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■黄金の流星(19)

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語り手「翌8月19日、ゼフィランの温度低下予測では12時頃になったら2kmくらいまでは近寄れるかも、ということだったのですが、朝5時頃偵察に行ってきた作業班のメンバーが『防護服着てれば何とかなる気がする』と言うので、作業を開始します」
 
「気温自体はだいぶ下がっていますし、島の東岸は風上なので、もうエンジンを使ってもいいだろうということで、アルジャンにまずは資材を少しずつ乗せて島の北東に運びました。これに3時間ほど掛かりましたが、運搬と同時に現地で小屋の建築を始めます。最初の便に3等航海士のセシルとゼフィランが乗って現地に行き、まだ見えている金星などの明るい星を頼りに、土地の境界線を確定させます」
 
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「土地の形が全く変わっている」
とセシル(津島啓太)。
「山がきれいに無くなってるね」
とゼフィラン(アクア)。
「海岸自体が後退してません?」
「海岸付近の土地も全部吹き飛んだんだろうね」
 
「恐ろしいパワーだ。こんなのが都会に落ちたら数千人死にますよね?」
「数万人だろうね」
「ひゃー」
「だから人間が行ける範囲で、できるだけ人の住んでない場所に落とすことにしたんだよ」
「なるほどー」
 

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※華麗なるBefore/After
 
↓使用前

↓使用後

 
語り手「実は航海士のセシルが残ったのは正確に緯度を計測するるためでした(*97). 彼らはここに取り敢えず100mおきに20本ほどの杭(くい)を打ちました。西側は隕石にかなり近づくのですが、隕石の衝突のためにできた丘の陰になるので、何とか測量と杭打ちができました」
 
「やはり土地が半分くらい消滅してる」
「隕石は元の土地の北岸から700mくらいの所で停まったんだけど、それより北側の土地が消滅して、結果的に西側にも北側にもぎりぎりの場所になってしまった。ミレイユが怒りそうだ」
 
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「どうしても隕石の落下経路の下に衝撃が来ますよね」
「そうそう。分かってるじゃん。隕石の前方への衝撃は小さいんだよ」
「音よりも本体のほうが速いですからね」
 
「そうなんだよ。だから今の自動車はせいぜい時速100kmくらいだけど、多分50年後くらいには時速1000kmを越える自動車ができる。その時、我々は音の壁を越えるための新たな技術を考えないと行けないだろうね」
「時速1000kmの自動車かぁ。ぼくが生きてる内に乗れるかな」
「70-80歳まで生きると多分乗れる」
 
語り手「実際にはこの物語の67年後にコンコルドが就航して、音の壁を越える旅行が実現しました。ゼフィランは90歳、セシルは86歳でしたが、2人ともこの飛行機に乗りました。ゼフィランは時速1000kmの自動車を想像しましたが、実際にはそれは飛行機で実現しました」
 
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「しかし暑い」
「風上でこれだからね〜」
 

(*97) 3等航海士のセシルが不在でも、船は船長、1等航海士(シャルル)、2等航海士(レオン)の3人で動かせる。基本的に24時間動かす船は3人の航海士が4時間ずつ交替で動かす(但し“ドッグタイム”を入れて毎日時間をずらしていく)ので、多くの大型船では船長以外に3人の航海士が乗務することになっている。しかしアトランティスは微妙なサイズの船なので、船長自らブリッジに立つことで、船長以外には2人航海士があれば足りる。
 
しかしアトランティスは“後述”の理由により、通常の運行では船長以外に航海士が3人必要である。
 
ちなみに物凄く大きな外洋客船などでは、船長、航海士長(chjief mate), 1等航海士(first mate), 2等航海士(second mate), 3等航海士(third mate) と5人体制の船もある。また見習いの航海士(4等航海士)が乗って補助的な作業をする船もある。そういう巨大船以外の多くの船では chief mate, first mate は同義語である。同じランクの航海士が複数いる場合は、 senior, junior と呼び分ける。
 
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24時間走行する船ではだいたいクルーを3組に分けて交代制で作業をおこなう。アトランティスでは下記のようなメンバーで1チームを組んでいる。
 
航海士・操舵手・見張り、甲板手、機関手、機関員
 
甲板手のひとりが甲板長(ボースン bosun)、機関手のひとりが機関長。機関員というのは要するに火夫(fireman):石炭をボイラーに放り込む仕事!
 
つまり6人×3組で船を動かしている。中型以下の船では航海士が見張り役(watch officer) を兼任することが多いが、ソナー航法の無い時代、ミレイユは航海士と見張り役の2人で氷山の監視をさせていた。それで、氷だらけの海を夜間でもかなりの速度で航行することができた。
 
このほかに、パーサーが2名、事務員1名、船医1名、司厨長と司厨手(料理人)2名が乗務している。更に今回は作業班を12名連れてきていたので、ミレイユとゼフィランまで入れると、 2 + 6×3 + 6 + 12 = 38名も乗っていた。
 
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語り手「土地の境界が確定したところで、隕石落下地点からできるだけ遠い、土地の東岸近くに小屋を建てることにしました。この小屋は壁をしっかり丸太を組んで作り、内側にアルミシートのカーテンを取り付けました。これで隕石からの放射熱を防ぎます。小屋が完成した所でミレイユとセルジュを連れて来ました」
 
「土地の形が全然変わってる」
とミレイユ。
 
「ここにあった小さな山はまるごと吹き飛んだみたいだよ」
とゼフィラン。
 
「なんで隕石は北の海岸からもギリギリなのよ?」
「隕石が“停止”した地点より北側の土地を全て吹き飛ばしたんだよ」
「きゃー」
「まあ、前の小屋の中にいたら、ぼくたちも“黒い雨”になってるね」
 
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「ああ怖い。でもこれ転落しないよね?」
「まだ高温で液体化してて流動性があるけど、岩にめり込む形で停まったから岩のポットの中にあるような状態。あの辺の土地が崩れない限りは大丈夫と思う」
 
(「偉大なるバーナムの森がダシンシナンの丘まで動いてこない限り、お前は倒されない」とマクベスは言われた!)
 

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語り手「ミレイユたちがこちらに移動してきた後、作業班は港に仮に作った小屋を解体し、こちらに持って来て、材木は取り敢えず小屋の西側に積み上げました。また100mおきに打った杭の間に補間する杭を打ち、杭の間隔を5mおきにしました。そして杭の間にロープを渡し、フェンス状にします」
 
「100mの間に5mおきに杭を打つなら、植木算で杭は19本必要なはずですが、実際には20本になったり18本になったりしたのは愛嬌!」
 
「フェンスができたら、予め印刷して用意していた《私有地に付き立入禁止》という紙をたくさん貼っていきました」
 
「この日シュナクたちは島から3kmほどの海上で引き返しています」
 
「ゼフィランたちのほうは、フェンス作りまで終わったのが19日の18時頃でした。それでこの日は昨日同様、壁に横板を取り付けて中2階を作り、ミレイユたちはそこに寝て、作業員たちは床で寝ました。セシルは最初は床で寝ていたものの夜中に「ジルダルさん助けて下さい」と言って中2階に来たので、ゼフィランの隣で朝まで寝ました」
 
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語り手「翌8月20日は今度はこの小屋の北側にもうひとつ小屋を建てます。これは港に仮に建てた小屋を再現する形になりました。ミレイユは昨日建てた小屋に《エレクトラ》、今日建てた小屋に《マイア》と命名しました」
 
「プレアデス姉妹か」(*99)
「そそ。アトラスの娘たちだよね」
 
ここでバックには常滑舞音 with スイスイが歌う『昴』(谷村新司のヒット曲)が流れる。今回の映画の挿入歌は懐メロだらけである。短時間で製作したので、楽曲を充分準備できなかったのもある。最近の曲は許諾を取るのが大変だが、昔の歌は比較的許諾を取りやすい。古屋あらたが「目を閉じたら何も見えない気がします」と言って首を傾げていた!
 

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「だけど先に建てたほうが妹のエレクトラなんだ?」
「マイアは先に18日に港に建ててるから」
「なるほどー」
 
語り手「それでマイアを作業員たちが、エレクトラをゼフィランたちが使うことにしました」
 
「セシル、どちらで寝る?」
とゼフィラン(アクア)が訊く。
「あのぉ、ジルダル様たちと一緒でいいですか?」
とセシル(津島啓太)。
 
「そのほうがいいよ。あんた、私たちの目が無いところであいつらと一緒になったら確実にまわされちゃうよ」
とセルジュ(七浜宇菜)も言う。
 
「ま、回すって何を回すんですか?」
とセシルは物凄く不安そう!
 
もうこのあたりは、演技とリアルが混線している!
 
語り手「そういう訳でこの日からは、セシルはミレイユたちと一緒の小屋で寝ることにしました」
 
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「エレクトラの床の一部は掘り下げられていて、そこでミレイユとセルジュ、ゼフィランとセシルが2つの区間に各々寝るようにします(*98). 地下室を作ったのは、隕石落下前の小屋では寒さ対策でしたが、この小屋では逆に暑さ対策です」
 
「この日シュナクたちは島の南東の港に上陸しましたが、暑さに阻まれて北岸までは到達できませんでした。彼らはシュナクたちも兵士たちも黒っぽい服を着ているので、どうしても熱くなりやすいのです」
 

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(*98) ミレイユとセルジュ、ゼフィランとセシルを分離したのは、物語的には性別で分けたものだが、本当はアクアがミレイユとゼフィランの2人を演じているので撮影の都合という方が大きい。合成しやすいのである。でもセシル役の津島君は「女の子の傍で横になるのは緊張する」と言っていた!
 
セルジュの性別については後述。
 

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(*99) プレアデス星団(すばる)に名を残すプレアデス7姉妹は、アトラスとプレーイオネーの間の子供たち。“アトランティス”の語源がアトラスなのでそこからの発想でミレイユは命名したものと思われる。
 
ここに出てくるエレクトラ(Elektra) は、“エレクトラ・コンプレックス”のエレクトラとは同名別人。あちらはミケーネ王アガメムノーンと、王妃のクリュタイムネーストラーの間の娘。父を殺した母を復讐で殺害する(白雪姫の原形のひとつ、とよく言われる)。
 
こちらのエレクトラは、ゼウスとの間にイーアシオーンとダルダノスを産んでいる。ダルダノスはトロイア王家の祖である。イーアシオーンはデーメーテルと愛し合って、豊穣の神プルートスを設けた。プルートスは冥界の女王ペルセフォネと異父姉弟ということになる(双方の父親が親子!)。
 
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字幕:8月21日(金).
 
語り手「ミレイユたちは作業が一段落したので、取り敢えず隕石が冷えるのを待つことにします。ゼフィランの予測では、あの隕石が触(さわ)れるくらいまで冷えるのは恐らく9月中旬くらいだろうということでした」
 
「私既に1ヶ月以上留守にしてるから、あまり長く留守を続ける訳にもいかない。アトランティスが戻って来たら、私はいったん帰ろうかな」
とミレイユが言う。
 
「それがいいかもね。その後でこの金(きん)を運べる輸送船を持ってきてよ」
「確かにあれはちょいと乗せて運べるもんじゃないからね。かなり大きな輸送船が必要だ」
とミレイユ。
 
「でもゼフ、あの金(きん)を持ち帰った後、どうするの?」
「そうだなあ。別にお金には困ってないし、あれを飾れるようなサイズの家を買って庭に置こうかな。それで博物館みたいにして、みんなに見学してもらう」
「いいと思うよー」
とミレイユも言う。
 
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「あれを置くなら、7000-8000m2くらいの土地が必要かな」
「そんなものかもね」
 
ミレイユはメモしていた!!
 

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