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■黄金の流星(5)

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(C) Eriko Kawaguchi 2022-12-17
 
字幕:5月2日(土).
 
フランスのパリ天文台は驚くべき発表をした。
 
そのメモが画面に表示され、朗読者2(夢島きらら:男声)(*20)が読み上げる。
 
「フォーサイス・ハデルスン天体が放っている光のスペクトルを分析した所、この天体の少なくとも表面にある物質は金(きん)であることが判明した」
 
語り手(元原マミ)は言う。
「この発表に対して、世界各地の天文台が同様に天体のスペクトル分析をしたところ、皆、パリ天文台の発表を確認しました。これが世界的な大騒ぎを引き起こし、フランシスとジェニーの結婚式の予定通りの実施は絶望的になってしまうのです」
 

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(*20) この手の細かな役は原則として§§ミュージックで引き受けている。
 
§§ミュージックには男性タレントがそもそも少ないが、その中で男声が出るタレントは更に少ない。夢島きららは貴重な戦力である。今回男声が出る子は全員投入されている。といっても、西宮ネオン、夢島きらら、篠原倉光の3人だけだが!このほか、アクア、水森ビーナ、今井葉月、木下宏紀の4人が両声遣いだが、この内、多忙な水森ビーナ以外の3人はこの映画に出演している。
 
ビーナはアクアがこの映画を割り込みで撮ったことからアクアの本来の仕事を一部代替することになり更に忙しくなっている。かなり学校を休む羽目になった。羽鳥セシル・松梨詩恩も同様である。
 
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花園裕紀(高1)立山煌(中2)杉本ひかり(中1)の3人はまだ声変り前である。立山煌は「ぼくは普通の男の子です」と言っているので多分今年中に声変りする。「きらめきちゃん。お願い。声変りしないように去勢して。去勢しても私が結婚してあげるから」などという女性ファンからの嘆願書は結構来ているが、本人は「そんなこと言われても困る」と言っている。声変りでファンが減っても仕方ないと本人は割り切っている。川崎ゆりこは「声変り前に1枚アルバム作ろう」と言って実は昨年秋から制作中である。
 
花園裕紀が高校生にもなってまだ声変わりしていない理由はセレンやクロムにも分からない模様。彼は女装もしないから女の子になりたい訳ではないようで「恐らくホルモンもしてない」とセレンたちは言う。
 
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長浜夢夜・鈴原さくらは、睾丸除去済みなので声変わりしない。山鹿クロム(中3)三陸セレン(中3)長岡飛鳥(中3)は、微量の女性ホルモンを服用して男性化を停めているので声変わりしない見込みである。
 
そういう訳で男声タレントの頭数が足りないので♪♪ハウスの男性タレントも借りることになった。
 

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語り手(元原マミ)「天体が金(きん)でできているという分析結果が発表されると、様々なマスコミがこの天体の価値について論評しました」
 
字幕:ワストン・スタンダード
 
朗読者3(織原青治@♪♪ハウス)「この天体が全て金(きん)で出来ていて、直径が10mだったとすると、重さは10083tになり、350億フランの価値がある」(*21)(*22)(*23)
 
字幕:ワストン・イブニング
 
朗読者4(湯元信康@♪♪ハウス)「この天体の直径は100m程ではないかと推測される。その場合、この球体が純金でできていれば重量は1008万3488トンになり、その価値は 34兆7320億フランになる」(*21)(*24)
 
※♪♪ハウスの2人は朗読の訓練を受けていない。ここは非専門家のコメントという雰囲気を出すために、わざとそういう子を起用した。
 
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(*21) アメリカの新聞なのにフランで書かれているのは、この小説がフランスで出版されたので、フランスの読者に分かりやすいように換算したものと思われる。
 
(*22) 直径10mの球の体積は、4/3 πr3= π×53×4÷3 = 523.5988m3になる。これに金の密度19.32 g/cm3を掛けると、10115.9tになる。
 
(算数の便法だが、g/cm3と t/m3は実は等しいのでm3に密度≒比重の数値を掛けるとトンに変換できる)
 
10083tという計算は逆算すると金の密度を19.258で計算していることになる。なぜそういう数値を使用したのかは不明。金の密度は大雑把にいうと温度10度で0.01g/cm3変わるので、これはもしかしたら摂氏80度くらいでの密度かも知れないが、その場合なぜその温度を採用したのかが分からない。
 
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(*23) ここで原文は金1gを3.1Fとしているのだが、これは作者の勘違いだと思う。
 
当時のフランは金本位制であり、10/31 gの金貨が1F と定められていた。それで作者は金の価値は1g = 31/10 F = 3.1F と考えたのではなかろうか。
 
ところがこの金貨は純金ではない。900‰の金貨なので、10/31 gの金貨に含まれる金の量は 10/31 × 900/1000 = 9/31 g しか無い。だから1gの純金は3.1Fではなく、31/9 = 3.4444F になるのである。以下、金の塊を価格に換算する部分は、全て3.1ではなく 3.4444F で計算し直したもので記述した。
 
日本で2022年12月現在、金1gの価格は約8700円である。すると 3.4444F = 8700円なので、当時のフランは 1F=2526円(約2500円)の価値があるという換算が出来る。
 
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(*24)スケールを10倍にしているから質量は1000倍になる。
 

字幕:5月6日(水).
 
記事の表示。
 
朗読者5(篠原倉光)「グリニッジ天文台はフォーサイス・ハデルスン天体について、そのサイズの分析を結果を発表した。この天体の直径は110mで、体積は69万6千m3になる。これが全て純金であればその質量は1300万トンになる。しかし、天体の質量は186万7000トンと推測される。これは直径57mの球に相当するものである。このことから、この天体は表面以外の部分が金以外のもっと軽い物質でできているか、あるいはスポンジ状の物体である可能性があるとのことである。天文台が見積もった天体の質量がもし全て純金であればその価値は6兆4308億フランになる」(*25)(*26)(*27)(*28)
 
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(*25) 計算を検証する。
 
直径が110mの球の体積は 4/3 πr3を計算して、V=696,909.97m3でこれに金の密度19.32を掛けると M=13,464,300.63t になる。
 
逆に質量が1,867,000tであれば、密度19.32で計算すると体積は96,635.61m3となり、半径が28.468m で直径は56.94m となる。
 
ヴェルヌの小説では、体積と質量の不一致は、天体に空洞があるか多孔質なのではと推測したと書いてあるが、普通は天体の構成物質の密度が低いのだろうと考える。
 
質量と体積から単純に密度を計算すると、体積が696,909.97m3, 質量が1,867,000t なら、密度は2.679 g/cm3となる。これは岩石の一般的な密度であり、これから常識的に考えられるのはこの天体はほとんど岩石で出来ており、金はごく表面にわずかにあるだけという考え方である。なぜ天文台がそう考えなかったのか、全く理解に苦しむ。
 
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(*26) 簡単に質量は何トンと書いているが、天体の質量を求めるのは非常に難しい。現代なら、小惑星探査機を飛ばすと、その探査機が小惑星から受ける重力の大きさから質量を求められるが、そうでもなければ事実上測定不能である。
 
遙か遠くの天体は実際問題として質量を求める手段が無い。連星の場合のみ、ケプラーの法則により連星の合計質量が求められる程度である。月はとても大きいため、地球と連星系をなすと考えられる。そこで求めた合計質量から地球質量を引いて月の質量が計算された。地球質量は1798年にヘンリー・キャヴェンディッシュが天才的な発想による実験装置で計測している。この実験から万有引力定数も求められたのだが、本人はそんな大発見をしたことには全く気付いておらず75年後に別の研究者が指摘してキャヴェンディッシュは再評価されることになった。
 
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小さな衛星では「地球とその衛星の合計質量」と「地球の質量」の差が誤差の範囲に入ってしまい意味のある数値が得られない。
 
木星や土星の質量は、その衛星の軌道から求められた。天王星や海王星では遠すぎてこの手法が使えず、ボイジャー2号の接近(1986/1989)によって判明した。冥王星は質量の前に直径さえも2015年にニュー・ホライズンズが接近するまでは正確な値が不明であった。
 
小惑星の場合は見かけの大きさから体積を推測し、そこから小惑星の一般的な密度を掛けて質量を推測というより想像しているのが現状である。この物語でグリニッジ天文台が、一体どうやってこの天体の質量を求めたのかがよく分からない。ここは小説ではよくある巧みな誤魔化しかも知れない。
 
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(*27) 1,867千tに、1g=3.4444F (1t=3.4444百万F) を掛けると、6兆4308億フランということになる。これは1g=8700円で計算すると 1京6242兆9千億円になる。
 
イングランドのグリニッジ天文台の発表を元にした記事なのにフランで書かれているのは、先のアメリカの新聞の記事と同様、フランスの読者に分かりやすいように換算したものだろう。
 

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(*28) 2022年時点で、人類がこれまでに採掘した金の総量は 20万トンほどとされる。体積にすると約1万m3で、50mプール(50x50x3=7500m3) 1,4個分にすぎない。私が子供の頃はプール1杯分と言われていた気がする。採掘技術の進歩を考えると100年前の金の総量はこの5分の1くらいだったかも知れない。約4万トンと考え、フォーサイス・ハデルスン天体の重量が200万トンだったと考えると何が起きようとしているかが想像つく。
 
後にルクールが言うように世界戦争を引き起こしかねない危険な量であり、誰かが個人で独占できるものではない。個人の物にしたかったら世界と戦う覚悟が必要だが、多分3日で殺される。そして歴史書には「人類の財産を独り占めにしようとした極悪人」と記されるだろう。
 
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↓多分こういう世界(BOSS7 世界を敵に回したシンちゃん)
https://youtu.be/dAeg20xAuXI
 

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語り手「フォーサイス・ハデルスン天体が金で出来ているという報道があって以来、世界中の人々がこの天体のことを話題にしましたが、それはフォーサイスとハデルスン本人たちの対立も更に煽ることになりました。フォーサイスはフランシスに『あの娘の家に行くな』と言いましたが、ミッツがフォーサイスに睨みを利かせて『どうぞお出かけください』と言いますし、フランシス自身も『僕は何があっても行くよ』と言って出かけます。そしてハデルスンも彼の訪問を快く思わないものの、フローラが歓迎しますし、ジェニーのフランシスへの思いは、強くなりこそすれ決して損なわれることはありませんでした」
 
「しかし、フランシスの叔父・フォーサイスはまだいいとして、ジェニーの父親であるハデルスンがこの結婚に同意してくれないと、さすがに父親の反対を押し切って結婚式を挙げるのは困難なので、フランシスもミッツも、フローラもジェニーもルーも、本当に困っていました」
 
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そう言って語り手(元原マミ)は厳しい顔をした。
 

字幕:5月8日(金).
 
街の通りを(当時)最新型のN型フォード(*30)が走っている。運転しているのはフロックコードを着た七浜宇菜である。
 
一方、同じく街の通りをもう1台のN型フォードが走っているが、こちらは運転しているのはアールヌーボー風のドレスを着たアクアである。
 
2代のN型フォードは、プロス判事の公邸前にジャスト同時に到着した。
 
ケイト(薬王みなみ)が邸から走り出してきて門を開ける。
「どうぞ中へ」
「ありがとう」
と2人は言って、車を並んで庭の中に進めた。ドアの前で停止する。
 
「判事さん、いらっしゃいますか」
と男性(七浜宇菜)が言う。
 
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「呼んできます」
 

それでプロス判事(大林亮平)が出てくる。
 
「こんにちは、セス・スタンフォートさん。こちらは・・・前のハズバンドの妹さんですか?」
と女性(アクア)を見て尋ねる。
 
「いえ。私は、セスの元夫・本人です」
と女性は答える。
 
「以前は男性でしたよね?」
「赤い卵を食べたら女になってしまったんです」
「はあ」
「朝起きたらちんちん無くなっててびっくりしましたけど、慣れると平気ですね」
「そういうもんですかね」
 
「これが医師に書いてもらった性別鑑定書と、性別を女性に訂正した市民登録証です」
と言って彼女は提示する。
 
判事が見ると、医師の診断書には「この人物は女性である」と書かれている。市民登録証を見ると、名前がアルケイディア・ウォーカーになっていて、性別も sex:F と書かれている。
 
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「それで今日のご用件は?」
とプロスは“念のため”訊いた。
 
「私たち結婚します」
「僕たち結婚します」
と2人はハーモニーを作るように言った。
 
「以前の問題は解決したんですか?」
とケイトが尋ねる。
 
「ゆで卵の食べ方については、こういう食べ方をすることにしたんです」
とアルケイディア(アクア)は言うと、ゆで卵を取り出す。
 
2人は車の座席から身を乗り出すと、細い方をアクアが、太い方を宇菜が咥え、同時に食べ始める。
 
(映画公開時に多数の非難の声!)
 
カメラは2人が食べ始めた所で、呆れたような顔をしたケイトの映像に切り替わり、最後に卵を食べ終えて必然的にキスしているふたりを映した。(*29)
 
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黄金の流星(5)

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