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■黄金の流星(20)

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そんなことを話していたら外で何やら多数の人の声がする。
 
「なんだろう?」
とゼフィランは小さな声で言うと、小屋のドアを開けて外に出てみる。すると何十人もの人が勝手にフェンスを越えて土地内に侵入し、わいわい騒いでいるのを見る。ゼフィランは思わず言った。
 
「君たち、何してるんだ?ここは私の私有地だぞ」
 
するとこちらに歩いて来ていた群衆はいったん停まる。そして集団の後ろの方に居た、フロックコートの男性が先頭に出て来て言った。
 
「こんにちは、この土地の所有者さんですか?私はこの国の資源大臣でエヴァルト・デ・シュナクと申します」
 
「ゼフィラン・ジルダルです。しかし一体何の騒ぎです?私有地に付き立入禁止という表示が見えませんでしたか?」
 
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「確かにそれは見たのですが、緊急事態ですので、入らせて頂きました」
と言いながらも、少し後ろめたい。自分や兵士は、いいとして見物人の侵入までは説明できない。
 

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「緊急事態ってどんな?」
「ワストン大隕石が落ちたので」
「それは知ってます。でも隕石落下は別に緊急事態でもないですよ」
「それが金(きん)でできていても?」
「金(きん)だろうと何だろうと、ただの隕石です」
 
「しかし私は職務を果たさなければなりません」
「どういう職務です?」
「この隕石はグリーンランドの国土に落ちたので、政府の管理下に置き、保護する必要があります」
 
「それはおかしい。この隕石はグリーンランドの国有地に落ちたのではなく、私の私有地に落ちたのです。それを国が勝手に管理下に置くいわれはないはずです」
 
「しかし・・・天体は誰の物でもないので」
「いえ。私のものです。私が実際に天体を動かして自分の土地に落ちるようにしました。このことは、天体の所有権に関する国際会議にもお伝えしていたのですけどね」
「そうですか?私はその会議に出席していましたが、そんな話は聞いていませんが」
 
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語り手「ゼフィランは会議の議長宛に打った電報のことを言っているのですが、シュナクは、その時、他の出席者と話していたので、この電報のことを認識していません」(*100)
 

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(*100) 原作はシュナクが耳が遠かったためにこの件を聞き漏らしたとあるが、ここで潮力の弱いことを理由にするのは妥当ではないと考え、別の理由にした。だいたい議長の声が聞こえないのなら、会議に出席していても意味が無い。
 

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「あなた、まさか何億もの金(きん)を独占するつもりですか?」
「億だろうと兆だろうと京だろうと関係無いと思いますが。私の土地にあるものは私のものです」
「だって人類が持っている金(きん)の何百倍もの金(きん)なんですよ。そんな状態にあなたが耐えられる訳が無い」
 
語り手「シュナク自身も他国を無視してグリーンランドが独占しようとしていることを棚に上げています。そして、実際、グリーンランドが独占できないものであることをシュナクは数日後に思い知ることになります」
 
語り手「ゼフィラン・ジルダルとシュナク大臣の議論は平行線を辿りますが、シュナクは、取り敢えず所有権問題は棚上げにして、隕石を見せて欲しいと申し入れます。しかしゼフィランがそれに答える前に群衆は動き出してしまいました」
 
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群衆はほぼゼフィランを無視して隕石に近づこうとする。
 
ゼフィランはその群衆を憮然として見ていた。
 
しかし彼らは、小屋のある付近から少し先でみんな停まってしまう。熱くてそれ以上近寄れないのである。フォーサイスとハデルスンが、かなり無理して近づこうとしたが、フランシスとジェニーに引き戻されることになる。
 
「さすがにこれはもう少し冷えるまではどうにもならん」
とシュナクも諦めざるを得なかった。
 
フランシスは隕石を見て呟いた。
「あと少しずれて海に落ちれば良かったのに」
 
アルケイディアがセスに訊く。
「あれって何時間かしたら冷えると思う?」
セスは答えた。
「時(じ)じゃなくて日(にち)の問題だろうね。40-50日掛かる気がする」
 
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「じゃ冷えて政府が運び出す所までは見られないか」
「それまで居たら、バフィン湾が凍って春まで帰れなくなるね」
 
(↑誰もゼフィランのものになるとは思っていない!)
 

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語り手「名残惜しそうに遠くから隕石を見ている人たちはいましたが、ここにずっといると食事もできないので、いったん戻ることにします。それで全員、港まで戻り、フリゲート艦に乗り込んでナヴィク島に戻りました。シュナクは兵士たちに命じて、ウペルニヴィクの東岸の道で崖崩れしている所に橋を架けるよう言いました。これはその日の内に実行されました」
 
語り手「また、ここに来ている他国の何人かの政治家がシュナク大臣に、隕石が地上に落下したことを世界に報せるべきだと申し入れました。それで話し合った結果、来ている客船の中で最も小さなアンドロメダ号の乗客に一時的に他の船に移ってもらい、アンドロメダ号が世界に向けて電信を打つため、ニューファンドランド島まで行くことになりました」
 
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「乗客たちは夕方までに移動。グリーンランド時間の20時(= 8/21 23:00 GMT 月齢24) にアンドロメダ号は出発しました。そして同船は90時間ほどの航海を経て8月25日(月齢28)の夕方、ニューファンドランド島のセントジョンズに到着します。そして南北アメリカとヨーロッパ各地、日本や中国、オーストラリアなどにも打電をしました。これで翌26日の全世界の市場で金鉱株は大暴落します。実際問題として買う人が居ないので、気配値(けはいね)だけで、多くの取引が成立しませんでした。ルクール銀行はここで先に空売りしていた株を買い戻して莫大な利益を確定させました」
 
「アトランティス号が隕石地上落下をルクール銀行副頭取に報せたのは、アンドロメダが全世界に打電する5日も前の8/20 16:00頃でした。この差は、両者の速力差もありましたし、アンドロメダの航行は月齢が24-27日で月自体は1日中出ているものの月が細くなって月明かりは弱くなるのもあります」
 
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「また大きな船は夜間無理ができませんでした。アトランティスのような小さな船は小回りが利き、回避能力も高くなります。またここに来ている多くの船が蒸気船(SS) だったのに対して、アトランティスは最新鋭のタービン船で、エンジンの停止や反転が比較的高速にできるのもありました」
 
「しかし何よりもミレイユたちは落下してすぐに天体望遠鏡を使った観察で隕石が確かに地上に落ちたことを確認できたのが決定的な差になりました」
 

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語り手「翌8月22日から、観光船は全てウペルニヴィク南東の港沖合に移動しました。そして道が細いので、観光船同士で話し合い、交替で客を上陸させ、隕石見物に行かせました。しかしみんな隕石が熱いため、一定距離よりは近寄れず、誰も隕石のそばまで行くことはできませんでした」
 
(でも彼らはわざわざグリーンランドまで来た価値が充分あったと思う)
 
人々が我先を争うように島の道を歩いて金の隕石を見に行く映像。
 
群衆を演じたのは北海道の複数のテレビ局の社員さんたちである。“暑い場所”という設定なので、軽装をさせることができ、20世紀初頭の服装でなく、男性はワイシャツにズボン、女性もブラウスにズボンという服装で済んだ。
 
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ショートヘアーの女性にはロングのウィッグをつけてもらった。さすがに20世紀初頭にショートヘアーはあり得ない。女性比率が少ないので、男性でも希望者はロングのウィッグを付けてブラウスを着て下さいと言ったら、自薦・他薦!で20人ほどの男性が女性の服装をしてくれた。バストパッドも入れ、ついでに眉毛を細くカットして、口紅まで塗っていた!なんか楽しそうにしていた!
 
彼らはお弁当をもらっただけでギャラはもらえなかったらしい!!テレビ局はあまり予算が無いようだ。でもアクア・宇菜と一緒に記念写真に写り喜んでいた!
 

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この映像のバックに常滑舞音 with スイスイが歌う『愛しのクレメンタイン』が流れる。ただし歌詞が少し変更されている。
 
通常の歌詞:
In a cavern, in a canyon, excavating for a mine,
Dwelt a miner, forty-niner, and his daughter Clementine.
 
Oh my darling, oh my darling, oh my darling, Clementine.
You are lost and gone forever, dreadful sorry, Clementine.
 
(大意)
洞窟の中に、谷間の奥に、鉱脈を探して
住み込んでる鉱山掘りの49年者、そして彼の娘のクレメンタイン
愛しの、愛しの、愛しのクレメンタイン
君は亡くなって永遠に居なくなった。なんて可哀想なクレメンタイン。
 
最後は全然可哀想でないように明るく歌うのが流儀である!
 
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歌詞の中でforty-ninerとはアメリカンフットボールのチーム名にもなっているが、1849年のゴールドラッシュで西部にやってきた人たちのことてある。
 
この映画では、歌詞をこのように変えている。
In a cavern, in a canyon, excavating for a mine,
Dwelt a miner, nineteen eighter, and his pretty toy Golden ball.
 
Oh my darling, oh my darling, oh my darling, Golden ball.
You are fallen and never go sky, dreadful sorry, Golden ball.
 
"nineteen eighter"は1908年者、ということで1908年にこの島にやってきて我先にと金の隕石へと殺到する人たちを歌っている。舞音が“Dwelt a miner”と歌う所で、ゼフィランとミレイユの映像が流れている。最後の行は「君は落ちてしまって2度と天には行けない。なんて可哀想な金の玉」。
 
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語り手「自治大臣は警備兵50人の内48人をウペルニヴィクに移動させ、ゼフィランの土地入口の所に3分の1ずつ交替で立たせました。見物客が多いので、不測の事態に備えるためです。また南東の港近くに3日がかりで営舎を建設し、見張りに立つ時以外はそこで休憩させました」
 
「人数が多いので隕石を見に行く順番は2日に1度くらいしか回ってきません。フォーサイスとハデルスンは順番が回ってくる度に見に行きました」
 
「毎日朝から晩まで大量の見物客が“自分の土地”に勝手に侵入して黄金の隕石を見て行くので、ゼフィランは極めて不機嫌な顔をしていてミレイユにグチを言っていました。でもミレイユは『見るくらいいいじゃん。あんたも博物館にして見学させようかとか言ってたじゃん』と言って笑っていました。むろんミレイユは、こうなることを充分想像していました」
 
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セス・スタンフォート(七浜宇菜)はモジーク号のチーフパーサーに尋ねてみた。
「うちの妹が、偶然にも別の船でこちらに来てるんですよ。もしこの船に空きがあったら、1室確保できませんか?できたら1等船室で」
 
「1等は満室だったんですが、実はこの船に乗ってきたグリーンランドのシュナク大臣は帰りの便にはお乗りにならないので、その分1等船室が1部屋空いているんですよ」
とチーフパーサー(演:河村貞治監督!)。
 
「その部屋をお願いします」
「ミスター・スタンフォートのお部屋とは離れていますが、よろしいですか?」
「問題ありません」
 
それでアルケイディア(アクア)がオレゴンから、こちらに移動して来るのが映った。
 
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アルケイディアは乗船者名簿には“アルケイディア・スタンフォート”と署名し、住所もセスの自宅住所をスラスラと書いた。
 

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語り手「ミレイユたちのアトランティス号は8月23日に戻って来て、島の北東岸に停泊しました。セシルは船に戻りましたが、作業員たちはまだマイアに置いておきました。彼らも狭い船室より外の小屋の方が気楽だったようです。またミレイユは、何かの場合の護衛としても考えていました」
 

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ゼフィランは叫んだ。
「うるさーい!!!」
 
それは8月26日の夜中だった。
 
「確かにうるさいね」
とミレイユ。
 
「昼も夜も無く見物客が来ますからね」
とセルジュ。
 
「私たち、ガイドさんと思われてるよね」
「なんか隕石についてあれこれ訊かれるし」
「トイレ貸してという客が多いからとうとうトイレ小屋まで建ててあげたし」
「まあ、その辺でやられると迷惑だし」
「女性客はさすがに、その辺ではできないし」
「私たちも親切ですよね」
などと、ミレイユとセルジュは会話している。
 
なお見物客用のトイレ小屋は、セフィランたちの小屋の西側に建てている。トイレは住居の風下に置かないと臭くてたまらない。
 
「うるさくて眠れない」
とゼフィラン。
 
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「それでイライラしてるのね」
「ぼくが怒ってるのはそんな問題じゃない」
 

セルジュが言った。
「この小屋をもっと隕石の近くに移動したらどうでしょう?見物客が来られないほどの熱さの所に」
「それって私たちまで熱くない?」
「この小屋なら何とかなる気がします。断熱構造だし」
「相談してみよう」
 
それでミレイユが作業班のリーダー(新田金鯱)と話し合う。
 
「ゼフ。今の段階で何mの所まで近寄れる?」
とミレイユは尋ねた。
 
「待って」
 
ゼフィランはセシルを船から呼んで、2人で一緒に銀色の防護服を着て温度計を持ち、隕石に近づける所まで近づいた。三角法により距離を測る。
 
小屋に戻る。
 
「熱かったぁ」
「どうだった?」
「観光客は1kmくらいの所までしか近づいてないみたいだけど、ぼくたちは防護服を着ていたから650mまで近づけた。明日の昼くらいまで待てば、防護服を着ていたら500mまでいけると思う」
 
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「でしたら明日の朝くらいに移築しましょう。この土地の時間で3時から6時、私たちの時計で6時から9時くらいってわりと見物客が少ないから、その時間帯を使いましょう」
と作業班リーダーは言った。
 
「じゃよろしく」
 
 
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黄金の流星(20)

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