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■娘たちの予定変更(10)

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ルーカスさんがリトアニア語(?)で何やら叫んでいる。
 
「どうかなさいました?」
「今日の試合のテーブル・オフィシャルが居ないんです」
「居ない?」
「さっき協会に電話して確認したら、手配し忘れたと」
「え〜〜〜!?」
 
「どうするんです?」
「観客の中から選びます」
「へ!?」
 
「どっちみちこういう試合見に来ているのは、バスケット関係者ばかりだから、できる人が絶対居ますよ」
 
それでルーカスさんが観客に向かって、スコアが付けられる人、24秒計の操作ができる人、タイムキーパーができる人、と募っているようである。結局数人出てきた人とルーカスさんが話をして、3人選んだ。
 
「3人?」
「スコアラー、タイムキーパー、24秒計オペレータです」
「あのぉ、アシスタント・スコアラーは?」
「タイムキーパーが兼任します」
「大丈夫ですか?」
「よくそれでやってますよ」
 
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恐らくルーカスさんたちから見て信頼できそうな人がその3人しか居なかったのだろうと千里たちは思った。
 
しかしタイムキーパーとアシスタント・スコアラーの兼任はかなり忙しくなる。ただスコアラーや24秒計オペレーターは試合中ずっと神経を張り詰めた状態で作業するのでとても余裕がない。確かにアシスタント・スコアラーを兼任するならタイムキーパーしかあり得ないだろう。それでも、ほんとに大丈夫か?と不安を感じながらも、取り敢えず何とかなったかなと思っていたら、今度は審判が居ないと言い出す。
 
「どうなってるんですか?この試合!?」
 
こういう国際試合では審判は3人制で、今日は日本の薬師さんが主審をすることになっているのだが、リトアニア人の審判が1人しか来ていないらしい。つまり副審が1人足りない。
 
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「2人制でやります?あるいは審判できる人をお客さんから募ります?」
 
「副審は私がやります」
とルーカスさんが言った。
 
「できるんですか!?」
「私、3部リーグで審判やっているんですよ」
「そうだったんですか!?」
 
しかし。。。3部リーグの審判って、大丈夫か?
 
いや既にこの試合、3部リーグ並みになっているのかも!?
 
「多分お客さんの中に審判ができるほどの人がいたら、さっきもう1人テーブルオフィシャルとして採用していたんだろうね」
と江美子が言う。
 
「うん。そもそもお客さんの数が少ないからなあ」
 
この時点で会場に入っているお客さんは50人ほどである。
 

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ともかくも試合が始まる。千里はスターターに指名されて出て行った。背中に亜津子の視線が痛い。
 
日本は序盤から激しい攻勢を掛けた。千里、玲央美が立て続けにスリーを決めるが、向こうもスリーで対抗する。今日は点の取り合いになるなと思った。第1ピリオドは21-28で日本のリードである。
 
第2ピリオドは亜津子が出て行く。千里が第1ピリオドで4本スリーを入れているので、亜津子もかなり張り切っている。このピリオドもお互い激しい攻防が続いたが、18-20で日本のリードで終わる。亜津子はスリーを3本入れた。
 
ハーフタイムで休んでいる間、外では雨が激しくなってきている感じだ。
 
「これ傘さしてても濡れそうだなあ」
「帰ったら熱めのシャワーを浴びたい気分だ」
 
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それで控室からコートに出て行くと、テーブル・オフィシャルをしてくれている人たちがモップを持ってコートの掃除をしている。わあ、ご苦労様ですと思いながらベンチに座る。掃除が終わったようで、後半が始まる。第3ピリオドも亜津子が出て行く。それで試合が始まったのだが、試合開始早々、リトアニアの選手が滑って転ぶ。
 
何か文句を言っている。
 
「床が濡れていると言ってるみたい」
「なんで?モップに水を付けて拭いてたのかな」
「まさか」
 
ルーカスさん自身がモップを持って来てその付近を拭いている。
 
不可抗力による中断と判断され、リトアニアのスローインから試合が再開される。それで5分ほどやっていたのだが、今度は彰恵が滑って転んだ。
 
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「床が濡れてると言ってる」
「ねえ、まさか、雨漏りしてるんだったりして」
「まさか・・・」
「この体育館、5年前に出来たばかりとか言ってなかった?」
「手抜き工事だったりして」
「雨が降る場合を想定しない設計だったりして」
「そんな馬鹿な」
 
また掃除をして試合が再開されるが、1〜2分後、今度はゴール下でリバウンドを争ったリトアニアのセンターの人と馬田さんが相次いで滑って重なり合うように倒れた。
 
「なんか濡れてると言っている」
「これやはり雨漏りしてる」
「あははは」
 
審判団、そして双方の監督が出て協議している。
 
主審の薬師さんがマイクを持った。英語で説明する。
 
「雨漏りが酷く、このまま続行するのは危険であることから、この試合はここで中止。試合はここまでの得点で60-54で日本の勝ちとします」
 
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続いてルーカスさんがマイクを持ち、同じことをリトアニア語で説明しているようである。英語のアナウンスでは観客も分からない人が多かったようだが、ルーカスさんの説明で観客が騒いでいる。
 
バスケットの試合で降雨コールドゲームなんて前代未聞だ!?
 

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整列して挨拶した後、双方握手などしていた。5人が引き上げてくる。
 
「最後までやりたかったよぉ」
と亜津子が言う。
 
「彰恵、転んだ所大丈夫?」
「平気平気。転んだくらいで壊れるような身体してないし」
「馬田さん、大丈夫ですか?」
「OKOK。私、馬(うま)並みに頑丈って子供の頃から言われてるから」
 
と馬田さんはここで自分の名前をネタにしたダジャレを飛ばしている。多分大丈夫なのだろう(彼女は中国名は馬(マー)さんである)。
 
その後、15人全員で向こうのベンチに挨拶に行く。向こうの15人もこちらのベンチに挨拶に来る。その後、コート上に今日は出ていない選手も入って、リトアニア・日本双方の選手が入り乱れて並んだ状態で記念撮影をした。
 
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7.18 19:00-20:05 LTU 54-60○JPN (21-28 18-20 13x-13x x-x) 雨天コールド
 
こうして、リトアニア対日本の連戦は合計で日本の3勝1敗1分ということになった。ブルガリア戦まで入れると4勝1敗1分である。
 
バスでホテルに戻ったが、外は物凄い手土砂降りだった。みんな熱いシャワーを浴びてから寝たようである。
 

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亜記宏は天津子の顔を見ると土下座して感謝の言葉を言った。
 
「その節は本当にありがとうございました。私自身のことより、織羽のことで本当にお世話になりました」
 
「まあ私はたまたま気分で助けただけ、だけどさ、子供を置いて逃げるのは頂けないなあ」
と天津子は言った。
 
織羽は単純に
「あ、パパだ。元気だった?」
と言ったので、亜記宏は
「織羽、ごめんな、ごめんな」
と泣いて言っていた。
 
「でもなんで織羽はスカート穿いてるの?」
「この子の性別のことでは、あとで相談したいのですが」
と天津子は言った。
 
「はい」
 

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美鈴・ミラとそれに伴われてきた理香子との対面の方が厳しかった。
 
美鈴やミラが怒る前に理香子が亜記宏に言った。
「パパ、どうして私たちを捨てたの?」
 
それは小学2年生とは思えない、厳しい口調の言葉だった。亜記宏はその理香子の態度に驚きながらも、ただただ謝った。
 
「じゃ、パパは私たちが嫌いになったんじゃないのね?」
「そんなことはない。理香子たちと別れた後も、ずっとずっと理香子たちのことを思っていた」
と亜記宏は言う。
 
理香子と亜記宏の対話は10分以上続いた。対話というより厳しい詰問の連続であった。理香子の言葉は全く容赦が無い。そばで聞いている美智の方が、何もそこまで言わなくてもと思いたくなるほどだった。そして亜記宏はひたすら謝った。その上で理香子は言った。
 
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「だったら、もしママがパパのこと許してあげるのなら、私も許してあげる」
 
亜記宏が美智(春美)を見る。
 
「分かったよ。かっちゃん(理香子)。私はパパを許してあげるよ」
と美智は笑顔で言う。
 
すると理香子は言った。
「ママ、パパのこと好き?」
 
この質問には美智はマジで困った。しかし答えなければ理香子は亜記宏を許さないだろう。
 
「うん。理香子たちのパパのこと好きだよ」
「結婚する?」
「じゃ、その内ね」
と美智は笑顔で答えた。
 
「だったら仕方ないからパパのこと許してあげるよ」
 
この理香子の厳しい亜記宏への詰問で、ミラも美鈴も色々言いたいことがあったのをもう言えなくなってしまったようである。
 
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「亜記宏、あんたには色々言いたいことはあるけど、理香子と美智に免じて許してあげることにするよ」
とミラが言った。
 
「だけど、かっちゃんはまるで長女ではなくて、長男のようだ」
と美鈴が言う。
 
「それでいいよ。私が長男で、しずかが長女なの」
と理香子。
 
「なるほどー!」
と美鈴と美智は一瞬顔を見合わせてから納得するように言った。
 
「ねえ、しずか、おちんちん私にくれない?」
「いつでもあげたいけど。私はあれ要らないし」
 
「お医者さんに行ったら、しずかのおちんちん取って私に付けてもらえるかなあ」
 
「そういう話はもう少し大きくなってからね」
とミラが苦笑しながら言った。
 

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リトアニア、ヴィリニュスのホテル。
 
7月19日の朝起きると、また玲央美が何か書いている。
 
「またロースター予想?」
と千里は訊く。
 
「そうそう。結局さ」
「うん」
「ブルガリア戦のメンバーがほぼ最終ロースター候補だと思う」
と玲央美は言った。
 
「へ?」
「つまりね、こういう海外遠征って色々な国のチームとの対戦を選手に経験させることも重要な目的じゃん」
「うん」
 
「そうなると、リトアニアとは5試合するから、全員リトアニアとは対戦経験を持てる。ところがブルガリアとは1試合しかない」
「あぁ・・」
 
「となると、代表ロースターと考えている選手は、絶対ブルガリアとの経験も積ませると思うんだよ。だから、ブルガリア戦のラインナップが基本。15名から12名に絞るし、若干の入れ替えはあるかも知れないけどね」
 
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ブルガリア戦のメンバーはこの15名であった。
 
PG.羽良口 武藤 SG.三木 花園 SF.広川 佐伯 早船 山西 PF.横山 宮本 高梁 月野 C.白井 馬田 中丸
 
「結構妥当かも・・・あれ?レオ入ってないじゃん」
「うん。私もやはり落選かな、という感じ」
「うーん・・・」
 
「勝つためのラインナップなら最終戦のメンツだと思う」
と玲央美は言う。そちらはこういうメンバーである。
 
PG.羽良口 武藤 SG.花園 村山 SF.広川 佐藤 佐伯 前田 PF.横山 宮本 高梁 鞠原 C.馬田 黒江 石川
 
「勝つためのメンツと代表に実際に選ばれる人が違うんだ?」
「だって人気選手は入れなきゃ」
「うむむむ」
 
「フル代表というのは、実力と人気のふたつのファクターで選ばれるんだよ。オリンピックとか世界選手権は興行だしね。お客さんを呼べる選手を入れることが必要。アンダーエイジは実力のみの勝負」
 
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「それは悔しいなあ」
「だから私たちもフル代表に選ばれるようになるには、オールジャパンとかで活躍して、人気も得ないとダメ」
 
千里はため息をついた。
 
「じゃ、まあロンドン五輪までにはもう少し頑張ろうよ」
「うん。お互い頑張ろう」
 
と言ってふたりは握手をした。
 

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朝食後8時半にホテルをチェックアウト。ヴィリニュス空港に向かう。
 
11:30にコペンハーゲン行きに乗り、1時間半のフライトで12:05にコペンハーゲン国際空港に到着する。時差を1時間遡ってUT+2(JST-7)になる。ここで出国手続きをして、15:45の成田行きに乗った。
 
10時間50分の空の旅で翌7月20日の朝9:35に到着する。
 
いったん北区の合宿所に入り、ここで解散した。千里は6月18日以来、1ヶ月以上ここに駐めていたインプに乗って合宿所を出た。
 
フル代表の次の活動は8月23日からである。
 

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日本代表のリトアニア遠征と並行した日程でU17チームはフランスでの世界選手権に臨んでいた。昨年11.30-12.06にインドのプネー(Pune)で開かれた第1回U16アジア選手権で準優勝して参加権を獲得している。
 
これに参加したメンバーは下記である。
 
旭川N高校の原口紫(PG)、札幌P高校の久保田希望(PF)・宮川小巻(SF)、秋田N高校の広川久美(PF)、東京T高校の永岡水穂(SG)、静岡L学園の大沼マリア(SF)、愛知J学園の杉山友梨花(SF)・山本みどり(C)、岐阜F女子高の水原由姫(PG)・栗原美麻(SF)、愛媛Q女子高の小松日奈(C)、福岡C学園の竹原沢子(SG)
 
ひとつ上の学年のU18に派手な選手がいるのに比べて小粒だと言われ、彼女らはあまり期待されていなかった。実はメンバーもU16の時から半分くらい入れ替わっている。
 
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日本は予選リーググループAで2勝3敗の4位で決勝トーナメントに進出する。そして準々決勝でベルギーに敗れ、5-8位決定戦に回る。ところがここでオーストラリアとの激戦を92-95で制して5-6位決定戦に進出。そして予選リーグでは負けている超強豪ロシアに68-74でまさかの勝利。
 
堂々5位に輝いたのである。
 
千里たちの世代がU19世界選手権で7位に入ったのも快挙と言われたのだが、それを上回る世界5位の成績で、バスケ協会幹部を歓喜させた。
 
なお、久保田希望は得点2位、小松日奈が3位、水原由姫がアシスト2位であった。
 

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娘たちの予定変更(10)

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