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■黄金の流星(15)

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島の映像が流れながら、解説が入る。
 
語り手「グリーンランドは寒い国ではありますが、観光船が停泊したナヴィク島はグリーンランド語で“春の島”という意味で、別名“女の島”とも言います。バフィン湾に面しているため、比較的暖かい島です。冬季も零下20度くらいまでしか気温は下がらず、7月から8月の間は気温はプラス7-8度まで上昇し、氷も解けてナヴィク・フィヨルドの内側まで船で行くこともできます。12月から6月まではフィヨルド内は氷で覆われてしまうので、犬ぞりでしか移動できません。目的のウペルニヴィクはこのフィヨルドの奥にあります」
 
「人口数百人の小さな町なので、押し寄せて来た4000-5000人の見物客を泊めたり食事を提供するキャパはありません。それで見物客たちはみな船の上で過ごし、船の上で食事を取りました」
 
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「シュナク資源大臣はここで首都から駆けつけて来た首相(演:健康バッド)と会うことができました。首相はシュナクの帰国を追認し、天体落下を見届けて欲しいと要請しました。首相は警備兵50人(*85)を連れてきていましたし、大量の食料や石炭・水に加え、多数の衣類も持って来てくれていました」
 
「実は見物客の中には防寒着を持っていない客、信じがたいことにドレスなどを着ている女性客も結構いたため、グリーンランド政府が用意した衣類がこれらの来客に配られました。食料・石炭・水は有償で提供しましたが、これらの衣類はグリーンランド政府から客たちにプレゼントされました。首相は観光船の多さに驚いたようで、まだ持って来させると言って、首都に戻りました」
 
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(*85) 警備兵に扮したのは信濃町ガールズ関東のメンバーたちである。健康管理されているので、使いやすい。ほとんどが女子だが、警備兵の制服を着ていると性別が分からない。ついでに顔もほとんど分からない!
 

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語り手「モジーク号が到着して5日半後の8月16日朝、ここに集まった船の中では最後の船となった蒸気船オレゴン (Oregon) 号が到着しました。船には51個の星が並ぶアメリカ合衆国の旗が立っていて、アメリカから来た船であることが分かります」
 
↓51星旗想像図

 
「船から大きな荷物を持った1人の男性が水夫の漕ぐ小型ボートで上陸しました。彼はすぐにナヴィクの町役場に向かいました」
 
映像は、ボートから男性(演:計山卓)が降りてくる所を映す。彼は通り掛かりの人にデンマーク語で尋ねて町役場に行く。そこに町長(演:高牧雅秋:友情出捐)とシュナク大臣(揚浜フラフラ)が居る。
 
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「グダー(こんにちは)。ボストン天文台から参りました」
「あなたがJ.B.K.ローウェンサルさんですか!?」
「いえ。私は使い走りの研究員でワーフ(Wharf)と申します。天体落下の様子を見てくるよう天文台長に言われて、やって参りました」
「お疲れ様です」
 
彼が持って来た大きな荷物は天体望遠鏡だった。
 
※高牧雅秋は今井葉月の伯父(父の兄)で黒部座の社長(座長)。
 

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セス・スタンフォート(七浜宇菜)が上陸して散歩していたら、最後に到着したオレゴン号から乗客が20-30名、ボートに乗って降りてくるようだった。何気なくその様子を見ていた時、彼はひとりの人物に気がついた。
 
手を振ると向こうも笑顔で手を振った。
 
ボートが接岸し、乗客が降りてくる。
 
「アルカ!」
「セス!」
と言ってふたりは駆け寄り、お互いに手袋を外して握手した。でもすぐ手袋を填めた。ここは素手でいるのは寒すぎる。
 
(舞台が現代の映画ならキスしてる)
 
「少し散歩しよう」
「うん」
 

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「セスはいつ着いたの?」
「モジークという船に乗ってきたんだけど、一番乗りだったみたい。到着したのは、8月10日」
「早いね!」
「アルカどうしてるんだろう?見に来ないのかなあと思ってたけど会えて良かった」
「私も嬉しい」
 
2人はしばらくナヴィクの町を歩く。。
 
「家はみんな赤く塗ってる」
「白い雪の中では赤い家が目立っていいのかもね」
「材料が煉瓦じゃないみたいね」
「この付近の家は木で作るらしいよ」
「煉瓦でおうちを作るお金が無いの?」
「木の家の方が煉瓦より暖かいらしい」
「そうだったのか!国土も広いし、あまり開発の手が入ってないだろうから森はたくさんあるのかなあ」
「寒すぎて木が育たないみたいね」
「そっかー」
「北緯70度くらいが森林限界だから。グリーンランドの南端付近には少しだけ森がある。でも大半はノルウェーとかから輸入しているみたい」
 
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「セスは白い防寒着を着てるのね」
「白い国に行くなら白い服がいいかなと思って」
「私も思った!でも完全な白だと雪の中で倒れてても見付けてもらえないかもと思って薄いグレーにした」
「なるほどー」
 
「でもここはグリーンランドじゃなくてホワイトランドと改名すべきよ」
「あはは。でもそれだと名前聞いただけど凍えそうだよ」
 

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「ところで・・・」
とセスは聞きたくてたまらなかったことを訊いた。
 
「うん?」
「アルカ、今も女?」
 
防寒服を着ていると性別がよく分からない。
 
アルカが無言で自分の市民登録証を見せる。アルケイディア・ウォーカー Sex:F と書かれている。
 
「良かった。女の子のままなんだね。僕は男になったよ」
「へー」
それでセスが自分の市民登録証を見せると、セス・スタンフォート、Sex:M と書かれている。
 
「だから結婚できるよ」
とセスが言うと
 
「それは考えておく」
とアルカは答えた。
 

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「でも、私、男になっちゃった」
とアルカ(アクア)は言う。
 
「嘘!?」
とセス(七浜宇菜)は驚く。
 
「5月18日にワストン西駅でセスを見送ってからさ。いったんワストン東駅からニューヨークに行って、アルゼンチン行きの船を待ってる最中に、ボストン天文台が、まだ天体は落ちるかどうかも不明と発表したニュースを聞いて」
 
「ぼくはそれサンフランシスコまで行ってから聞いた」
「お疲れ様」
「そうだ。お土産の、忍者の手裏剣」
と言って、セスはバッグの中から手裏剣を出してアルケイディアに渡した。
 
「日本まで行ったの!?」
「行ってない。これはサンフランシスコの中華街で買った」
「へー。中華街か」
と言いながら、アルケイディアは手裏剣を弄んでいる。
 
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「アルカは結局、乗る前に旅行中止?」
「そそ。それで代わりにドミニカ共和国(*86)行きの船に乗って」
「へー」
 
「しばらくのんびりと過ごしている内にある朝起きたら男の身体になってて」
「うーん・・・」
 

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(*86) イスパニョーラ島(ハイチ島)の西半分がハイチで東半分がドミニカ共和国である。
 
ドミニカ共和国の語源は旧名のサントドミンゴ(聖ドミンゴ)から来ている。この名前は現在も首都の名前として残る。一方“もうひとつのドミニカ”、グアドループとマルティニークの間にあるドミニカ国はコロンブスが日曜日(スペイン語でdomingo)に、この島に来たのでドミニカと呼んだのが残っているものである。つまり両者の語源は全く異なる。ドミニカ国の本来の名前はワイツクブリである。将来的にはその名前に戻るかも知れない。
 
日本ではドミニカ共和国のほうが有名で、単にドミニカというとそちらを指すが、アメリカ界隈で単に“ドミニカ”というとむしろドミニカ国を指し、サントドミンゴのほうは必ず“ドミニカ共和国”と呼ぶ。
 
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女の子が12歳くらいになると男の子に変わってしまう現象(グエベドーセ)が多発しているのはドミニカ共和国の西部にあるラス・サリナスの町である。
 

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「思うに、私もセスも、元々性別が不安定なんじゃないかなあ。青いキノコとか赤い卵とか食べたのは単なるきっかけに過ぎない気がする」
「そうかもね」
 
「その時は、きゃー、またちんちんできちゃった。やだなあと思って、取り敢えず男の服に着替えなきゃ、また市民登録証の性別も変更しなきゃと思って帰国したのよね。それでトレントン(ニュージャージー州)にいったん戻ったんだけど、帰国途中いろいろ考えている内に、別に身体が男でも、自分が女として生きたいのなら、女として暮らせばいいんじゃないかという気がして」
 
セスは腕を組んで考えている。
 
「だから私、ずっと女の服を着ていることにした。法的な性別も、もう女のまま変更しない。ずっと身体が男のままでも構わない。私は女として生きる」
 
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「それでいいと思う」
とセスは即答した。
 
「ぼくもこのままずっと男として生きようかな。もしまた女に変わってしまっても」
「いいと思うよ」
とアルケイディアも言う。
 
「だからさ、セス、もし私が男の身体でもよかったら・・・」
とアルケイディアは言いかけたが、その時セスに声を掛ける人があった。
 
「スタンフォートさん、船に戻るボートが出ますよ」
「あ、はい」
とセスは返事をした。
 
(この声だけで顔が映らなかった人物はカメラマンのひとり、田崎潤也)
 
「じゃ、話の続きはまた後で」
「うん。セスが乗ってる船、何と言ったっけ?ムスカ?」
「モジーク。じゃまた」
「また」
と言って、2人は握手して別れた。
 
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語り手「天体が落下するのは、ウペルニヴィク島から10km以内の範囲という予想なのですが、フィヨルドの奥で暗礁もある上に氷山も漂っており、大きな船が近づくのは危険とナヴィク町長から言われました。また島には漁船が着けられる程度の小さな港しかありませんし、人も住んでいません。更に天体が落下した時に、万一船に衝突したら大変危険ということで、みんな20kmほど離れたナヴィク島で待機していました」
 
「幾つかの船は現地の人の漁船に先導してもらって、ウペルニヴィク島を見に行きました。ただし、西岸と南岸を見ただけで帰ってきました。東側は氷山が多く、北側はナヴィク・フィヨルドの本流なので、どちらも危険という話でした」
 
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「ボストン天文台のワーフは現地で天体を観察し、既に高度180km付近まで降りてきていることを確認しました」(*87)
 
「9月16日と17日は天気が悪く、ブリザードが吹き荒れていました。どの船も客の上陸を禁止し、見物客たちは船の中で過ごしました」
 

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(*87) 原文では、高度がかなり低くなってきているのを確認したとだけある。しかしJ.B.K.ローウェンサルの7月15日の発表では天体の高度が50kmくらいまで下がっていると語っている。これはおかしい。人工衛星はだいたい高度150km程度以下になると、空気抵抗により失速し、衛星は墜落してしまう。流れ星が発光し始めるのがだいたい高度150kmの付近である。このあたりは、1900年頃の宇宙科学の水準では分からなかったろうが。
 
日本の試験衛星『つばめ』は2019年に高度167.4 kmの軌道を7日間維持して、低軌道衛星の世界記録としてギネスに認定されている。
 

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