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■春銀(3)

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「純粋坂道というのを結構見つけたんですよ」
と真珠や明恵の後輩、H高校のミステリー・ハンティング同好会の現部長・米山君(米山さん?)は言った。
 
彼は学校の頭髪規定を守って男子の髪の長さだが、眉毛は細くしているし、今日はスカートを穿いてきている。優しい顔立ちなので、ベリーショート髪の女の子にも見える。今は脱いでいるが、ここに来る時は可愛い麦わら帽子をかぶっていた。
 
「純粋坂道?」
と神谷内は尋ねた。
 
「田舎道に結構あるんですよ。田舎道の国道や県道はわりと頻繁に線形改良が行われているんですよね。それで新しいまっすぐな道が通った時、曲がりくねったり、カーブが急すぎたり、或いは細すぎる旧道は、住宅とかのそばを通っている場合はそのまま町道などに格下げして残すんですが、そうでない場合、小さなものは駐車帯やCB (Chain Base:チェーン装着場)などにする場合もありますが、大きなものは危険なんで廃道にして埋めちゃったりするんですよ。そのままにしておいたら崖崩れとかあった時に危険だから」
 
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「なるほど」
 
「ところがしばしばそういう旧道の先端の10mとか20mくらいだけ残してある場合もよくあるんですよね。それで結果的に、どこにも行けない純粋坂道が生まれるみたいなんです」
 
「ああ」
 
「だいたい入口に“この先行き止まり”と書いてあります。知らない人が入りこむと、それも危険だから」
 
「何故残すんだろうね」
「さあ。取り締まりのパトカーの隠れ場所ですかね?」
 
それはユニークな意見だが、あながちあり得ないこともない気もした。
 
「金沢市周辺の田舎道でそれっぽいものを4個見つけましたよ」
 
と言って、彼(彼女?)は写真を見せてくれた。
 

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「これも純粋階段とか、純粋門とかと一緒に取材していいですね」
と幸花も言った。
 
「じゃ、皆山(幸花)さん、夏野(沢口明恵)さん、伊勢(真珠)さんの3人で取材プランをまとめてくれない?1ヶ所3分として30分用に10ヶ所くらい取材すれば、まあ番組としてはまとまるかな」
 
「了解でーす。じゃ明恵・真珠と3人で計画立てますね」
 
「私完全にスタッフ扱いされてる気が」
と真珠。
 
「いや、君は間違いなくゲストだから」
と幸花。
「ほんとですか?」
 
「まあ何も言わなくてもいつもここに来てるしね」
と親友の明恵は指摘する
 
「ここは青葉が差し入れしてくれるから、いつもおやつがあるしね」
と幸花は言っていた。
 
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恵馬は、結局次の日曜日、先週約束(?)した通り、##駅前までやってきた。今日は母にも「少し遅くなるかも」と言って出て来ている。
 
“仮名A”さんは先週も乗っていた豪華なフェラーリに乗ってやってきた。
 
「“仮名E”ちゃん、女の子の格好してくれば良かったのに」
「下着は上下とも女の子のをつけてますけど、スカートは恥ずかしくて」
「女の子はスカート穿くのが普通なんだから、恥ずかしがることないのに」
 
「一応、先週着せて頂いた服はこちらに持って来ました」
と言って紙袋を見せる。
 
「ブラウスとかは家に置いたままですが」
「取り敢えず、うちに行こう」
「はい」
 

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それで一緒に“仮名A”さんのおうちに行く。先週はあまりよく分からなかったものの、ここは川崎市北部のようだと思った。新宿からは30分、今日待ち合わせた##駅からも30分で行ける。
 
おうちの中に入り、美味しいハーブティーを頂いた。
 
「このハーブティーは女性ホルモンの生産を活性化するのよ」
「卵巣が無いと無理な気がします」
「あんたわりと冷静ね。気に入ったわ」
「そうですか」
 
「脱いでみて」
と言われるので、上着とズボンを脱ぎ、下着姿になる。
 
「パンティが盛り上がっている」
「パンティだけでは押さえきれないんですよ。こぼれないようにするのが精一杯で。ガードルつけるときついし」
 
「盛り上がるようなものを取っちゃう?」
「高校卒業したくらいにまた考えるというのではいけませんか?」
「まあいいわ。足のむだ毛は剃ってるのね」
「昨夜剃りました」
「よしよし」
 
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それで恵馬は「きついかも知れないけど」と言われてガードルを穿いた上で、今日は真っ白い夏っぽいミニドレスを渡された。
 
「あのぉ、これボトムは?」
「それはワンピースだから、それだけ」
「丈が短くて、パンツ見えそうです−」
 
「まあそのくらい短いのがミニスカートだからね」
 

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今日もきれいに顔をメイクしてもらった。
 
顔の産毛を剃られ、化粧水→乳液→ファンデと塗られた後、アイメイク、チーク、そして口紅と入れられる。口紅は今日はリップスティックだけ使用した。
 
「今日は女の子らしい声を出す練習しようよ」
「それって練習でできるもんなんですか?」
「もちろん。男の声と女の声は、実は喉の使い方が少し違うだけ。男は習慣で太い声を出しているだけなんだよ。だから女の声を出す練習すれば出るようになる」
 
「へー」
 
それで恵馬はピアノのある部屋に移動した。凄く立派なグランドピアノだ。
「スタインウェイですか!」
「コンサート会場とかではもっと大きなものを使うけど、狭い個人宅に大きなビアノ置いても仕方ないから。これはパーラーグラウンドA-188だよ」
「お値段は1千万円くらい?」
「ピンボーン。あんたいい勘してるよ」
「そうですか?」
 
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それで恵馬は最初Aさんのビアノに合わせて普通に「アーアーアーアーアー」といった感じで声を出して声域を確認される。そして、普通に出ていた最高音の更に上を裏声で出すように要求された。
 
「アー。あぁ変な声になっちゃう」
「変じゃないよ。それずっと出していたら、安定してわりといい感じの声になるから」
「へー」
 
それで恵馬はこの日は裏声でももクロの『境界のペンデュラム』を歌ったのである。
 
この曲は本来B3-D5の音域があり、実は恵馬は普通にこの音域の声が出る(このくらいの音域はテノール歌手なら充分出る)。しかし仮名Aさんは敢えて、その1オクターブ上で裏声で歌うように要求した。
 
「あんた上手いじゃん」
「自分でもわりと上手い気がしました」
「あんた歌手デビューする?紹介してあげるけど」
 
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自分が歌手?そんなことができるんだろうか?歌手なんて、夢のまた夢だと思っていた。
 
しかし恵馬は急に不安になった。
 
「あのぉ、それ男の歌手ですか?女の歌手ですか?」
「そりゃ女の歌手に決まってる」
「やはり」
 
しかしこの日は裏声で他にもいくつも、ももクロの歌をわざとオクターブ上で歌うという練習をした。
 
「あんたこの歌歌える?」
 
と言われて、仮名Aさんは"Amazing Grace"を歌った。
 
「オクターブ上でですか?」
「それはさすがに無茶」
 
それで恵馬は歌える範囲で実声、出ない所は裏声でこの歌を歌った。
 
「あんた本格的に歌が上手いよ。あんた1年以内に女の子歌手としてデビューさせてあげるから」
 
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あはは。あのぉ、それ冗談だよね?
 

1時間くらい歌の練習をした後でAさんは言った。
 
「あんた凄く可愛いから、写真撮ってもいい?」
「うーん。まあいいですよ」
 
女装写真撮られて、これを流出されたくなかったら言うことを聞けとか言われて売春宿に売られたりして?とか変な想像をして少しドキドキする。
 
「じゃ、ちょっとお出かけしよう」
「ここで撮るんじゃないんですか?」
「やはり、あんたみたいないい被写体を撮るなら、いい場所で撮らなくちゃね」
 
それで恵馬は、裾の短いワンピースで、まるで下半身は下着以外何も着てないかのような感覚のままフェラーリに同乗した。助手席に座っていて、足がほとんどまるごと見える。実はパンティ・・・ではなくてガードルも少し見えている。こんな服を着て出歩いていて、猥褻物陳列とかで捕まらないだろうかと不安になる。
 
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1時間ほど走った所で、小高い丘の上に素敵な邸宅があった。
 
「なんか立派なお屋敷ですね」
「旧吉崎邸だよ。知らない?」
「知りません」
 

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駐車場にハリアーが駐まっていて、そこから25-26歳の双子の姉妹が降りてくる。人に見られるのは恥ずかしい!と恵馬は思ったが、仮名Aさんはお互いを紹介する。
 
「紹介するね。こちらアナちゃんとオナちゃん、こちらは“仮名E”ちゃん」
「初めまして、仮名(かめい)Eです」
「初めまして、アナです」
「初めまして、オナです」
 
「お股に穴が空いているからアナ、女だからオナね」
「え〜〜〜!?」
「元はお股に棹(さお)があったからサオ君と、男だったからオト君だったけど、もう全て終わったからアナとオナに改名した」
 
「全て終わった?」
「性転換手術を受けて棹(さお)の付いた男だったのが、穴の空いた女になったからね。戸籍上の性別も女性に訂正済み」
 
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この人たちが元は男だった?信じられない!と恵馬は思った。
 
美人だし、おっぱいもある(ように見える)し、声も女の声だし。
 
「おっぱいもあるんですね」
「もちろん」
「ちんちん、無いんですよね」
「昔は付いてたけど、取っちゃったからね」
 
「仮名Eちゃんも、ちんちん取っちゃうんでしょ?」
「え?」
 
ちんちん取っちゃう?ボク、そんなことするのかなあ、と恵馬はドキドキして考えた。
 

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「今日は写真撮影とかやめて、性転換手術を受けに行く?」
 
性転換手術!?
 
どうしよう?ボク、女の子になっちゃったら、お母さんに叱られるかなぁ。
 
と恵馬は悩んでしまったが、“仮名A”さんが
 
「せっかく今日はここを貸し切ってるから、写真撮影をして、性転換手術はまた今度にしよう」
と言ったので、恵馬は少しホッとした。
 
「先生、仮名(かめい)Eちゃんって長いです。もう少し短い名前にしましょう」
「じゃ、あんたたちが何か可愛い名前考えてあげて」
「頭文字がEになるように、エルベとかは?」
「エルベ川のエルベ?」
「そうです、そうです」
「東ヨーロッパと西ワーロッパの境界線だな」
「へー」
「世界初の性転換者、リリー・エルベの名前だ(*1)」
「誰です?それ」
 
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(*1)一般に彼女が世界初の性転換者と思われているが、彼女の前に半ば実験台として、性科学研究所で助手をしていたドーラ・リヒター(Dora Richter)が性転換の治療を受けている。リリー・エルベ(Lili Elbe)は1930-1031にかけて、睾丸除去、卵巣移植、陰茎切断、陰嚢除去、子宮移植の手術を受けたが、子宮移植の予後が悪くて1931,9.13に亡くなっている。ドーラ・リヒターは、1922年に睾丸除去、1931年の早い時期に陰茎切断、6月に人工膣の形成の手術を受けている。睾丸除去以降にバストが発達して女性的な体付きになってきていると記録されているので、卵巣移植の手術も受けていたことが想像される。リリー・エルベは卵巣を腹部の筋肉部分に埋め込んでおり、ドーラも同様の移植方法だったかも知れない。
 
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性科学研究所(Institute for Sexual Research)には、ドーラを含めて6人の“女の子になりたい男の子”が助手として勤務しており、実際問題として様々な実験台を務めていたものと思われる。同研究所は1933年にナチスを信奉する青年達により襲撃・破壊されており、その後の、ドーラを含む6人の男の娘たちの消息は不明である。
 

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「エルベも境界線っぽくていいけど、もっと可愛い名前がいい」
と仮名Aさんが言う。
 
「じゃ、エヴァとか、エミリーとか、エヴリーヌとか」
とアナ・オナが候補をあげる。
 
「3文字がいいな」
「じゃ、エルザ、エリザ、エリカ、エルダ、エレン、エレナ、エンマ」
 
エンマという名前にどきっとする。それだとほとんど“エマ”で本名だよぉ。
 
恵馬は正式な読み方は「けいま」であるものの自分では、自分の名前は“えま”であるという意識がわりと強い。
 
仮名Aさんは言った。
「じゃセシリアで」
 
「え〜〜〜!?」
 
「3文字じゃないじゃないですか」
「頭文字Eじゃないじゃないですか」
とアナさん・オナさんが非難する。
 
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「EからCに進化したのよ」
と仮名Aさんは堂々と言った。
 
それで恵馬は以降、セシリアと呼ばれることになる。
 

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