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■娘たちの予定変更(19)

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華香はじっと話を聞いていた。
 
そして言った。
 
「私は構いません。やります。でもU20はどうなるんですか?私は来る途中で佐藤との電話で聞いて知ったのですが、日程が変わったそうですね?」
 
「はい。フル代表の世界選手権と、U20のアジア選手権が日程が重なってしまったのです。それで、世界選手権に出る選手は物理的にU20アジア選手権には出ることができません」
 
U20監督の篠原さんは苦虫を潰したような顔をしている。
 
千里は考えていた。
 
そもそも白井さんに日本代表になる資格が無いと分かっていたら、白井さんは日本に帰化していなかったろう。その場合、日本代表のセンターは安定で馬田さんと黒江さんだったはずだ。その場合、黒江さんは今回の試合で無理なプレイをしたりはしなかったろうから、骨折もしなかったろう。
 
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最悪黒江さんが使えたら、華香をフル代表に出す必要も無かった。
 
何て間の悪い話なんだ!?
 
華香は凄いセンターだ。今回の一連の合宿でも随分と評価が上がっているようである。しかし白井さんや黒江さんに比べたら実力はまだまだである。これはフル代表の出る世界選手権はかなり厳しいものになるぞ。
 

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「実は、白井さんが出られないということで、戦力の低下が避けられないので、いったん外した村山さんと佐藤さんに世界選手権の方に出てもらえないかと篠原さんに打診させて頂いたのですが、絶対にダメだと言われまして」
と強化部長は言う。
 
「当然だよ。村山も佐藤も出なかったら、日本は予選リーグで敗退するよ。僕は本当は高梁を外した件に関してもまだ納得していない」
と篠原さんはかなり怒っている。
 
千里は自分が必要だと篠原さんから言われたことが少し嬉しかった。
 
結局強化部長の説明にも専務理事の話にも、篠原さんや高居さんが全く納得しないまま話し合いが続く。専務理事は困り果てて、結局、麻生太郎会長に連絡を取った。
 
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麻生さんは急を聞き、夜中の2時すぎというのに、バスケ協会まで来てくれた。前総理というのでSPの護衛付きである。
 
麻生さんをこんなに至近距離で見るのは昨年U19世界選手権で7位に入ったことを報告に行き、選手ひとりひとりと麻生さんが握手してくれた時以来である。
 
しかしあの時の麻生さんはとても柔らかいオーラをまとっていた。しかし今日の麻生さんは燃えるように激しいオーラである。きっとこちらが本当の麻生さんだろうと千里は思った。さすが総理大臣までする人だ。
 
麻生さんは話をあらためて聞いて
 
「その白井君の代表資格について、きちんとFIBAに問い合わせて、代表入りが可能であることを確認してから帰化させるべきだった。この件でいちばん可哀相なのが彼女だ」
と明快に指摘した。
 
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全くそうなのである。彼女はあまりにも気の毒である。
 
「その問題については責任の所在を曖昧にせず、きちんと処理することが必要だ」
と麻生会長は言い、専務理事もきちんとした調査報告をすることを約束した。
 

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「しかしここはフル代表の名簿を提出してしまった以上、フル代表の世界選手権はそのメンツで行くしかない。もう変更はできないんでしょ?」
 
「できません。メンバーを外すことは可能ですが、追加は選手に事故があったりしたような場合以外は、できません」
と強化部長は答える。
 
「でしたら、フル代表の方はそれで行くしかないですね。後はU20の方をできるだけ強い状態で戦えるように考えることが課題ではないでしょうか?」
と麻生さんが言う。
 
それでこの件にかなり反発していた篠原さんと高居さんも、元総理の麻生さんからまで言われると、同意せざるを得なかった。
 
「中丸さんがU20代表から抜けた場合、補充候補になるのはどういう人なんですか?」
と麻生会長が訊く。
 
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「補欠として代表と一緒に行動していた花和留実子さん、またはU18代表に入っていたものの、その後所属チームの事情で離れていた森下誠美さんだと思います」
と高居U20代表が答える。篠原さんも頷いている。
 
千里と玲央美も顔を見合わせて頷いた。実際、その2人しか考えられない。
 

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麻生さんも入った中で、その2人の経歴が比較された。
 
森下誠美 186cm 東京T高校/エレクトロウィッカ/ローキューツ
 代表経験 U18代表(2008) U24候補(2010)
 総体 1年3位 2年3位 3年BEST8
 選抜 1年BEST16 2年準優勝 3年4位
 
花和留実子 184cm 旭川N高校/H教育大学旭川校
 代表経験 U19候補(2009) U20候補(2010) Univ候補(2010)
 総体 1年−− 2年3位 3年3位
 選抜 1年−− 2年−− 3年準優勝
 
麻生会長はふたりの身長の数字に「大きいね!」と言って驚いていた。
 
「現在、ふたりとも別のアンダーカテゴリーで代表候補になっているんだね。各々どういう強化活動をしているの?」
 
「U24は3月下旬にオーストラリア遠征をしました。U20は6月下旬にロシア遠征をしました」
「どちらも強いの?」
「FIBAランキングでオーストラリアは4位、ロシアは2位です」
「日本は?」
「14位です」
「日本は意外に上位なんだね」
「女子は強いんです」
 
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「男子は?」
「済みません。32位です」
「なぜそんなに弱いの?」
「済みません!」
「まあいいや」
 
と言った上で麻生さんは言った。
 
「ここからの話はこの子たちに聞かせたくない。おとなだけで話し合わない?彼女たちは、ちょっと別室で待機させよう」
 
「それがいいですね」
とずっと沈黙していた夜明コーチが言った。彼は立場上何も言えないものの、本当は色々言いたいことがあるはずだ。
 

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それで千里・玲央美・華香の3人は近くのホテルに移動することになった。その前に「概算」で交通費をもらった。実際には専務理事さんが個人的にお金を出してくれたようでもあった。正確な精算は後日と言われた。強化部長さんが予約を入れ、タクシーも呼んでもらったので、3人はそちらに移動して、寝ることにした。
 
一応部屋はシングルを3つ取ってあるのだが、華香が一緒に居たいと言ったので、毛布を持って!玲央美の部屋に集まった。でも
 
「おやつがないね」
という話になり、3人で深夜のコンビニに買物に行く。
 
ポテチ・さきイカ・チョコの大袋、更にはカップ麺・ハンバーガーとかお弁当!まで買って華香が精算したら、レジの人が20Mの青いボタンを押したので
 
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「ソラちゃん、リードされちゃったね」
などと言って盛り上がりながらホテルに戻った。
 
「僕は高校時代、制服のブレザーとスカート穿いていても青いボタン押されてた」
と華香は言っている。
 
「同じく同じく」
と玲央美も言っていた。
 
「私は男子制服着ていても赤いボタン押されてた」
と千里が言うと
「いや、そもそも千里は男子制服なんて着てなかったはず」
と言われてしまう。
 

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「でも王子がフル代表に参加するんでしょ?でも今回フル代表とU20は兼任できない。それどうなる訳?」
と華香が訊く。
 
「ああ、まだその話も届いてなかったか」
「華香にも話したかったんだけど、ホテルで見当たらなかったから、ごめんね」
 
千里と玲央美がその件を説明する。それを聞いて華香は言った。
 
「そういう話なら、むしろ誠美をフル代表に入れれば良かったと思う」
「その手はあったと思うけど、短時間で決断しなければならなかったし、代表候補外からの緊急招集という所までは頭が回らなかったんだろうね」
 
実際には誠美の場合、正センターになる馬田さんとの感情的な面も考慮された可能性もあると千里は思った。1年前、馬田さんが日本代表にするという口約束で日本に帰化しエレクトロウィッカに入った結果、誠美は選手枠から弾き出されて、特例移籍でローキューツに入っている。その因縁の馬田さんと一緒に代表にするのは、2人の感情的な面のケアを時間を掛けて行ってからでないと難しい。
 
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「ビザの問題もあったかも知れない。代表候補は彰恵たちも含めて全員ビザを取っていたけど、誠美は取っていない。万一期日までに取れないとやばいことになる。少なくともフランスの事前合宿には間に合わなかった」
 
「あるいは石川さんを本来のセンターとして使ってパワーフォワードで月野さんを入れる手もあった」
と華香。
「だよなあ。そのあたりも、もうパニックになってて考えきれなかったんだろうね」
 
「フル代表になるのは嬉しいけど、なんかスッキリしないなあ」
と華香は言った。
 

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結局千里たちは朝6時まで起きたまま、色々話していた。そして6時過ぎ、玲央美の携帯にU20監督の篠原さんから電話が入った。
 
「U20の補充は花和君になったから、よろしく」
「分かりました。彼女と一緒に頑張ります。監督もお疲れ様でした」
「うん。ありがとう」
 
おそらく今の時間まで激論していたのだろうが、実際にはU20の補充選手問題だけではなく、今回の事件そのものの検証も行われたのではないかと千里たちは想像した。
 
玲央美は「疲れているのでこのまま夕方くらいまで寝ていられませんか?」と言った。それで強化部長さんがホテル側に電話して、結局玲央美たち3人は3日の朝までこのホテルに居ていいことになった。
 

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9月2日10:00。
 
日本バスケットボール協会は緊急記者会見を開き、昨日発表した代表選手の内、白井選手の代表選手資格がFIBAに認められなかったため、中丸華香選手を代りに代表入りさせたことを公表した。
 
記者たちから厳しい質問が相次ぎ、強化部長・田原監督・富永チーム代表は、終始不手際を陳謝していた。
 

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2010年9月5日。
 
千里、麻依子、誠美、国香、浩子など、千葉ローキューツのメンバーは車に相乗りして、柏市中央体育館にやってきた。
 
今年の千葉クラブ選手権大会の1回戦が行われるのである。
 
ローキューツは3月の全日本クラブ選手権で3位に入ったので、11月の全日本社会人選手権に参加する権利がある。しかしその一方で、来年3月の全日本選手権を目指して、また県大会からの挑戦が並行して始まるのである。
 
この日の相手はホワイトブリーズであったが、試合前から向こうは凄く嫌そうな顔をしていた。千里たちが出る必要もないだろうということで、この日は旭川N高校の“銀河五人組”のひとりであった司紗にキャプテン代行をさせ、元代、玉緒、菜香子、夏美といった面々で始めた。
 
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(銀河五人組というのは、3年前の春に旭川N高校女子バスケ部の入部試験に落とされたものの、球拾いでも掃除係でも洗濯係でもいいから入れてくれと南野コーチに訴え、その熱心さが認められて入部した5人である。彼女らは体力も無かったし、完全な初心者だったが、川西靖子(現在レッドインパルス・マネージャー)らに基礎からみっちり鍛えられた。当初は「補欠5人組」と自称していたものの、2年に進級する時に「後輩も入ってくるのに補欠5人組では可哀相」と言って、佐々木川南が新たに「銀河五人組」と命名したものである。何となく格好良いが、実は銀河=星屑である。5人のうち越路永子は2年生の12月に、ウィンターカップ道予選、総合選手権の道予選でベンチ入りを果たし「補欠の星」と自称した。永子と夜梨子はジョイフルゴールドの2軍ジョイフルダイヤモンドに入り、司紗はローキューツに入った)
 
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こちらのメンツは元代や玉緒など、素人と大差無い子も入っているのだが、ベンチに座っている千里や誠美などの雰囲気に呑まれてしまったようで、トリプルスコアでローキューツが勝った。
 
むろん千里も麻依子も国香も薫も誠美も出る幕は無かった。
 
この続きは10月11日に行われる。
 

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