので、大月先生は次の人入ってと言う。江川奈津が入ってくる。服を脱ぎ始める。
 
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スクリーンの向こうに行った瀬梨香(歌手の田川元菜)は心電図を取られているようである。ところが
 
「え?心電が無い!?」
と技師さん(女性)が声を挙げている。
 
「何?」
と言って内科検診のために控えていた医師(女性)が心電図の所に来たようである。
 
「ちゃんと取り付けてる?」
などと言って、医師が自分で見ているが、
「問題無いみたいだね」
と言っている。それで再度測定するも、どうも全く心電図が取れないようである。
 

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「機械トラブルですかね」
と言って技師さんは心電図の機械をチェックしているようだ。
 
ところがその時、医師が言った。
 
「あれ?君、これもしかしてバストパッドか何か貼り付けてる?」
 
「ごめんなさい」
と瀬梨香の声がする。
 
こちらにいた西湖たちは思わず顔を見合わせた。
 
「私、おっぱい小さいので、でも歌手をしているので胸の大きさを偽装していたんです」
と瀬梨香は言っている。
 
「そりゃバストパッドに電極付けても心電は検出できないよ。それ外せる?」
と医師。
 
「すみません。外すのに4〜5分掛かると思うんですが」
「分かった。そちらのスクリーンの向こうで外して」
「はい」
 
どうも瀬梨香は精巧なブレストフォームを胸に貼り付けていて、そこに電極を付けてしまったので、まったく心電図が取れなかったということのようである。
 
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その会話を聞いて西湖はやばい!と思った。ブレストフォームを貼り付けているのは自分もだ。そして自分の場合「おっぱいが小さい」どころではない。「おっぱいが無い」状態である。それを見たら医師は、思春期遅発症などを疑うだろう。そうなると西湖は自分の性別を申告せざるをえない。その会話は同級生たちに聞かれる。そうなると騒ぎになって、退学せざるを得なくなるかも。
 
「どうしたの?顔色悪いよ」
と奈津が心配そうに言う。
 
スクリーンの向こう側にいる保健室の川相先生が
「次の人入って」
 
と言うので、童夢が中に入り、そちらが先に心電図検査を受けることにしたようである。大月先生が次の子を呼び、出席番号5番の菊池由美奈(女優の稲川奈那)が入ってくる。服を脱ぎ始める。
 
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童夢は正常に心電図を取れたようである。「こちらで診察します」と言われて医師の所に移動する。川相先生が
「次の人」
と言って、西湖を見て、あら?という表情をした。しかし西湖は平常心で
「はい」
と答えて、中に入る。
 
「ブラジャーを取ってそこに寝て下さい」
と女性の技士さんが言う。
 
それで西湖はブラジャーを外そうとした。
 

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その時であった。
『助けてあげようか?』
というどこかで聞いたような感じのする声が脳内に響く。
『お願いします』
と西湖が答えると、次の瞬間身体の感触が変わった気がした。
 
西湖は表情を変えずにブラジャーを後ろ手で外し、ベッドに横になる。身体のあちこちに電極を付けられる。胸には6つも付けられる。
 
がその電極を付けられた時、確かにはさまれた感触があったのである。胸の所はブレストフォームなので、電極などつけられても何も感じないはずだが、確かにクリップで挟まれる感覚があった。
 
それで安静にしていると
 
「はい、終わりました」
と言われ、クリップを外される。どうも心電図は正常に取れたようである。
 
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「そのままお医者さんの所に行って下さい」
 
と言われるので胸を露出したまま女医さんの前に行き、椅子に座った。
 
女性医師は胸に聴診器を当て、体内の音を聞いているようである。後ろを向いて背中にも聴診器を当てられる。
 
「生理はいつありましたか?」
「えっと先月の20日くらいだったと思います」
「生理は定期的に来ている?」
「はい、だいたい28日おきに来ています」
「じゃ問題無いようだね。もういいですよ」
「ありがとうございました」
 
西湖がこのように普通に心電図検査・内科検診をパスしたので、川相先生は腕を組んで何だか悩んでいた。
 
川相先生は西湖の身体は女の子の形を偽装しているだけと言っていたけど、実はそういう建前で本当は少なくともバストは女性ホルモンか何かで膨らませているのではと疑ったのだが、そういう川相先生の疑いに西湖は気付いていない。
 
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西湖は医師にお辞儀をすると、ブラジャーを着け、元の場所に戻って服を着る。その服を着ていた時、やっと瀬梨香の
 
「すみません。おっぱい外しました」
という声が聞こえ、西湖はちょうど服を着終わって出ようとしていた童夢と顔を見合わせる。そして声を出さずに笑った。由美奈は前半の話を聞いていないので「何だろう?」という感じで首を傾げた。
 

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西湖は服を着終わるとスクリーンの外に出て、まだ待機している同級生たちに軽く手を振ると、保健室を出て体育館に向かう。童夢が西湖を待っていたようで、一緒にそちらに行くようになった。
 
「でもびっくりしたー。あのおっぱいは偽装だったのね」
「まあアイドルは虚像だからね〜」
「色々演出はあるよね」
「男の子アイドルでシークレットブーツで身長偽装している人とか普通にいるし」
「ああ、やはりそうだよね」
「女の子アイドルの付け乳も珍しくないと思うよ」
「でも瀬梨香ちゃん、心電図検査って何するか知らなかったのね」
「私も知らなかった!」
「お互いおっぱい偽物じゃなくて良かったね!」
 
と言い合ったが、西湖はさすがにちょっと罪悪感を感じた。
 
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体育館の外側にX線撮影車が停まっている。上履きのまま行けるようにスノコが並べられているのでそこを歩いて行く。まだ6組の子たちが並んでいる。7組は童夢と西湖が先頭である。その後、奈津が来て、その後瀬梨香が来る。
 
「瀬梨香ちゃん、先頭に来て」
と童夢が言うので先頭に並ぶ。
 
「偽装がバレちゃったぁ」
と瀬梨香は照れながら言っている。
 

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