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■黄金の流星(8)

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語り手「世間では、フォーサイス・ハデルスン天体について、それが金(きん)で出来ているということが判明してから、物凄い話題になりましたが、一週間も経つと誰も話題にしなくなりました」
 
「確かに物凄い量の金(きん)が空の上にあるというのは凄いことではありますが、天文学者の計算では軌道は安定しているので、それが地上に落ちてきたりすることはないと思われました。結局のところ、これまで地球には“月”という衛星があったところに、もうひとつ小さな衛星が加わって、月が2つになっただけのことにすぎなかったのです」
 
(原文:La terre possedait un second satellite, voila tout. 地球は2つ目の衛星を持った。それだけのこと−“voila tout”は英語なら“That's all”)
 
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「天文学者たちでさえ、この天体の軌道要素が確定し、サイズや質量まで分かったら、それ以上調べることも無いので、興味は他の天体に移っていきました。ただ2人、ディーン・フォーサイス氏と、シドニー・ハデルスン博士を除いては!」
 
「周囲の熱狂が冷めてしまっても、その2人だけは天体が見える範囲の空を通過する度に、望遠鏡でその天体を観測し、記録を付けることを怠らなかったのです」
 

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5月11日(月).
 
いつものように“フォーサイス天体”を観測していたフォーサイスが顔面蒼白になり、まるで酔っ払いのようにふらふらとした足取りで書斎に入った。それから彼は書斎に閉じ籠もったまま、食事も取らずに何かの計算をしていた。彼が食事にも来ないので心配したフランシスが無理矢理ドアをこじ開けた。そして食事を差し出すが
 
「今は要らない」
とだけ応えて、ずっと計算をしている。
 
「今俺が欲しいのは集中できる静寂だけだ。頼む。邪魔しないでくれ」
と彼は言った。
 

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このような状態が丸2日続いた。
 
5月13日、フランシス(鈴本信彦)はハデルスン家を訪れ、フローラ夫人(万田由香里)と、2日後に迫った結婚式について話し合った。
 
フランシスが、伯父はこの2日間食事も採らずに何かしていると言うと、フローラも
「うちの夫も全く同じです。あなたの叔父さんもうちの夫も頭が変になっているとしか思えない」
と怒って言った。
 
「私がこの世の支配者(*47)だったら」
とルー(古屋あらた)は言った。
 
「支配者だったらどうするの?僕の可愛い妹さん」
「何をするかって?簡単なことよ。あの嫌らしい金の玉(*48)を遠くの遠くに飛ばして2度と地球に近寄らないようにしちゃう」
 
確かにあの天体が無くなれば2人は争いをやめるかも知れないとフランシスも思った。
 
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ともかくも結婚式については、ギリギリまで様子を見ることを、フランシスとフローラで決めた。
 

(*47) 原文は"maîtresse"(メトレス). これは"maître"(メートル)の女性形である。メートルと言っても距離の単位(metre)ではなく、レストランのメートル(Maître d'Hotel フロア責任者)と同じ。英語ならmaster に相当する語で一般的には主人とか支配者という意味。ここではこの世の支配者、つまり神を表す。その婉曲表現である。例によってこのセリフは宗教観の厳しい国のバージョンでは「私に超能力があったら」などと言った表現に改竄された。
 
どうでもいいが原文をChromeの自動翻訳で見ていたら「私がもし愛人だったら」と表示されたので、ぶっ飛んだ。確かにmaîtresse (英語なら mistress)には、妾(めかけ)という意味もある。
 
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(*48) 原文 affreuse boule d’or. affreuseは“醜い”とか“いやらしい”。bouleはボール、orは金。ということで、別に変な意味は無い!少なくともフランスでは未婚女子が言ってはいけないような表現では無い。古屋あらたは度胸があるので、このセリフを1発で言って監督に褒められた。
 
「私、金の玉・女を名乗ろうかな」
「やめなさい、お嫁さんに行けなくなる」
と、夕波もえこに停められた。
 

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5月14日(木).
 
ワストンの2つの新聞が次のような報道をした。
 
字幕:ワストン・スタンダードの記事。
 
朗読者3(織原青治)「フォーサイス天体の発見者であるディーン・フォーサイス氏によると、5月11日以来、天体に何か別の天体の摂動が作用しており、これまでの安定した軌道からずれ始めた。それで軌道の傾斜角に変化が認められるとともに。天体の高度が低くなり始めた。このまま行くと、フォーサイス天体は6月28日に日本の南部に落下するであろう」
 
字幕:ワストン・イブニングの記事。
 
朗読者4(湯元信康)「ハデルスン天体の発見者であるシドニー・ハデルスン博士によると、5月11日以来、天体に何か別の天体の摂動が作用しており、これまでの安定した軌道からずれ始めた。それで軌道の傾斜角に変化が認められるとともに。天体の高度が低くなり始めた。このまま行くと、ハデルスン天体は7月7日にパタゴニア(*49)のどこかに落下するであろう」
 
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両者の見解はほとんど一致しているのだが、最後の結論だけが異なっていた!
 
フォーサイス:6月28日・日本
ハデルスン:7月7日・パタゴニア
 

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語り手(元原マミ)「この2つの新聞には、いつものようにフォーサイスとハデルスンがお互いを非難する声明も掲載されていました。明日結婚式なのに!新聞を見てフランシスはすぐにハデルスン家に走ります。ハデルスン家では、フローラ夫人が本当に困ったような顔をし、ジェニーは泣いていて、ルーは怒り心頭でした。しかしフランシスとフローラは明日の結婚式を延期せざるを得ないという決断を下しました」
 

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(*49) パタゴニア(Patagonia) は南アメリカ大陸のコロラド川以南、大陸南端までの地域の名称である。
 
パタゴニアは位置的には西経65-74度、南緯40-53度くらいで、日本南部というのを九州の北緯31-34度、東経129-132度付近と考えると、フォーサイスとハデルスンは物凄く大雑把には、地球の裏側に落ちると予測したことになる。
 
2人の計算結果が大きく異なったのは、後にボストン天文台のローウェンサルから批判されるように、功を焦ってまだ充分な情報が得られない内に強引な計算をしたせいである。
 

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ケイト(薬王みなみ)は、プロス判事(大林亮平)の部屋を掃除していて、判事がフォーサイス・ハデルスン天体に関する新聞記事などを見ていることに気付いた。
 
「あのぉ、お仕事のことを訊いたらいけないことは重々承知ですが、例の天体って金(きん)でできてるんですか?」
 
「どうもそうらしいね、巨大な金の玉らしい」
 
とプロス判事はケイトの興味を許容するように言った。正直あまりにもアホらしい裁判で、判事も投げ槍な気分だったのである。
 
実はフォーサイスとハデルスンはお互いに相手が自分の権利を侵害したとして告訴したのである。2つの告訴はまとめて審理されることになり、プロス判事のもとで裁判が行われることになっている。彼はその下調べをしていた。
 
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「そんなものが金でできていたら100万ドル(100億円)くらいします?」
「とんでもない。1兆ドル(1京円)くらいだよ」(*50)
「兆!?なんか想像もつかないんですけど」
「人は兆を数えることができないよ。ケイト、君が100歳まで生きたとしても数えられるのは10億ドルが限界。1兆ドルはその1000倍」
 
「もう想像できない世界です」
 
「1兆ドルの札束があったとする。君が1秒に1ドル(1万円)数えた場合、1時間で3600ドル数えられる。1日10時間数え続けて36000ドルだ。これを1年続けて1300万ドルになる。これを80年間続けても10億ドル。1兆ドルはその1000倍だから数えるのに8万年掛かる」
 
「私、100枚目までに数え間違う自信あります」
「ま、たいていそんなものだよね」
とプロス判事は笑った。
 
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(*50) 当時はフランもドルも金本位制の通貨なので、単純換算が可能である。
 
1F = 9/31 g = 0,2903 g
$1 = 1.5046 g
∴ $1/1F = 1.5046÷0,2903 = 5.18
 
つまり大雑把に言うと、フランで書かれた金額を約5分の1すればドルで書いた金額になる.
 

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その日ゼフィランは、また欲しい材料があって買物に出掛けていた。目的の物をゲットして帰ろうとしていたとき、彼に声を掛ける者がある。
 
「ゼフ!」
「マリ!」
とゼフィランは友人(演:今井葉月)(*51) に返事をした。
 
「何かまた色気の無いものを買ってるなあ」
「マリは旅行鞄持ってどこか旅行?」
「休暇もらったからニースまで行ってくる。しばらく仕事がきつかったから、のんびりしてくるつもり」
「へー。ニースか。小さい頃行ったなあ」
「そうだ。ゼフも来ない?ずっと部屋に籠もって研究してるのもいいけどたまには息抜きしたら?」
 
ゼフィランは少し考えたが、例の天体軌道変更装置は毎日自動で必要な方向を向くように作っている。ここ数日彼自身も機械には触っていないが、ちゃんと仕事をしてくれている。
 
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「行こうかな。着替え持ってないけど」
「そんなの現地で買えばいいよ。行こ行こ」
と言って、マリ・ルルーはゼフィランと手を繋いで、駅に向かった。
 

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(*51) 映画公開時、日本の観客は今井葉月の顔を知っている人も多いので、マリの性別には何も疑問を感じなかった。当然女性であり、ゼフは彼女と婚前旅行をするのだろうと思った。
 
しかし海外の観覧者の間では、マリの性別について意見が分かれた!
 
マリという名前は、フランスでは男女どちらにもある名前である。そして葉月の服装がラフな服装だったので、男とも女とも取れる格好だった。
 
それで女性だと思った人たちは「ちゃんとゼフィランには彼女がいたのか」と思ったし、男性だと思った人たちは「男2人でリゾート地に出掛けて、女の子でもナンパするのかな」などと思ったのであった。
 
これを観覧者の想像に任せるため、わざと葉月には性別微妙な服装をさせた。実はこの役柄は短期間で撮影を進めるためにボディタブルとして奮闘してもらった葉月に顔出し出演をさせるために設定した。この映画撮影のリハーサルでは、葉月と木下宏紀がアクアの代役として活躍している。2人とも両声類なので、男女どちらの役もできたのである。
 
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なお、原作ではマルセル・ルルーとなっていて男性の親友という設定である。
 
 
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