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■黄金の流星(1)

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(C) Eriko Kawaguchi 2023-12-16

 
"黄金の流星LaChasse au météore / The Chase of the Golden Meteor / Die Jagd nach dem Meteor"(*1) というタイトルが表示され、飛行服?を着た常滑舞音が歌う主題歌『君の心は流星』(水野歌絵作詞・琴沢幸穂作曲)が始まる。オープニングでは配役は
 
starring AQUA
 
co-starring Una Nanahama
 
とだけ表示して、以下のようなシーンが流れる。
 
・黄金の流星が夜空を飛んでいるシーン
・天文台のような所でネルネルのチャンネルが夜空を観察しているシーン
・別の天文台のような所でネルネルのケンネルが夜空を観察しているシーン
・恋人(鈴本信彦・ビンゴアキ)が語り合っているシーン
・後ろ向きの人物が何か機械の工作をしているシーン
・昔の証券取引所の立ち会いシーン。多数の人物が手を挙げ指のサインで取引をしている。
 
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(*1) 原題は meteor あるいは bolide と言及するが、一般に meteor (流星)とは、天体が地球の大気圏に突入して炎を出し(*2)光っている状態、つまり天体の終焉の状態を表す。bolide (火球)とはその中でも特に大きな炎を出しているもので、基本的には光度マイナス4等星以上の明るさのものを言う。陸地に落ちた場合は隕石を残すことも多い。特に大きなものは隕石孔(クレーター)を残す。この問題については後述する。
 
この物語で meteor と呼ばれているものは実際には地球の引力に捉えられた小惑星(NEO - Near Earth Object) と考えられ、物語内でも言及されているが、流星というより地球の衛星である。流星となるのは最終段階になってからである。このあたりの用語は混乱している。今回の翻案では、基本的には“天体”と呼ぶことにする。
 
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(*2) 流星は大気との摩擦熱で燃えていると思っている人が多いがそうではない。あれは、天体が物凄い速度で大気中を移動するので、前方の空気が超圧縮されて高温になり(ボイルシャルルの法則)、プラズマ化して発光しているのである。ただし本体も高温になることで本体の成分も一部または全部燃える。
 

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語り手の元原マミが振袖姿で登場する。
 
「時は1908年、日本では明治41年です。日本が国際社会で注目されるようになってきた頃で、この物語でも日本について3度言及されます。ロシアはロシア革命前夜、まだ帝政ロシアの時代です」
 

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「この物語前半の主要な舞台となるのはアメリカ・バージニア州、ポトマック川のそばにあるワストン(Whaston)(*3) という町です。ここに2人のアマチュア天文学者が住んでいました」
 
よれたフロックコート(*4) 姿の人物が映る。
 
「この人物はディーン・フォーサイスさん(演:ケンネル)です。独身ですが、亡くなった姉夫婦の子、フランシス・ゴードン(演:鈴本信彦)と一緒に暮らしています。家には使用人のトム・ワイフ(演:スキ也)(*5) とミッツ(演:内野音子)がいます。トムは主としてフォーサイス氏の助手をしており、ミッツは家事をしています」
 
映像には、古い洋式のビジネススーツを着た鈴本信彦、ワイシャツとズボンというラフな格好のスキ也、メイド衣裳の内野音子が次々と登場する。
 
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場面が切り替わってフロックコートをきちんと着た人物が映る。
 
「この人物はフォーサイス氏の長年の友人でありライバルでもあるシドニー・ハデルスン医師(演:チャンネル)です。医師の資格は持っていても実際には病院を開業しておらず、ひたすら天体観測に情熱を注いでいました。こちらはその奧さんのフローラ(演:万田由香里)さん、そしてこちらは2人の娘、ジェニーとルー(演:ビンゴアキ・古屋あらた)です」
 
映像には、ミューシャの絵の中から出て来たようなアールヌーボーのドレスを着た万田由香里、そしてもっとカジュアルなデイドレスを着たビンゴアキと古屋あらたが映る。
 
そして最後に、コンパニオン(*6) のドリー(演:花咲ロンド)を伴ったアールヌーボー風ドレス着たジェニー(ビンゴアキ)が、ビジネススーツを着たフランシス・ゴードン(鈴本信彦)と楽しそうに語り合っている場面が映り、語り手の元原マミはこう言って話を締めた。
 
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「フォーサイス氏の甥フランシスと、ハデルスン医師の娘ジェニーは恋仲にあり、近い内に結婚式の日取りを決めようということになっていました」
 

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(*3) ワストン(Whaston) という町は存在しない。ポトマック川のほとりと書いてあるので、これはワシントンD.C. (Washington D.C.) を意識して作られた単語と思われる。
 
(*4) この当時は、フロックコートからスーツへの移行期と思われる。スーツは19世紀後半に、くつろぎ着として生まれ、1920年代にアメリカでジャズの流行とともに普及した。1908年はまだスーツの流行前だが、アメリカでなら、カジュアルな服装としてはあり得ると考え、今回の翻案ではフランシスにスーツを着せた。
 
(*5) 原作ではトム・ワイフ(Tom Wife) は身長が4 ft 6 in と記載されており、メートル法に換算すると 137cm である。そのため小人(こびと)という意味でオミクロンと呼ばれている。当時はこのような軽蔑的な呼称も容認されたかも知れないが、現代では許されないものである。それで今回の翻案では彼のことは本名のトムで呼ぶ。
 
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(*6) コンパニオンというのは“お友達役”。だいたい近世以降20世紀前半頃まで、上流家庭の女性には、コンパニオンと呼ばれる女性が付き添う習慣があった。幼い頃は家庭教師が付いて勉強を教え、一通りの勉強を終えて家庭教師の手を離れたらコンパニオンが付く。
 
コンパニオンは使用人ではなく“ゲスト”である。だから雑用などはしない。それはメイドの仕事である。コンパニオンの仕事は、その女性とおしゃべりをしたり、ゲームをしたり、一緒に出掛けたりすることである。それなりの教養があり礼儀作法もできてないと務まらない。少なくとも20世紀前半頃までの社会的価値観では、未婚の女性がコンパニオンも伴わずに男性と会うことは、ふしだらなこととみなされた。つまりデートにも付きそう。むろん昔は結婚するまではセックスしない!
 
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コンパニオンとして雇われる女性は本人と同程度あるいは少し下の階級の家の女性で、年齢としても同程度または少し上の、話が通じやすい世代の女性である。
 
『アルプスの少女』のハイジはクララのコンパニオンのようなものであるが、ハイジはクララより4つ年下である。ハイジは使用人ではないので、セバスチャンはハイジを「お嬢様(フロイライン)」と呼ぶ。
 

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字幕:1908年3月12日(木).
 
赤煉瓦の2階建ての建物(*8) が映る。秩序良く整えられた庭のあるテラスに白いテーブルと椅子が置かれている。上品なフロックコートを着てそこに座っているのは、ジョン・プロス判事 (John Proth juge 演:大林亮平) である。メイドのケイト (Kate 演:薬王みなみ) (*7) が入って来てコーヒーを出す。
 
「旦那様、どうぞ」
「ありがとう」
 
「しかし昨日の審判にはびつくりしました」
「ああ。女の子になっちゃった男の子の件ね」
「性別って変わっちゃうこともあるんですね」
「たまにあるみたいだよ」
「私も突然男になったりしないかなあ」
「君、男になりたい?」
「だって男って得じゃないですか。女はいつも損ばかりしてます」
「そうかなあ」
「私がもしある日、男になっちゃったら、判事様、私の性別を男と認定して下さいね」
「医師の診察を受けてもらって、医師が男だと判定したらね」
「なるほどー」
「医師でもない者が提訴人を裸にして観察したら問題だよ」
「それは嫌です。でも私、判事様になら裸を見せてもいいですよ」
 
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プロスは今の発言は聞かなかったことにして付け加えた。
「ドミニカに行くと、女から男になる人が大量に居て、性別が変わるのはごく普通の出来事らしいよ」
「嘘!?私、ドミニカに生まれたかったかも」
 

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「でも今日は天気がいいね。何かいいことがあるといいね」
「空から大量の金貨が落ちてくるとか?」
「君はロマンが無いね」
「何が落ちてきたらロマンがあるのでしょうか」
「そうだねぉ。木の葉が落ちてくるとか、鳥がさえずるとか」
「鳥が飛んできたら捕まえて焼き鳥にしますか?」
「君は本当にロマンが無いねぇ」
 

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「でも旦那様、もし金貨が空から降ってきたらそれは私のものにしていいのでしょうか」
とケイト(薬王みなみ)はプロス判事(大林亮平)に尋ねる。
 
「それはできないよ。金貨には所有者があったはずだから、ちゃんとその所有者に返さなきゃ」
「つまんない」
「でもきっと所有者は拾ってくれた人に謝礼をくれるよ」
「ああ。だったらちゃんと返してもいいかな」
「返さなかったら横領罪だね」
「きゃー、罪になるんですか」
「当然」
 
「だって君が何か物を落として、それを拾った人が勝手に自分の物にしようとしたら怒るだろ?」
「それは怒りますよ。『泥棒!』って叫びます」
「その逆の立場で考えてみればいいね」
「そっかー」
 
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「でも飛んでる鳥なら獲って食べてもいいですよね」
「鳥は誰の物でもないからね」
 
「じゃ誰の物でもない金貨があったら拾った人のものですか」
「そんな金貨があるとは思えないけど」
「誰が埋めたか不明の埋蔵金とか」
「その場合は、所有者を探す公告を出して誰も名乗り出なかった、あるいはそれが自分のものであると証明できなかったら、君のものになる。無主物先取だよ。ただし、誰か他人の土地で見付けた場合は、土地の所有者と折半」
 
「半分でもいいなぁ」
「まあそんな埋蔵金なんてまず無いけどね」
 
「でも今日はたくさん法律の勉強をしました!」
 

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(*7) ケイトは原作では“長年仕えた”(savoir davantage) と書かれていて、中年以上の女性と思われる。若い人に演じさせたのは制作上の都合による。
 
フォーサイス家のメイド・ミッツ(内野音子)、また後に出てくるゼフィランが住むアパルトマンの掃除人チボー(立花紀子)にしても同様の事情。
 
男女問わず、中年・老年の俳優さんは安いギャラでは使えない。
 
演技力のある俳優さんであればちょっと顔を出すだけでも相当のギャラを払う必要がある。またそういう人はプライドがあるからチョイ役は嫌がる。更に、若い監督の言うことを聞いてくれない。といってギャラの安い俳優さんは、概して演技力に問題があり、お芝居を台無しにしてしまいかねない。
 
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大曽根さんが大嫌いなのが、名前や顔だけで演技力の無い俳優である。
 
となると設定を変更して、若くて演技力があり監督の指示に従順で、あまり高くないギャラで使える人を使ったほうがいい。
 
今回ノーギャラで友情出捐してくれた藤原中臣(1950生)さんみたいな人は例外的存在。気さくな性格で若い人たちとも対等の立場で仲良くするし、若い頃苦労しているだけあり、監督の指示を忠実に守ってくれる。役者という立場をわきまえているので余計な意見を言わない。彼の存在のおかげで、暴走しがちなネルネルの2人が抑え気味に演技してくれた。
 
なおフォーサイス家のメイドに内野音子(うちのねこ)を起用したのは、彼女がフォーサイスを演じるケンネルの愛弟子だからである。大物コメディアンのケンネルを叱り飛ばす演技なんて、ほとんどの役者さんが尻込みする。ケンネルと内野音子の信頼関係があればこれを問題無く演じられる(でもさすがにお互い疲れたらしい)。
 
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(*8) 今回の映画は2022年1月に長時間ドラマとして企画され、鳥山プロデューサーと川崎ゆりこが強力に推進し、それに大和映像が乗ってきて、更にモンド・ブルーメ社を通して世界的に配信されることになった。そして世界配信されることになったことで、一部キャストが変更された。この件の詳細は後述する。
 
つまり当初は2時間ドラマの予定だったのが、映画ということになった。予算も当初の100倍!に膨れ上がった。撮影はアクア主演で制作準備が進められていた別の映画の制作直前、3月におこなう予定だったが、こちらも映画になったことで4月上旬までずれ込んだ。つまり次の映画の制作開始が遅れた。結果的に多くの出演者・スタッフが2本続けて映画制作に参加することになった。
 
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この映画のために本格的なセットが作られることになり、春日部の屋内スタジオに2月中にセットが組まれた。ただし本気で作られたのは、フォーサイス邸、ハデルスン邸、プロス判事公邸、グリーンランドの小屋、アトランティス号の5つだけで、他の建物は表面だけのハリボテである。モジーク号はガレオン船のセットに手を加えて蒸気船っぽく見せた。気球のシーンは熊谷で本物の気球を飛ばして撮影した。フォードN型は本物を持っているコレクターさんから“1台”お借りした。
 
判事公邸などを建築したのは播磨工務店だが、20世紀初頭に生きていた人(?)たちばかりなので、当時風の建物や室内の調度を正確に再現し、モンド・ブルーメ社のジールマン社長をうならせた。国際会議の様子は都内の音楽ホールで撮影した。
 
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しかしほとんどのシーンを屋内スタジオで撮影したのでリアルの天候に左右されずに、多忙な出演者たちを使って予定通りの撮影が遂行できた。
 

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キュロットスカート(*9) を穿き、栗毛の馬(セブンドリーム号)に乗った七浜宇菜が登場する。
 
彼女は馬に乗って何度も通りを行き来し、少しイライラした様子であった。
 
やがて彼女はプロス判事の家の呼び鈴を鳴らした。
 
「はい」
と言って、ケイトが出てくる。
 
「どなたかセシー・スタンフォートのことで尋ねて来なかったでしょうか」
「いえ、いらっしゃってませんが」
「そうですか。失礼しました」
 
それで馬に乗った人物はまた通りを行ったり来たりし始める。やがて教会が10時の鐘を鳴らす、しかし待ち人は来ない。彼女は呟いた。
 
「10時7分までは待とう」
 
彼女は金の懐中時計を見ていたが、やがて首を振るとがっかりしたような様子で引き上げようとしていた。
 
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そこに白い馬(ホワイトスノー号)に乗ったアクアが登場する。
 
「お待たせ」
とアクア。
 
「もう帰ろうと思ってた」
と宇菜。
 
「帰る?」
「いいえ。あなたと結婚する」
「じゃ一緒に判事さんのところに行こう」
 
(このシーンはアクアと宇菜が本当に馬に乗って撮影している。2人とも元々乗馬ができる)
 

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黄金の流星(1)

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