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■娘たちの予定変更(14)

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「織羽ちゃんは私が保護した時『君は男の子?女の子?』と訊いたら自分でも分からないと言いました。下着は女の子用をつけてましたね」
と天津子。
 
「ぼくはちんちん無いから、女の子用のパンツ穿きたい、とか言っていたので、女の子用を穿かせていました。プリキュアがいいなと言ったのでプリキュアの女の子パンツも買ってやりました」
 
「うん。私が保護した時、プリキュアのパンツ穿いてた」
 
「あの子プリキュアも仮面ライダーも好きなんですけど、仮面ライダーの女の子パンツは見つからなくて。上は男の子シャツでも女の子シャツでも構わないみたいです」
と亜記宏。
 
「あの子、自分のこと『ぼく』と言うの?」
「男の意識の時は『ぼく』ですが、女の意識の時は『わたし』になるみたいです」
「うーん・・・・」
 
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「だけど、男の意識でも女の子のパンツが穿きたかったんだ?」
「女装趣味だったりして」
 
という意見が出て、ちょっと笑いも出る。難しい話をしていただけに、みんな一様に緊張がほぐれた。
 
天津子が言う。
 
「それで、数日、一緒に暮らしていたらスカート穿きたいと言い出したんで穿かせて。だから、やはりこの子、女の子なんだろうなと思ったので、結局女の子の服を着せて、それで幼稚園にも女児の格好をさせて行かせているんですよ。幼稚園でも女の子たちの中に溶け込んで遊んでいるみたいです。確かにちんちんは無いから、着換える時とかも問題は起きてないみたいで。まあパンツまでは脱ぎませんし」
 
山本さんがおもむろに言った。
 
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「横から口出して申し訳無いけど、もしかしたら、借金取りから逃げ回っていた時は、危険な状態なのでサバイバルのために男の意識が働いたのかもね。でもそれが海藤さんに保護されてからは、安心して、男の意識を仕舞い込んで、女の意識を表に出したのかも」
 
「もしかして一種の二重人格ですか?」
「あり得ると思う」
「男と女の二重人格か・・・・」
 
「だったら、あの子を私たちは男の子として扱うべきなんでしょうか?女の子として扱うべきなんでしょうか?」
と美鈴が迷うように言う。
 
天津子はしばらく考えていたが言った。
 
「あの子のあるがままに扱えばいいと思います」
 
他の面々もしばらく考えていた。
 
「きっとそうなんだろうね。あの子は、男の子とか女の子とかいう分類をしてはいけないんだよ」
と美智が言った。
 
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「あの子はこのまま私に預けてください。子供たちは定期的に会わせればいいですよね?私、そういう子をありのままの形で育てて行きたいです」
 
と天津子が言った。
 
天津子は“オカマ”は嫌いらしいが、このタイプの子には優しいようである。
 
それでミラが結論を出すように言った。
 
「やはり、さっき言ったように、この子たち3人は今のままの場所で、今のまま育てることにしよう」
 
全員がそのミラの意見に同意した。
 

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8月12日。
 
千里は早朝アパートを出ると、インプレッサに合宿の荷物を放り込んで東京北区の合宿所に入った。お盆直前の12-14日の3日間、U20日本代表の合宿が行われるのである。
 
できたら公共交通機関で来たい所だが、公共交通機関だと千葉から赤羽までは800円で行けるものの、アパートから千葉駅までの交通機関が、特に早朝・夜間は存在せず、タクシーを使わざるを得ない。そうなるとアパートから千葉駅まで2000円掛かる。千里はこのアパートってやはり不便だよなあと思い始めていた。
 
これに対して最初から合宿所まで自分の車で行くと、合宿所までのガソリン代は500円くらいなので、貧乏性の千里としては、どうしても車を使う選択になってしまう。千葉駅まで車で行く手もあるが(スクーターでは荷物が多すぎて無理)、駅近くは駐車場代が恐ろしい。合宿所なら(選手は)無料で何日でも駐めておける。
 
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U20の合宿は6月22-29日のロシア遠征以来である。フル代表候補を兼ねている千里と玲央美、ユニバ代表候補の星乃・雪子・留実子、などは、引っ切りなしに合宿をやっているイメージなのだが、兼ねてない人にとっては、1ヶ月半ぶりの合宿となり、普段の自分のチームを離れてハイレベルな練習をするのは良い刺激になる。
 
そういう訳でこの3日間は主として連係プレイを確認しながら、各々の調整をした感じであった。
 

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千里がU20の合宿をしていた時期、札幌では国体の北海道地区予選が行われた。この予選は2007年から4年連続、札幌選抜(P高校主体)と旭川選抜(N高校主体)の決勝戦になった。2007,2009年には札幌が勝っているが、2008年には旭川が勝っている。それで札幌側もかなり心して掛かったのだが、旭川は先日のインターハイで決勝に進出できなかった悔しさをそのままぶつけてきて物凄くハイテンションだった。その勢いに札幌側がたじたじとする場面が多々出る。札幌側は渡辺純子がひとり気迫で対抗していたものの、最後は旭川・湧見絵津子の逆転ゴールで旭川選抜が勝った。
 
旭川選抜は2年ぶりの国体出場である。
 
そして札幌P高校は2年連続高校三冠の夢を打ち砕かれた。
 
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試合後、渡辺純子がほんとうに悔しそうにしていて、高田コーチはまたまた彼女が頭を丸坊主にしたりしないよう気をつけておかねばならなかった。
 

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8月14日。夜遅くに合宿が終わった千里は合宿の荷物は《たいちゃん》に預けてアパートに持ち帰って洗濯!してもらうことにし、自らはインプレッサの“後部座席”に横になると、《こうちゃん》に『大阪までよろしく〜』と言って眠ってしまった。
 
《こうちゃん》はぶつぶつ文句を言いながらも、千里に擬態して運転席に座り車を出す。しかし《こうちゃん》は本人は否定するものの女の子の格好をするのが結構楽しいようである。女子トイレに入るのが楽しみ、などと危ないことも言っている。おっぱいは無いし、男性器官も付いているので女湯には入れない。もうちょっと若い内なら女になっても良かったかもと言ったこともある。彼は今からメスの龍になっても子供を産める年齢ではないらしい。つまり子供を産めるのなら性転換しても良かったのかも!?
 
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車はそのまま板橋本町から首都高に乗り、美女木JCTで外環道に入って、大泉JCTから関越道に入る。関越をひたすら走って長岡JCTで北陸道へ。そして北陸道をひたすら西進して米原JCTで名神に入る。朝9時頃、桂川PAに入って車を駐め、千里を起こした。
 
「おーい。桂川(かつらがわ)だよ」
 
(京都の桂川は「かつらがわ」と読み、福岡の桂川は「けいせん」と読む)
 
千里は大きく伸びをして起きて、交替で運転してくれた《こうちゃん》と《きーちゃん》に「ありがとね」と笑顔で御礼を言って、トイレに行く。顔を洗って、その後車に戻ってから、取り敢えずメイクをした。
 
その後、千里が自分で運転して名神を走り、吹田ICから大阪中央環状線に移って千里(せんり)ICを降り、GSに寄って満タンにしてから、月極駐車場にインプを駐める。
 
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最初の頃は時間借りの駐車場を使っていたのだが、毎回数千円の駐車料金を払うのと、時間借りの駐車場で何日も駐めておける駐車場が少ないので、使用頻度は低いものの、月極駐車場を『細川千里』の名前で契約してしまったのである。
 
貴司のマンションに向かう。時計を見るともう10時近い。
 
合宿所を出たのが22時頃で、このルートなら普通なら6時か7時くらいに大阪に着くのだが、お盆で混んでいたので普段より3時間くらいよけいに掛かった。実は東名を通れば渋滞するのが目に見えていたので、わざわざ北陸道を経由したのである。
 
『だけど千里、熟睡していたのに、貴人と交替で運転したこと分かっていたんだな』
と《こうちゃん》が言った。この往路では途中4時間ほど《きーちゃん》が運転していた。
 
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『いつも交替で運転してくれているし、5時間以上の連続運転はするなと私はいつも言っているし』
『まあ俺は72時間くらいは連続運転しても平気だけどな』
『できるかも知れないけど、連続運転はどうしても注意力が落ちるから、しないでね。今回は山谷PAと徳光PAで交替したんでしょ?』
 
『・・・・・』
『どうしたの?』
『千里起きてたの?』
『寝てたけど、そのくらいは分かったよ』
 
《こうちゃん》が悩んでいたが、《りくちゃん》がトントンと肩を叩いていた。千里はどうしたんだろう?と思った。
 
千里が「分かった」のは「交替した時」に気付いていたのではなく、今《こうちゃん》と話していて、彼の心理を無意識に読んでしまったので、「今」分かったのだが、その辺りの微妙なことは《たいちゃん》くらいしか認識していない。
 
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駐車場を出てから近くのコンビニに寄って朝御飯にサンドイッチ2つ、肉まん2つと甘い紅茶を2本買う。それでマンション入口まで行き、エントランスを開けるのに自分が持っている鍵を出そうとしたら、ばったりと貴司が緋那と一緒に出てくる所に遭遇する。
 
「ぎゃっ」
と貴司はマジで言った。
 
「おはよう、緋那さん」
と千里は笑顔で緋那に声を掛けた。緋那の方が顔がこわばっている。
 
「昨夜は貴司の所に泊まったの?」
とあくまでにこやかに笑顔で訊く。
 
「いや、泊まってない。さっき貴司を誘いに来た所」
と緋那は答える。
 
貴司の表情を見ても、本当のようだ。
 
「じゃ、朝御飯買ってきたから緋那さんにあげるね。貴司はこれから私と一緒にホテルのモーニング食べに行くから」
と千里は言った。
 
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緋那は10秒くらい千里の顔を見つめていたが、
「分かった。またね」
と言って、千里が差し出したコンビニの袋2つ(暖かいのと冷たいのを分けて入れてもらっている)を受け取ると、そのまま千里中央駅の方に歩いて行った。
 
「『またね』じゃなくて『永遠にさよなら』でいいんだけど」
と千里は呟く。後ろで《こうちゃん》が指を折っているが『彼女に危害を加えるのは禁止』と釘を刺しておく。
 
「さて、貴司、モーニング食べに行こ、貴司のおごりで。それともお部屋に帰って、おしおきしてからにする?」
 
「いや、モーニング食べてから、デートしない?」
「うん。そうしようか」
と千里は笑顔で言って貴司と腕を組むと、近くのNホテルに一緒に歩いて行った。
 
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「じゃ、おしおきは後でね」
「おしおきって何するの?」
「そうだなあ。やはり浮気のおしおきと言ったら、おちんちん切断の刑かな」
「勘弁してよぉ」
 
「緋那さんとキスした回数切断する。3回キスしてたら3回切るけど」
「どうやって3回も切るのさ?」
「切断して縫合して切断して縫合して切断して最後は廃棄」
 
「なんか地獄の責め苦って感じだ。でも天に誓って、僕は緋那とはキスしてない」
「おちんちんが惜しくて私に嘘つくの?」
「嘘はついてない。緋那とキスしたのは去年の6月が最後だよ。あれ以来、手も握ってないよ」
「ふーん。よほどおちんちんが惜しいのね」
 

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千里はこの日と翌日ずっと貴司と一緒に過ごし、日中は近くの体育館でバスケの練習をして汗を流した。バスケの練習をするのは2人にとって最高のデートなのである。
 
「じゃ国体予選頑張ってね」
と千里は言った。来週21-22日に国体の近畿ブロック予選が行われる。貴司は大阪代表チームのメンバーとしてその大会に臨む。
 
「うん。でも千里は国体とかは出ないの?」
「今年は忙しすぎて無理。それにそもそも今年は千葉県で開催されるから、千葉は《優勝請負人》さんたちのスペシャルチームなんだよ。だから選手選抜が行われない」
「ああ・・・例の地元が必ず優勝しなきゃいけないってやつか」
「なんか物凄く無意味なことしている気がする」
「同感」
 
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それで、16日の夜にまたインプを運転して(もらって)千葉に戻った。
 
「おしおき」に関しては、おちんちんを切断する代わりと称して、あの付近の毛を全部剃ってしまった。ついでに足の毛も剃ってあげたら、何だか自分の足に見とれているようである。
 
「せっかく毛を剃ったし、スカートとか穿いて外出してみる?」
「スカートなんて穿いてて人に見られたら恥ずかしいからパス」
「ふーん。人に見られなかったらスカート穿きたいんだ?」
「別に穿きたくない!」
「怪しいなあ。今度貴司のウェストに合うスカート買ってきてあげるね」
 

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8月17日(火)。桃香に見立ててもらって振袖を買うことにしていたので、渋谷駅で待ち合わせし、一緒に坂を登ってあの呉服屋さんに行った。今日は千里はキュロットを穿いてきたので
 
「おお。可愛い。可愛い。今度、それで学校に出ておいでよ」
と桃香は言っていた。
 
そういえば大学にキュロットとかスカートとかで行ってないよなあ、と千里は思った。入学式にレディススーツで参加して以来である。
 
このお店では着付けした状態のシミュレーション写真を見られるということでまず千里の写真を撮る。ぐるっと回転してみせて、その動画も撮る。
 
その後、様々な振袖をそのシミュレーター上で着せてみるのだが、これが本当に雰囲気が出ていて、わかりやすかった。そのシミュレーションソフトを桃香が自在に操って候補を絞り込んでいくので、お店の人が
 
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「このソフト、ご存知ですか?」
と訊いていたが、桃香は
「このソフトは初めてだけど、類推が効きますよ」
と言っていた。
 
千里は「さっぱり分からない!」と思った。やはり桃香に付いてきてもらって正解だったなと思った。
 
千里は作曲作業に使うCubaseなどは教えてもらって色々操作しているものの、実はふだん自分が使っている機能以外はさっぱり分からない。使ったことのないメニューがたくさんあるし、実はドラムスエディタの開き方が未だによく分かってなくて、毎回あれこれ試行錯誤している内に開かれて「やった!」と思ったりしている。
 
結局、セット価格62万8千円の赤系統「友禅風」の作品を選び、代金はその場で自分の携帯から振り込みを掛けた。振袖を即金で買ったおかげで、練習用の街着を1枚、サービス品としてもらってしまった。
 
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千里はお店を出てから
 
「やはり着付け教室に通った方がいいのかなあ」
と独り言でもいうかのように呟いたのだが、桃香は千里の性別問題を心配する。
 
「着付け教室では女性がみんな下着になって着付けの練習するから、その中に男の子の千里が混じっていたらまずいよ。男性用の着付け教室もあるけど、男性用の着物の着方覚えても仕方ないよね?」
と桃香。
 
うーん。男性用の着付け教室からは私は追い出されるだろうなと思う。
 
話している内に、桃香の母が普通の和服なら着付けできるから、うちの母に習わないか?と桃香は言った。それでその提案に乗ることにし、9月下旬の連休に桃香の実家の高岡に行くことにした。
 
その時期は世界選手権の選手にもし選ばれていたら、フランスに行っているのだが、千里はこの予定が入ってきたということは多分自分は選ばれないのだろうという気がした(万一選ばれた場合は桃香に謝るつもりだった)。
 
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「でもその、うちの実家に来る時にさ」
と桃香が言う。
「うん」
「千里、スカート穿いておいでよ」
「え〜〜〜!?」
 
「だって女の子の和服着るんだよ。スカートくらい人前で穿けなきゃだめだよ。スカート持ってるよね?」
 
「持ってる」
「じゃ頑張ってみよう」
 
「そうだね。スカートにしようかな」
と千里は答えた。
 
やはり、秋以降は私、完全女装生活かなあ。
 

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8月21-22日、国体の近畿ブロック予選が行われた。貴司たちの大阪選抜は奈良には勝ったものの兵庫に敗れ、決勝進出はならなかった。
 
貴司たちは昨年も和歌山に勝ったものの兵庫に敗れて決勝に進めなかった。貴司が一昨年国体本戦に行けたのは、2008年は成年男子が47都道府県から参加する方式(全県大会)だったからである。
 
全県大会になる区分は毎年変わる。
 
少年男子 2007 2010 2014
少年女子 2006 2011 2015
成年男子 2008 2012 2016
成年女子 2009 2013 2017
 
(2006,2007はまるで逆のようにも思えるが、実際にこの区分で実施されている。なぜここの順序が逆なのかは不明)
 

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娘たちの予定変更(14)

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