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■黄金の流星(11)

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語り手(元原マミ)「国際会議の方ですが、全く意見がまとまる気配が見られませんでした。どの国も自分が有利になるような意見を言うばかりです」
 
「まず落下したら、その落下した場所のある国が総取りするという案は、国土の広いロシア、イギリス、中国が賛成したものの、圧倒的多数で否決されました」
 
この時点で既にジルダルの論理が否定されている。
 
「全ての国で平等に分配しようという意見は多くの賛成を得ますが、その“平等”の定義について意見が一致しません。国土面積の比というのが即否決された後、人口比というのはかなりの賛同を得たものの僅差で否定されます。全ての国の現時点での“富”を算定して。、貧しい国に多く与えられるようにしてはどうかという意見は結構な共感を呼びましたが、現時点の“富”の算定方法に技術的な問題があると指摘されます」
 
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「アンドラ代表(演:David Alanis)が長い演説を始め、3時間経っても4時間経っても終わりそうにないため、代議員たちがみんな疲れて議席を離れてしまいます。ハーベイ議長(トーマス・ラッセル)は一時閉会を宣言して演説を中断させます。フランス代表が説得して、論説書の提出で代えさせてもらいました」
 
映像はアンドラ代表が高さ2mありそうな論説書を提出するところを映す。
 
撮影に使用した論説書の中身は古新聞(リサイクル♪)!演じたDavid Alanisは、実はアンドラの配給会社の社長さん。社長さん自ら、この大迷惑な演説をする役を演じてくれた。ちなみにアンドラは面積468km2。大津市程度の広さの国。大統領はフランス大統領が兼任する。事実上のフランスの保護国である。
 
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字幕:ボストン天文台のJ.B.K. ローウェンサルのメッセージ
 
朗読者1(西宮ネオン)「フォーサイス・ハデルスン天体の動きが、5月30日以降、理論的に全く説明できないほど乱れている。天体は5月15日から29日までは規則的な軌道のずれ方をしていたのだが、5月30日以降は、東寄りにずれたかと思えば西寄りにずれ、高度も下がったかと思えば上がり、丸1日まるで天体への摂動が無くなったかのように元の軌道に戻ろうとしていたかと思うと、また東へずれ、とあまりにも不規則である。それはまるで天体が酔っ払ったかのようであり、この後どのような動きになるか、現時点では全く想像がつかない」
 
語り手(元原マミ)「このメッセージが国際会議にも伝わると、会議は行き詰まり掛けていたこともあり、しばらく天体の様子を見る空気になりました」。
 
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ニースに来たゼフィラン・ジルダル(アクア)は、リゾート地なんて久しぶりに来たので、ひたすら遊びまくっていた。そして・・・
 
月日の経つのも夢の内??
 
(常滑舞音withスイスイが歌う『浦島太郎』の歌が流れる!)
 
ある日、ゼフィランはマリ(今井葉月)と一緒に食事をしていて、ふと何かに手が当たる。何だっけ?と思って手に取り、ふたを開けて見ると、何かの部材である。
 
これ何だっけ?
 
(舞音withスイスイの歌で「心細さにふた取れば、開けてびっくり玉手箱、中からパッと白煙」と歌うところと重なる)
 
何だっけ?と思ってしばらく考えていた時、ゼフィランは唐突に、黄金の天体のことを思い出した。
 
「しまったぁ!」
 
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「どうしたの?」
とマリが訊く。
 
「ぼく帰る」
「え〜〜〜?なんで〜?明日ジャンヌちゃんたちと楽しいパーティーなのに」
「大事な用事を思い出した。また」
と言って、ゼフィランはホテル代を概算でマリに渡すと、その部材を入れたバッグだけ持って駅まで走った。そしてパリ行きの急行に飛び乗った。
 

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彼は6月10日(水)に自分のアパルトマンに戻って来た。そして機械を見ると、機械は窓からは外されて部屋の中にあり、アンテナは天井を向いていた。
 
何が起きたんだぁ!!!!??地震でも起きたのか?
 
彼はまず機械を止めた。そして天体の位置を確認する。この衛星は1時間40分ほどで地球を1周する。つまり大雑把に言うと45分くらい見えてて55分くらい見えなくなるので、気を付けて空を見ていると、だいたい1時間ちょっとで見付けることができる。
 
「ひっどーい!」
 
現在の軌道を確認した上で、すぐに計算を始める。
 
3時間後、軌道の修正方法の計画が立ったので、機械を再度窓際に置き、正確な位置に向けてスイッチを入れた。1時間半後、天体がちゃんと意図した位置にきたことを確認した。
 
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それでこの機械に、旅行に出掛ける前に買っていた部品を取り付けて機能強化しようと思ったら部品は壊れている!ことが分かった。
 
(原作では取り付けた所で、物凄い騒音を発生するのだが、それを省略し、先に壊れていることに気付く展開にした)
 

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ゼフィランの心の声「うーん・・・どうしよう?買いに行きたいけど、買いに行っている間にまた異変が起きたらなあと思うと買いに行けない。でもここまでずれた軌道を元に戻すには、この改造をしなければならない」
 
と悩んでいたらドアをノックする音がある。
 
「どなた?(Qui est la?)」
「私(Moi)」
なんとミレイユの声である。
 
ゼフィランはドアを開けるなり言った。
 
「ミル、ちょうどいい所に来た。ここで留守番してて」
 
そう言い残すと、ゼフィランは走ってどこかに出掛けた。
 
「私が留守番するの〜〜?」
とミレイユは言った。
 
大銀行の総帥に留守番を頼むなんて、ゼフィランにしかできない!
 

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ゼフィランが出かけてしまつたので、仕方なくミレイユが部屋の中で待っているとノックをする音がある。
 
「どなた?(Qui est la?)」
「私です(C'est moi)」
というのはナタリーの声なのだが、ミレイユは彼女を知らない。
 
「えっと誰でしたっけ?」
「いやですよぉ、家政婦のナタリー・チボーですよぉ」
と言って、ナタリーは勝手にドアを開けて入ってくる。
 
「お掃除しますね」
「はいはい。よろしくお願いします」
 
それでナタリー(立花紀子)は掃除を始める。
「しばらくおられなかったようですが、ご旅行ですか」
「ええまあ」
などと言葉を交わした時、ナタリーはミレイユの服装に気付いた。
 

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「あら、可愛い」
「え?そうですか?」
「ジルダルさん、私前から思ってましたよ。ジルダルさんって女装さたいくらい美形だって」
とナタリー
 
ミレイユの心の声「あ、私をゼフだと思ってるのか。確かに顔は似てるし」
 
「ついに目覚めたんですね。いいと思いますよ」
とナタリーは言っている。
 
「これだけ美人だと、誰かお嫁さんに欲しいっていうかも」
「そうかな」
などと適当に話を合わせておく。
 

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ナタリーは倒れている本とかを起こしながら言った。
 
「でもジルダルさん、これ本棚買いましょうよ。床に積み上げたままって、本にもよくないですよ」
 
「それはそうかも知れないね。本棚買おうかな」
とミレイユはマジで思った。
 
やがてナタリーは窓を掃除するのに、例の機械を動かそうとした。
 
「ストップ!それを動かしてはダメ! (Arretez! Ne bougez pas)」
とミレイユは叫んだ。
 
「動かしちゃいけないんですか?」
「それは大事な観測をしている機械だから、動かしたら大変なことになる」
「ごめんなさい」
「もしかして、これ毎日動かしてたりしてません?」
「毎日お掃除してました」
 
ミレイユの心の声「それが天体迷走の原因か!でもだいたいゼフが部屋を留守にするからいけないんだ。そもそもこんな安いアパルトマンに住んでいるのもよくない」
 
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もっともこのアパルトマンは日本で言えば、ぎりぎりマンションに分類できるような比較的上等の住宅である。しかし8000m2(2400坪)の邸宅に住んでいるミレイユから見ると「安い」部類になる。
 
「掃除はしてもいいけど、窓の付近には触らないでくださいね」
「分かりました!でも今日は何だか声も可愛いですね」
などとナタリーは言っていた。
 
(このエピソードは映画オリジナル)

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ゼフィランがずっと不在だったため、食器とか洗濯物などは無い。それでナタリーは1時間ほどで帰っていった。
 
それから少ししてゼフィランが戻った。
 
「私、忙しいんだけど」
とまずは留守番させられたことへの文句を言う。
 
「ごめーん。誰かに留守番しておいてもらわないとさ。旅行に行っている間に機械が倒れてたんだよ。なんで倒れてたのか分からないけど、もしかしたら、このアパルトマンが揺れやすいのかもしれない。前の通りを自動車とか通った拍子に倒れたのかも」
 
「ふーん。だいたいなんでこんな大事な時に部屋を長期間留守にするのよ?私、あの天体のことでもう気が気じゃなかったんだから」
 
「あの天体が迷走するとミルが困るの?」
 
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「ゼフがあの天体を落とすというのを聞いて、私、金鉱の株を大量に売ったのに。あんなとんでもない金塊が落ちてきたら、金鉱なんてみんな廃業するだろうからね」
 
「へー。ミル、金鉱の株とか持ってたんだ?」
「全く持ってなかった」
「ミル凄いね。持ってない株を売るとか!僕にはとてもできないよ」
 

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画面が切り替わり元原マミが解説する。
 
「株の取引の仕方には2通りの方法があります。ひとつは株を現金で買って、適当な時期に売る方法。これは株が値上がりしていく相場で利益を得ることができます。また売る時期は、いつでも構いません。現物取引の場合は予想が外れて下がってしまった場合でも最悪投資したお金が無くなるだけで済みます」
 
「もうひとつが持っていない株を売って、定められた期限までに買い戻す方法。持ってないのに売るので“空売り”(からうり)と言いますが、この方法だと、値下がりしていく相場で利益を得ることができます。例えば100万円の時に空売りして、80万円まで値下がりした時に買い戻せば差し引き20万円の儲けになる訳です」
 
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「現実に持っていない株を売るので信用取引と言い、証券会社に認められた顧客のみに許されているものですが、むろんルクール銀行は許された顧客です。この方法では“空売り”した株は買い戻す期限があり、その期限までに必ず買わなければなりません」
 
「それで下がると思っていたのに上がってしまった場合も、その値上がりした値段で買うことになります。例えば20万円で空売りした株が値下がりすると思ってたのに、2000万円まて高騰したら、差額1980万円を期日までに必ず払わなければなりません。お金が無いからといっても許してもらえず、借金をしてでも代金を払う必要があります。ひとつ間違うと破産する羽目になるので、現物取引より、リスクの高い取引方法です」
 
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画面が戻る。
 
ミレイユは文句を言う。
「頑張って売ったのに、天体が迷走してるからさ、どうなってんだと思ってアパルトマンまで来てみたら、あんた居ないし」
「もしかして毎日来てた?」
「来てた」
 
「軌道調整機が倒れているのとか見なかった?」
「部屋の中まで入ってないから。私、このアパルトマンの鍵は持ってないし」
「あ、そうか」
「機械を動かしちゃったのは、掃除人さんみたいよ」
「ナタリーのせいか!!」
 
「それで天体はどうなるのよ?ホントに落ちるよね?落ちてくれないと、私、大損するんだけど」
 
「落とす。ちょっと予定がずれるけど。7月6日までにはちゃんと落下軌道に載せるから」
「分かった。掃除人さんには、この機械には絶対触らないでと言っといた」
 
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ゼフイランは少し考えた。
「言われてても、あの人ぼくが居なかったら絶対動かす」
 
「動かしそう!」
「ぼくが出掛ける時は誰かに留守番を頼んだほうがいいな」
「誰かお友達とかに頼む?」
 
ゼフィランの心の声「マリの奴はしばらく戻らないだろうし、他にあまり信頼できる友だちとかいないし・・・・あ、そうだ!」
 
ゼフィランは言った。
 
「ね、こないだミルがうちに寄こしてくれた子」
「うん」
「あの子に留守番を頼めないかな」
「報酬次第ではやってくれると思うよ。来させるから直接交渉して」
「了解」
「でもやはり男の娘が好きだったのね。女の子に興味がない訳が分かった」
「別にそういう意味じゃないよ。単に留守番を頼むだけだよ」
「恥ずかしがらなくてもいいいよ。誰を好きになったって個人の自由なんだから」
と笑顔で言って、ミレイユはその日は帰って行った。
 
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ゼフィランが一心に計算をしていると、ノックする音がある。
 
「誰?(Qui ess la?)」
「シルビアと申します(C'est Sylvia)」
 
先日の子(の女声)である。ゼフィランがドアを開けると、彼女はいきなり抱きついてくるが、ゼフィランは言った。
 
「セックスはしなくていいから頼みたいことがある」
「どんなこと?私家事とかはあまり得意じゃないけど」
とシルビア(木下宏紀)は(女声で)答えた。
 
「君、今だいたい月間どのくらい稼いでる?」
「最近あまりいい話が無いのよ。せいぜい月に60フラン(15万円)かなあ」(*58)
「それだと生活大変だね!」
「うん。結構厳しいのよねー」
「倍の120フラン払うから、今のお仕事やめて、ぼくの助手してくれない?」
「私、掃除とかできないよ。あんたの部屋は足の踏み場が無いとよく言われる」
 
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どうもゼフィランと同類のようである。
 
「掃除をさせないように見張る役を頼みたい」(*60)
「え〜〜〜!?」
 

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(*58) 当時の庶民の月収相場がよく分からないのだが、ドイツの鉄鋼業の労働者の日給が1908年には、5マルク程度だったらしい(*59).
 
この当時のマルクは、2790Mark = 1kgの金 と定義されていたので、1Mark = 1000/2790 g = 0.3584 g となり、
 
1F/1M = 9/31 ÷ 1000/2790 = 9×2790 / 31×1000 = 9×90/1000 = 0.81
 
(279は31の倍数!)
 
つまり5マルクは 5÷0.81 = 6.17 ということで約6フラン(1.5万円)である。月に26日稼働したとして月収に直せば約130マルク≒160フラン(40万円)になる。しかし鉄鋼業は恐らく高給取りの部類だったと思うので、平均的な庶民はもっと低収入だったかも。ましてやコールガールの月収は、よほど売れてる子以外は、かなり低かったろう。
 
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(*59) 「20世紀初頭, ルール鉄鋼業の労働市場と賃金:クルップ鋳鋼エッセン工場を中心にして」大塚忠 1989-03-10.
 
(*60) ゼフィランがシルビアに見張り役を頼むことを考えたのは、男を傍に置いておくと、あれこれうるさいし、女性を傍に置いておくと自分がその子の色香に迷う危険がある。それで男の娘ならわりとおとなしいだろうし、恋愛的な“事故”も起きないだろうという発想だったのだが、甘かったことを後に思い知ることになる。
 
ゼフィランは頭はいいのに、先を見通す力に欠けるようである。
 

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黄金の流星(11)

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