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■春銀(22)

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そして準決勝の対局が始まる。恵真は目の前に座ったのが美少女アイドル(と恵真は思っている)弘田ルキアであることに気付き驚いた。アイドルなんて忙しいだろうによくこんな大会に出てくるなと思う。
 
(恵真は元々女の子アイドルに興味が無いこともあり、ルキアを女の子アイドルだと思い込んでいる。恵真はアクアも女の子アイドルと思っているが、アクアについては割とそういう誤解の人は多い)
 
“彼女”と打ってみて、すぐに初心者、というよりまだほとんど囲碁の対局の経験が無いなということに気付く。石を持つ時に親指と人差し指で石を摘まんだまま盤に置いているし、対局時計の切り換え忘れを何度もして、恵真が注意してあげた。
 
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しかし向こうは情勢を見ることはできたようで、3分ほど打ったところで投了した。それで恵真は囲碁ソフトで打ってるのかなぁ〜?と思った。
 
「ありがとうございました」
「ありがとうございました」
 
恵真は“彼女”に
「人と打ったの初めてですか?」
と訊いた。
 
「実はそうなんです。私、人数合わせで」
 
それでその後、“彼女”と少し感想戦をした。
 
ルキアが今日初めて人と打ったにしては筋が良かったので、恵真は
 
「才能ありますよ。お仕事忙しいでしょうけど、合間にでもやっとみるといいですよ」
 
などと言い、これを機会に少し囲碁を覚えるといいですよと勧めておいた。
 

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なお、準決勝は、恵真は勝ったものの、一希も汐里も負けたので、ここで敗退となった。
 
「ごめーん。えまちゃん折角頑張ったのに」
と彼女たちは言ったが
「だって私の相手は、人数合わせだったみたいで、今日初めて打ったと言ってたもん」
と恵真は言った。
 
「そうだ。午後から用事あったんでしょう?大丈夫?」
「この時間なら何とかなると思うけどなあ」
 
実は予定外に上まで上がったので、11時くらいまでには終わるつもりが、もう12時近い。
 
「待ち合わせ場所はどこ?」
「**駅前に13時なんですよ。でも連絡してみる」
 
それで恵真がAさんから緊急連絡がある時はと言われていたアドレスにメールすると「だったらその品川アルタイルスクエアまで迎えに行くよ」ということである。「品川アルタイルスクエアではなくて品川アクエリアスプラザです」と返事すると「ジョークジョーク。ちゃんとそこに行くよ」ということだった。
 
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それでここで待つことにした。
 

恵真は一希たちと一緒に決勝戦を見学する。主将戦も副将戦も凄かった。三将戦ではルキアちゃんはあっさり負けた。結局ルキアちゃんたちの高校は2位となり、準決勝前に性別を疑われた子のいるチームが優勝した。
 
表彰式では、優勝→準優勝→3位と表彰が行われ、準決勝で負けた2つの学校が3位の賞状と記念品をもらった。記念品は茶色系というか、十円玉のような色のボールペンである。そして見てたら位のチームは銀色、優勝チームは金色のボールペンである。
 
「つまり3位は銅色のボールペンか」
「金銀銅ということみたいね」
 
「これ、実際に銅、銀、金でできてるのかなあ」
「さすがにそんな予算は無いでしょ」
「銅メッキ・銀メッキ・金メッキ?」
「ただの塗装だと思う。材質はこれ軽いからアルミ合金だよ」
「なんだ」
 
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「でも記念品が出るだけでも予算掛けてるよ」
「うん。賞状だけってのが多い」
 
「あれ?そういえばテレビカメラまで来てるね」
「ああ、この大会の様子はケーブルテレビで放送されるらしいよ」
「へー。私たち映るかなぁ」
「準決勝まで行ったし一瞬くらいは映るかもね」
 
「え〜?映るの?」
と恵真は不安そうに言う。
 
「どうかしたの?」
「女子制服着てる所、みんなに見られたら」
「えまちゃんは、24日からは女子制服で学校に来るんだよね?」
「どうしよう?」
 
「そのために女子制服作ったんでしょ?」
と汐里から言われたものの、恵真は悩むような顔をした。
 

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脇道飛び出し事故の件を番組としてまとめていた北陸霊界探訪のクルーだが、金沢西警察署の橋本警部補からの強い要請でこのような会話を入れることになった。
 
「でも今回の一連の事故って全てがお化けのせいではないですよね」
と明恵が言う。
 
「実際私が報告のあった現場をバイクで見て廻ったのでは、純粋坂道は事故現場18ヶ所の内、15ヶ所だけだったんです。残りの3つは普通の脇道だったから、これは普通の事故あるいは事故未遂だった可能性があります」
と真珠も言った。
 
「やはりこういう事故を防ぐには、夕方は早めにライトを点けることと、カーブの多い道はスピード控えめで走ることが大事だよね」
と対談に加わっている神谷内ディレクターも言う。
 
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「今の時期はだいたい5時半頃に日没になって30分もしたら日暮れになります。12月頃になると日没は4時半頃日没で5時頃には日暮れです。警察にも取材してきたんですが、日没の30分くらい前から視界が悪くなるので、ライトを点灯して欲しいということです。ですから今の時期なら5時で点灯、12月くらいなら4時で点灯ですね」
と幸花が言う。
 
(放送が9月下旬の予定なので、その時期の日没時間で発言している)
 
「あと、やはり見通しの利かない道ではスピード控えめで走ることですよね」
と明恵は言う。
 
「免許取った人は教習所で習ったと思うんですが、前方に危険物を見てから車が停止するまでに、だいたい速度の数字-10mくらい走るんです。40km/hで走っていれば30mくらい、60km/hで走っていたら50mくらい走ります。前方に飛び出しを見た時ってたぶん距離的には30mくらいだと思うんです。だから40km/hくらいで走っていれば何とか衝突を回避できると思うんですよね」
と幸花は言った。
 
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「空走距離と制動距離というのを習ったよね」
と明恵。
 
「そうそう。危険なものを見てからブレーキを掛けるまでの人間の反応時間の間に走る距離が空走距離、ブレーキを掛けてから実際に停まるまでが制動距離」
と幸花。
 
「それ条件によって結構変わるよね」
「制動距離は物理的なものだから、走行速度と摩擦係数によって決まる。タイヤがすり減っている場合とか、雨の日は制動距離が伸びる」
「冬になって雪が積もってたらかなり伸びるよね」
「全くプレーキが利かなくて焦ることあるよね」
「運を天に任せるしかないという気分になることもある」
「やはり11月中にはスタッドレスに換えたいよね」
 
「空走距離は人間の反応速度の問題だから、疲れている時はどうしても遅くなる」
「つまり夕暮れ時って、見えにくくもなるし、反射神経も落ちる訳か」
「だから夕暮れ時は事故が多い」
「あと絶対にあってはいけないけど、お酒を飲んでいると絶望的に反射神経が落ちる」
「よく俺は酒を飲んでも平気とか豪語する人いるけど、人間であれば確実に落ちる」
「あれ飲み過ぎて、自分の反射神経が落ちていること自体に気付かないんだよ」
 
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「それと今回は自動車同士の衝突事故だけど、歩行者も危険だよね」
「そうそう。道路を横断する時は車が来てないかよく見て」
「特に最近のハイブリッド車や電気自動車はエンジン音がしないから気付きにくい」
「あれ、私もハイブリッド車が来てるのに気付かなくて、あわやということあったよ」
 
「服装とかも黒っぽい服装は危険だよね」
「そうそう。できるだけ明るい服装で、夕方以降は反射タスキをつけて」
「自動車も黒い車って気付きにくいよね」
「うん。夕方黒い車って物凄く見えない」
「黒い車の人は特に早めに点灯して欲しいね」
 
といった感じで番組の最後5分くらいにわたって、交通安全教室をしたのであった。
 

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囲碁大会が終わった後、恵真は待ち合わせ場所がここのプラザになったので、そのまま待つことにした。一希と汐里は各々のお母さんと一緒にコメダ珈琲か何かにでも寄ると言っていたが、12時半頃
 
「あ、まだ居た居た」
と言って一希がコメダ珈琲のミックスサンドとカフェオレを持って来てくれた。
 
「無理言って出てもらった御礼も兼ねて」
「ありがとう!」
「じゃ24日は頑張って女子制服で出て来てね。女子全員に根回ししておくから」
「うん。ありがとう」
 
と答えたが、それってもう男子制服で出て行くことは許されないってことか!
 
それで、玄関付近のベンチに座ってサンドイッチを食べていたら、ちょうどそれを食べ終わった頃、仮名Aさんがいつものフェラーリでやってきた。
 
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「済みません。待ち合わせ場所変更してもらって」
「いや、こちらは大して距離変わらないし」
 
ちょうど恵真たちの前で大会のスタッフさんが「東京都高校生囲碁大会」という看板を片付けている所だった。
 
「あんた将棋の大会にでも出たの?」
 
とAさんが訊く。
 
この人っていつもこういう感じだよなあと思いながらも
 
「囲碁ですけど」
と答える。
 
「あんた囲碁打つんだ?」
「1級程度かな」
「だったら、碁石を人差し指と中指で挟んでパチッと碁盤に“打つ”のできる?」
「それ普通じゃないですか」
「いや初心者は人差し指と親指ではさんで石を“置く”からさ」
「ああ、確かにそうですね」
 
さっきの対局者は1回戦・準々決勝の相手も、準決勝のルキアちゃんもそうだったなあと思い返していた。
 
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「だったら、今日の写真撮影は中止」
「はい?」
「ちょっと一緒に来て」
「どこまで?」
「熊谷市」
「え〜〜〜〜!?」
 
仮名Aさんはどこかに電話しているようだった。それで向こうの同意が取れたようである。
 
「あんたにちょっと一局打ってもらう」
「私弱いですよ」
「1級なら充分だと思う。3〜4級の子が多くてさあ、もう少し強い対戦者か欲しい所だったのよ」
「ドラマ撮影か何かですか?」
 
恵真としても、ここまでの経緯でAさんは、きっと芸能関係の人なのだろうということは想像していた。
 
「映画撮影。アクア主演の『ヒカルの碁』の撮影をしてるのよ。囲碁のプロ試験の場面なんだけど、女子の受験生を演じて欲しい」
「え〜〜〜!?」
 
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今日はルキアちゃんとも対局したし、どういう日なんだ?と思った。
 

仮名Aさんのフェラーリは首都高から関越に乗り、熊谷に向かった。
 
「新幹線の方が少しだけ速いけど、映画関係者は公共交通機関での移動が禁止されているのよ」
などと言っている。
 
「厳戒態勢なんですね」
「そうそう。撮影場所に入る時は感染の有無を簡易検査キットでチェックされるけどいい?」
「そのくらい構いませんよ」
 
そこまでやっているのかと、恵真は感心した。
 

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1時間半ほどで熊谷市郊外の“郷愁村”に到着する。
 
「こんな所にリゾートがあったなんて」
「最近ムーランが開発しているのよ」
「ムーランって、移動販売方式のレストランですか?」
「そうそう。トレーラーハウス型のレストラン。現在全国に21車両が展開している。外食を避けてテイクアウトする傾向の中で、お弁当が無茶苦茶売れているらしいよ」
 
「へー。それでこんな巨大なリゾート開発するって儲かってるんですねー」
「いや。資産を減らしたいからこういう巨大開発をやってる」
「は!?」
 

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仮名Aさんから
「セシルちゃんでーす」
と映画スタッフ?に紹介される。
 
「え?セシリアじゃなかったんですか?」
と恵真が訊くと
「そうだっけ?長いからセシルでいいや」
と言われる。適当なんだ!
 
「これに署名して」
と紙を渡された。
 
契約書のようである。書いてある内容は、守秘義務に関すること(無断撮影禁止、撮影中の様子や見聞きしたことの口外・ネット投稿禁止を含む)、備品等の持ち出し禁止、追加報酬要求のを禁止、監督などの指示にきちんと従うこと、など常識的な内容である。
 
「本名で署名するんですか?」
「それだと誰だか分からなくなるから、羽鳥セシルで」
「ボクの苗字、羽鳥なんですか?」
「うん。今思いついた」
 
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本当に適当っぽい!
 
それで恵真は2020.8.19 という日付と、羽鳥セシルという署名をした。
 
ここでAさんと別れる。終わったらスマホで呼んでと言われた。
 
その後、非接触式の体温計で体温を計られる。36.2度である。
 
問診票?を渡される。
 
「14日以内に海外に出ましたか?」
「風邪症状がありますか?」
「14日以内に新型コロナの感染者、あるいは風邪症状のある人と接触しましたか?」
「14日以内に、人が沢山密集するイベントに参加しましたか?」
 
などといった質問があり、いづれも「いいえ」を選び、一番下に「羽鳥セシル」と署名した。
 
「感染検査を受けて下さい」
と白衣を着た女性に言われ、鼻に綿棒を突っ込まれて粘液を採取された。そのまましばらく待って下さいと言われるので、待機する。
 
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15分ほどの後「陰性でした」と言われる。それでやっと撮影現場の内部に入ることができるようだった。なるほどこれをパスしないといけないのなら、撮影に直接関係ない人は中には入れない訳だ。
 
「それは君の学校の制服?」
と30代の女性に訊かれる。
 
「はい、そうです」
「だったら、用意している映画衣装の高校制服に着替えて下さい」
 
と言われ、渡されたブレザーとチェックのスカートの制服を着た。リボンもU高校のリボンはピンクなのだが、この制服のリボンは紺色だった。
 
着替えが終わった所で、映画スタッフに導かれて3階建ての建物の中に入り、階段!を上って3階に行く。
 
「密閉が発生するからエレベータは使用禁止にしているんだよ。御免ね」
「いえ、全然問題ありません」
 
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そして3階の部屋の一室に入っていくと、学生服で男装したアクアちゃんがいる。
 
すごーい。格好いい!学生服とか着るとちゃんと男の子に見えるのも凄い!と恵真はすっかり“彼女”のことが好きになった。
 

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