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■春からの生活(21)

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(C)Eriko Kawaguchi 2018-01-06
 
父と一緒に東急で渋谷に戻ってから別れ、事務所に行った。そして結局S学園に入ることにしたこと、3年間女子高生生活をすることになったことを報告した。
 
「女役の修行のために女子高生生活か!」
「凄い理由での女子校就学を認めてもらったもんだね」
 
とコスモス社長やワルツなども驚いていた。
 
「私も父が突然そんなこと言い出すからびっくりしました」
「事前にお父さんとは話してなかったんだ?」
「聞いてませんでした」
 
「でも確かに、若い頃の柳原蛍蝶さんの女形は物凄く美しかったらしいね。映像が残ってないのが惜しいと言ってた人もいたよ」
「私も写真でしか見たことないんですよねー」
と西湖も言った。
 
せっかくJ高校に入れるようにするために醍醐先生に骨を折ってもらったのに申し訳無いというので、醍醐先生にはコスモスが電話して謝罪。むろん途中で西湖に替わってよくよく謝った。
 
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「こちらは全然問題無い。何も実害は無いし。でも3年間女子高生するのもいいかもね。西湖ちゃんなら破綻無く女子高生を演じられるよ。頑張りなよ」
 
「はい!」
と西湖は明るい声で答えた。
 

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コスモスと西湖から連絡を受けた千里は千石一美に電話して、骨を折ってもらったのに辞退になってしまい、申し訳無いと謝った。
 
「J高校に合格させてもらったからS学園に辞退の連絡をしたつもりが、うっかり間違って、J高校の辞退手続きをしてしまったんだよ。両親物凄く忙しくてさ。J高校の面接に行ったのは、お父ちゃんだけど、辞退の手続きをしたのはお母ちゃんで、事情が把握できていなかったし、両方の学校の名前がごっちゃになってしまって間違ってしまったみたい」
 
「ああ、そういうことだったのか。結局辞退という話で、私もうっそー!?と思ったんだよ。でもその後、編入者があって定員いっぱいになってしまったんだよね。1年間我慢して来年度編入という手もあるけど。親の転勤とかでどうしても退学者は出るんだよ。それで枠が空くと思うから優先的に確保するようにしてもいいよ」
 
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「途中で学校変わるのはまた授業の進行度の違いとかで大変だし、もう諦めて3年間女子高生をすると言っているから、そのままで」
「OKOK」
 
「ところで買ってしまった、教科書・内履き・通学靴・体操服とか、返品できないよね?」
「制服はネームも付けているし無理だけど、それ以外は未使用なら引き取れるよ。持って来て」
「じゃ事務所の人に持っていかせるよ」
「うん。こちらで処理して返金する」
「ほんと、手数ばかり掛けてごめんね」
「大丈夫だよ」
 

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それで千里は桜木ワルツに連絡し、西湖が買ってしまった教科書や体操服を返品してもらうことにした。それで西湖に持って来させて内容を確認する。
 
「どれも特に傷んでないね」
「全然触ってませんから」
 
念のためワルツはひとつひとつ確認していた。
 
体操服を(透明な包装の外から)見ていた時、ワルツは気付いてしまった。
 
「この体操服さ、胸の所に内張がある」
「え?」
「これは多分ブラジャーの線が外に見えないようにするためのものだと思う」
「男子もブラジャーするんでしたっけ?」
「そんな訳ない。これは女子用だよ」
「え〜〜!?」
「だから、SじゃなくてMだったんだよ」
「そういうことか!」
 
「このローファーも内側が派手模様なのは女子用だからじゃない?」
「あはははは」
 
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「でも、メンズの靴だと25cmくらいからしかないから、どっちみち私は女子用でしか合わなかったかも」
 
「あんた何cmだっけ?」
と言いながらワルツはその返品するローファーを見ている。
 
「22.5cmです。実はアクアさんと同じです。本当は22cmでもいいんですが、3年間使うから余裕があった方がいいと言われて」
 
「22cmなら女子でも小さい方だ」
「小学生の頃は低い年齢用のを履いていたんですけどね〜。最近は女子用ばかりでした」
「ああ、サイズの小さい人も大きい人も、みんな苦労してるんだよ」
 

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3月29日の午後、先日逮捕された人たちの中で、上島雷太を含む数名の有名人が処分保留のまま釈放された。
 
今日釈放された数人は、名義を貸しただけで一切具体的な取引には関わっていなかったことが、明らかになったため、罪が軽いと判断されたようであった。
 
上島は夕方、弁護士と一緒に都内のホテルで記者会見を開いた。
 
そして安易に名前を貸して結果的に広告塔のような役割をしてしまったこと、関係各方面に多大な迷惑を掛けたことを謝罪し、音楽活動を無期限で自粛。ワンティスからも辞任すること、当面公の場などには出ず、謹慎することを述べた。
 
記者達から厳しい質問や批判の声があり、上島はひたすら謝っていた。
 

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青葉は3月14日に出てきて以来、ずっと大宮に滞在していて、その間にアクアの新曲記者会見に出て、千里の結婚式、千里の義兄になった太一の結婚式に出席しているものの、ここの所ずっとひたすら曲を書いている。
 
今年はかなり大量の楽曲を書かなければならないのが確定的なので、誰か定型詩を書くのがうまい人がいないかと、友人たちに照会していたら、東京外大に通っている日香理が
 
「もし私が書いている詩でも良かったら使える?」
 
と連絡してきた。幾つか送ってもらったら、けっこう良いものを書いている。ただ幾つか問題のある詩もあった。
 
「基本的にメッセージソングは困るんで、毒にも薬にもならない詩がいいんだよね。恋とか自然を歌った歌がいい」
 
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「そっかー。お金になるのはそれだよね」
 
「もし良かったら、取り敢えずそういうノンポリな詩を10個くらい送ってくれない?1本3万で買い取るから」
 
「3万もくれるの?」
「買取りならね。それでリリースした楽曲が3000枚以上売れた場合は、印税方式の方が有利。でも3000枚も売れるのはごく一部の有名アーティストに限られる。多くのCDは数百枚も売れない」
「買取りでいい!」
 
上島先生は大物歌手に渡す物以外はほぼ買い取り制(しかもかなり安価)にしていたので、代替曲も作家が特にこだわらない限り、基本的には買い取り方式で行く予定である。
 
「長さとしては、二部形式16小節、サビ16小節、二部形式16、サビ16、サビ16という感じ。だから七五七五×4のパターンが5回繰り返される。二部形式の部分とサビの部分は雰囲気を変えてもらいたい」
 
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「二部形式ってAABAだよね?」
「そう。だから3行目は1,2行目と感じを変える」
 
「分かった!既存の詩をその長さに調整していいよね?」
「未発表の詩であったら問題無い」
「じゃ書き上げたら随時送る」
「よろしく」
 

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4月2日(月)には東京辰巳国際水泳場に行き「第94回日本選手権水泳競技大会」に参加する。今回も圭織に監督をお願いした。青葉が参加するのは女子800m,1600mの自由形と女子400m個人メドレーである。この3つの競技にはジャネも参加する。
 
この大会は第18回アジア大会(8/18-9/2)代表選手と第13回パンパシフィック大会(8/9-12)代表選手の「第1次選考会」を兼ねている。このあと5/24-27に行われるジャパンオープンが「追加選考会」となっていて、代表は両大会の成績から「総合的な判断により選考する」ことになっている。両大会の代表は、ほぼ同一メンバーになるものと思われる。
 
青葉が参加した競技は下記である。
 
3日女子800m自由形予選
4日女子800m自由形決勝
5-6日は参加競技無し
7日女子1500m自由形予選
8日女子400m個人メドレー予選
8日女子1500m自由形決勝
8日女子400m個人メドレー決勝
 
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8日がなかなかハードである。
 

実際には青葉は3つの競技全てで決勝に進出したが、800m自由形では4位、1500m自由形では3位、400m個人メドレーでは5位であった。この3つの競技でジャネは全部優勝したので、おそらく日本代表に選出されるだろう。インカレで青葉と争った永井が、800mで3位、1500mで2位、400m個人メドレー4位とと全て青葉より1つ上であった。
 
1500mでは1位がジャネ、2位が永井、3位が青葉で、メダルを掛けてもらってから、青葉は隣の段のジャネとハグし、向こう側の段の永井と握手して、喜びを分かち合った。
 
8日の夜、競技が終わった後で、また青葉・圭織・ジャネの3人で焼肉屋さんに行き、打ち上げをした。
 
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「青葉も次は違う色のメダルを狙いたいな」
「私、あまりハマり込みたくないんですけどー」
「退部届けはどうなってんの?」
「保留されたままです」
「あははは。それは卒業するまで保留のままだな」
 

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4月2日の午後、川崎のレッドインパルスの体育館に1軍選手たちが集まり、今年度の《ティップオフ》をおこなった。球団代表、ヘッドコーチ、アシスタントコーチのお話があり、その後、16名の選手がひとりひとり誓いの言葉を述べた。その後、広川主将が音頭を取ってサイダーで乾杯する。
 
「新しいシーズンを新たな気持ちで頑張ろう!」
 
それでピザ、チキン、サンドイッチ、ケーキなど、軽く(?)おつまみを食べながら歓談した後、今年度最初の練習で夕方まで汗を流した。
 
首脳陣は「籍だけ置いて休部」ということにした“村山十里”が午前中に行われた2軍の《ティップオフ》には現れなかったので少し心配したのだが、こちらにはちゃんと“村山千里”が現れて、元気そうだったので、ホッとした。
 
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山笠コーチが夕方、“2軍の千里”に電話し、在籍のままでいいことを再確認したが、その時、本人の要請に基づいて登録名を“川島十里”に変更した。結局“村山十里”は8ヶ月間だけ存在したことになる。山笠は“細川十里”に変更してと言われるかもと思っていたので意外に思った。そして川島って誰なんだろう?と首をひねった。
 

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レッドインパルスの《ティップオフ》が行われた4月2日。
 
“村山十里”こと千里1は実際には自分でも青葉に言っていた通り、頼まれた10曲の内最後の曲を書きあげて送信すると、そのまま倒れ込んで布団の中で爆睡した。15時頃、千里が本来の約束時刻13時に来ないので様子を見に来た信次が睡眠中の千里を“発見”し、一緒に千葉に移動した。山笠コーチからの電話はその移動中に受けた。
 
千里がアパートを出た後、眷属たちによる“お引越”が始まった。
 
まず楽器類、作曲用のパソコン、ハードディスク、プリンタなどの類いをまとめると、《くうちゃん》が一気に千葉のマンスリーマンションに転送してしまった。精密機器が多いので車で運ぶとトラブルが発生するのではということになり、《くうちゃん》に頼むことにしたのである。マンションでは「眠いよー」と文句を言っていた《せいちゃん》を召喚して配線をさせる(機械音痴の千里にできる訳が無い)。
 
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《きーちゃん》が軽トラを借りて持ってくる。《きーちゃん》は『忙しいから御免』と言って軽トラを置いて帰っていった。寝具・書籍などをその荷台に載せ、《いんちゃん》が運転して経堂まで1km程度の距離を2往復して、移動させる。
 
その後、和服を含む衣類はタンスごと荷台に載せてしまう。化粧品やシャンプーなどの類いは女性眷属が個別に包装して段ボールに詰める。それでまた《いんちゃん》が運転して、千葉の信次の実家近くの時間貸し駐車場に駐める。ヤマゴ経由で千里に連絡したので、明日朝千里本人が回収するであろう。
 

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その後、お掃除に入る。
 
換気扇・ガス台の掃除は《げんちゃん》、エアコン・空気清浄機・冷蔵庫・洗濯機の掃除は《りくちゃん》がして、他の3人で、天井・天袋などの掃除、押し入れの掃除などをする。これが明け方頃終了するので一休み(眷属だって休まなきゃ稼働できない)して、その後、男3人で畳の表替え、女2人で襖の張り替えをした。夕方頃どちらも完了するので、最後に窓掃除、居室の掃き掃除、台所の床掃除をして完了である。
 
「お疲れ様!」
「掃除機はどうするの?」
「しまった!これは千葉のマンションに持っていくんだった!」
「面倒くさいから放置しない?」
「そうだ。忘れたことにして放置しよう」
 
と言って、眷属たちはフィルターを交換し、表面をきれいに拭いてから、掃除機は押し入れに放置して、ゴミは桃香の所に持っていって!ミッション完了したことにした。
 
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