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■黄金の流星(21)

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(C) Eriko Kawaguchi 2022-12-31
 
語り手「エレクトラを移転することになったので、作業班は準備作業として、27日の夜中0時、グリーンランド時間で26日21時から、エレクトラの解体作業を始めました」
 
「ゼフィラン、ミレイユ、セルジュは、その間マイアの方に移動していました。作業班は3時頃までに解体を終えますが、一方で数人のメンバーは海から移動目的地に至る長いホースを設置していました」
 
「このホースには海岸近くにエンジンで動かすポンプが取り付けてあり、海水を汲み上げて移動目的地付近に流します。これで目的地の気温を下げることができます」
 
「エレクトラの解体が終わると、作業班は銀色の防護服に身を包み、小屋の材料を目的地に移動します。そして4時頃から組み立てを始めました。彼らは長時間移転地に居ないように交替で作業します。30分くらい作業したらマイアの位置まで戻ってきて休憩するようにして進めました」
 
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「そして9時頃、現地時間の朝6時頃までに新しいエレクトラの建築を終えました。念のため、小屋の西側に防熱壁も設置しました」
 
エレクトラは↓の位置に移動された。

(小屋の左側にあるのが防熱壁)
 

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作業班が“マイア”に戻り、銀色の防護服を着けた、ゼフィラン・ミレイユ・セルジュの3人が“新・エレクトラ”に移動した。
 
小屋の中に入ってから防護服を脱ぐ。
 
「思ったほど熱くない」
「ここはアルミのカーテンが引いてあって断熱しているし。作業班のヴァンサンの発案で、ポンプで汲み上げた海水を屋根から流しているから、それで結構冷える」
 
「うまいね。ポンプとかあったんだね」
「船に浸水したような場合のために3機積んでた。その内の1つを使った」
「なるほどー」
「最初はタンクを設置してそこに水を入れておいて少しずつ流すというアイデアだった」
「それ水が無くなったら?」
「何時間かおきに補給する」
「大変そうだ」
「賭けに負けた人が水を汲んでくる」
「楽しそうだ」
「彼らにも娯楽が無くちゃね」
「1サンチーム(25円)を越える賭け金は禁止している」
 
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「トランプで負けた人が女装とかもやってたね」
「見ないようにしてた」
「確かに観賞には堪えない」
「ブリスの女装がいちばん気持ち悪かった」
「射殺したい気分だった」
 
「セシルはよく女装させられている」
「彼は可愛い。そのまま女の子にしてあげたいくらい」
「女の制服を渡しておいた」
「渡したんだ!」
 
「まそれで、結局トランプでいちばん負けていたヴァンサンが、ポンプを使う手を思いついた」
「切実だったんだ」
「いちばん女装させられていたし」
「その内、目覚めたりして」
 

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「でもさすがにここまでは観光客は来ませんね」
とセルジュが言う。
「おかげで安眠できる」
とミレイユ。
「ちょっと熱いけど、タヒチに来た気分で」
とセルジュ。
 
語り手「ゼフィランたちが、見物客が近寄れないような場所に移動したので、代わりにマイアに居る作業員たちが観光客にあれこれ尋ねられるようになりました」
 
画面は、リーダー(新田金鯱)が、アフタヌーンドレスを着た女性客(川崎ゆりこ!)に笑顔で色々教えてあげている図。
 

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語り手「隕石地上落下の報せを世界に打電してきたアンドロメダは8月29日の夕方戻ってきました。他の船に分乗していたアンドロメダの乗客は自分たちの部屋に戻ることができました」
 
語り手「しかし、アンドロメダが戻る前の8月28日朝、一隻の軍艦がウペルニヴィク南東の港に来航し、停泊しました。星条旗を掲げています。そして船からは准尉の肩章をつけた隊長に率いられた20名の兵士が上陸。島の東岸を通って隕石の見える所まで来ました。グリーンランド兵たちが緊張します」
 
グリーンランド側の小隊長(横川光照):少尉がアメリカの隊長に穏やかな笑顔で来意を問うと
 
「命令されたので来ただけで何かする予定はありません。単に警戒しろとだけ言われて来ました」
と准尉(Steven Brown)も笑顔で穏やかに答える。
 
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「ああ、警戒ですね」
 
しかしアメリカ軍の兵士を見てシュナク(揚浜フラフラ)は、とても不安そうな顔をしていた。
 

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語り手「アメリカ軍の数時間後には連合王国(通称イギリス)の軍艦が到着。その後、フランスの軍艦、ロシアの軍艦、日本の軍艦と続きます。日本から航海して来る時間は無かったはずなので、恐らく友好国イギリスに来ていた船がやってきたのでしょう。更にイタリア、ドイツ、アルゼンチン、スペイン、チリ、ポルトガル、オランダ、と続きます」
 
「シュナクが物凄く不安になっていた時、29日の夕方にグリーンランドの旧宗主国であるデンマークの軍艦がやってきたので、シュナクは少しだけホッとしました。結局30日のお昼頃までに唯一の味方と思われるデンマークも含めて16ヶ国の軍艦、300-400人の兵士がこの小さな島に集結したのです」
 

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語り手「シュナク大臣も大いに不安になっていましたが、ゼフィラン・ジルダルは激怒していました」
 
「あの軍隊は何なんだよ!ぼくの隕石なのに、なんでみんな勝手なことしてるんだよ!」
 
ミレイユがなだめます。
 
「ゼフィラン・ジルダル、君は理解しなければいけない」
 
語り手「こういう場面で相手のフルネームを呼ぶのは、厳しいことを言う場合です。例えば親が子供を叱る時、子供のフルネームを呼びます」
 
ミレイユは彼に言う。
 
「シュナクが言った通りなんだよ。こんな巨大な金塊を個人が独占することは許されない。下手すればこれの取り合いで戦争が起きて大勢の命が失われるかも知れない。この金塊に関しては、私に任せてくれない?私、フランス首相(*101) にも、アメリカ大統領にも顔が利くからさ。隕石を、恐らく組織されると思う国際委員会に寄贈して、私たちはその見返りに、いくばくかの謝礼をもらうという方向で話を付けてあげるから」
 
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語り手「実はミレイユは最初からそのつもりで、その交渉の下準備もしていたのです」
 
「なんで寄贈しないといけないんだよ!?ぼくの隕石なのに!」
とゼフィランは全く聞く耳を持たない。
 

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ミレイユの心の声「全くダダっ子だな。遊んでいたオモチャを取り上げられそうになってわめいている子供だよ。いや、ゼフにとって、あの隕石は楽しいおもちゃだったんだろうな」
 
「ゼフはあの隕石に6兆フランの価値があるというその6兆フランという“数字”は理解しているけど、その“意味”を全く理解してない。彼は『どうだ。この隕石、ぼくが捕まえたんだぞ。すごいだろ?』と自慢したいだけ。彼にとってはクワガタか蝶々を捕まえたのと同じ感覚なんだ」
 
ミレイユは“マイア”で待機している作業員たちの所に行き
「君たちは、アトランティスに引き上げなさい」
と指示した。血の気の多い彼らが万が一にも各国の兵士たちとトラブルを起こしたりしないようにするためである。
 
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(*101) 当時のフランスは普仏戦争(1870-1871) に敗れた後、パリコミューンなどを経て成立した第3共和政の下にあった。大統領は象徴的な国家元首で、実際の執政は首相が行っていた。
 

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ミレイユが“マイア”に行っている間にゼフィランは表に出て行った。そこではシュナクが連合王国(イギリス)の分隊長(演:William Seagull)とフランスの分隊長(演:Henri Lerond)と3人で立ち話をしていた。
 
「隕石落下の報せを聞いて、このあと更にここに見物に来る人たちもあるでしょうから、秩序維持は大変だと思います。連合王国はその秩序維持にご協力しますから、ご安心ください」
 
「わがフランスも秩序維持に協力します。この金塊がきちんと管理されるようになるまで、しっかり守りますから」
 
シュナクの心の声「まずい方向だな。これではこの金塊はみんなに奪われてしまう。へたすると、グリーンランドの取り分はほとんど無くなるぞ」
 
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そう思いながらもシュナクは笑顔で両分隊長と談話している。
 
(イギリスとフランスの隊長を演じているのは日本在住のイギリス人・フランス人の俳優さん。3人は普通に日本語で話した。英語版も3人が英語で台詞を入れた。揚浜フラフラは簡単な英語はできる)
 

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するとそこに突然、フロックコートを着た紳士が飛び出してきた。
 
「みなさん、ありがとうございます。しっかり守って頂けたら、私の権利も保証されるというものです」
 
「えっと、あなたどなたですか?」
とイギリス軍分隊長。
 
「私はこの隕石の発見者であり、正当な所有者であるディーン・フォーサイスです」
 
フォーサイスがそう言うと、そこに別のフロックコートを着た人物が飛び出してくる。
 
「何を馬鹿なこことを言っているんだ?この隕石は私が発見したものであり、私こそが正当な所有者だ」
 
「あんた誰?」
とフランスの分隊長。
 
「私はこの隕石の発見者であり所有者のシドニー・ハデルスンです」
 

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これまでの経緯を知らない、ふたりの分隊長は、なんか頭のおかしい人が2人居るなあと思って顔を見合わせていた。
 
ゼフィラン(アクア)もその2人を知らなかったので、近くにいた白いビジネススーツの男性に尋ねる。
「あの2人は何ですかね?」
 
「自分が先に天体を発見したと言い争っている、フォーサイス氏とハデルスン博士ですよ」
とセス・スタンフォート(七浜宇菜)は答えた。
 
「まさか自分が最初に見たから自分のものだと言ってるの?」
「そうなんですよ」
 
「そんな馬鹿な。見ただけで自分のものになる訳ないじゃん」
とゼフィラン(アクア)。
 
「ですよね〜」
とセス(宇菜)。
 

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そこに若い男女が飛び出してくる。
 
「叔父さん、やめてください。もうこの問題は叔父さんたちの手を離れたんです」
と言ってフランシスはフォーサイスの手を引いて戻そうとする。
 
「お父さん、やめて。もうこの後は、偉い人たちの話し合いに任せるしかないのよ」
と言って、ジェニーもハデルスンの手を引いて戻そうとする。
 
ゼフィランは訊いた。
「あの若い2人は?」
 
「あれはフォーサイス氏の甥のフランシスと、ハデルスンの娘のジェニーです。元々フォーサイス氏とハデルスン博士は仲が良かったし、あの2人もみんなに祝福されて結婚する予定になっていたんですよ。ところが天体を巡ってふたりが争い始めたから、可哀想に結婚式が挙げられない状態になってるんですよ」
 
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とアルケイディア(アクア!)は簡単に説明する。
 
「それは酷い。自分たちが喧嘩していても、子供の結婚くらい認めてあげなきゃ」
とゼフィラン。
 
「全くそうですよ。あの2人少しおかしくなってますよ」
とアルケイディア。
「いっそ、天体が無くなっちゃったら、争いをやめるかも知れないですけどね」
とセス(宇菜)は言った。
 
ゼフィランはその言葉を聞きながら、腕を組んでしばらく考えていた。彼の視野に展開している数百人の兵士たちが見える(*102).
 
「よし」
と声を出すと、彼は“エレクトラ”まで引き返した。
 
(*102) 前述のように兵士たちはCGである! グリーンランド兵だけが信濃町ガールズ。観光客もCGである!!
 
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