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■春からの生活(25)

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(C)Eriko Kawaguchi 2018-01-01
 
青葉(一応主人公のはず)は3月14日に東京に出てきてから、ずっと高岡に帰ることができないまま、大宮の彪志のアパートに同居して大量の楽曲を書きつつ、アクアの仕事のため(青葉はアクア・プロジェクトのプロデューサーである)、しばしば新宿信濃町の§§ミュージックに出かけていた。
 
川崎ゆりこと打ち合わせていた時に、物凄く可愛い女子高制服を来た子が来て、青葉たちに会釈するので青葉も会釈をした。
 
しかし青葉はそれが誰なのか認識できなかった。
 
「誰でしたっけ?」
と小さな声でゆりこに訊く。
 
「今井葉月(いまいはづき)ですよ」
とゆりこは答える。
 
「あ、葉月(ようげつ)ちゃんか。凄く可愛い服着ているから気付かなかった」
と青葉は言う。
 
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「おはようございます、大宮先生。これ私が今年進学した高校の制服なんですよ」
と葉月本人もこちらに来て挨拶した。
 
「おはようございます、葉月(ようげつ)ちゃん。進学した高校の女子制服も用意したの?」
と青葉は訊いた。
 
「いえ、この制服で通学してるんですよ」
「・・・・・まさか、女の子として通学してるの?」
「うちは女子高なので」
 
「葉月(ようげつ)ちゃん、女子高生になったの!?」
「ことごとく高校入試に落ちて、この学校だけに合格したので、ここに行くことにしました」
 
「待って。なぜ葉月ちゃんが、女子高を受験できて、合格して、それで女子制服を着て通学するわけ〜? 葉月ちゃん、女の子になりたい男の子だったんだっけ?」
 
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「なりたくないです。でもこれ女形(おやま)修行なんですよ」
 

それで葉月は長い長い説明をしたが、青葉は半ば呆れていた。
 
「で、クラスメイトたちは葉月ちゃんが女形修行している男の子と知ってるの?」
「いいえ。普通の女の子だと思っています。それでもバレないように女の子を演じなさいというのが父から与えられたミッションです」
 
「ミッション・インポシブルという気がする」
と青葉。
 
「まあバレた時はバレた時で」
と葉月は開き直っているようである。
 
「ついでに私の芸名の葉月ですが、誰も『ようげつ』とは読んでくれなくて『はづき』と読むので、女子高生になったこともあり『はづき』という読みでよいことにしてしまいました」
 
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ところで少し前、入学式より前の4月5日のことであった。
 
その日は小学校の時の担任の先生が3月いっぱいで定年退職になり、同窓生で慰労会をするという報せが来ていたので、行ってみようかと思った。この日は珍しくお仕事がお休み(アクアが休みなので)だったのである。
 
夜中に自分が寝ていたはずの部屋で一騒動あったとは思いもよらない西湖は朝起きて顔を洗って御飯を食べると、慰労会に行く準備を始めた。
 
最近、女装ばかりだったけど、小学校の同級生が集まるなら男装だろうなと思い、男装するなら久しぶりに男物の下着でもつけようかなと思ってタンスを探すのだが、見つからない。タンスの下着が入っている段は、左側にブラジャー、中央付近にキャミソールやスリップ、右側にパンティーが入っている。確かキャミソールの奥に男物のシャツ、パンティーの奥にトランクスが入っていたはずと思うのだが、無いのである。
 
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あれ〜、タンスはまるごと持って来たと思ったんだけど、段ボールか何かに移したっけ?と思い、まだ梱包を解いていない段ボールを開けてみるのだが、段ボールの中に入っている服は女物の服ばかりである。
 
龍虎がファンから大量に女の子の服をもらっていて、とても収納できないので西湖にしても、他の§§ミュージックの女性タレントにしても、沢山お裾分けをもらっている。それがこの段ボールに収まっている。
 
30分ほどの「探索」の結果、どうも男物の下着どころか、男物の衣服が全く無いことに気付く。先月まで中学に通学するのに着ていた学生服やワイシャツも無い。ワイシャツかと思って出して見ると全部ブラウスである。
 

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西湖は実家に電話してみた。1月から始まった公演が4月1日で終わったので、今週くらいは両親は実家に居るはずである。
 
母が出た。
 
「あ、お母さん。ボク、じゃなかった、私の男物の服が見つからないんだけど、引越の時に見てないよね?」
 
女子高生になるんだから自分のことは「ボク」ではなく「わたし」と言いなさいと言われているのだが、長年の習慣は簡単には切り替わらない。
 
「ああ、男物の服は全部捨てたよ」
「うっそー!?」
「だって女子高生が男の服着てたらおかしいでしょ?学校に行くときだけでなく、普段でも女の子らしくしてなきゃ」
 
「でも今日は小学校の同窓会があるのに」
「当然女の子の服で行って来なくちゃ」
「恥ずかしいよぉ」
 
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「性転換は別に恥ずかしいことじゃないよ」
「性転換してないよぉ」
 
「手術こそしてなくても、既に性転換したんだよ。女子高生になるんだから、あんたはもう女の子なの。私たちもあんたのことは娘だと思うし」
 
「え〜!?」
 
母は「同窓会女の子デビュー頑張ってね」と言って電話を切った。
 
「どうしよう?」
と困った顔で西湖は座り込んだ。
 

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結局、西湖は可愛いペールピンクのカットソーに、ダークブラウンの膝丈プリーツスカートを穿き、髪は良くといて微妙な長さになっている前髪を花模様のパッチン留めで留めた。そしてリップクリームも塗り、イルカの形のバッグ(これも龍虎がファンからもらったもの)を持ち、リボン使いの可愛い靴を履いて出かける。
 
西湖はこんな格好をしても、自分が全然ドキドキしないのを感じていた。龍虎の影武者を始めた頃はセーラー服を着て出歩くのがかなり恥ずかしかったのだが(女物のパンティを穿くだけで立ってしまい困っていた)、今では自分にとって普通の服になってしまった。むしろ学生服を着ている時が変な気分になることもあった。
 
やはり私女装にハマってるなぁと思う。
 
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会場は桶川市内の公民館のホールである。
 
先生にお世話になった生徒が色々な年齢で集まるから、知らない顔の方が多いだろうと思ったので、結構開き直っていたのだが、受付の所に中学まで同級だった女の子がいることに気付く。きゃー、やばいとは思ったものの、もう開き直るしかない。
 

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「こんにちは、在籍校・年度とお名前、お願いします」
と言われるので、西湖は
「○○小学校・H24-26・天月西湖」
と堂々と記名した。
 
「え?」
と受付の子が驚いた顔をして西湖を見る。
 
「天月君なの?」
「うん」
と西湖は女声で答える。
 
「女の子になっちゃったの?」
「そうせざるを得なくなったというか」
「やはり自分に正直に生きることにしたのね?」
「そんなものかなあ」
 
「それでいいと思うよ!」
と彼女は言う。
 
ふたりのやりとりに気付いて、中学の同級生の子が数人寄ってくる。
 
「やっぱりそっちに行っちゃったんだ?」
「天月君、よくブラジャーつけてたし」
「多分おっぱいあるよね、ってみんなで噂してた」
「触ってもいいよ」
「どれどれ」
「これ結構大きいじゃん」
 
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「ちんちんは?」
「少なくとも女湯には入れるよ」
「すごーい。手術しちゃったんだ?」
 
「そういえば、最後まで進学する高校決まらなかったみたいだけど、どうなった?」
「実は東京の女子高に入ったんだよ」
「うっそー!?」
「女子高に入れてもらったの?」
「裸になってみせて、それから心理テスト受けて確かに女の子だと言われた」
 
「つまりもう女の子の身体なんだ!」
「それで心理的にも女の子なら、女子高にも入れるかもね」
 
そういうことで、西湖が女子高に進学したことは中学の同級生たちに知られることとなったのである。
 
でもなんか、勝手に女の子になりたかった元男の子ということにされてしまった気がする。ボクもう男の子に戻れなくなったりして!?
 
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川島信次は新婚旅行から帰って来た翌日、3月28日に出社した時、4月2日(月)付で名古屋支店への転勤を命じられた。ただ、近い内に腫瘍の手術を受ける予定であることから、調整をして、籍としては4月2日付で名古屋支店の籍になるものの、実際の名古屋支店での勤務は5月14日(月)からとすることにした。(それまでは千葉支店に出張中の扱い)
 
千里1は、体外受精をした仙台から戻った後、ゴールデンウィーク明けまで、ほとんど信次の家には戻らず、同市内のマンスリーマンションで作業を続けた。戻ったのは4/11に信次の手術に付き合った時だけである。
 
千里がほとんど信次の実家に姿を見せないので、ふたりは半離婚状態にあるのでは?と康子は心配していたが信次は「毎日電話で話してるから大丈夫だよ」と笑い飛ばしていた。
 
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信次は4月9日に入院して11日に手術を受けた。そして16日に退院して1週間自宅療養を続けた。千里は入退院には付き添い、また手術の最中は手術室の外に居て、また毎日午前中に病院を訪れて信次の見舞いをした。
 
しかし退院した後は、
 
「ごめん。マジで仕事で時間が取れない」
 
と言って、マンションに籠もりっきりで信次の家にはほとんど姿を見せなかった。結局千里は千葉の信次の家には数えるくらいしか泊まっていない。
 

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一方、千里2は4月14日にLFBの今シーズン最後の試合に出て、今季の納めの会に出席すると、9月には戻ってきますと言って、飛行機でアメリカに渡った。
 
わざわざ飛行機を使わなくても簡単に転送してもらえるが、入出国記録をちゃんと付けておかないとヤバいのである。
 
そしてフィラデルバーグのスワローズの球団事務所に行き、球団代表に挨拶。今季もよろしくお願いしますと言った。その日はフィラデルバーグ市内のアパートに入って泊まり、時差ぼけの調整をした。
 
また千里3は今年も日本代表候補として召集され、9月22-30日にスペインで開催予定のワールドカップに向けて練習を重ねていた。
 

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西湖の学校では新学期には様々なメディカルチェックが行われた。4月9日の入学式の後、10日は尿検査があったので、朝起きた時最初の尿を取っていく。
 
前日に配られたキットの袋から、まずは提出用袋を出して出席番号と名前を4年7組3番・天月聖子と書く。
 
実は西湖はまだ自分の名前を聖子と女の子っぽい書き方をする時にけっこうドキドキする。でも立つとおしっこが出せなくなるのでグッと我慢して興奮を鎮める。
 
それでトイレに入り、まず採尿コップを出して組み立てる。これでおしっこを受け止めるのだが、これが割と難しい。どの付近からおしっこが出てくるか、なかなか予想が当たらないのである。最初ちょっと出して、あっもっと後ろだと思って位置を調整した。それで少し出してこの程度で行けるかな?というところでいったん止める。そしてスポイトでおしっこを吸い上げる。規定の量まで吸い上げた所でコップに残った尿は流す。そして止めていたおしっこの残りも放出する。西湖はスポイトのふたをして念のためトイレットペーパーで容器を拭いてから提出袋に入れた。
 
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採尿コップは畳んで汚物入れ(黒い袋をセットしている)に捨てるが、汚物入れってわりと便利かもと思った。
 

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10日はM時限目は習熟度別クラスで英語を習う。西湖はむろん一番下のクラスだが、青島瀬梨香(歌手の田川元菜)もこのクラスである。
 
「中学時代、仕事が忙しすぎて全然授業に出られなかったのよね〜」
と彼女が言っている。
「私も〜。もう入試の問題は呪文でも見ている気分だった」
と西湖も言う。
 
でも実際授業が始まってみると、瀬梨香は自分より遙かにできるので、これはマジで頑張らなきゃと西湖は思った。
 
0時限目は数学だが、これも習熟度別でいちばん下のクラスで、西湖は実はマイナスの数もよく分かっておらず、 -2 x -3 = -6 と書いて「違う」と言われる。
 
「こう考えてみよう。2万円もらえるのがプラスで、2万円払わないといけないのがマイナス。それで2万円を3回もらえたら6万円、2万円を3回払ったらマイナス6万円。-2 x -3 というのは、その2万円を3回払った状態から過去に遡るんだよ。すると、2万円を3回払う前は、今よりお金が6万円多かったでしょ?だから -2 x -3 はプラスの6万円なわけ」
 
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と先生が説明してくれると
 
「そうだったのか!」
と西湖は感心して言った。
 
「やっとマイナスの意味が分かりました」
と言ったが、
 
「私もやっと意味が分かった」
と菊池由美奈(女優の稲川奈那)も言っているので、何だか親近感を感じてしまった。
 

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その0時限目が終わってからSHR(Short HomeRoom)を経て1時限目になる。そのSHRの時間に尿検査のキットが集められる。
 
「しまった!忘れてた」
と瀬梨香が言っている。
 
「じゃ青島さんは明日必ず持ってくるように」
「ごめんなさい」
 
「でも尿検査ってめんどくさいよね〜」
などという声がクラスの中から出ている。
 
「あれ、最初なかなか落ちてくる所が分からないと思わない?」
などと言っている子がいるので、やはりみんなそうなんだなと思う。
 
「男の子なら最初からおちんちんをカップの中に入れておけばいいのよね」
「そうか。男の子は便利だね」
 
「そういう時だけ男の子になりたいな」
 
西湖はそういえば小学生の頃はそうやっておしっこ取っていたなと懐かしい気がした。
 
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春からの生活(25)

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