広告:まりあ†ほりっく 第6巻 [DVD]
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■娘たちの予定変更(16)

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夜の飛行機で新千歳から仙台に移動して、28日は仙台で泊まった。千里も玲央美も、また江美子も王子も出番が終わってしまったので、自主的にかなりハードな練習をしていた。広川さんがそれを見て「君たちほんとに元気だね」と言って4人の練習を見ていた。
 
この日の試合(16:00開始)はどうもニュージーランドチームは軽く流している雰囲気があった。昨日とは雰囲気がまるで違うのである。そんな中で2,3ピリオドに出してもらった中丸華香が、物凄い気迫でニュージーランド選手を押しのけてリバウンドを取りまくっていたのが印象的だった。
 
「中丸君、凄いね」
 
と千里たちの近くの席に座っていた富永代表が言っていたので、かなり良い印象を持ったかなと千里は思った。彼女が成長してくれると、この後のU20アジア選手権も楽になる。
 
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この日の試合は69-99で日本が勝った。
 

29日は仙台で泊まり、30日の朝から新幹線で山形に移動した。
 
この日は記者会見を行い、田原監督と、三木エレン・羽良口英子・武藤博美・白井真梨の4人が会見に臨んだ。また羽良口さんは地元のラジオ局の番組にも出演した。彼女は山形県の出身で、U20代表・鶴田早苗の中学の先輩でもある。
 
この日の練習は明日に響かないように軽めのものだったが、千里・玲央美・彰恵・江美子・亜津子・王子・華香といった面々は、もう出番が終わったのでかなりヘビーな練習をおこなった。
 
それで千里たちがさすがにかなり疲れたなと思っていた夕方18時、唐突に夜明コーチが「紅白戦やるぞ」と言う。
 
「え〜〜!?」と思わず亜津子が叫んだ。彼女はさっきまで「さすがに練習のやりすぎ。もうシャワー浴びて寝る」と言っていたのである。
 
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チーム分けは明日の出場選手対それ以外である。つまりこうなる。
 
Aチーム
PG.羽良口 武藤 SG.三木 川越 SF.広川 佐伯 早船 山西 PF.横山 宮本 寺中 月野 C.白井 馬田 黒江
Bチーム
PG.富美山 福石 SG.花園 村山 SF.佐藤 千石 前田 PF.高梁 鞠原 花山 簑島 C.石川 中丸
 
「あっちゃんが疲れてるならずっと休んでていいよ。私が全ピリオド出る」
と千里が言う。
「いや、2,4に出してくれ」
と亜津子。
「OKOK。じゃ私が1,3ね」
 
それで亜津子は最初の10分間、ベンチの後ろで横になって寝て体力を回復させていた。
 
試合は落選濃厚なメンバーの多いBチームがかなり頑張った。それで結局82-84でBチームが勝ってしまった。千里が8本、亜津子が7本、更に玲央美まで4本のスリーを放り込んでいるし、182cmの華香は195cmの白井、190cmの馬田の2人に負けずにリバウンドを取っていた。彼女は勘が良いので、ボールが落ちてくる所に最初から居る。それで身長の差を埋めてしまうのである。
 
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その華香のプレイに田原監督が思わず「ヒュー!」と声をあげたりする場面もあった。ただ田原監督は全体的にはほぼ無言で試合を見ていた。一方夜明コーチは盛んに選手たちに発破を掛けていた。
 
そして試合終了後、田原監督が言った。
 
「勘違いしている人もあるかも知れないが、最終12人のロースターは明日の試合が終わってから決める。現時点では誰も当選確定していないし、誰も落選確定していない」
 
特に広川・横山・馬田といった面々が厳しい顔をしていた。3人はその後、武藤さんを誘って4人で夜遅くまで練習したようである。
 
ちなみに亜津子は試合終了後ホテルに直行して、結局シャワーも浴びずに熟睡したらしい。
 

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8月31日。「代表候補」の活動最後の日。明日には「代表」12名が発表され、その後は本戦まで、その12名での活動になる。
 
なお世界選手権に参加するために必要なビザは、現時点での代表候補28名全員分が取得されていて、誰が選ばれても入国に支障は出ないようになっている。
 
19:00。試合が始まる。最終戦のスターターは羽良口/三木/広川/横山/白井である。おそらくは世界選手権でもこの5人が基本的なスターターになるはずだ。
 
この日は昨日あまり気を抜きすぎたと反省したのか、ニュージーランドは割とマジだった。しかし日本も昨日の紅白戦で負けたことから、広川・武藤などの中核選手が物凄く頑張った。お互い気合いが入っているので、かなり激しいぶつかり合いも起きるが、今日の審判は意図的でない衝突はファウルを取らない方針のようである。
 
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そしてその事故は起こるべくして起きたのかも知れない。
 
第3ピリオドの開始から4分ほど経った頃、黒江さんがゴール下で相手選手と激しいボールの取り合いをして、結局は向こうにボールを取られ、シュートされて得点を奪われた。
 
それで川越さんがスローインして、武藤さんがドリブルで攻めあがっていく。選手はみんなフロントコートに行ったのだが、ひとり黒江さんだけが倒れたままゴール下に留まっている。
 
審判が笛を吹いてゲームを停めた。
 
田原監督とトレーナーの田中さんが飛び出して黒江さんの所に行く。
 
「どうした?」
「すみません。ただの打ち身です」
 
田中さんが黒江さんの足に触っている。
 
「これ骨折している可能性があります」
「何!?」
 
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医師が呼ばれていく。
「うん。これ骨折している気がする」
と言って、添え木を当てて包帯で足をぐるぐる巻きにした。そして担架で運び出される。
 
試合は黒江さんの代わりに馬田さんを入れて続行された。
 

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コート外に居た千里たちが寄っていく。
「どうですか?」
「病院に運んだ方がいいです」
と医師が言う。
 
「すぐに連れて行こう」
と富永代表が言い、結局、山形のバスケ協会の人と、代表チーム事務の赤井さんが付いて病院に運ばれていった。
 
「無理しすぎたのかなあ」
と玲央美が呟くように言う。
 
「黒江さんはいちばん微妙な立場だったからなあ」
と亜津子も言う。
 
「アピールしようと必死だったんだろうね」
と江美子が言う。
 
彼女は29歳である。代表選手としては今がピークの時期。2年後のロンドン五輪では31歳になるので、今回に賭けていたであろう。昨年までの段階ではロースター当確だったのが、帰化選手の白井さんの加入で、難しい立場になってしまった。
 
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今回代表の監督を務めている田原さんは昨年日本代表の監督に就任するまでは黒江さんが所属するレッドインパルスの監督をしていた。黒江さんは田原さんにとっては愛弟子であるが、代表監督としては立場上ドライな決断をしなければならない。
 

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この後、試合は、ニュージーランド側の猛攻に日本が耐える展開が続いたが、第4ピリオドも半ばになって、チーム最年長の三木さん(35歳)が、自ら志願してコートに出ると、体格の良いニュージーランド選手を華麗なフットワークで翻弄しては3連続スリーを叩き込むなど、底力を見せる。
 
千里も亜津子もそのエレンのプレイを熱い目で見ていた。
 
エレンの活躍に刺激されて広川や横山、そして馬田も頑張り、最終的には81-86で日本が勝った。
 
しかしエレンは試合終了後座り込んでしまい、しばらく立てないようであった。主将としての責任感から、自分の体力限界を超えた力の使い方をしてしまったのであろう。
 
試合終了後の公開インタビューも、エレンは「エイちゃん、あんたやって」と言って羽良口さんに譲り、先に控室に帰らせてもらっていた。その羽良口さんは山形弁で観客に挨拶して、大いに観客は沸いていた。
 
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病院に行った赤井さんから連絡が入り、黒江さんはやはり骨折しているということだった。ただ骨はズレてないので、多分2〜3ヶ月で復帰できるだろうということらしいが、彼女はこれで今回の世界選手権の代表は無理だし、Wリーグでも年内の復帰は絶望的である。
 
田原さんと富永さんは、黒江さんの所属チームレッドインパルスの小坂代表に電話して黒江さんを怪我させてしまったことを謝っていた。
 

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一方、千里たちは22時頃、ホテルに戻った。
 
シャワーを浴びた後で数人で誘い合って結局亜津子の部屋に、千里・玲央美・江美子・彰恵の4人が集まって、0時すぎまでおやつを食べながらおしゃべりした。おやつが足りなくなるので途中2回もコンビニまで買い出しに出た。
 
「いいかげんもう寝ようか」
 
などという話が出ていた午前1時頃、玲央美の携帯に電話が入る。田原監督からである。千里や亜津子も一緒だというと、その3人で富永代表の部屋まで来てくれないかという。
 
「何だろう?」
「こんな夜中に呼び出されるってのは、その3人にフル代表に入ってくれという話では?」
と彰恵が言うが
 
「あっちゃんは入ると思うけど、私や千里が入るとは思えない」
と玲央美は言った。
 
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「性転換して男子代表になってとか」
と江美子。
「私はそれでもいい」
と玲央美。
「私は性転換なんて絶対嫌」
と千里。
 
「まあそうだろうな。せっかく性転換して女になれたのに」
 
 
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