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■娘たちの予定変更(9)

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(C)Eriko Kawaguchi 2017-04-09
 
翌日。7月16日。
 
朝食(今度はちゃんと食べられた)後、バスで2時間ほど掛けてペネヴェジーズ(Panevezys)という町に移動する。
 
「暑い」
という声があがる。実は14日くらいまでは涼しいくらいの感じだったのが昨日あたりから気温が上がりはじめ、今日は“夏らしい”暑さが戻ってきたのである。しかも、バスはエアコンが無い! 窓を開けているのだが、結構暑い。朝からこんなに暑いということは、お昼を過ぎるとかなりの暑さになりそうだ。
 
到着したのはペネヴェジーズにあるシド・アリーナ(Cido Arena)という立派な体育館である。先日3国リーグをやった体育館とは段違いである。ここで今日・明日2日間、リトアニアとの観客を入れた試合をする。どうも、これは“リトアニアの”壮行試合のようである。
 
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千里は、この2試合は向こうはかなり気合いを入れてくるなと思った。
 

シドというのは、ラトビアの飲料メーカーである。
 
http://www.cido.lv
 
多分フランス語のシードル(cidre)、英語のサイダー(cider)と同系統の言葉かな?と千里と玲央美は言い合った。
 
このシド・アリーナの収容人員は5000人で、バスケットと自転車競技に主として使用される。アリーナと客席の間に自転車用のバンクが設置されている。ここのスコアボードは天井中央からの「吊り下げ式」である。、いわば両国国技館の土俵の上に吊り下げ式の屋根があるような感じで、コート中央に立方体状のスコアボードが空中にぶら下がっていて、ちょっと格好いい。
 
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この体育館はリトアニアの男子バスケットリーグLKLに所属するBC Lietkabelisのホームである。また、来年開かれる FIBA EuroBasket 2011 Group A の会場になることになっている。
 
現地に到着したのが11時半くらいで、12:00-13:30の時間帯で練習をした。
 
練習の後で近くのレストランに行き、お昼を取るが、このお昼を食べ終わった所で今日のロースターが発表された。
 
PG.富美山 福石 SG.花園 川越 SF.佐伯 山西 千石 前田 PF.寺中 月野 花山 簑島 C.白井 馬田 石川
 

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「さて、練習しよう」
 
と千里と玲央美は、江美子にも声を掛けて、体育館の裏で練習を始める。すぐに「私も混ぜて」と言って広川さんが来て、一緒に練習する。暑い中で屋外で練習しているので、どんどん汗を掻く。トレーナーの内藤さんがスポーツドリンクを持って来てくれた。
 
「あんたら元気だね〜」
と今日のロースターに入っていない三木エレンが来て千里たちの練習を見る。
 
「私はこの暑さだけで体力を削られる」
 
「エレンさん。今回は間に合わないけど、ロンドンまでにはエレンさんを引きずり降ろしますから、待っててください」
と千里は言った。
 
「OKOK。私に追いつけるものなら、追いついてごらん」
とエレンも楽しそうに言っていた。
 
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なお、他の選手は控室で、試合のビデオを見たり、あるいは寝たりしていたようである。
 

5000人入る体育館なので、さぞ大勢観客が入るかと思ったら、観客は200人ほどであった。これだとインターハイの道予選並みである。やはり女子の試合は大して入らないのかなぁ、と千里は思った。
 
この日の試合結果はこのようであった。
 
7.16 19:00-20:40 LTU 96-96△JPN
 
リトアニアは立ち上がりから猛攻を仕掛け、これまでこれほどパワフルなリトアニア・チームを見ていなかった日本は、戸惑っているうちに大量得点差を付けられてしまった。
 
その後、少しずつ挽回していき、終盤とうとう逆転したものの、終了間際、リトアニア選手のスリーが決まり、結局同点で終了した。
 
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今日・明日の2試合は同点の場合、延長戦は行わないことになっている。
 
なお、この日の審判は主審がリトアニア人、副審はリトアニア人と日本人(薬師)であったが、リトアニア人の2人は英語ができず、薬師さんはその2人とコミュニケーションを取るのに、かなり苦労していたようであった。
 
この日の試合でも、日本は例の「撞き出しのトラベリング」をかなり取られた。
 
「え〜?」
という顔をしている選手が結構いる。自分では先にボールを撞いたつもりが、やはり軸足が離れるのがわずかに早かったようで、千里たちの近くで観戦していた羽良口さんは審判の判断に頷いていた。
 
「あんたたちは、あれ上手いね」
と千里たちに声を掛けてくれた。
 
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「高校時代、かなり鍛えられたんです」
と千里は答える。
 
「旭川N高校の選手はそれがすごくきれいだと思っていた。うちはそこまで厳しくは指導されてないけど、目に余るものは時々注意されていたよ」
と玲央美。
 
「愛知J学園もかなり厳しかったんでしょう?亜津子さん言ってましたが」
と千里は羽良口さんに投げる。
 
「うん。沢田先生が凄く厳しかった。おかげで私はWNBAに行っても苦労しなかった。亜津子ちゃんもうまいね」
と羽良口さんは言っていた。
 

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試合終了後は2時間掛けてバスで移動して、ヴィリニュスのホテルに戻って宿泊した。そして翌日17日はまた2時間掛けてペネヴェジーズに移動する。そしてエアコンの無いバスで暑い!
 
「なんか移動だけで体力消耗している気がするのですが」
「なぜペネヴェジーズのホテルに泊まらないんですか?」
「うーん。。。なんでだろ?」
「日本選手を疲労させる作戦だったりして」
「それ、ありそうで恐い」
 
この日は11:00に到着して12時からの試合である。ロースターは朝食後、バスに乗ってすぐに発表された。
 
PG.羽良口 福石 SG.三木 村山 SF.広川 佐藤 山西 前田 PF.宮本 高梁 寺中 鞠原 C.馬田 黒江 中丸
 
それで千里は体力を温存するため、移動のバスの中でひたすら寝た。玲央美や彰恵・江美子も寝ていたようである。
 
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今日の審判は日本側の薬師さんが主審で、副審2人がリトアニア人である。2人の内1人は英語が分かるということで、その人が通訳することにより、今日は3人の審判のコミュニケーションが取れるようであった。
 

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この日の試合結果はこのようであった。
 
7.17 12:02-13:40 LTU 82-76 ×JPN
 
最後まで競った試合であったが、結局リトアニアが僅差で試合を制した。これでリトアニアとの戦績は2勝1敗1分である。
 
リトアニアは昨日同様“本気”であった。多分先日のリーグ戦はどうせ観客もいないしと手を抜いていたんだろうなと千里は思った。昨日・今日のリトアニアが本当のリトアニアだ。
 

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この日もバスで2時間掛けてヴィリニュスに戻る。今日はこれまでで最も暑い日で、エアコンの効かないバスの中は窓は開けていてもサウナに近い状態だった。千里は体力消耗をおさえるためずっと寝ていた。夕食を取ってからホテルで休んだが、大半の選手が敗戦の精神的な疲労もあり、すぐに寝たようである。
 
王子と華香に美樹の3人はルーカスさんに「何か気分転換できるような所は無いですか?」と尋ねて、結局ゲームセンターに行ったようである。最初、もっとおとなのプレイスポットを提案したようだが、美樹が「すみません。王子が未成年なので」と言うとルーカスさんは驚いたようであった。どうも22-23歳と思い込んでいたらしい。
 
「ついでに女の子というのは認識してもらってますかね?」
「もちろん、可愛いお嬢ちゃんだと認識してますよ、ムッシュー」
などとルーカスさんもお茶目に言っていた。
 
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千里と玲央美は少し仮眠してから亜津子・彰恵・江美子に声を掛けて近くの公園で2時間くらい練習をした。日はまだ高いのだが、時間的には夕方になるので、夜明コーチが護衛を兼ねて付いていてくれた。
 

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18日。遠征試合の最終日である。
 
今日の試合はヴィリニュス市内で行われる。Lietuvos rytas Arenaという体育館を使う。やはりLKLに所属する BC Lietuvos rytas のホームである。ここでLietuvos rytasというのはリトアニアの新聞で「リトアニアの朝」という意味である。ここは1700人の観客の入る体育館で2005年に建設された。
 
4日後、7月22日から始まるU18男子ヨーロッパ選手権の会場になるということで、床に FIBA EURO のペイントが既になされている。
 
「移動しなくていいのは楽だ」
という声があがった。9:30-11:00が公式練習時間だったので、ここでたっぷりと汗を流す。その練習が終わった所で今日のロースターが発表された。
 
PG.羽良口 武藤 SG.花園 村山 SF.広川 佐藤 佐伯 前田 PF.横山 宮本 高梁 鞠原 C.馬田 黒江 石川
 
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この発表に「え?」という声があがる。
 
多くの選手が予想していたものとまるで違っていたからである。
 
ここまでの選手起用で、だいたい首脳陣の考え方が分かってきていたので今日はこのようなオーダーになるものと多くの選手が予測していた。
 
PG.羽良口 武藤 SG.川越 村山 SF.佐伯 佐藤 早船 千石 PF.横山 宮本 花山 簑島 C.白井 黒江 石川
 
それなのにかなり選手が入れ替わっている。千里はこれは「勝つ」ためのラインナップだと思った。昨日の敗戦で、単に「選手の調子を見る」オーダーでは終われないと監督やチーム代表は判断したのだろう。そもそも名前を並べる時、これまでは佐藤より佐伯の方を先に書いていたのに逆になっている。おそらくかなりの議論をして選手の入れ替えをしていたため、ここでひっくり返ってしまったのだろう。
 
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千里はじっとそのオーダーを見た。
 
そしてにっこりと笑顔を作ると、玲央美を見て行った。
 
「2〜3時間練習しない?」
 
玲央美はじっと千里を見た。そして言った。
 
「うん。練習しよう」
 
「私も混ぜて」
と亜津子が言う。
 
「じゃ私も」
と広川さんが言う。
 
「私たちは寝てる」
と彰恵と江美子は言った。
 

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体育館の外でやろうと思ったのだが、あいにく雨が降り出したようである。ルーカスさんに聞いたら、この体育館のトレーニングルームが使えるということだったので、そこに行く。
 
夜明コーチが付いてくれて、その4人でかなり濃厚な練習をした。1時間半くらいしたところで夜明コーチが
 
「このあたりでやめとこうか。本番に響く」
 
というので、そこでやめて、あとは汗を掻いた下着を交換。予備に持って来ていたトレーナーを着て、控室の隅で寝た。
 

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「おーい、御飯だよ」
という玲央美の声で目が覚める。
 
「ありがと」
と言って起きる。時計を見ると17時である。みんなで一緒に体育館の近くのレストランに行く。雨が降っているので、傘が人数分用意されていて、その傘を差して歩いて行った。
 
予約していたので、実質貸し切りにしてもらっている。ここで軽く夕食を取る。消化の良さそうなメニューで構成してもらっている。18時頃に体育館に戻ると、何か揉めてる!?
 
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