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■娘たちの予定変更(7)

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「それで逃げ出したの?」
「金を借りた先にヤクザ絡みの金融があったみたいで、身の危険を感じた。それで5人で逃げ出した。最初は釧路の友人の所に身を寄せた」
 
「釧路に行ってたんだ!?」
「でもどこからかぎつけたのか、ヤクザがやってきた。友人に迷惑は掛けられないから逃げ出して、苫小牧の友人の所に行った。でもそこもかぎつけられた」
 
「なんで自己破産しないのさ?」
「当時はそこまで頭が回らなかったし、弁護士入れたらヤクザは手を出せないというのを知らなかったんだよ」
「うーん。。。」
「実は今破産の処理をしている所。1年くらい掛かると言われている」
「ああ・・・」
 
「それで結局、今年の1月に美鈴さんの所に行って、寝ている理香子を置いたまま、他の4人で逃げ出した」
 
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「理香子ちゃん、起きたらお父ちゃんも弟たちも居なかったというので泣いていたってよ」
「済まん。それで続いて美幌に行こうとして網走で美智を見かけたから、和志をそちらに行かせた」
 
「2人までは託したものの、織羽を託す先がなかなか思いつかなかった。織羽は特にちょっと特殊なんで、預ける先を選ぶんだよ。だけど、富良野に住んでいる僕の元同僚が、その方面に理解があったのを思い出したんで、そちらに行こうとしていて、ヤクザに捕まって、湖に沈められそうになった。でもそこで、大姐御(おおあねご)のような人に助けられたんだよ」
 
亜記宏はその時の状況を説明した。それは天津子から聞いた話とほぼ一致していた。
 
「結局僕と有稀子は織羽を置いたまま逃げ出してしまった。その後、山の中の小屋に居た、世捨て人みたいな女の親子に助けてもらって。その娘さんの方に子供が心配だと言われて、付いてきてもらって、僕とその娘さんの2人で僕たちが殺されそうになった、湖の畔まで行った。誰も居なかったけど、布にマジックで書いたものを小枝に付けて雪に刺したものがあってさ。『子供は無事だから安心して』と書かれていた。それで僕は織羽が無事だと判断した」
 
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美智は、天津子が念のためそういうメッセージを残してくれたんだなと考えていた。しかし天津子は『大姐御』か!と思うと少し楽しくなった。あんな可愛い女子中学生なのに。
 
「その後、僕と有稀子は、バラバラに行動することにした。だから僕は有稀子の行方も分からない。もしかしたら実家に戻ったかも知れない」
 
「有稀子さんの実家がどこにあるか分かる?役場に移転届けが出てないみたいなんだけど」
 
「分かると思う」
と行って、亜記宏はぼろぼろになった住所録を出した。その住所録の先頭に美智自身が3年前まで住んでいたアパートの住所とともに書かれていたのを見て、美智は心が温まる思いだった。しかもそこには『真枝美智』という名前が記され、更にハートマークまで赤いペンで書かれていたのである。
 
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有稀子の実家の住所は、ふつうにカ行の所に川代竜太の名前で記されていたが2回も修正の跡があった。その最初のものが、美鈴さんが調べてくれた、住民票上の住所である。住民票を放置したまま、2度も引っ越したということだろう。
 
美智はその住所を書き写した。
 
「2月の段階ではそこにいたはず。その後更に引っ越していたら僕も分からない」
「取り敢えず連絡を取ってみる」
 
「それで僕の方は、道内のあちこちで色々仕事をしていたけど、どれも長続きしなくて。すぐ首になるんだよ」
 
「まあ、あきちゃんは不器用だし、腕力も無いし」
「腕力の無い男って、そもそも男扱いしてもらえないんだなというのをまざまざと思い知らされた」
 
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「男がダメなら女になる?」
「いや。だからそれは勘弁してよ」
 

「それで結局、枝幸町で行き倒れになった所をラーメン屋のおやじさんに助けられてさ」
 
「へー!」
「僕がラーメン作れると分かったら、調理係として雇ってくれたんだよ」
「良かったじゃん」
 
「それで常連客の税理士さんに勧められて、破産の手続きをすることになった。今その申請書を札幌の弁護士さんに書いてもらっている所」
 
「そういう状況か」
 
「それで子供たちのことなんだけど?織羽の行方も知っているなら、3人がどうしているか知ってる?」
と亜記宏が尋ねる。
 
「子供たちが心配?」
と美智は尋ね直した。
 
「もちろんだよ。理香子、和志、織羽のことを忘れたことは一度もない。美智のこともね」
 
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美智は最後の言葉にドキっとした。
 
「でも実音子さんのことも有稀子さんのことも好きだったんでしょ?」
 
「実音子が好きだったことは認める。有稀子とは・・・厳しい環境の中で一緒に逃避行したから、つい何度かセックスしてしまったことは認めるけど、実際問題として、あれは恋愛ではなかったと思う」
 
「そもそもなんで有稀子さんも一緒に逃げないと行けないわけさ?」
 
「それはちょっと理由(わけ)があって。その問題については済まないけど、あらためて後から説明させて欲しい」
 
実は有稀子は、理香子・和志・織羽の3人が自分の遺伝子上の子供であったのでその3人の保護者として同行していたのだが、その問題については亜記宏は翌月に再度会いに来た時に美智に説明することになる。
 
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「まあいいけど」
 
「でも僕は今でも美智のことが好きだよ」
 
その言葉に美智(春美)は心臓の音が高まるのを感じた。美智はしばらく亜記宏の顔を見つめていた。
 

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「でもさ、私、今でも凄く怒っているんだけど。母さん(弓恵)の四十九日の後で、私が高校大学の間、母さんに養ってもらった間の生活費・学資400万円を返せってしつこくメールしてきたのは何なのさ?随分酷いこと言ってくれたよね。この恩知らずとか、オカマ野郎とか」
 
と美智は思い出したようにマジで怒って言った。
 
「何それ?」
と言って亜記宏はきょとんとしている。
 
「え?私の携帯にあきちゃんの携帯から、執拗にそういうメールが入るから、私ほとんどノイローゼになったんだよ」
と美智は文句を言う。
 
「知らない。マジで知らない。僕がそんなこと言う訳ない。美智は母ちゃんの娘なんだから、養育費とか学費とかを返す必要なんか無いし、僕が美智のことをオカマ野郎とか言う訳が無い。僕は美智のこと、女の子だと思っているし、可愛い妹だと思っているし、そして実音子と結婚している間も、実は美智のこともずっと好きだった。実音子には嫉妬されていた気もするけど」
 
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「私、携帯変えちゃったから今この携帯には入ってないけど、あの頃の携帯まだ取ってあるから、充電してこのSIM向こうに入れて起動してメール見せようか?」
 
「いや、その時期は僕は修行中だから、そもそも携帯も持っていない。そんなの持つのは禁止だったんだよ」
 
「じゃ携帯はどこに置いていたの?」
「何か緊急の連絡が入った時のために入院中の実音子に預けていた。あっ・・・」
と亜記宏は“真実”に気付いてしまった。
 
「まさか・・・・あれ。もしかして実音子さんのしわざ?」
と美智も気付いて言った。
 
「あり得る気がする。実音子は美智に凄く嫉妬していたから」
「でも嫉妬で400万円要求する訳?」
 
「実家に莫大な借金があるのが分かっているから、母ちゃんから美智が受け継いだ遺産が目当てだったのかも。僕があそこの土地家屋を売却した代金が400万円だったから、それと似た額を受け継いだと思ったかも知れない。僕は美智が受け継いだものについては実音子には何も言ってないんだけど」
 
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「でも私はそもそも、遺産をお母ちゃんからもらったこと自体を知らなかったんだよ」
「え?そうだったの!?」
 
「その話は美鈴さんに聞いてもらえば分かる。どっちみち、私、美鈴さんに連絡するよ。たぶん、どこかで会おうという話になると思う。亜記宏、美鈴さんやミラさんに会うよね?ふたりとも無茶苦茶怒ると思うけど」
 
「会う。その覚悟はしてきた」
 
「織羽も呼ぶね」
「織羽は・・・どこに居るの?」
「旭川だよ。その亜記宏を助けてくれた大姐御さんが保護している」
「え〜〜!?」
 

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15時半頃、スクールバスで、しずかが帰宅した。
 
「ただいまあ。おなかすいた。おやつない?」
と食堂に入ってきて言ってから亜記宏を見て驚く。
 
「パパ!かえってきたの?」
と笑顔で言う。
 
「うん。帰って来たよ。おかえり、和志」
と亜記宏は言った。
 
「そのなまえではよんでほしくないなあ。それとパパ、ママのことすてたでしょ?そのことで、かっちゃんも、わたしもおこっているんだよ。おりーはなにもかんがえてないみたいだけどさ」
と、しずかは言う。
 
「ごめん。謝る」
「パパ、ママとなかなおりした?」
としずかは訊く。
 
美智は微笑んで言った。
「なかなおりしたよ」
 
「だったら、パパがわたしのこと“しずか”とよんでくれるなら、わたしもパパをゆるしてあげる」
 
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「やはりお前はそちらに行ってしまったか。いいよ。しずか。お前スカート穿いて赤いランドセルしょってるけど、女の子として学校に行ってるの?」
と亜記宏は言う。
 
「だってわたしはおんなのこだもん」
としずかは言った。
 

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リトアニアで合宿している日本代表フル代表。
 
9日の試合の後、7月10日は午前中は昨日の練習の続きをして、午後からはちょっと息抜きに買物に出た。ルーカスさんが案内してくれるが、念のためこちらの通訳の角川さんも一緒である。角川さんは英語の通訳であるが、ロシア語もある程度できる。リトアニアでは、年配の人にはロシア語が、若い人には英語が通じることが多い。
 
土産物店に塩が売ってある。
 
「ドルスキニンカイというのは元々塩の町という意味なんですよ。リトアニア語で塩のことをドルスカと言うんです」
とルーカスさんが説明してくれる。
 
「ちなみに僕はチェブラースカもミニスカも大好き」
 
とルーカスさんはあくまでダジャレで行く。
 
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ちなみに“チェブラーシュカ(Чебурашка)”のはずだが、ダジャレのためには少々の言い換えはする。
 
「ルーカスさん、ミニスカ好きですか?」
「もちろん。ミニスカ穿いてる女の子も好き」
「ルーカスさん自身はミニスカ穿かないの?」
「一度ミニスカ穿いてみたら、次穿いたら離婚って女房に言われた」
 
このあたりもジョークなのかマジなのか良く分からない人である。
 

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その後スーパーに行くと、みんなおやつの類いを買っていた。
 
「男子チームを案内すると、ビールとか買う人多いけど、やはり女の子はおやつに走るよね」
などとルーカスさんは言っている。
 
「ビールの美味しいのあります?」
とベテランの簑島さんが訊く。
 
「このあたりが美味しいよ」
とルーカスさんが教えてくれるので、簑島さんは4本ほど買っていた。
 
今回の遠征では、飲酒は禁止されているが、お土産に持ち帰るのは良いことになっている。ただし千里や王子など、未成年メンバーはお土産に買うのも禁止である。
 

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この日の夕方は、今日から始まったリーグ戦の初戦、リトアニア対ブルガリアの試合を観戦した。
 
試合が終わったのは21時頃だが、千里は眠かったのでホテルに戻るとすぐに寝た。
 
7月11日はリーグ戦の2戦目のリトアニア対日本、3戦目のブルガリア対日本が午前と午後に続けて行われる。ロースターは朝食の後、同時に発表された。
 
■リトアニア戦(10:00-)
PG.武藤 富美山 SG.花園 村山 SF.広川 佐藤 早船 前田 PF.横山 高梁 花山 鞠原 C.馬田 黒江 中丸
 
■ブルガリア戦(19:00-)
PG.羽良口 武藤 SG.三木 花園 SF.広川 佐伯 早船 山西 PF.横山 宮本 高梁 月野 C.白井 馬田 中丸
 
千里は午前中のリトアニア戦でやっと出番である。しかも亜津子と2人で選ばれている。メンバー表を見て、千里は静かに闘志を燃え上がらせた。
 
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