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■春銀(26)

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埼玉県の**市まで来ている。コロナの関係で不要不急の検査みたいなのは優先度が低くなってるから、なかなか検査のできる病院が無かったんだよ、とMさんは言っていた。
 
受付で「検査を予約していたんですが」と言い、非接触式体温計で検温された上で、診察券とカルテをもらった。
 
診察券にもカルテにも“浜梨恵真 はまり・えま 2005.2.25 女”と印字されている。“女”という表示を見て、恵真はドキドキする気分だった。
 
「おしっこを取ってトイレ内の棚に提出した後で、カルテの順番に回って。私は駐車場の車の中にいるから、終わったら呼んで。支払いに行くから。恵真ちゃんが寝ていた間にお医者さんには話をしているけど、何か問題あったら呼んでね」
 
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「はい、分かりました」
 

それで恵真はトイレに行き、おしっこを取ろうとしたのだが、トイレの前でMさんにキャッチされた。
 
「何してる?男子トイレに入ってどうする?」
「もしかして女子トイレに入るんですか?」
「君、自分はもう女なんだというのを再認識して」
「すみません!」
 
そうか、ボクもう男子トイレに入ることは許されないのか、と考えながら恵真は恐る恐る女子トイレの前に立った。ドアは自動で開く。個室に入り、除菌クリーナーでドアロックを拭いてから便座を拭いた。
 
検査番号がマジックで書かれた検尿のコップを「このあたりかなぁ〜?」と思う付近にやっておしっこを出すが、後ろ過ぎた!慌てて調整して、ちゃんとコップ内に飛び込むようにするが、なかなか目測が難しいと思った。女の子はみんな苦労してるのかなあ。それとも慣れたらだいたい自分の出てくる位置が分かるのだろうか。
 
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適当な所でいったん停めてから中身を確認し、このくらい入っていれば大丈夫だろうという所で残りを体内から放出する。実はMさんの車の中で2時間近く寝ていたことから、結構尿意があったのを、病院でおしっこ出さなきゃと思って我慢していたのである。随分勢いよく出る感じだった。このおしっこの仕方にも大分慣れてきてけど、今日は嫌にスムースに出るような気がした。
 
ちゃんとペーパーで拭いてから立ち上がり、水を流す。個室を出て、コップを提出用の棚に置くが、これ男子トイレの棚に置いたら病院の人困るよなと思った。つまり自分は女子トイレを使うしかなかったんだ。
 

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手を洗い、トイレの外に出る。カルテの先頭に書かれている3番に行き、カルテを提出する。恵真はここで、あらためて体温を計られた上で、脈拍・酸素量?に身長・体重、バスト・ウェスト・ヒップを測られる!
 
バストは胸の膨らみのいちばんある場所(トップバスト)と胸の膨らみの下(アンダーバスト)を測られた。男なら“胸囲”を1ヶ所だけ測られるが、女子は体型が違うから2ヶ所測らないといけない。この付近は姉の“女子教育”で教えられてはいたが、実際にそういう測り方をされたのは初めてだった。
 
その後、血圧を測られ、採血された。上手な人だったので採血の針はほとんど痛くなかった。
 
MRIに行く。
 
ここで結構な待ち時間があったので、キンプリのアルバム『King & Prince』をイヤホンで聴きながら待っていた。順番が来たので中に入る。
 
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「心臓ペースメーカー、人工内耳、人工中耳は使用なさっていませんか?」
「使用していません」
「ブラジャーはワイヤ入ってますか?」
「あ、入ってます」
「ではそれも外してから、この検査着を着てください。あと、お渡しした紙にも書いていますが、眼鏡・補聴器・イヤリングやピアス、ネックレス、ヘアピンや金属製のヘアアクセサリー、腕時計、鍵、入れ歯、携帯電話やスマホ、音楽プレイヤー、財布や磁気カード、エレキバン、使い捨てカイロも持ち込めませんので、こちらの籠に出してください」
 
「分かりました」
 
それで服を脱いでブラも外してパンティだけになり、検査着を着る。スマホや財布の入ったキティちゃんのバッグ(姉からもらった)を籠に入れ、アクセサリーをつけてないか髪などに触って確認した。
 
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それで係の人に声を掛けると、検査台に寝るよう言われる。検査台が機械の中に吸い込まれていく。なんか宇宙人に拉致されて改造手術でも受ける気分である。ドンドンドンドンと大きな音がするのは何だろうと思ったが、恵真は横になっている内に眠くなってしまう。寝てもいいのかな〜?と思ったが、思っている内に眠ってしまった。
 
起きた時は検査台は外に出ていて、
「もう服を着ていいですよ。忘れ物しないでね」
と言われた。
 

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次に行ったのは、精神科だった!
 
精神に異常が無いかチェックするのだろうか?自信無ーいと思ったが、すぐに精神的な性別のチェックだろうということに思い至る。
 
実際、白衣を着た女性(臨床心理士さん?)と最初10分くらい雑談をした。好きな歌手を訊かれるのでキング&プリンスと答える。誰推し?とかまで訊かれるので、高橋君ですと答える。それでキンプリネタで5分くらい話していた。白衣の女性も随分ジャニーズ系のネタに強いようだった。
 
雑談の後で心理テスト?を受ける。深く考えないで、思いつきで答えてねと言われたので「はい」とか「いいえ」とか反射的に答えていった。
 
「あなたスポーツとかするんだっけ?」
「いえ。まだ確定ではないですけど、歌手になる話があって」
「それで性別の確認をするんだ?」
「そうみたいです」
 
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「でもアクアちゃんみたいに性別のよく分からない歌手もいるもんね」
「男の子だと聞いてびっくりしました!てっきり女の子だと思ってました」
「うんうん。よくそう思ってる人いる。あの子、女の子にしか見えないもん。あそこまで女の子らしかったら、いっそ女の子歌手として売ったほうが、よく売れるんじゃないかと思っちゃうくらい」
 
「そうかも!」
と言いながら、男の子でも女の子歌手として売るって、それボクのことだったりして、などと恵真は考えた。
 

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その後、婦人科に行く!
 
こんな所に自分が縁があるとは思いも寄らなかった。待合で並んでいるのが、お腹の大きな女の人ばかりで、ボクこんな所に居ていいんだろうかと悩む。
 
名前を呼ばれて中に入る。
 
上半身脱いでと言われるので脱ぐと、あらためてトップバスととアンダーバストをメジャーで測られた上で、おっぱいを揉まれる!ちょっと痛いくらいである。
 
「うん。特に異常はないみたいね」
 
喉にも触られて
「喉仏とかも無いよね。声も女の子の声に聞こえるし」
と言われた。
 
恵真は普段から喉仏が目立たないように気をつけているのだが、確かに今日はあまり意識していなくても目立たないなと思った。それに女の子のような声で話すのも、まだうまくできていなかったのだが、今日はそれが調子良く出る。
 
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「内診していい?」
「ないしんって?」
「ああ。あんたの年齢では知らないよね。そこの内診台って乗ったことない?」
「いえ。初めて見ます」
「だよねー。ちょっと恥ずかしい姿勢になるけど、処女は傷つけないから安心してね」
「しょじょ??」
「最初はびっくりするかも知れないけど」
「よく分かりませんけど、検査受けないといけないから、お願いします」
「はい」
 

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それで恵真はスカートとパンティを脱いだ上で初めて見る内診台なるものに乗ったが、10秒で悲鳴をあげたい気分になった。何なの〜?これ。
 
「ちょっと中に器具入れるけど、処女は傷つけないからね」
「あ、はい」
 
“中”って何だろう?と思っている内に、何とも不思議な感触がする。
 
何かが身体の“中”に入ってくる。どこに入れられているんだろう?と恵真は疑問を感じた。
 
「はい、終わりましたよ」
と言われ、内診台は元の状態に戻された。
 
「ありがとうございます」
と言って恵真は内診台を降りた。
 
「これで検査は終わりです」
「ありがとうございました」
 
「診断書を書きますけど、あなたは完全な女性です。どこにも疑う余地は無いですよ」
「そうですか。良かった」
 
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「診断書は3通欲しいということだったので、3通発行しますね」
「はい、よろしくお願いします」
 
「この診断書を持って家庭裁判所で手続きをすれば、ちゃんと戸籍上も女性になれますよ」
 
へー!本当に戸籍の性別が変更できるのかと恵真は驚いた。
 
でも、本当にボク女の子になってもいいのかなあ、と恵真は少し不安を感じた。
 

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それで恵真は婦人科を出た。これで終わりということだったよなと思い、電話でMさんを呼ぶ。Mさんとロビーで落ち合う。Mさんが支払いを済ませ、一緒に病院を出た。もうお昼の12時である。
 
「お弁当とか買って帰ろう。今、自宅に居るのは?」
「今日は誰もいません。母は仕事、姉は塾、弟は友人のところに行くと言ってました」
「じゃ、恵真ちゃんのお昼用1個と、みんなが帰ってきてからの分4個買おうか」
「済みません!」
「全部Aさんが出すからいいんだよ」
「Aさんってお金持ちなんですか?」
「資産は200-300億円あると思うよ」
「すごーい」
 
それやはり音楽関係で得たお金なのかなぁ、などと恵真は考えていた。だったら実は物凄く売れてるプロデューサーさんとかだったりして?お屋敷も豪華だったし。ガレージには車が4台駐まってたし。
 
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高級そうなお弁当屋さんに寄り、恵真のお昼用にはステーキ弁当(Mさんの分と)2個、夜用には洋風の松花堂4個を買った。これだけで1万円を超えるのでびっくりする。
 
それで自宅(に至る路地の入口)前で降ろしてもらった。恵真はMさんによくよく御礼を言い、Aさんにも御礼をと言って別れた。なお、Mさんからは母への手紙も言付かった。ステーキ弁当は凄く美味しかった。
 

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京都伏見と大阪寝屋川で振袖のCM撮影をした後、アクア、緑川マネージャー、ケイナは、取り敢えず夕食を取ってから伊丹に戻ることにした。
 
「どこか落ち着いて御飯食べられる所、ご存じありません?」
と緑川が訊いた時、ケイナは思いついた。
 
「俺とマリナの個人マネージャーが実は寝屋川市で飲食店をやってるんだよ。そこでもいい?」
「マネージャーなのに大阪にいるんですか?」
「仕事はどうせリモートだし。スケジュール管理とかチケット手配をしてもらっているだけだからネットさえあれば、どこでもできる。まあ今年春以降はチケット手配は無いけどな」
 
「なるほどー」
 
それでケイナがレンタカーを運転して“マウント・フジヤマ”に行った。専用駐車場が空いているのでそこに駐める。
 
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「何これ!?」
とアクアも緑川も呆れたような声をあげる。
 
「これ珍八景としてテレビで放送されたこともあるんだよ」
とケイナが言うのは、まるでお風呂屋さんみたいなタイル絵の富士山である。
 
「お店の名前も“マウント・フジヤマ”と言うんだけど、創業者の苗字が藤山。藤山直美の藤山ね。それで富士山に掛けて、この絵を作ったんだよ。しばしばお風呂屋さんの建物を再利用してお店を作ったと思われているけど、そういう訳ではない」
 
アクアが突っ込む。
「マウント・フジヤマって、マウントとヤマがダブってる」
 
「うん。よく指摘される。クーポン券をもらって、シティバンク銀行出身のイケメン男子(*3)と、洞爺湖の近くで野球の生ライブ中継を見ていたら、読売巨人ジャイアンツが二連勝したところだった、の世界」
 
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(*3)イケメンという言葉は「イケてるメンズ」の略。メンは面ではなくmen.
 

それでケイナが引き戸を開けてお店に入る。
 
「おはようございまーす。渚ちゃん、宴会ルーム使える?」
「あ、ケイナちゃん、おはようございまーす。使えるよ」
と産休明けの渚は笑顔で答えたのだが、その時、店内に居た客たちが騒然とする。
 
「まさかアクアちゃん!?」
「おはようございます。アクアです。よろしくお願いします」
とアクアが客たちに挨拶する。
 
「嘘!?こんな汚い店にアクアちゃんが来るなんて」
「そっくりさんの尾崎鞠矢ちゃんじゃないよね?」
「ボクあんなに背が高くないですよー」
「わぉ!サイン欲しい」
「握手して」
「エア握手なら。あとサインはお店に1枚だけで勘弁してください」
 
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それでアクアは色紙にサインを書いて渚に渡す。そしてその場に居た客全員とエア握手をした。そしてケイナ・緑川と一緒に宴会場に入った。
 
それでアクアはここでのんびりと1時間ほどかけて食事をすることができた。食事は「1人を除いてお若い方だからお肉中心がいいでしょう」などと渚が言って、小鉢、スープ、豚しゃぶサラダ、神戸牛のステーキ、自家製焼きたてパン、それにデザートのアイスクリームとモカブレンドコーヒー(ペーパーフィルター)であった。みんな美味しい美味しいと言って食べていた。飲み物には冷やしたジャスミンティーをサーバーで置いてくれていた。
 

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