広告:オトコの娘コミックアンソロジー- ~強制編~ (ミリオンコミックス75)
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■春からの生活(4)

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朱音は3日もずっと苦しみ続け、日付が4日に変わった頃、やっと
 
「そろそろ赤ちゃんが出てくる準備を始めたみたいだね」
と言われる状況になる。
 
夜間は両方のお母さんには休んでいてもらい、体力のある千里がずっと朱音のお腹をさすっていた。そして朝5時過ぎ、
 
「そろそろ分娩室に入ろうか」
ということになり、8:27に赤ちゃんを出産した。
 
結局千里は分娩室の中にも入って手を握り、朱音を励まし続けた。ベテランっぽい助産師さんが赤ちゃんを上手に取り出し、近くにいた義母に抱かせた(実母はお産が長引いていたので、出産の瞬間はトイレに行っていた)。千里もついでに抱かせてもらった。
 
その後、朱音の実母が分娩室に入ってきた。
 
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「産まれたんですか?どっちです?」
「ちんちんが付いているから男の子みたいですよ」
「わあ」
 
それでやっと実母は朱音の赤ちゃんを抱くことが出来た。
 
なお、朱音の夫は交代要員の手配に手間取り、更に沖縄から東京に戻るチケットが確保できず、那覇空港で待機中だった。
 

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千里は結局徹夜したので、午前中は部屋の隅で仮眠させてもらい、お昼くらいから夕方まで朱音の傍にいてサポートしてあげた。おっぱいがなかなか出なかったのを千里がマッサージしてあげると出るようになった。
 
「あなた凄くうまい。経産婦ですか?」
「いえ、産んだことはないです」
と千里は答えたものの、元男で赤ちゃんなど産めるはずのない自分が実は赤ちゃんを産んだことがあるような気がするのはなぜだろうと悩んでいた。
 
千里は4日いっぱい朱音に付いていたが5日にはミラを運転して高岡に移動した。帰省Uターンラッシュの最中(さなか)ではあるが、混雑するのと逆方向なので、何とか半日で高岡に辿り着くことができた。
 
“千里が11月に高岡に来た”ことを千里が覚えていないようなので、桃香も朋子も少し戸惑うものの、たぶんまだ事故の後遺症が出ているのだろうと解釈したようである。千里は今回、婚約指輪を朋子たちに見せていた。
 
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6日、青葉は美容室で髪をセットしてもらった。そして7日の朝から千里に振袖を着付けしてもらい、9時半頃、家を出た。会場の傍で
 
「青葉、成人式おめでとう」
と声を掛けられる。千里であるが、左手にアクオスの携帯を持っていたので、3番であると判断する。
 
近くに居た明日香が
「お姉さん、並んでください。記念写真撮りますよ」
というので、青葉と並んでいる所を青葉のアクオスと千里のアクオスで撮影してもらった。
 

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受付開始前にけっこう会場前で友人たちと会う。
 
女子はほとんどの子が振袖だが、何人かレディススーツで来ている子がいた。紡希がレディススーツだが、紡希は振袖よりこういう服の方が似合っている気がした。京大に通う彼女はキャリアウーマン志向だろう。
 
先日の振袖撮影会には来ていなかったヒロミも上等で大柄の牡丹が描かれた振袖を着てきている。それが母から譲ってもらったという振袖だろう。明日香も母から譲られた振袖である。やはり昔の振袖はしっかりした作りだなと青葉は思った。
 
男子はスーツが多いが、羽織袴の子も数人居る。そして・・・
 
「誰かと思った!」
「嘘!?奥村君なの?」
 
奥村君も振袖を着てきていた。ピンク地に白いユリの花を浮かび上がらせた現代的な模様の振袖である。
 
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「ハルちゃんは、学校にもよくスカート穿いて出てきてるよ」
と青葉が言う。
 
「ハルちゃんなんだ!」
「女の子になったの?」
「もうほとんど女の子だと思うよ」
「すごーい!」
 
「水泳部に入っていて、普段の練習では女子水着で練習しているよ。でも性転換手術とかはしてないから、大会では男子水着を着ないといけないんだよね。だからバスト曝して競技に出てるよ」
 
「おっぱいも大きくしたんだ!」
「いや、別に大きくした訳ではないけど」
「どれどれ」
 
と言って触ってみている子がいる。
 
「これ充分大きい」
「少なくとも**のおっぱいより大きい」
「なぜ私を引き合いに出す!?」
 
「でもこんなにおっぱい大きいのに、それを曝さないといけないって可哀相」
 
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「それ性転換手術したら女子として出られるの?」
「女性ホルモン優位の状態が1年以上続いていれば女子選手扱い」
「女性ホルモンは飲んでいるんでしょ?」
「いや飲んでない」
「そういう嘘はつかないように」
「ホルモン飲まずにこんなに大きくなるわけない」
「それともシリコン入れた?」
「いや、手術はしてないよ」
 
そういう訳で、みんな奥村君のことで盛り上がっていたので、Re:ゼロから始める異世界生活のラムのコスプレをしている吉田君は黙殺である!
 
「おい、俺も女装だぞ」
などと本人は言っているが
 
「そんな違和感のある女装より、ごく自然な女の子のハルちゃんの方が優先」
などと由希菜から言われていた。
 
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10時から受付が始まり、千里は友人たちと一緒に受付をして中に入る。記念品の袋をもらったが、重いなと思ったら金属製の文鎮だった。
 
「これ鉄?」
「いや銅だと思う」
「そうか。高岡銅器は有名だもんね」
 
「あれ?俺のと形が違う」
と平林君が言う。
 
それで何人か自分のを開けて見ている内、どうも男子は獅子で、女子は牛であるようだと分かる。
 
「俺、牛の方が良かったなあ」
と言っている男子がいる。
 
「何なら私のと替える?」
と紡希が言うので
「おお、交換しよう」
と言って交換していた。
 
「ヒロミはどっちもらった?」
「私は牛」
「まあ女にしか見えないし」
「実際女だし」
「もう戸籍上も女だし」
 
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「戸籍変更したんだ!」
「うん。この秋に変えた」
「青葉も戸籍直したよね?」
「誕生日に即変更の申請したよ」
「通った?」
「もちろん」
 
「ハルちゃんはどっちもらった?」
「牛だった」
と言って見せている。
「やはり女の子に見えるもんね〜」
「戸籍上の性別でなくて、見た目の性別でもらえたみたいね」
「よかったよかった」
 
「吉田はどっちもらった?」
「俺のは獅子だ」
「まあ男に見えたってことだね」
 
「名前がハルちゃんの場合、女の子の名前にも見えたんじゃない?」
 
奥村君の下の名前は春貴(はるたか)なのだが、「はるき」と読めば女の子の名前に見える。
 
「ヒロミは名前変えたんだっけ?」
「変えた。性別変更と同時に大政(ひろまさ)からヒロミに変えてる」
「姓と名を交換すればよかったのに」
「そういう改名は認められないし」
 
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呉羽大政をひっくりかえして大政呉羽にすると、女の子の名前に見えるというネタだが、実際彼女は小中学生の頃、姓名を逆転させて女子としてあちこちに登録していたのである。
 
「吉田の名前も女の子の名前に見えるけど」
 
吉田君の名前は邦生(ほうせい)だが「くにお」と読むと女の子の名前に見える。
 
「じゃやはり名前や登録されている性別より、見た目優先なんだね」
「俺、女装しているのに」
「女装している男に見えるから」
 
「でも実際、大学入所当初、吉田の学生証は女になっていたんだよ」
「それで男子寮に入れなかったり、健康診断で男子の時間の受診拒否されたりして苦労した」
 
「大変ね〜」
 

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10時半になって成人式が始まる。最初にステージすぐ下の所に展開している◎◎中学吹奏楽部の演奏に合わせて『君が代』を斉唱する。その後、吹奏楽部の子はいったん下がってから、高岡市長の祝辞を代理の人が朗読。続けて高岡市議長の祝辞もやはり代理の人が代読。そして新成人の代表の決意表明がある。これをやったのは◎◎中学当時に、生徒会長を務めた子である。
 
「生徒会長とかやると、こういうのもやらされるんだ」
「まあ無難な人選だし」
 
それで式の本体は15分ほどで終わって、アトラクションになる。最初に新成人の代表が制作した映画が10分ほど上映された。その後、壇上に登った人物を見て、青葉は咳き込んだ。
 
「青葉どうしたの?」
と美由紀が訊くが、壇上の2人の挨拶に会場は騒然とする。
 
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「玉梨乙子でーす」
「桜アキナでーす」
「2人合わせてオトナでーす」
と2人は各々の名前を大きく書いた紙を掲げて自己紹介した。
 
誰だ?こいつらを呼んだのは!?
 
「乙子(おとこ)ちゃん、あんたの性別は?」
「名前が“おとこ”だし、男だよ。アキナは?」
「声を聞けば分かる通り、男だよ」
「でもあんた女みたいな格好してるね」
「あんたも女みたいな格好してるね」
「私はこういう格好するのが好きなのよ」
と乙子。
「私は心が女だから」
とアキナ。
「あんた心は女じゃないの?」
「それ微妙。MTXって感じ。私女の人と結婚してるし。子供もいるし」
「だったら子供からはお父ちゃんと呼ばれてるの?」
「おたぁちゃんと呼ばれてる」
「おとうちゃんとおかあちゃんのカバン語か?」
 
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《カバン語(portmanteau)》とはルイス・キャロルが『鏡の国のアリス』の中で提唱した言葉の分類で、ふたつの単語を一緒に鞄に入れるようにして合成した単語のことである。「やぶく(やぶる+さく)」とか「かっこかわいい(かっこいい+かわいい)」の類いを言う。
 
「そうみたい。英語でもMammyとDaddyをミックスしたMaddyという言葉があるんだよ」
「へー。やっぱりそういう人あるのね」
 
「自分の性別傾向と恋愛傾向は独立だからね」
「うん。女の子が好きな女の子、男の子が好きな男の子があってもいいし、男に生まれたけど女の子になりたい。でも女の子が好きとか、女に生まれたけど男の子になりたい。でも男の子が好きとか、そういうのもあっていいよ」
 
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このあたりは“枕”として話しているのだが、そういう問題で悩んでいる人へのメッセージというのもあったようだ。
 

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2人の話はそのあたりから“漫才”に突入する。おそらくこれは彼女たちのお店、オカマバー《スートラ》で普段やっているようなパフォーマンスではないかと思った。
 
下ネタ満載!の漫才で、かなりの笑い声が起きていた。
 
「アーサー王が十字軍に行くことになった。『我が忠実なる部下ランスロットよ。妻グィネヴィアの貞操帯の鍵をそなたに預ける』」
「『はい確かに』」
「ところが王が出発した翌日、そのランスロットが血相を変えて早馬で駆けつけて来るとアーサー王に言った」
「『王様、あの鍵は違いまする』」
 
これはランスロットとグィネヴィアの不倫の話を知らなければ意味が分かりにくいネタだなと思った。
 
「貞操帯というと、ギロチンになっていて無理矢理入れようとするとストンと刃が降りてきて切っちゃうのもあったらしいね」
「それでこういう話があるんだよね。やはり王様が十字軍に行くので妃にそのタイプの貞操帯を付けていった。帰ってきてから妃の側近たちのチンコを確認する。するとみんなチンコが無くなっている」
「あ、私もチンコが無い」
とアキナがわざわざ自分のお股を見て言うと
「お前死刑!」
とオトコは言っている。
 
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「ということでチンコが無くなっている奴はみんな死刑にした。ところが1人ちゃんとチンコが無くなっていない奴が居た」
「偉い。お前は大臣にしてやる」
「ムガムガムガムガムガムガ」
 
要するに舌が無くなっていたということなのだが、これも意味が分からなかった人が結構いたのではないかと思った。多分オーラルセックスなんて知らない子もかなりいる。
 

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「でも日本の成人式はこういう式典やるだけだけど、国によってはチンコを切る所もあるらしいね」
「なに。男の成人は全部チンコ切り落としてしまうわけ?」
「それじゃ男ではなくなってしまうじゃん」
「女だけの国になるんじゃない?」
「それだと子供作れないし。チンコの皮を一部切るだけだよ」
「女の成人はどうすんの?」
「いったんチンコを縫い付けてから皮を切る」
「それだと女がいなくなってしまわないか?」
 
切っちゃうネタ、切られちゃうネタは他にもやっていたが、この手の話で明らかに奥村君が凄くドキドキした顔をしているのを青葉は見て取った。彼に現在、女の子になる手術を受けたいという気持ちがあるようには見えないが、切っちゃう状況というのを結構想像したりしているんだろうな、という気がした。
 
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彼は大学を卒業するまで去勢手術とかをしたくなるような気持ちを抑え続けることができるだろうか?彼は最近いつ見てもスカートを穿いている。
 
水着にしても初期の頃は男子水着を着ていたのに、最近はさっき青葉も言った通り、練習の時はほぼ女子水着なのである。「女子更衣室で着換える?」などと布恋から言われているが「それはさすがにまずい」と言って、男子更衣室で女子水着に着換えている。
 
アキナたちの漫才は最後の方で
 
「この後、ホテルに行く子も多いと思うけど、コンちゃんは忘れずにね」
「買うのが恥ずかしい人は、おやつなんとか混ぜて買うと何とかなるよ」
「女の子の振袖を脱がす前に、着付けの勉強してね」
 
などとも言っていた。
 
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ふたりのパフォーマンスは20分ほど続いたが、
「楽しかった」
「いや、お腹が痛い」
という意見が多く、充分みんな楽しんだようである。
 
むろんこういうパフォーマンスに不快感を持つ人もあるだろうが、やや過激な性教育という感じもあって、それなりの意義のあるパフォーマンスだと青葉は思った。
 
 
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