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■黄金の流星(22)

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「お帰り。何してたの?シュナクさんたちに変なこと言ってないよね?」
とミレイユ(アクア)が心配する。
 
ゼフィラン(アクア)は
「もう怒った!」
と言う。
 
(このシーン、「アクアだらけだ!」という声多数:ここで実際にはゼフィランを演じたのがMで、アルケイディアとミレイユはFが掛け持ち演技)
 
「ちょっと待って。何する気?」
とミレイユが焦って訊く。
 
「あの隕石を海に叩き込む」
 
「え〜〜〜!?」
とミレイユは声を挙げる。
 
「待って。考え直して」
 
「だって我慢ならないよ。ぼくの隕石なのに毎日たくさん人が来て勝手にぼくの土地に入ってくるし、あの隕石を巡って戦争が起きて大勢の人が死ぬかも知れないというし。あの隕石は人々の不和と争いを生み出している。結婚式を挙げようとしていたカップルまで引き裂いているし」
 
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ミレイユは彼の言葉の最後のほうは理解不能である。
 
「だから海の底に叩き込んでやる」
「待って。お願いだから少し考え直して」
とミレイユはゼフィランを何とか停めようとしたが、突然「ハッ」とした。
 
ミレイユを演じるアクアの突然何かを思い付いたような表情。
 
(この映画の成否を握る、ひらめきの表情)
 

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ミレイユの心の声「私、思い付いちゃった!物凄いこと思い付いちゃった!!」
 
ミレイユはゼフィランに言った。
 
「ねぇ。ゼフ、もう停めない。隕石を海に落としてもいいけど、5日、せめて4日くらい待ってくれない?」
 
「機械の改造するのに3日は掛かると思う」
 
「じゃ操作は9月3日くらいまで待ってもらえる?」
「うん。どっちみちそのくらいになると思う」
 
ミレイユは小屋を出ると東岸に停泊しているアトランティスに向けて手を振る。アルジャンに乗って、アールヌーボー風のドレスを着てお化粧もしたセシルが迎えに来る。彼の服装は気にせずに一緒にアトランティスに戻る。ミレイユはダカール(松田理史)に重大な指令を出した。ここは音声は聞こえないものの、ダカールの顔が青ざめているのが分かる。
 
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そしてミレイユはその場で、副頭取への手紙を書いた。乱数表を渡す。
「これで変換してから電信を送って」
「分かりました」
 
「じゃお願いね」
と言って、ミレイユ(アクア)はダカール(松田理史)にキスした。
 
(また観客の悲鳴)
 
語り手の元原マミが3秒だけ登場して
「フランスではキスは日本の握手程度の挨拶です」
と言った。
 
(宇菜やMからは「仕事にかこつけてたくさんキスしてる」と言われる)
 

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語り手「アルジャンに多数の食料・水、ポンプ用の燃料油を積み、ミレイユ、セシルに作業班のメンバー数人が乗って島に渡ります。燃料油は「どうせここで使うから」ということで、ポンプ近くの岩陰に置き、食料や水は“マイア”に置きました。ミレイユ以外は船に帰ります。セシルたちが戻ったらアトランティスは発進しました。つまり、アルジャンも持って行きました。島に残るのは、ゼフィラン、ミレイユ、セルジュの3人です」
 
「そしてアトランティスはバフィン湾に出ると夜間に出せる限界の速度で南下しました。これが 8月30日の18時 GMT頃でした。この日は月齢4です。月は沈んだまま9月9日くらいまでは出て来ません。どうしても先日の南下の時ほどは速度が出せませんが、太陽が沈むのは夜中の0時近くですし、その後日が昇るまで7-8時間ずっと薄明の状態は継続します」
 
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バフィン湾を南下するアトランティスの船内で、1等航海士のシャルル(坂口芳治)と女性航海士の制服を着た3等航海士のセシル(津島啓太)が難しいパズルに挑戦していた。
 
「照合してみよう」
と言って、2人は数字とアルファベットが並んだ意味不明のものを照らし合わせている。
 
「ここが違う」
「再計算してみよう」
「あ、ぼくのが間違っていた」
 
「乱数表を使った暗号って難しい」
「でもオーナーの銀行の運命が掛かってるから」
「うん。頑張ろう」
 
語り手「彼らは銀行の社員ではなく、ミレイユに直接雇用されている立場です。しかしそれだけに、ミレイユへの忠誠心も高いのです」
 

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語り手「アトランティスは可能な限りの速度で航行し、グリニッジ時刻で9月2日朝6時にニューファンドランド島のセントジョンズに到着しました。現地時間で同日午前2時半です。そして航海中に作成した暗号電文をダカール船長(松田理史)が、電信局に持ち込み、ルクール銀行副頭取当てに打電しました」
 
「ダカールは3倍の料金を払い、電信局の技師に同じ電文を3度送信してもらいました。意味不明の数字・アルファベットの羅列なので、送信ミスがないようにするためです」
 

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豪華な調度の部屋。
 
語り手「副頭取(稲本亨)は長い長い電信文を予め用意していた乱数表を元に平文に変換していきました。大変な作業ですが、絶対に他人には頼めない作業です。電文は3つあり、ほぼ同じなのですが、何ヶ所か異なる部分もあります。そういう箇所は3つの電文の多数決で文字を決めて行きました。作業は1時間ほど掛かりましたが、内容に彼は青ざめます」
 
「本当だろうか」
と彼は猜疑心を持つ。
 
「いやしかし、合い言葉の『白鳥はゆっくり泳ぐ』(Le cygne nage lentement) も入っている。これは確かにミレイユ様の言葉だ」
 
背景に常滑舞音が詠う『白鳥』が流れる。サンサーンスの『白鳥』にオリジナル歌詞を載せたものである。白鳥のコスプレをしてバレエのアラベスクのポーズをする舞音の姿も映る。
 
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「私はロベール様(ミレイユの父)に助けてもらった恩義がある。ロベール様があの時私をかばってくれなかったら、今の私は居ない。たとえこのことで私の責任が問われても私はミレイユ様と一緒に逝こう」
 
そう呟くと彼は腹をくくって証券部長を呼び出した。
 

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語り手「それからルクール銀行は。全世界の株式市場で金鉱株をひたすら買いまくりました」
 
「黄金でできた隕石が地上に落下したことは全世界に知れ渡っているので、今や誰も金鉱株を買う人は居ません、金鉱自体操業を停止していて、金鉱の経営者、社員、坑内労働者たちも将来に不安を持っていました」
 
「金鉱株は、どこの国の株式市場でも価格は最低価格になっています。むしろ売り注文は出ているものの、書い手が居ないので取引が成立しないままになっています。そこにルクール銀行は大量の買い注文を入れました」
 
「次々と金鉱株の取引が最低価格で成立して行きます。日本市場でいえば、以前は100円、つまり現代の100万円くらいしていたものが1厘、現代の10円くらいで買える状態でした」
 
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「それでルクール銀行は、多数の金鉱で、発行株式のほとんどを買い占める結果になりました。むろん1株1株の値段は安くても、これだけ大量買いをすると、その投入資金は凄まじいものです。まさに社運を賭けた大取引でした」
 
「9月2日水曜日にルクール銀行が金鉱株の大量買いを始めたたことは、多くの証券マンや投資家に波紋を呼びました。大半の投資家は単なる“釣り”ではないかと思いました。自分で値段を吊り上げておいて売り抜けるのはよくある手法です」
 
「しかし何かあるかも知れないと思った投資家たちも多くありました。ルクール銀行は先日隕石が落下した時も、その情報をいち早く掴んでいた形跡がありました」
 
「彼らは取引時間のずれているアメリカ市場で、更には9月3日木曜日に取引時間の早い日本市場やオーストラリア市場で、自分たちも金鉱株を買います」
 
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「それで金鉱株は世界的にかなり高騰しました。しかし、その時点でルクール銀行は世界中の金鉱の半分ほどの株を買い占め大量の金鉱を支配できる大株主になっていたのです」
 

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語り手「ウペルニヴィクでは、作業班がアトランティスに引き上げてしまったので、無人になった“マイア”にセルジュが行き、見物人たちの案内人をしてあげていました」
 
映像では、振袖!を着た女性(演:撮影者の矢本かえで)に、セルジュ(七浜宇菜)が案内をしてあげている所が映る。
 
語り手「“マイア”は“エレクトラ”ほど熱くないのはいいのですが、うるさくて眠れない!のが問題点でした」
 
「周囲がかなりの高温という中に建つ“エレクトラ”では、ゼフィランがひたすら機械の改造作業し、ミレイユはひたすら寝ていました。かなりの防熱処理をしているとはいえ基本が熱いのでどうしても居るだけで体力を消耗してしまいます」
 
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「マイアのほうに行ってればいいのに」
「いや、ここであんたを監視する。それに向こうはうるさくて安眠できない」
「それはあるよね」
 
語り手「イギリス軍の分隊長が言ったように、隕石落下の報せを聞いて、イギリスやアイスランド、フランス、カナダ、アメリカ東海岸などから“豪華さ”は劣るものの、速力のある船に乗って観光客がやってきました」
 
「小さなウペルニヴィクの港には9月2日までに、元から居た観光船12隻、グリーンランド軍のものを含めて軍艦20隻、そして新たに来た観光船8隻が加わり、40隻もの船がひしめきあっていました」
 
「グリーンランド政府は運搬船を何隻も持って来て、これらの船に水・石炭・食料などの補給をしてあげていました。石炭や食料は、デンマークも運搬船を派遣してくれていたので助かりました。グリーンランドの首相もこちらに来て、シュナク大臣と話し合い、多数の国相手にどう対処していくか協議していました」
 
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「そして9月3日朝までに来た観光船の客は、隕石を見ることができたのです。すっかり案内人と化したセルジュは大忙しでした。トイレには長蛇の列ができていました」
 

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字幕:9月3日15時(GMT)、現地時間の正午。
 
「完成した」
とゼフィランは言った。
 
「行ける?」
 
ゼフィランは、まるでそこに大聴衆がいるかのように語り始めた。
 
「これまでぼくは天体を引っ張ってきたんだけど、今度は押さなければならない。だから元の回路のこの信号線とこの信号線をクロスさせた」
 
「ぼくの機械は、別に不可思議なものでも魔法でもない。これは単なる変換器なんだよ。金属でできた物体が持っている電気的な性質を感知して、それにより強い振動を与えてやる。このバルブを回せば発動して、この隕石が宇宙空間にあった時も特定方向に移動する力を作用させていた」
 
「波動はここに入れている結晶、ぼくはジルダリウム(Xirdalium) と名付けたんだけど、これの作用でコヒーレントになり、このパラボナアンテナでその力の作用する向きを決め、またパワーを集中させる。ぼくはこれに螺旋中性電流という名前を付けてるんだけどね。その名の通り、この機械の作用はまるで回転するスクリューのような力の作用を及ぼす」
 
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「そしてその回転する円筒形の空間の中は真空になる、ミル、真空って分かるかい?ぼくらが普通に空のコップを持っていても、実はそのコップの中には見えないけど物質が存在する」
 
「でもこのスクリューが回転している時、そこは本当に何もない真空になるんだよ。すると通常地球に囚われている強烈なエネルギーが波となって流れ込んで来るんだ。だからぼくがすることは、物体を押さえているものを解放することなんだよ」
 
ミレイユの心の声「さっぱり分からん!!」
 

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しかしゼフィランは気持ち良さそうに、ミレイユを相手にこの機械の原理と作用を語っていた。
 
「この場所は天体の中心から500m48cmだ。ここからこのパワーで働きかければ隕石は動くはずだ」
 
「でもその前にアルミの断熱シートを取り外さなきゃ」
「セルジュを呼んでくる」
 
それでミレイユがセルジュを呼んできて、3人で防護服を着て小屋内部の断熱シート、防熱壁の断熱シートを外した。
 
「断熱シート外すと結構暑い」
「でもここに移転してきた時ほどの暑さじゃないね」
「だいぶ隕石も冷えてきている」
「たぶん今800℃くらいだと思う。融点より下になって隕石は固体になってる。だからこの機械で操作できる」
 

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ゼフィランはセルジュに手伝ってもらい、小屋の外で隕石の正確な方向を方位磁針と水準器で再測定した。3人で小屋の中に入る。小屋の壁は木なので、電波を通す。ゼフィランは今測定した方角に機械のパラボナアンテナを正確に向けた、
 
「じゃ行くよ」
 
と言ってゼフィランはスイッチを入れた。
 

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