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■夏の日の想い出・日日是好日(22)
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1月21日(土).
昔話シリーズの今季最後の作品『海幸彦と山幸彦』がアクア主演で放送された。
主な配役
山幸彦:アクア(2001)
海幸彦:岩本卓也(1994)
豊玉姫:アクア
玉依姫:坂出モナ(2003)
大綿津見神:光山明剛(1977)
塩土老翁:藤原中臣(1950)
語り手:元原マミ(1998)
語り手(元原マミ)「昔、九州は日向国(ひゅうがのくに)、今の宮崎県に、海幸彦(うみさちひこ)・山幸彦(やまさちひこ)という兄弟が住んでいました。兄の海幸彦は海で魚を釣るのがうまく、弟の山幸彦は山で鳥や獣を狩るのがうまく、それぞれ得意なものは違えども仲良く暮らしておりました」
映像はいずれも髪を美豆良(みずら)に結い、生成り色の筒型衣を着た海幸彦(岩本卓也)と山幸彦(アクア)が、各々釣り竿で魚を釣り上げるシーン(*50), 弓矢でウサギを射留めるシーン(*51) が映ります。
その後、ふたりがいろり端で獲れたての魚の刺身、獲れたてのウサギ肉を串焼きにしたものをお酒を飲みながら食べているシーンも映ります。
挿入歌:広瀬みづほ『海の幸・山の幸』
(*50) 釣りは本当に宮崎の海岸で岩本君に釣らせたが全然釣れない!ので案内人さんに代わってもらうと10分で釣れた。2時間で10匹も釣れたが110cmほどのオオニベを釣り上げてくれたので、この様子を映像に残した。
岩本君は「こんな大きな魚、釣り針に掛かっても引き上げきれない」と言っていた。
(*51) アクアが演じる(予定だった)のは弓矢を放つシーンだけである。これは白雪物語でもかなり練習したので結構“さま”になっていた。アクアの放った矢は動くウサギのぬいぐるみに刺さった。ちゃんと当てたので凄いと言われたが、さすがにまぐれである。そしてこのぬいぐるみをアクアが持ち帰るシーンを撮影した。
山村マネージャーが
「俺かきっちり本物のウサギを弓矢で仕留めてあげます」(←女を忘れてる)(*52)
と言ったが
「あんた本当にできそうだけど、日本では現在弓矢による狩猟が禁止されてるんだよ」
と監督が残念そうに言う。
「なぜー!?」
「下手糞で半矢にしてしまう人が多いかららしい」
「俺ならちゃんと仕留められるのに」
ということで動くぬいぐるみを使って撮影した。
(*52) “この”勾陳(雨水)はアクアのマネージャーになった時点で男性器を除去されその後完全な女性に性転換させられた。だからバストもあるし女性器もあり生理もある。でもパスポートは男!
千里曰く
「お前を男のままアクアのマネージャーにするのは、狼に羊の番をさせるようなもの」
同様の理由で鹿島信子担当の“雷鳴”も女に性転換させられた。
ある日のこと、山幸彦は
「ふたりの道具を交換して仕事に出てみない?」
と提案しました。
「うまく行くとは思えない。気が進まない」
と海幸彦は否定的です。
「でも一度良っやみようよ」
と弟が言うので兄も応じました。
それでこの日は海幸彦が弓矢を持って山に出ました。そして山幸彦が釣り竿と釣り針を持って釣りに行きました。
しかし元々あまり得意ではないことをしてますし、道具にも慣れてないので海幸彦は矢を放っても全く当たらず、虚しく帰宅します。
「成果ゼロだったよ。岩に当たって矢を3本も壊しちゃった。ごめん」
と海幸彦は言います。
「まあそれはいいよ。ぼくも全然釣れなくて、釣り針まで無くしちゃうし。ごめんね」
「釣り針を無くしただとぉ!?」
と海幸彦は突然怒ります。
え?そんなに怒るもの!?自分だって矢を壊したくせに?
「どの鈎(はり)を無くした?」
「ええっと、残ってるのはこれだけど」
と持ち帰った釣り針を見せます。
「よりによって一番大事な“マジカ”を無くしてる」
と海幸彦は釣り針を全部広げて見て言います。
そんな大事な鈎だったら言っといてよ。使わなかったのに。
「だから道具の交換なんてしたくなかったんだ」
「ごめんなさい」
「返せ」
「返せと言われても魚ごと逃げちゃったし」
「今すぐ返せ」
「そんな無茶を言われても」
その日から海幸彦は口もきいてくれません。
困った山幸彦は、鍛冶屋(*54) のツネオのところに行きました。
「この刀を細かくして釣り針をたくさん作りたいのですが」
と山幸彦(アクア)は言います。
「え?そんな立派な刀を?」
と鍛冶屋(獄楽)は驚きますが、山幸彦が事情を説明すると
「お兄さんもおとなげない」
とは言ったものの釣り針の制作をしてくれました。粘土で釣り針の型を作り融かした青銅(*53) を流し込みます。いったん冷えた後で再加熱し水を掛けて急冷して焼き入れ、更にさっきより低い温度まで加熱してから今度はゆっくり冷まし、焼き戻しします。
挿入歌:常滑舞音withスイスイ『村の鍛冶屋』(作詞作曲者不明・文部省唱歌)
しばしもやまずに槌打つ響
飛び散る火の花、走る湯玉(ゆだま)
鞴(ふいご)の風さえ息をも継がず
仕事に精出す村の鍛冶屋。
(この歌詞は時代を経て微妙な表現が改訂されている。↑は最初の歌詞。この件は放送後かなりの問合せがあった)
できあがった釣り針を山幸彦は1本ずつ丁寧に研磨して、結局1ヶ月ほどの作業で釣り針が1000個ほど作れました(*53).
(*53) 当時の剣は青銅製と思われる。ただ日本では釣り針を使った漁法はかなり新しい。恐らくBC5-6世紀頃からと思われる。古代は釣り竿と釣り針ではなく銛(もり)などで魚を刺して捕まえていたと思われる。だからこの話の年代は随分新しいはず。また海神は水田を作る話をしている。日本で稲作が始まったのはBC3世紀と思われる。輸入された鉄製の農機具が使用されていた。
剣の重さを1kgとして1gの鈎が1000個作れる。現代の釣り針はもっと軽いが古代の釣り針はけっこう太くて重かったかも。
ここでは釣り針を鋳造したことにしたが、まっすぐの線状に作ってそこから鍛造する手もある。しかしかなりの日数が掛かると思われる。多分半年はかかる。
(*54) 日本で青銅器の製造が行われるようになったのはBC1世紀頃、鉄器の製造が行われるようになったのはAD5世紀頃とされる。ただし中国からの輸入により青銅器・鉄器はBC4世紀頃から九州で使われ始めていた。
だから山幸彦の剣が鉄製ならそれを鈎に作り変えることができたのはA5世紀頃ということになり、その時代には既に大和朝廷が始まっている。だからここは青銅剣と考えざるを得ないのである。そしてこの話はBC1世紀より後と考えざるを得ない。
山幸彦は出来上がった大量の釣り針を持って海幸彦の所にいきます。
「なんだこれは?」
「お兄さんの釣り針の代わりにはならないと思うけど、ぼくの剣を潰して、たくさん釣り針を作った」
「そんな剣から作った釣り針いくらもらっても“マジカ”には及ばん」
と言って海幸彦は許してくれませんでした(*55).
(*55) わりと多くの人が指摘していることだが、紛失した釣り針は“鹿の角製”だったのでは?という可能性がある。鹿の角の枝分かれしている所を使う。だから山幸彦がいくら金属製の釣り針をたくさん作ってもそれでは満足しなかったのではないかと。
お兄さんも「金属製ではなく鹿の角製がいい」と言えばいいのに、怒っているものだからちゃんと言わなかった。それで面倒なことになったのではと。
こういう考え方をもとに今回のドラマでは紛失した釣り針は“マジカ”という名前であったことにした。“真鹿”ということである。
困ってしまった山幸彦(アクア)は、どうしようと?と悩み、浜辺に座って海を見ていました。海の中に取りに行けたらいいけど、そんなことできないし、更に海は広いから探すあてもないし、などと考えています。
挿入歌:常滑舞音withスイスイ『ウミ』1-2番(*56)
海は広いな大きいな
月が昇るし、日が沈む
海は大波青い波
揺れてどこまで続くやら
(*56) この曲は文部省唱歌(一年)である。作詞作曲者は判明しており、林柳波作詞・井上武士作曲である。林柳波は1974年に亡くなっており、2024年時点では70年経っていないが、文部省唱歌は当時の文部省が権利を買い取っているので、歌詞の掲載は可能(国が使用料を請求する権利があるが徴収していない)。なお原詩は全文カタカナだが、読みやすいよう漢字かなまじりに改めた。
なお漢字で『海』と書くと「松原遠く」のほう(作詞作曲者不明)。
山幸彦は、その時、水鳥(*57)が足を石に挟まれて飛び立てずにいるのに気付きました。
「ああ、今助けてやるな」
普段は狩猟でたくさん鳥獣を殺していますが、この時はなんだか助けてやる気になったのです。それで山幸彦が石を動かしてやると、水鳥は嬉しそうに飛んでいきました。
(*57) 原文“川鴈”。特定の種を指したものではなく単に川辺にいるような鳥という意味であろう。“鴈”は“雁(かり)”の異体字。
その時、老人(藤原中臣)が彼の傍に寄ってきました。
「私は塩土老翁(しおつちのおじ)(*58) である。山幸彦殿、何を悩んでおる?」
「兄の釣り針を無くしてしまって。たくさん謝ったし、代わりの釣り針を作って持って行っても許してくれないんです。何とか元の釣り針を捜し出す方法はないものだろうかと思って」
と山幸彦(アクア)は答えます。
「どのようにして無くされたのじゃ?」
「釣りをしていて掛かった!と思って引き上げたら魚はいなかったのです。そして釣り針も無くなっていました」
「うーむ。それでは実際に海に探しに行かれるとよい」
「え〜〜!?」
塩土老翁は袋の中から櫛を取り出し浜辺に投じました。するとあっという間にそこに竹林ができます。そこで翁は竹を切り、“大目麁籠”(おおめあらこ)と呼ばれる。竹で編み隙間を塞いだ籠を作りました。
そして海に浮かべると山幸彦に籠に入るように言い、籠を海に流したのです。
挿入歌:常滑舞音withスイスイ『ウミ』3番
海にお舟を浮かばして
行ってみたいな、よその国
(*58) 塩土老翁(しおつちのおじ)または塩椎神(しおつちのかみ)は、この時点では恐らく潮流の神と思われる。しかし後には製塩の神様として信仰され、宮城県の塩竈神社などに祭られている。
「ぼくどこに流されるの〜?」
と山幸彦は不安な気持ちでした。
挿入歌:薬王みなみ『浪路遙かに』
しかしやがて山幸彦の乗った籠舟はどこかに流れ着いたようでした。山幸彦(アクア)は籠から出ます。するとそれはどこかの陸地か島のようで大きな宮殿が建っていました。
おそるおそる近づいて行きますが、人が来る気配があります。山幸彦は手近の杜樹(かつら)の木の上に登りました(*59).
宮殿から女性(川泉パフェ)が出て来ます。井戸から水を汲もうとしますが、その井戸が山幸彦が登った杜樹の木の真下にありました。山幸彦は「見付かりませんように」と思っていたのですが、女性が井戸の中を覗き込むと。水面に映った山幸彦の顔があります。女性が
「キャッ」
と言って、上を見上げます。山幸彦は照れるようにして女性に手を振りました。
女性は急ぎ宮殿の中に入りました。
やっばぁ。警備兵にでも通報されると、ぼく弓矢で撃たれたりして?
と思ってもこの木を降りてもどこに逃げる当てもありません。山幸彦はこの場に留まる道を選びました。
(*59) アクアの腕力ではとても木に登るなんてできないので、実際に木に登ったのは(この時期正式にはまだアクアのマネージングチームに入っていなかった)前橋歌愛(しれん/身長160cm)である。アクアは158cm。歌愛は物凄く身体能力が高い。
“木の上に居る”アクアはクレーンで吊り上げて撮影した。
ちなみに歌愛は播磨工務店経理部長・前橋善枝の娘。2011年にケイたちを神戸から沖縄に連れて行ってくれた前橋虹彩(こいろ)の妹である。
やがて先程の女性が数人の女性を連れて戻って来ます。女性ばかりなのでひとまずホッとしますが、その中に剣を帯び弓矢を背負う者(川泉スピン)が居るのは警戒します。護衛でしょうか。
「あなたはどなたですか?なぜ木の上にいるのです?」
とその中で中心っぽい、立派な服を着た女性(アクア2役?)が訊きました。
「何もしませんから降りていっていいですか?」
「どうぞ」
それで山幸彦は木を降りていきます。
「ちょっと失礼」
と言って武装している女性(川泉スピン)がボディチェックをしました(*60).
(*60) 視聴者の声
「スピンちゃんアクアのおまたに触った」
「ちんちんが付いてないことを確認したんだろうな」
「ちんちんが付いてたら危険物だよな」
「危険物は没収すべきだよな」
「でも空振りしたように見えた」
「やはりちんちんは無かったんだ」
この山幸彦はFが演じているので当然ちんちんなど存在しない。
(Mであってもちんちんはクリトリスサイズなので『ちんちんやはり無い』とスピンは思ったと思う)
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